万魔殿の主〜胡散臭いトレーナーとウマ娘たちは日本を驚かせたい 作:仙託びゟ
《オグタマライブ!》
「まいど〜! ドリームシリーズウマ娘のタマモクロスやぁ!」
「まいど。ドリームシリーズウマ娘のオグリキャップだ」
『まいど』
『まいど〜』
『まいど!』
『2回行動』
『まいど』
『オグリのまいどたすかる』
『さっきぶり』
『もう見た』
「せやな〜。まぁみんな知っとると思うけど今回は特別編なんよ」
「今間違いなく時の人であるふたりにゲストとして来てもらっている」
「まいどなの〜! 凱旋門賞ウマ娘のアイネスフウジンと〜」
「毎度どうも。トレーナーの網馬怜と申します」
『フー姉ちゃん!!』
『どけ! 俺は弟だぞ!!』
『フー姉ちゃんだ』
『アイネス〜』
『黒い人やんけ』
『実在したんだ……』
『ムッシュノワールだ』
『風神と魔神』
『うわ黒っ』
『よく見ると顔がいい』
「まぁ……ちゅーわけでね! 何故かこの野生の天才コンビの帰国後初取材に我々オグタマがご指名いただきましてね……いやなんでなん? ウチらインタビューについてはド素人もエエとこやで?」
「質問内容は月刊トゥインクルの方でまとめてくれてるでしょうし、
「まぁ、言うてこの番組てトゥインクル主導やのーてURA主導のファンサの一環にトゥインクルが乗っかってきた形やからな」
「今回の質問内容は月刊トゥインクルからのものの他に、リスナーからリアルタイムで募集し編集が通したものも含まれる。あからさまに変なものは通さないと思うが、変な質問は来るだろうな」
「ネタ質問やな。笑えん質問は読まんで」
『流石芸人』
『トゥインクルシリーズきっての芸人』
『ウマペディアの主な勝鞍に上方漫才大賞って書かれてるだけあるわ』
「うん単純にデマやねそれはね。書かれてへんわ。ないよな?」
「ないな」
「うんもう嘘やもんなただの」
「とりあえず編集部からの質問を先に消化してしまおうか……おふたりとも名門や名家との関わりのない在野の出身ですが、その差を覆し日本の悲願を達成するに至った秘訣のようなものがあれば教えて下さい」
「いや教えるわけないやんそんなん」
「ウマ娘個々人にとって最高効率なトレーニングをさせ続ければいいんですよ」
『なるほど完璧な作戦っスね───っ、不可能だという点に目をつぶればよぉ〜』
『無理難題で芝』
『それっぽい言い草だけど何ひとつとして具体的なこと言ってないぞこいつ』
『効率を上げるにはどうすればエエんや』
「効率を上げるのに1番重要なのはウマ娘本人のモチベーションですね。トレーニング、レース、作戦指導、信頼関係全てに関わるので、ウマ娘の希望は最優先にしたほうがいいです」
「ほーん、ただお人好しっちゅうわけでもないんやな」
『計算された優しさか』
『やっぱ黒くね?』
『いや黒いのは間違いないだろ』
『見た目の話じゃねえよ』
『露悪的なお人好しだゾ』
「逆にお聞きしますが、皆さん相手に好かれる努力はなさらないんですか?」
『やめろカカシ、その術は俺に効く』
『残酷すぎる天使のテーゼやんけ』
『正論パンチ!』
『何気ない質問がリスナーを傷つけた』
「うちのトレーナーはお金持ちだから賞金の額に興味ないし、トレーナー同士でつるまないから対抗意識もないし、とにかくトレーナーとして働くことで自分のトレーナーとしての才能を自覚することが生き甲斐だからそれ以外の拘りもないの」
「なんやそれ、新手のナルシストかいな」
「事実として天才の範疇に入ると自負していますよ。結果と実績が証明しているじゃないですか」
「ゲームでキャラのカスタマイズとか育成プランとかデッキ構築をそれ単体で無限に楽しめる人種なの。あたしたちがそれをどう使うかは拘らないし、お題があったほうがやりやすいみたいな感性してるの」
『急に親近感』
『職人気質なナルシストから和マンチオタクになったぞ』
「和マンチってなんや」
「TRPGのスラングだな。笠松にいた時によくやったが、ミニーがノルンからよくそう呼ばれていた。ルールブックを読み込んで効率よく強いキャラを作ったり、あくまでルールの範囲内でできるだけ自分が有利になるように振る舞うプレイヤーのことだ。ルールを破ることはないが、穴や隙を突くことは多い」
「それなの!」
『えぇ……』
『それでいいのか()』
『まぁ……結果的に?』
『ウマッターで落書きとか言ってお題募集してめちゃくちゃ上手いイラスト載せてくる人種じゃん』
「話が逸れましたね。効率のことですが、体にかかる余計な負担をできるだけ取り除くことも重要ですね。負担の少ないトレーニングで体を作ってから、正しいランニングフォームを教える。それから、ストレッチなどの準備運動の徹底とトレーニング後のケアの徹底。バンデージやサポーターも有効です。一番効率が悪いのは怪我ですね」
『それはそう』
『オグリも怪我に苦しめられたしな』
「なのでとりあえずB種免許を取るといいと思いますよ」
『言うが易しさん!?』
『簡単に言うなや』
『難易度が司法試験並なんだよなぁ……』
『B種ってなんや』
『簡単に言えばウマ娘専門の医療免許みたいなもん』
「あとはウマ娘の才能と適性を見極めて、正しい方針のトレーニングを積ませることです。極端な例ですが、カブラヤオーに先行のトレーニングを積ませても絶対に強くはなりませんでしたし、ニホンピロウイナーに春の天皇賞を獲らせようというのは無茶でしょう」
「ほな、あの娘はどうなん。ミホノブルボンゆー今年デビューした娘。あの娘スプリンターやのにクラシック三冠とる言うとるで」
「見た限りですが、彼女には努力の才能があります。正しい指導者がつけば可能性はあるでしょう」
『黒い人努力の才能とか言う人だったんだ』
『ガチガチの理論派だと思ってたから意外』
「トレーニングというのは自身の限界を拡げる作業ですから、当然身体から危険であるというアラートが鳴ります。このアラートは肉体が壊れる限界よりかなり手前で鳴るので、それを無視して限界を更新し続けるだけの精神力と、本当に肉体が壊れる限界を見極めてやめられるだけの分析力と判断力が必要です。分析力と判断力はトレーナーの方で受け持てますので、その代わりにそれができるトレーナーを選ぶ鑑識眼と運、トレーナーの指示を守る従順さがあることを、努力の才能と呼んでいます」
「あー……なんかわかるわ。あの娘、トレーナーの言うことは絶対みたいな感じやもんな」
「ミホノブルボンと言えばかなりのスパルタトレーニングを積んでいると聞くが、あれは網馬トレーナーとしてはどうなんだ?」
「坂路訓練は故障に繋がる部位への負担が少ない効率的なトレーニングです。その代わりに負荷をかけるべき場所にかなり強い負荷がかかるので、それを長時間続けるにはかなりの精神力が必要になります。ミホノブルボンにはこの精神力があるので間違いなく効果的かと。ただ、坂路訓練だけではどうしても負荷がかからない筋肉があるので、それは別途鍛える必要がありますが」
「方針としては正しいと?」
「えぇ。距離適性を延ばす、スタミナを養う訓練としては最善かと。もちろん、ミホノブルボンが高い精神力を持つということが前提ですが」
『やっぱり理論派だった』
『めっちゃ批判食らってたけど黒い人的には正解なんか』
『ちゃんとわかるように説明されると納得しちゃうんだよなぁ……』
『黒沼T叩いてた出版社息してる?』
『マイラーに凱旋門賞勝たせたトレーナーが言ってんだから間違いないわな』
「あぁ、それなんですが、今アイネスフウジンの一番力を発揮できる距離って、多分マイルじゃなくてミドルレンジなんですよね」
「ほん? そらまたなんでや?」
「凱旋門賞で課題が見えたんですが、スタミナが養われた反面、最高速度に伸び悩みが出ているんですよ。なので現在の最適性はミドルで、今後はスピードを磨くトレーニングになると思います」
『よかった、マイラーに負けた海外の精鋭はいなかったんだ……』
『どっちにしろ範囲外なんだよなぁ……』
『なんか大体トレーナー側のコツだったけど、ウマ娘側のコツはないの?』
「あー……勉強してください。とにかく正しいトレーニングをできるようにしましょう。分析力と知識を養えばそれで名門との差は7割埋まります」
「あとの3割はなんだ?」
「執念ですね。メジロ家最大のアドバンテージは天皇賞に向ける執念じみたモチベーションだと思いますよ。ただこの執念は一長一短ですけどね」
『なんか納得』
『なるほど、この分析力か』
「一発目の質問がめっちゃ尺取ったな……次行くで。凱旋門賞挑戦の公表タイミングが遅れたことについてURAから苦言を表明されましたが、実際の理由はなんでしょうか? やって」
「あー……色々複合的に理由はあると思うけど、一番ウェイトを占めてるのはセントライト記念のインタビューのあれで間違ってないと思うの」
「驚かせたかったから?」
「びっくりしたでしょう?」
『お茶目かよ』
『こう言っちゃホント申し訳ないんだけどくっそ迷惑だった』
『ワイ旅行会社社員、ビジネスチャンスに乗り遅れて泣く』
「いや、でもフォワ賞勝った時点でもう少し話題になると思っていたんですよ。ここまで広まらないとは思いませんでした」
「帰国してから聞いたんだけど、顔見知りが生死の境にいることもあって気づいてても話題にしにくかったって」
『空気が死んでたからね……』
『ケイエスミラクルかぁ……』
『ケイエスミラクルの故障で話題が流れた感じはある』
『海外に目を向けてる余裕がなかったよな』
『海外レースガチ勢は気づいてたけど内輪で楽しむから外に流れてこないし、ウマッターでもそういうのに気づくアカウントほどフォロワー少ないんだよな』
「あ、でも、今年うちからデビューするライスシャワーが来年海外遠征するので、今のうちからその予定を公表しておこうと思っていたんですよ」
「は? 来年? クラシックから海外遠征するんかい」
『ライスシャワーってあの黒い子?』
『あの娘そんな強いんか』
『黒い人がここで予定を公開……? 妙だな……』
「初めての遠征は3月30日のドバイゴールドカップですね。その次が4月21日のサンファンカピストラーノステークス、少し飛んで8月1日にグッドウッドカップ、9月12日にイギリスセントレジャー、日本に戻ってきて菊花賞とステイヤーズステークスに出ます」
「待て待て待て待て待て待て。なんて?」
『知らんのばっかや』
『英セントレジャーだけわかった』
『順番で、ドバイGⅡ3200m、アメリカGⅢ2800m、イギリスGⅠ3200m、イギリスGⅠ3000m、日本GⅠ3000m、日本GⅡ3600m』
『えぇ……(困惑)』
『なぁにこれぇ』
『ステイヤーズステークスって生きてたんだ』
『菊の出走優先権とらないのか……』
「生粋のステイヤーなのか……?」
「まだ実際に走らせたわけではないのではっきりとは言えませんが、2500mで短いだろうという雰囲気があります。恐らく適正距離は2800mから3800mです」
「はぁ……そりゃまた……」
『ブルボン終わったな』
『流石にガチガチのステイヤー相手に長距離で勝てへんやろ』
『まだわからんぞ』
『そろそろ、三冠が見たいよー』
「ちゅーことはなんや、シニア入ったらゴールドカップやらカドラン賞やら獲りに行くんかいな」
「ステイヤーズミリオン制覇を考えていますね」
「またさらっと言いよる……」
「いえ、別に不自然なことではなくて、国内に3000m級のレースが6つしかなくて、うち1つはクラシック限定の菊花賞なんですよ。なのでライスシャワーが自分の土俵で十全に実力を発揮するには海外遠征するしかないんですよね」
『それはそう』
『短距離もそうだけどもう少し国内整備してほしいな』
『マイルからクラシックディスタンスに偏ってるもんな』
『別に国内に限った話でもない。長距離軽視の傾向はどこの国でもある』
「話ズレてきたから次行くで。アイネスフウジンさんのご実家に警備を配置したと仰っていましたが、その後不審者などは現れなかったのでしょうか? どうなん?」
「凱旋門賞開催日前に取材の申込みが来たそうなので、丁重にお帰りいただいたとのことです。その上で、不法侵入やストーカーのような不審者は現れなかったらしいので、効果はあったのかなと思っています」
『警備員いなかったら無理矢理取材してたやつじゃね?』
『余裕で突撃してそう』
『でも親御さんに取材はそこまでアレなことではないのでは……?』
『先にトレーナーを通して取材交渉するんだよ普通。いきなり実家に突撃してそこから取材交渉とかその時点で舐め腐ってる』
『ゲタはどうしてる?』
『ゲタくんはフランス紙でフー姉ちゃんをKAMIKAZE扱いしたことについて批判記事書いてたよ』
『流石に凱旋門賞獲ったウマ娘を批判はできんか』
『それとは別口で「網馬トレーナーが警備に見せかけてアイネスフウジンの家族を軟禁して言うことを聞かせているのではないか」みたいなコラムもこっそり堂々と書いてた』
『こっそりなのか堂々なのかどっちなんだ……』
『ページの隅の方なんだけどやたらと目立つんだよあのコラム』
『アイネスフウジンの人気は批判しようがないから黒い人単体に攻撃するためにアイネスフウジンと黒い人の世間のイメージを引き剥がしにかかってきたのか』
『アイネスフウジンをスカウトしようとしてたのに黒い人に脅されて手を引いたとかいう自称ベテラントレーナーのインタビュー記事、粗だらけでホンマ芝』
「あれは笑いましたね。脅すなら少なくとも面が割れないように人を挟みますよね。自分で直接行って脅すとかありえませんよ普通」
『なんで有識者風やねん』
『(知ってはいるんだ……)』
『もっと効率的で法に触れない方法があるんですよハハハ』
「でも実際のところ、ふたりの初対面はどうだったんだ? 編集部からも質問で来ているが、今でこそ信頼関係は強いようだがはじめからそうというわけではなかったんだろう?」
「そうですね。私が選抜レースでスカウトしたのがキッカケですから」
『フー姉ちゃん……?』
『アイネスなんやその顔』
『やましいことがある顔か』
『まーた風評被害』
「ハハハ、もうこれぶっちゃけたほうがいいんじゃないですか?」
「だよねー……うん、正直めっちゃ怖かったの」
『芝』
『芝』
『それはそう』
『芝』
『笑うわ』
「このままじゃ故障しかねないけど自分なら防げますよ~みたいな感じでスカウトしたので特に探られて痛い腹はないんですがね?」
「『自分の担当でもないウマ娘を助ける義理はありませんが、担当になるなら最善を尽くしましょう』的なことも言ってたの。ニュアンスがちょっと違ったの」
『うーんグレー』
『普通に脅迫やないか』
『いや、スカウトされなければなにかするって言ってるわけじゃないから脅しではないぞ』
『言ってることはまぁ間違ってはいないんだよな。そら担当じゃないウマ娘のことまで面倒見てらんない』
『ただし見た目でだいぶバイアスがかかる』
『灰色発言に真っ黒外見があわさって黒く見える』
「しかし、乙名史記者いわくメイクデビューの頃にはかなり信頼関係が築けていたそうだが」
「スカウト直後に病院に連れて行かれて診察代とか全部払ってくれたし、怪しく見えてもやましいことはないからすぐ誤解だって気づいたの」
「すれ違うのは時間の無駄なので、基本的に自分の意図はすべて伝えるようにしていますからね。トレーナーになってからこうなったわけでもありませんし、自分の印象との折り合いの付け方は心得ています」
『ホントカナァ?(疑心暗鬼ゴロリ)』
『折り合いをつける(誤解されないようにするとは言ってない)』
『でもあんた基本「聞いてない!」「聞かれてませんからね」じゃねーか』
『意図はすべて伝える(凱旋門賞挑戦をチームメイトに伝えない)』
『あんたのせいで今ウマッターでネイチャの姿を見ない日はないんだぞわかってんのか』
『お馴染みリプライ〜』
「何が怖いって見るからにヤクザが乗ってそうな車に乗せられたときが一番怖かったの!」
「なんやねんヤクザの乗ってそうな車て」
「私の愛車、黒のヤールフンダートなんですよ。と言っても伝わるか微妙ですが」
「タマ、これだ」
「うわ厳つっ! 完全にスジモンやんけ!」
『物々しくて芝』
『いつも府中レース場の駐車場にあるこれアンタのかよ!!』
『推しの持ち物と同じもの買うマンよかったじゃん、買えよ』
『ム・リ』
「でも貴女、今は乗るたびリクライニングしてマッサージ機能フル活用でくつろいでますよね」
「そりゃ3年近く乗ってれば慣れるの」
「それでは次が編集部から最後の質問だ。アイネスフウジンの今後の出走方針はどうお考えですか?」
「その場のノリなの」
「アイネスフウジンは元々金銭目的で走るつもりだったので、レース以外でもそれなりに稼げる立場になった今無理して走る意味も薄いんですよね」
「とりあえず来年一杯は走って、それからドリームシリーズに移籍してたまに走りつつ、普段はサブトレーナーとして働こうと思ってるの」
『ド正直で芝』
『アイネスフウジン、デビュー前はアルバイト掛け持ちしてたから稼ぎたいのは結構切実なのでは?』
『日本初の凱旋門賞ウマ娘の姿か……これが……?』
『凱旋門賞ウマ娘ともなればテレビに講演会に引っ張りだこやろしなぁ』
『URAが保護するレベルやろ』
『フー姉ちゃんがサブトレやるチーム裏山』
『言うてミラやろ』
「まぁそういうことやね。ほんじゃ次はリスナーからの質問やってこか」