万魔殿の主〜胡散臭いトレーナーとウマ娘たちは日本を驚かせたい 作:仙託びゟ
「というわけでね、後半始まりましたけどもー」
「有馬記念、総決算だな」
出バ表
1.オースミシャダイ
2.ヤエノムテキ
3.オサイチジョージ
4.ランニングフリー
5.メジロライアン
6.サンドピアリス
7.メジロアルダン
8.オグリキャップ
9.キョウエイタップ
10.ミスターシクレノン
11.リアルバースデー
12.エイシンサニー
13.ホワイトストーン
14.ゴーサイン
15.カチウマホーク
16.ラケットボール
「オグリをはじめ、メジロ家からはGⅠ勝利こそないものの好成績を残すラモーヌの妹アルダンと期待の貴公子ライアンが出走。皐月賞、大阪杯、秋天とGⅠ3勝のヤエノムテキ。最低人気からエリ女を制覇したハイセイコーの弟子、『砂の貴婦人』サンドピアリス。宝塚でオグリとの接戦を制したオサイチジョージ。今年のティアラ戦線からもエイシンサニーとキョウエイタップが参戦しとるで」
「他にも、現状すべての重賞レースで掲示板に入っているホワイトストーン。昨年の春の天皇賞で2着、宝塚記念で3着のミスターシクレノン。勝ちきれないが狙った相手を最後には倒す執念の挑戦者リアルバースデー。前走、鳴尾記念でハナ差の激戦を繰り広げたゴーサインとカチウマホーク。GⅡ*1のオールカマーを制覇しているラケットボール。作家としても売り出し中のランニングフリー。そして、ミスターシクレノンとランニングフリーに勝利した経験のあるオースミシャダイなどが出走している」
『二度あることはサンドピアリスさん!』
『( カ)アルダン! カノープスに来ないか?』
『ランニングフリーの新作読んだわ』
『ホワイトストーンちゃん!』
「ふふっ……さて、注目はやはりオグリキャップか。見たところ、直近3戦に比べれば悪くなさそうに見えるが……あぁそうそう、会場を捜索したが爆発物は仕掛けられていなかった」
「オグリんトレーナーとかナルビーさんとこにも爆弾は
「負け続ける姿を見たくないという気持ちは理解できますが、あまりにも稚拙で幼稚な行動でございます。少々冷静になっていただきたいですね」
『ホンマヒトカスはこれだから……』
『ハクタイセイも激おこやったもんな』
『ハクさんオグリ追いかけ回した出版社に殴り込んだってマ?』
『正確には真剣持って殴り込みに行こうとしたところをライアンに取り押さえられた』
『養生してくれよ屈腱炎……』
『名前を言ってはいけないあの出版社な』
『月刊タ○フ』
『は? またあそこかよなんで潰れないの』
『「オグリキャップを取材した記者は数日前に自己都合退職しており、取材当日はフリーライターとなっていたため弊社とは無関係です」だと』
『やタ糞』
「はいはい月刊ターフは置いといて話題進めるで〜」
「タマモクロス様、名前を出すのは……」
「タマモクロスも被害者だからな……実家に押しかけられたことがある」
「さて、よう見てみると、クラシック勢以外はオグリ、ヤエノ、ピアリスしかGⅠ勢おらんのな」
『そんなホイホイとれねんだヮ』
『GⅠが当たり前のようにいると思うなよ』
『いや1年に一定数輩出はされてんだよ』
『ピアリスをそこに入れていいんか……?』
『ピアリスよりアルダンとライアンの方が人気高いの残当』
『てかピアリス16人中15番人気じゃん、GⅠウマ娘なのに』
『ピアリスちゃんはしゃーなし』
『エリ女ゴール後のはしゃいでるピアリスと呆然としてるトレーナーの温度差好き』
『ホワイトストーンちゃん1番人気!!』
「ゲート入り始まんでー。流石にオールスターだけあってスムーズ……あ」
『ヤエノどうした?』
『ヤエノが』
『ムテキさん!?』
「……蜂、のようだな……?」
「蜂に驚かれたヤエノムテキ様が思わず逃げてしまわれたようでございますね」
「今トレーナーが落ち着かせたろうと……あ」
『痛い』
『今のは痛い』
『裏拳……』
『トレーナー業はこれがあるからな……』
『そしてこの土下座である』
「袖口のゴミを蜂と見間違えて払おうとした手の甲がトレーナー様のお顔に……」
「あーあー鼻血ブーやんけ。トレーナーが」
「トレーナーの怪我はレースに関係ないから問題ないだろう」
『皇帝スンとしてて芝』
『心配したれやwwww』
『日常茶飯事、ヨシ!』
『なんでそんな塩なんだ……』
『ヤエノのトレーナーは皇帝現役時代にリギルのサブトレやってて皇帝から色々教わってたらしい。ある意味弟子みたいなもん』
『身内への対応が両極端な皇帝』
『てかトレーナーってあの爺さんじゃないんか』
『今年の安田記念から爺さん腰やって入院してる。代役やろ』
「ヤエノも落ち着いてゲート入ったし、ファンファーレやな」
「本レースのファンファーレは陸上自衛隊中央音楽隊の皆様です」
『ぱぱぱぱー』
『ぱぱぱぱー』
『ぱぱぱぱー』
『ぱぱぱぱー』
「コメント欄もよく啼いている」
「発走や! っと、ひとり出遅れたか?」
「逃げを宣言していらっしゃいましたミスターシクレノン様が出遅れていらっしゃいますね」
「ふむ、押し出されるような形でオサイチジョージが出てきたな。後ろにはメジロアルダンとヤエノムテキ。ランニングフリーとリアルバースデーが先団か」
「ミスターシクレノンは少しずつ上がってきとるな。ティアラ組はまとめて後ろや」
「オサイチジョージ様がペースを握っていらっしゃいます。かなりのスローペースで進行しておりますね」
「オグリキャップにとってはかなり都合のいい展開だな。オグリキャップが勝てるとすればスローペースだ」
「アルダンとヤエノがバチバチやな。芦毛2人は中団で様子見か」
「状況は膠着しております。このまま進むでしょうか……」
『実況がスムーズですげぇ』
『露骨にコメ減ったな』
『みんな集中しとる』
「向正面入って、オグリは位置ちょっと上げたな。攻めあぐねてる感じがあるけどどないや……?」
「ライアンはバ群の中で、脚を溜めております。この大舞台でしっかり落ち着いている辺りを見ますと精神的な成長が見て取れますね」
「向正面中間過ぎてミスターシクレノンがハナを奪いに行くがオサイチジョージも譲らない。少しペースが加速してきたか?」
「残り800、勝負所でオグリがジョージに並びよった! さぁやったれオグリ!」
『来た! オグリ来た!』
『マジで来る?』
『※この放送では贔屓実況は当たり前です』
『キタキタキタキタ』
『ホワイトストーンちゃんがんばえー!!』
「リアルバースデーの様子がおかしいな……故障か……?」
『え? 普通に走っとらん?』
『わからん』
『皇帝の眼力……』
「オグリ先頭! ラストの急坂を一気に登る!」
「ライアンも来ております! 後方外からライアン!」
「いやでもオグリや! こらオグリ! 内のホワイトストーンは伸びきらん!」
『ウチのホワイトストーン?』
『告白か?』
『大胆な告白は芦毛の特権』
「告白ちゃうわ! あぁもうオグリゴール! オグリ1着!! オグリ1着や!!」
「2着にはメジロライアン、3着にホワイトストーンが入った」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
『おぐりいいいいいいいいいいいいいいいい』
『俺たちの夢が帰ってきた!!』
『オグリ復活!! オグリ復活!!』
『すごいウマ娘だわ。スーパーガールだ』
「ようやったでオグリ! 有馬で醜態晒すなとか言うとったアホどもに目にもん見せたったやろ!! 右手挙げてアピールや!」
『右か……?』
『左手じゃね?』
『左手だゾ』
『◇これは左手と言って器を持つ方の手なんだ』
「うっさいな間違えただけやろ!!」
「しかし、これでオグリキャップもドリームカップへ来るのか……ふむ、楽しみだな」
「同感でございます」
「ホンマやで。やっと借りを返せるわ」
『うわぁ! 急にギラつくな!』
『机のお茶震えてて芝枯れる』
『ハイセイコーのウマスタ芝』
『ハイセイコーなんやこれwwwwww』
『おいたわしやハクタイセイ……』
『嬉しすぎて死んだ』
「なんやなんや何を盛り上がっとんねん」
「どうやらハイセイコー様のウマスタグラムに本レースに対するハクタイセイ様の反応がアップロードされたようですね」
「ぶち上がっとるやん、なんやこれ」
『インタビュー始まるぞ』
『ゲタの記者だけ寄らせてもらえてなくて芝』
『流石にインタビュー控えめか』
『まああんなことがあったらな……』
『無難な質問やね』
『今の質問……』
『あ……』
『? なんや』
『オグリさんその回答は』
「あぁ……あかんわ」
『Q.今回ラストランと言うことですが、どのような気持ちで臨まれましたか?』
『A.最後だから勝ちたいとか、トレーナーやカサマツのみんなのためにとか色々ある。それと、私のファンがひとり、故障で休んでいるのに私のためにすごく怒ってくれたと聞いた。私も怪我には悩まされた身だが、諦めずに挑戦した結果、こうしてここに立たせてもらうことができた。どうか、最後まで諦めないでほしいという想いが届いてくれることを祈る』
『あっ……(察し』
『ハイセイコーのウマスタ更新』
『合掌』
『RIP』
『南無三』
『【朗報】ハクタイセイ、ファンサービスに脳を焼かれて無事死亡』
「……こらしゃあないわ」
「まぁ、よかったんじゃないか。今年の集大成としては」
「せやね……さて、それじゃライブ前に終わりにしよか〜進行はタマモクロスと!」
「シンボリルドルフと」
「メジロラモーヌでございました」
「ほんじゃ皆様良いお年を!」
「「「ほなな〜」」」
『ほなな〜』
『ほなな〜』
『ほなな〜』
『ほなな〜』
★☆★
4月1週、大阪杯。
『最終直線! 競り合っているのはホワイトストーンとヤエノムテキだ! オサイチジョージも粘っているが少し苦しい! これは1着は絞られたか? いや、ひとり抜け出した! モノクロの勝負服、あれは――』
芦毛の髪が空をなびく。その目にもう憂いはない。
結局、彼女を呪っていたのは、縛っていたのは、いつだって彼女自身だった。侮蔑も、怪我も、自分自身の諦めがいつだって邪魔していた。
だって、あの人は諦めなかった。諦めずに走った先で奇跡を掴んだのだ。
自縄自縛の枷から解放された少女は走る。眼前に広がるのは己の領域。闇夜と雪原のそこに、既に吹雪はやんでいた。
ライバルたちは目にする。神速の一太刀、鋭く奔る白い刃が、雪原を切り裂き道と成るのを。
『ハクタイセイだ!! ホワイトストーン、ヤエノムテキ、オサイチジョージ、名だたる強敵たちを押しのけて、ハクタイセイが阪神のゴール板を斬り裂いた!! 芦毛伝説は終わらない! 終わらせない! オグリキャップの作り上げた奇跡をなぞり、屈腱炎を乗り越えてハクタイセイ、奇跡の復活!!』
SideH: 白き太刀筋、道と成りて