万魔殿の主〜胡散臭いトレーナーとウマ娘たちは日本を驚かせたい 作:仙託びゟ
《オグタマライブ!》
「まいど〜! ドリームシリーズウマ娘のタマモクロスやぁ!」
「まいど。ドリームシリーズウマ娘のオグリキャップだ」
『まいど〜!』
『まいど!』
『まいどー』
『まいど〜』
『オグリのまいどたすかる』
『オグリのまいどたすかるニキたすかる』
『オグリのまいどたすかるニキたすかる』
『えぇ……(困惑)』
『なんで複数人いるんですかねぇ……』
『単数でも十分おかしい』
『だんだん先鋭化されてきたな』
「せんでええねんそんなん」
「今日はマイルチャンピオンシップを実況していく。昨年はパッシングショットが初のGⅠ制覇という有終の美を飾って引退していった」
『パッシングショットちゃん現地勢ファン俺氏、パッシングショットちゃん最初で最後の本能スピードメインボーカル兼センターを最前列で観てむせび泣く』
『マジでウマッターに貼られる泣いてる栗毛リボンのウマ娘の画像みたいになってたもんな、あの時のパッシングショットファン』
『あぁデジたんの』
『おチヨがお星様とマルゼンの意志を継いでダービー獲った時の限界デジたんの画像』
『未デビューなのに圧倒的な存在感でウマッターを闊歩するデジたんほんますこ』
『ウマ娘レースに興味ないウマッター民が何故か知ってるウマ娘三銃士を連れてきたよ!』
『デジたん、スペースネイチャ、オグリチャン』
『なんでも教えてくれるオグリチャン。たまに明らかに本物の知能を超えてるやつがいる』
『ちゃんとスペースナイスネイチャって言え』
『デジたんは何者なの』
『中央トレセン生であることと同人作家であることとウマ娘限界オタクであることとウマッター垢とウマシブ垢しか知られてない謎のウマ娘』
「今回の注目はやっぱり凱旋門賞ウマ娘のアイネスフウジンや! 当たり前やけどぶっちぎりで1番人気やな」
「一方、網馬トレーナーが警戒していたダイタクヘリオスは3番人気だ。2番人気にはバンブーメモリーが入っているな」
「せやけどダイタクヘリオスは1番人気の時には勝てへんでそうじゃない時ほど勝つっちゅー謎のジンクスがあるからなぁ」
『気まぐれジョージ思い出すわ』
『伝説時代きっての癖ウマ娘じゃん』
『エリモジョージとテスコガビーとカブラヤオーが同世代なのマジで狂気の世代』
『狂人、狂戦士、狂気の三狂な』
『テスコガビーとアイネスフウジンのマッマがライダー*1同じ姉妹弟子だぞ』
『じゃあアイネスフウジンのブラッドエアライダー*2がテスコガビーのライダーなのか』
『今更アイネスフウジンの強さに納得したわ』
『本人の努力の結果だぞ』
『ガビ姐さん、フー姉ちゃんが凱旋門賞獲った日のウマッター、ビールグビグビで芝』
『お体に障りますよ……いやマジで……』
『ガビーはん……持病の痛風が……!』
『なお、翌日』
『あっ(察し)』
「秒で話題が逸れんねんな。今に始まった話とちゃうけど」
「思うのだがこれを舵取りするのが私たちの仕事では?」
「はーホンマ、
「話を戻すぞ。両者ともにしばらく日本国内のGⅠ勝利に恵まれていないが、重賞自体は獲得している」
「国内に限定すればダイタクヘリオスは3月の高松宮記念、アイネスフウジンに至っては去年のダービーやもんな」
『アイネスフウジンが弱いってことじゃなくてそれだけ群雄割拠してるということなんよな』
『凱旋門賞ウマ娘を差し切ったウマ娘が国内にふたりもいるらしい』
『なお、片方は直後に屈腱炎で長期療養、片方は直後に脚の限界で引退』
『哀しいなぁ……』
『いついなくなるかわからんから推しは推せるときに推せが鉄則なんだわ』
『ファンレターとか迷わず出せよ。電子メールより手間がかかる分、手間をかける程に推してるってことは伝わるから履歴書手書きよりよっぽど意味があるぞ。ソースは現役時代のうち』
『ファンレター貰ったウマ娘ネキ勝鞍教えて』
『天馬賞と帯広記念』
『ばんえいの民でござったか……』
『BG*3Ⅰ2勝ウマ娘もよう見とる』
『普通にめちゃくちゃ名ウマ娘で芝』
『っょぃ……かてなぃ……』
「まぁでもダイタクヘリオスはともかくアイネスフウジンは凱旋門賞勝っとるしそこは疑わんでええやろ」
「あと気になるのはやはりバンブーメモリーか。ここ最近はやはり勝ちに恵まれていないが、貫禄の2番人気だ」
「ってとこでゲート入り完了やね」
『ぱーぱーぱー↓ぱー』
『ぱーぱーぱー↓ぱー』
『ぱーぱーぱー↓ぱー』
『ぱーぱーぱー↓ぱー』
『ぱーぱーぱー↓ぱー』
「コメ欄もよう鳴いとる」
「スタートはアイネスフウジンのほうが早かったが、ダイタクヘリオスが急加速してハナを取りに行ったな。アイネスフウジンは気性で逃げをやっているわけではないからハナを譲ったようだ」
「またこれぶっ壊れハイペースになるんちゃうか」
『【悲報】ダイタクヘリオス終了』
『爆逃げだああああああああああああ』
『ダイタクヘリオスが爆逃げで逃げ切ったとこ見たことないんだが』
『最初期にツインターボが保たないと思われてたのはダイタクヘリオスにも一因がある』
『疾風迅雷やね』
「アイネスフウジンもよくついていっているな」
「ハナを取るわけでもなく後ろから追走。流石に身内にツインターボがおるだけあるわ」
「スピードではダイタクヘリオスに軍配が挙がるが、アイネスフウジンの武器はスタミナ面だからな。だが、それでも少しずつ差が開いているな」
「まぁ坂で縮まるやろ」
『縮んだ』
『やっぱアイネス坂強いな』
『パワーが違うわ』
『スカウトしたいところだな』
『BGⅠ2勝ネキステイ』
『凱旋門賞ウマ娘をばんえいに連れて行かないでお願い』
『でもムキムキなフー姉ちゃんはちょっと見てみたいかも』
『ばんえいとサラは種が違うんよ……』
『でもまだヘリオスがリードしてるな』
「んん……いや、ダイタクヘリオスはわざと緩めたな」
「ほ? あれか? 坂で失速と見せかけて脚溜めるやつ」
「恐らくはそうだろう。スタミナは恐らく最後まで保つが……他になにか隠し持ってるような気もする」
『オグリの勘は当たるからな』
『直感派がちゃんと勉強してるからマジで怖い』
『にしてもマジにっこにこだよなヘリオス』
『ヘリオスガチ陽キャだから陰キャオタクには眩しすぎる』
『でもヘリオスは陰キャ相手にもめちゃくちゃいい娘だぞ』
『距離は近いしノリも軽いけど相手の気持ちちゃんと考えてるってわかる』
『俺あのゲラ聞いてると釣られる』
『こっちが吃っててもニコニコしながら待ってくれるからな。ただ「なに言ってんのかわからんくて芝!」って笑われたけど』
『それは芝』
『お前が言うな定期』
『パリピ語マジわからん』
『言うてネットスラングから輸入してるの結構多いからわかるときはわかるぞ。芝とか定期とか』
「アイネスフウジンが仕掛けたで。いつもの逆落としやな」
「スピードで敵わなくとも、下り坂のこのタイミングなら一時的に限界を超えたスピードが出せる。そして、最終直線に入ってしまえばアイネスフウジンは"
『フー姉ちゃんのゾーンってなんだっけ』
『領域非公式wikiによると、最終直線で前か後ろの1バ身以内にウマ娘がいると乱気流の領域、それとは別にもうひとつ凱旋門賞初出の領域がある』
『ヘリオス抜かされたけどこれヘリオス詰みか』
『ヘリオスのが速くても領域使えば逃げ切れるだろうしな』
『ん?』
『え』
『おい……なんでヘリオスが前にいる……』
『い、今起こったことをありのまま話すぜ……アイネスフウジンがダイタクヘリオスを抜いて最終直線に入ったと思ったらダイタクヘリオスが先に最終直線に入ってた!』
『出た! ヘリオスの何故かあんまり話題にならない4角ワープだ!』
『4角ワープ期待してずっとヘリオス見てたけどマジでワープかと思うくらいの急加速で外側からぶち抜いた』
「なぁオグリ、この加速はあれやんな」
「十中八九"
『マジかよ……』
『ヘリオスそこまで考えてないと思うよ』
『考えてようがいまいが結果的にこうだろ』
『オグリが賢く見える』
『この番組見てるとオグリの知らない面が見れるな』
『アイネスも加速した』
『いけ! 追いつけ!』
『ヘリオスのほうが速い』
『いや、意地で詰めた』
『ゾーン来た!?』
『フー姉ちゃんもゾーン!』
『ないよぉ! もう距離ないよぉ!』
『差した!』
『抜いた!』
『アイネスだ』
『!?』
『は?』
『え』
『?』
『なに』
『おい』
『????????』
『トンダアアアアアアアアアア』
「え、なにしとん」
「跳んだな」
「いやいやいやいやなにしとん!? え、ぶっ倒れとるやん!!?」
「一応無事なようだが……着順は写真判定が入ったようだな」
『もうなんか言葉が出ねえよ』
『本人もぽかーんとしてんの芝』
『※良い子は真似しないでください』
『できないんだよなぁ……』
『普通本能的にやらんわあんなん』
『アイネスフウジンもぽかんとしとるやん』
『ショタトレ普通にヘリオスしばいてて芝』
『あれ見て体罰って言うやつがひとりもいないのホント笑う』
『ショタトレ、一応そこそこの名門トレーナーやろ』
『完全に親戚のねーちゃんに振り回される厨房』
『ヘリオス1着確定!』
『黒い人が言ってた意味がようやくわかった。強いわこれ』
『ショタトレそこ代われ』
『おねショタはいいぞ……』
『実際ヘリオスが全部意図してやってたなら食わせ者過ぎる』
『何があれって「意図してやってた」って言っても誰も信じないだろうことがあれ』
「1着がダイタクヘリオス、ハナ差の2着がアイネスフウジン、3着に4バ身差でプリンスシンだ」
「アイネスフウジンも惜しかったんやけどなぁ」
「ダイタクヘリオスが一枚上手だったということだな。今年は本当に大番狂わせが多いな」
『フー姉ちゃんもニコニコでええやん』
『あそこの空気めっちゃ美味そう』
『黒い人もわろてる』
『してやられたって雰囲気やな。黒い人としてもヘリオスはわざとやったって認識なんか』
『言うて今のフー姉ちゃんの適正距離はミドルってこの前言うとったし……(震え声)』
『ダイタクヘリオスは凱旋門賞ウマ娘に勝ったマイラーの称号を手に入れた!』
「えー、このあとインタビューなんやけど……何言うとるんかわからんから各自で確認してな」
『芝』
『それは芝』
『解説放棄で芝』
『こっちだってわかんねえよ!!』
『ショタトレ首絞まって気絶してるから本格的にヘリオスしかインタビューできないゾ』
『もうだめだぁ……おしまいだぁ……』
「ってなわけでしめるで!」
「それではまた来週」
「「ほなな〜」」
『ほなな〜』
『ほなな〜』
『ほななー』
『ほなな〜』
『ほななー!』
『オグリのほななたすかる』
☆★☆
「ぴえん」
中央トレセン学園の片隅にある巨大な切り株の前にダイタクヘリオスは立っていた。
この切り株は中央トレセン学園の名物であり、簡単に言ってしまえば王様の耳はカバの耳というやつである。
悔しかったことや抑えきれない思いの丈をこの切り株に空いた巨大な
ダイタクヘリオスはぴえんだった。マイルチャンピオンシップで見事な走りを見せたダイタクヘリオスによってダイイチルビーは元の高飛車な調子を取り戻すことができた。
ダイタクヘリオス的にはそれで、バイブスぶち上がったお嬢様がダイタクヘリオスを見直し「ヘリオスとルビーはズッ友だょ……!」となる予定だったのだが、すげなく玉砕したのであった。
「お嬢様がつれないんだよー!!」
「あ、あの……」
「んぁ?」
そんな風に心に湧いた無情を叫んでいると、そんなダイタクヘリオスに声がかかった。振り向いたダイタクヘリオスの目線の先にいたのは、どちらかと言うとダイイチルビー側の世界の住人であった。
制服に着崩しはなく、物腰も柔らかそう。長く伸びた鹿毛はしかし整えられていて、前髪に細い流星がある。
ダイタクヘリオスはクラスメイトである彼女のことを知っていた。
「えっと……メジロパーマーだよね? ウチに用事?」
メジロ家の令嬢と繋がりがあるわけもなく、今まで話したこともない相手……いや、ダイタクヘリオスから一方的に声をかけたことはあるのかもしれないが、それをいちいち覚えているわけでもない。
そんなメジロパーマーの、しかし真剣そうな表情にダイタクヘリオスもやや気圧される。そして、メジロパーマーはダイタクヘリオスに向かって深々と頭を下げた。
「うぇっ……?」
「私に爆逃げを教えてください!」
それはもう綺麗なお辞儀である。流石はお嬢様だなどとダイタクヘリオスは一瞬現実逃避しかけ、慌ててメジロパーマーをなだめすかして頭を上げさせる。
さてどうしようかと考えて、ダイタクヘリオスはメジロ家がどのような家柄であったかを思い出した。それは、ダイタクヘリオスの目的にちょうどいい。
「うし、わかった! おけまる! 教えたげるぜお嬢様!」
「あ、ありがとうございます!」
「ウチ色に染め上げてやるからなぁ〜……そんでさ、ウチからも頼みがあるんだけど」
ダイタクヘリオスの言葉に首を傾げるメジロパーマーに、ダイタクヘリオスは難しいことじゃないと前置きをしてから言った。
「ウチにさ、長い距離走るコツ、教えてよ」