万魔殿の主〜胡散臭いトレーナーとウマ娘たちは日本を驚かせたい   作:仙託びゟ

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それと閑話。


オグタマライブ ??/10/06

 ■奇跡の終わり

 

 

『さぁ中山の最終直線! 期待の超新星、3度レコードを叩き出している『奇跡の子』! 中団につけていたケイエスミラクルが徐々に上がって4番手につけた!! ここから差し切り、伝説を続けるのか!! 後方からは前年制覇者『華麗なる一族』のダイイチルビーも大外から仕掛けてきている!!』

 

 去年のマイルチャンピオンシップからの修行の末、やっと形になった"領域(ゾーン)"を発動させて令嬢は走る。

 全身を血液が巡り力が行き渡るのと同時に眼は紅く染まる。足下に現れた紅い水晶を踏み砕きながら、直線の短さなど知らないと言わんばかりに加速する。

 目指すは先頭、誰も触れることさえ叶わない場所。

 

 初めて会った日に気づいた、彼女こそが運命だと。全身が燃え上がるような胸の高鳴りに突き動かされ、ただひたすらに彼女と同じターフを走る日を待った。

 そして今、ダイイチルビーは楽しくて仕方がない。どちらが勝つのか、自分が、はたまた相手か。どちらにしろ、レースが終われば互いを讃え合うのだと信じて疑わなかった。

 

 そんなダイイチルビーの右側を、見慣れた影が流れていかなければ。

 

「……ぇ」

 

 レース中に振り返ることもできず、残りの100mほどを走りきってようやく後ろを振り返る。ゴールからは数人がそこに集まっていることしか確認できない。

 

 程なくして、ケイエスミラクルの故障と競走中止、骨折後に地面に衝突したことで、現在昏睡状態となっていることが発表された。

 

 

 

★☆★

 

 

 

《オグタマライブ!》

 

「まいど〜! ドリームシリーズウマ娘のタマモクロスやぁ!」

 

「まいど。ドリームシリーズウマ娘のオグリキャップだ」

 

『まいど!』

『まいど〜』

『オグリのまいどたすかる』

『まいど……』

 

「っちゅーわけでね、あの黒いのがやらかしてくれたんで、急遽な! 急遽、オグタマライブ特別編を開始することんなったわけや」

 

『黒い人はURAに恨みでもあるんか』

『マスコミにはありそう』

『エスミラ関連でURAがてんてこ舞いなタイミングでこれだもんな』

『ケイエスミラクルの件で変な団体が騒いでるらしいな。「体の弱いウマ娘がレースに出るのが可哀想だから規制しろ」って』

『そいつらの頭が可哀想』

『URAくんそいつらの相手で手一杯なとこに爆弾放り投げられて可哀想。いいぞもっとやれ黒い人』

『一部ファンはまだお通夜状態だもんな』

『ワイ会場民、テンポイントを思い出し過呼吸で運ばれる』

『勝てば官軍よ、勝てば』

『黒い人本当に「びっくりしたでしょう?」って言ってて笑っちゃった』

『茶目っ気すら胡散臭いのホンマ芝』

『自分のGⅡ勝利(しかも菊花賞トライアル*1)のインタビューで爆弾発言されたときのネイちゃんの顔よ』

『この二週間でウマッターのリプ欄のお馴染みになったスペースネイチャ』

『お馴染みリプライ〜』

『またチームメイトにも何も言わんかったんか黒い人……』

『報連相ができない大人!』

『フランスでムッシュノワールって呼ばれてるらしいで』

『Mr.ブラックは芝』

『海渡っても黒い人扱いで芝』

 

「海外遠征したんはルドルフ以来か?」

 

「順番的には、ルドルフの海外遠征より前に海外遠征に行って、ルドルフより後に帰ってきたシリウスのほうが後になると思うが」

 

『言うて誤差』

『4、5年前ってことやね』

『オリンピックか?』

『ワイトレセン生、タボボに夏合宿でパリ行ったと自慢されたがこんなことになるとは……』

『フォワ賞制覇は一部ネット民の間では話題になってたけど如何せんタイミングがタイミングであんま広まらんかったのよな』

『トレセン生だけどクラスメイトの生き死にがかかってるとこだったから話題に出しにくかったのもある』

『ここにいるトレセン生、何割が本物なんやろ』

 

「まぁなんやかんやあったけど大舞台も大舞台やしな! 仕事やししっかり盛り上げていくで!!」

 

「私は故障で遠征できなかった身だからな。楽しみだ」

 

『相方が速攻盛り下げてて芝』

『ハクタイセイが(おも)出死(だし)してまう!!』

『またハクタイセイちゃんに流れ弾飛んでる……』

 

「凱旋門賞が開催されんのは、フランスにあるパリ・ロンシャンレース場。距離は2400mや!」

 

「日本で言うところの府中のような位置づけのレース場で、多くの主要レースが行われる。特に、僅か土日の2日間で凱旋門賞を含む10のGⅠレースと3つのGⅡレースが行われる、凱旋門賞ウィークエンドが有名だな」

 

「ほんでその凱旋門賞ウィークエンドの日曜日第4レースが凱旋門賞や! コースの説明してくで!」

 

「コースは右回り。釣り針のような形をしているのが特徴だな。スタート地点は向正面で、1000mの直線から始まる」

 

「この直線の400m地点から、高低差10mの上り坂になんのや。高低差とか勾配とか言われてもようわからんようなら、府中の急坂よりキツいのが600m続くと思えばエエと思うで。正確にはゆったりから始まって段々キツくなって、頂上の200m手前からさらにキツくなる感じや」

 

『地獄で芝』

『脚壊れちゃう』

『構成自体は淀に似てんのか。スケールはダンチだけど』

『これに挑むマイラーがいるらしい』

『距離限界おじさんが来ちまう……!!』

 

「ほんで上りきったとこから第3コーナーと最終コーナー、計600mを今度は下り降りるわけやな。山っちゅうより波型をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれんわ」

 

「キツい下りを駆け下りるわけだから、当然スピードが出やすくなる。ここでどこまでスタミナを温存できるかが鍵だな」

 

「降りきったとこから最終直線……やなくて、『偽りの直線』っちゅうほんの少しだけカーブしとる直線が250m続く。ここで騙されてスパートかけてまうと、最終直線にスタミナが足らんようになるわけや」

 

「そこを超えるとようやく最終直線だ。平坦な最終直線が府中とほぼ同じ533m続く」

 

『もう(逃げじゃ勝て)ないじゃん……』

『逃げキツ杉内?』

『きっっっっっつ』

 

「まぁ、素人でもわかる逃げウマ娘殺しのコースだな……」

 

「一応トライアルで同じコースのフォワ賞で1着とってんねんけど、出走者8人やしあんま参考にはならんやろな」

 

「さらに言えば、当然のことながらこのコースは洋芝が使われている。北海道のコースを走ったことがあるウマ娘ならわかりやすいかもしれないが、洋芝は地下茎の密度が日本の野芝より高く、その分クッション性が高い」

 

「力が伝わりにくいっちゅうこっちゃな。そら金があんなら合宿に行ってでも慣れたいとこやわ」

 

『聞けば聞くほど絶望的じゃん』

『プラスの情報さんどこ?』

『これが世界最高峰のレースか……』

 

「ほんでライバルの紹介や。今回出走すんのはアイネスフウジン含め14人。まず注目なんはサウジアラビア王族が運営する名門『ロイヤルグリーン』のジェネラスやな!」

 

「現在クラシック級にも拘らず既にGⅠ4勝。イギリスとアイルランドの2カ国のダービーを制覇し、前走のキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスでは後続に7バ身差を着けて圧勝。欧州三冠最後の冠を求めて凱旋門賞に臨む」

 

『はー強』

『なにそのラスボス』

『"王"じゃん』

『勝負服緑一色なのになんでこんなカッコいいんや』

『今シンコウ軍団の悪口言ったか?』

 

「ジェネラスがぶっちぎって1番人気。ほんで2番人気がフランスのダービーウマ娘で、アイルランドダービーではジェネラスと競り合ったGⅠ2勝のスワーヴダンサーや。電撃的な末脚から『落雷の踊り子』っちゅう異名もあるらしいわ。親近感湧くわぁ」

 

『勝負服も青と白だしな』

『青い円が連なった耳飾りええな』

『強気な視線に相反して縁が青いエプロンドレスでかわいい系の服やな』

 

「飛び抜けているのはこのふたりだが、他の出走者も実力者ばかりだ。アイネスフウジンが12番人気なのがそれを証明しているな」

 

「いや、それは単純にアイネスがフランスでは無名っちゅうことがデカいねんけどな……さて、そろそろゲート入りも終わりそうやな! あっちにはファンファーレとかないからゲート入り終えたらすぐ発走や」

 

『ぱぱキャンかよ』

『鳴かせろ』

『ぱぱ活させろ』

 

「それはまた意味が違てくるやろ」

 

「ゲート開いたぞ」

 

「うお、ホンマや。飛び出したのは、えーと、14番人気のアートブルーやな」

 

『ラビットやろなぁ』

『これはラビット』

『ラビットってなんや』

『あっちのレースはチーミングありだから、勝つ気のないペースメーカー専も出る。それがラビット』

 

「……遅ない?」

 

「海外遠征計画のときに教わったが、このロンシャンレース場でもあちらでは起伏が緩いタイプのレース場なんだ。それほどスタミナを消費しやすくパワーが重要なヨーロッパのレースにおいて、前半はスローペースで体力を温存するのがセオリーらしい」

 

「ほーん。ほんでそのペースを乱してスタミナを浪費させるためのラビットなんやな」

 

『駆け引きだな』

『ルドルフ現役リアタイ勢のおっさんたちが好きそうな展開』

『5年前やぞ』

『ルドルフ現役リアタイがおっさんと言われる事実に泣いた』

『当時20歳だから今おっさんじゃないんだが?』

『25はオッサンやろ』

『なんだァ? てめェ……』

『ワイ将、キレた!!』

 

「アイネスフウジンもゆっくり出てきたな」

 

「急な速度変化はスタミナを使うから、どうせ競り合ってくる相手もいないと見てゆっくり仕掛けたんだろう。妨害役にブロックされてたら危なかったが、なんとかバ群を抜けたといったところか」

 

「んで、ここから上り坂やな。最初はゆったり始まって、途中でグイッと勾配が上がるで」

 

『うわ』

『見てわかる坂』

『フー姉ちゃんラビット抜いてて芝』

『盛 り 上 が っ て ま い り ま し た』

 

「さぁ下りや! ここからペースが一気に上がるで!」

 

「アイネスフウジンは例によって脚を休ませながら加速。後続に差を着けていく」

 

『これは勝ったんじゃないか?』

『コレ簡単にやるけどマジでムズいからな。普通に転ぶ』

『勝ったな、畑入ってくる』

『フー姉ちゃんの勝ちパターン』

『いやアイネスここから結構差されてね?』

『結構(2回)』

 

「さぁ『偽りの直線(フォルスストレート)』や!」

 

「強いて言うならスパートのための準備をするタイミングだな。ここのはじめからスパートをかけてしまうと800mのスパートを強いられる」

 

『欧州勢も動き始めたな』

『スワーヴダンサーが大外に出た』

『マジックナイトちゃんかわいくね?』

『フランスティアラ路線のシルコレちゃん』

『ヴェルメイユ制覇者やぞ』

『マジックナイトちゃんアガってきてる』

 

「アイネスフウジンが『偽りの直線(フォルスストレート)』の中間あたりからスパートかけよったな……これはどないや……?」

 

「アイネスフウジンはああ見えて加速が苦手だ。恐らくスパートの速度に到達するのが遅くなると考えての仕掛けだろうな」

 

「アートブルーが垂れて代わりにピストレブルーとマジックナイトが抜け出してきたで! いよいよ最終直線や!!」

 

『うわなんかきた』

『はっや!!?』

『テイオーみたい』

『やべ』

 

「スワーヴダンサーだな。間違いなく"領域(ゾーン)"に入っている」

 

「中継越しでもこれってことはこの音は"領域(ゾーン)"の幻覚とちゃうんか!!?」

 

「単純に"足音"ということだろうな……まさに『落雷の踊り子』と言ったところか。だが、バ場が悪いのがアイネスフウジンの有利に働いている。良バ場なら差し切られているだろう」

 

『アイネスも加速した!』

『領域来たっぽいけどすぐ並ばれてる』

『マジックナイトも来てるな』

『後ろは足りないだろ。一騎打ちだ』

『風神と雷神とか熱い』

 

「アイネスフウジンも粘っているが……これは意地だな。速度はスワーヴダンサーの方が速い」

 

「アイネスぅ!! 日本の意地見せんかいゴラァ!!」

 

『ぬかれた』

『あああああ』

『あかん』

『もう(距離)ないじゃん』

『キッツ』

『来た』

『かそく』

『お』

『うおおおおおおおおおお!!』

『抜き返したろ!!』

『最後並んだ!!』

『再加速来た!!』

『写真判定! まだある!!』

『最後の何?』

 

「どっちや!? どっちが勝ったんや!?」

 

「正直わからん」

 

『うおおああああああああああああ!!』

『きたあああああああああああああああああああ』

『かったあああああああああああああ』

『まじか』

『よっしゃああああああああああああああああ』

『wryyyyyyyyyyyyyyyyyyyy』

『まつりだああああああああああああああああああ』

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「タマ、落ち着けタマ」

 

「落ち着けるかい!! 日本の悲願やぞ!!」

 

「いや、私も興奮しているがしかし落ち着け。インタビューが始まるから」

 

「ああもうなんでパーソナリティなんてやっとんのやウチは!」

 

『火のタマストレートで芝』

『歯に衣着せぬいつものタマちゃん』

『遂に矛先が自番組に向いてて芝』

『落 ち 着 け』

 

「フランスでも黒いなぁ!!」

 

「言い方が日焼けなんだが彼は黒い服を着ているだけだぞ」

 

『おっ』

『初手牽制で芝』

『牽制っていうか威嚇で芝』

『威嚇っていうか脅迫で芝』

『黒い人「アイネスフウジンのご実家への取材は全面的に拒否させていただきます。現在不審者対策として警備員を雇用し配置しているので、不審者と()()()()()()()()()賢明な判断をお願いいたします」』

『訳: 来たらしょっぴく』

『民間警備員には逮捕権ないけどこの人ならSP雇ってそうで怖い』

『実家突撃しなきゃ怖くないんだよなぁ……』

『暗にマスコミ対策って言ってるよね』

『明にマスコミ対策だぞ』

『黒い人はマスコミに親でも殺されたんか』

『黒い人の親は今元気にイタリアで個展やってるぞ』

『マ? 同じ苗字だけど流玄(りゅうけん)の息子やったんか』

『誰?』

『誰だそれ』

『巨匠ってレベルの美術家。URA本部のシンザンの絵描いた人って言えばわかるか』

『そりゃ金持ちだわ。5代くらい続く美術家一家だ』

 

「おっ、今回は普通にアイネスフウジンが答えるんか」

 

「流石にすべてトレーナーがインタビューを引き受けるわけにもいかなくなるからな。単独でテレビ番組に出演することも出てくるだろう」

 

『Q.日本の名門名家、URAの悲願である凱旋門賞を制覇した今のお気持ちをお聞かせください』

『A.立場とか出身とか国籍とか関係なく、アイネスフウジンと網怜が凱旋門賞を獲ったと思ってるの。その上で、すごく嬉しいです!』

『寒門や日本を代表してるつもりはないってこと?』

『まぁ本人にしてみればそういうことなんやろうな』

『若干冷や水ではあるが、アイネスにしてみれば自分の勝ちを濁されたくないのかな』

 

「日本を代表したいなら自分らでとれゆーこっちゃな」

 

「それもまたひとつの意見だろう」

 

『Q.やはり強敵はスワーヴダンサーでしたか?』

『A.走ってる時は夢中で、隣にいるのが誰かわからなかったけど、間違いなく強かったの!』

『Q.これまで戦ってきたライバルと比較しても?』

『A.それは無理! みんな強いから単純に比べられないの!』

『Q.主戦場はマイルと聞いていたが、凱旋門賞挑戦はアイネスフウジンさんが提案したものですか?』

『A.はい! トレーナーはジャック・ル・マロワ賞か、ムーラン・ド・ロンシャン賞がいいんじゃないかって言ったけど、どうせなら有名なのがいいなぁって』

『どうせならで800m延長して得意距離より外で勝負するのか……』

『そのふたつなら楽勝だったって言ってる……?』

『来年そのふたつ制覇期待してるで!!』

『サセック○ステークスも頼むって打とうとしたらNGくらって芝』

 

「恐らく本質的にはマイルからミドルが得意なんだろうな」

 

「それでもようわからんけどな」

 

『Q.凱旋門賞挑戦はいつ頃から考えていた?』

『A.ニュージーランドトロフィーの前くらい』

『!?』

『ダービーどころかNHKマイルも獲ってないときかよ』

『まだ朝日杯しか獲ってないマイラーが凱旋門賞挑戦決定するってマ?』

『可愛い顔して野心すげぇな』

 

「志が高いのはエエことやね」

 

『Q.網トレーナーへ質問です。勝てると思っていましたか?』

『A.厳しい戦いになるとは思っていましたが、勝てると思って送り出しました。負けても来年また今より強くして送り出すのがトレーナーの仕事ですし、信じて送り出すのもトレーナーの仕事です』

『Q.同じ世界最高峰のレースでもマイルのレースを勧めたと仰っていましたが、説得しようとは思いませんでしたか?』

『A.ウマ娘側のモチベーションがなければ何もかも成り立ちません。なので、ウマ娘の希望を最優先にしています』

『ウマ娘優先主義ってやつか』

『この顔ですげぇウマ娘大切にしてるんよな黒い人』

『Q.次走の予定は?』

『A.アイネスフウジンはマイルチャンピオンシップですね。間違いなくダイタクヘリオスが難敵なので、マイルで彼女に勝てるか挑戦させたいと思います』

 

「ダイタクヘリオスの評価高いな」

 

「確かにダイタクヘリオスには底知れなさがある」

 

「さよか? ウチはわからんわ」

 

『Q.ジャパンカップで日本総大将をやって欲しいとの意見もありますが』

『A.本人の希望優先。ツインターボには長い距離だし、ナイスネイチャは菊花賞後は有に向けて調整したいから、チーム《ミラ》からは今年はジャパンカップに出走はしない』

『マ?』

『テイオーだけじゃなくてネイチャもアイネスもおらんのか……』

『長い距離(ダービー2着)』

『Q.ツインターボは日本ダービーで2着ですが長いんですか?』

『A.あれはメンタルの状態が偶然2400m走りきれる細工を仕込める状態だったからできたこと。恐らくもう二度とあの状態にはならない』

『Q.日本ダービーは偶然だと?』

『A.実力以上のものが出せる状況だったのは偶然ですね』

『ここまでか』

『ツインターボに関しては距離限界おじさんが勝ったか』

『距離限界おじさんって勝てるんだ……』

『大穴じゃん』

『日本帰ってきてからも取材受けてくれよ頼むよ頼むよ〜』

 

「まぁ、その辺りはおいおいやろな」

 

「頃合いだし、こちらも畳んでおくか」

 

「せやな。そんじゃここらでお別れや」

 

「「ほなな〜」」

 

『ほなな〜』

『ほななー』

『ほなな』

『ほなな〜』

『オグリのほななたすかる』

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「すげぇなぁ。ネイちゃんの先輩、凱旋門賞とっちまったよ」

 

「……獲っちゃい……ましたねぇ……」

 

 ナイスネイチャは、とんでもないものを見せてくれた、と思った。こんなの見せられたら菊花賞、勝つしかないじゃないか、と。

 店内はお祭り騒ぎだ。そりゃ、凱旋門賞制覇は日本のレースファンの悲願だ。そうもなろう。

 

「ロン」

 

 と、そんな騒ぎを邪魔しない程度の宣言が響き、ナイスネイチャの上家に座っていたおじさんの捨て牌が拾われる。

 手牌を倒して和了を宣言したのは、ポンパドールの先輩ウマ娘だった。

 

「見ての通り役満。親の役満は48,000点でおじさまのハコね」

 

「いやぁはは、参ったね。役満直撃とは……」

 

「凱旋門賞制覇の次は役満と来たか! こりゃめでたい!」

 

「すみません、私はそろそろお暇しますね。トレーニングがあるので……一番好きな役で和了れたので、満足です」

 

 もう何が起こっても面白いのか笑い合う卓仲間に挨拶をして、先輩ウマ娘は帰っていった。

 残された牌を眺めるナイスネイチャ。付き合い程度でしか打たないためそこまで詳しいわけではない彼女は、その役満の名前が思い出せず、結局自分で思い出すことを諦めた。

 

「おっちゃん。この役なんていうんだっけ」

 

「んー? まぁ役満なんかなかなか出ないからな……覚えてなくても打てるか……まぁロマンだから覚えておきなよ! この役は比較的出やすい役満だから。この3つが刻子で揃えばいいんだ」

 

 おじさんは倒された手牌から3種類9個の牌を抜いて揃える。

 

「大三元ってんだよ」

 

 

 

 ■南入

*1
1995年からの施行なので1991年当時はトライアルではありませんが、現在の制度で行きます。

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