対魔忍ユキカゼ2 〜疾風異譚〜   作:茶玄

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第1章 流離編
第1話 勇猛決路


(勇気と覚悟。ありふれた言葉だが……その実、両方を併せ持つ者の何と少ないことか)

 

 達郎はいつぞやの紫先生の言葉を思い返す。

 

 持てる力の全てを駆使し疾走する達郎。その眼に映るは、窮地の二人と魔人が一人。

 

 達郎の視界の左側に見えるはゆきかぜだ。度重なる戦闘に精根尽き果てたか、その呼吸は荒く、地べたに両膝をついている。

 

 その傍に寄り添うは同級生の“□□□“。己が身を挺して守ろうと、ゆきかぜの正面に回り膝をつき、その身体を強く抱きしめている格好だ。

 

 そして…右側からその二人に特攻を目論むは淫魔の王、黒井竜司。ゆきかぜと凜子の苛烈な攻撃を受け、人間の姿に戻ったその身体には、木遁の幹により無数の時限式のC4爆弾が絡みついている。

 

 そのC4爆弾は、この大広間に至る途中で各所に設置していた物だった。今は部屋の外で治療を受けている静流が、木遁で掻き集め黒井への攻撃に利用したのだ。

 

 黒井は死に際の悪足掻きか、二人を爆発の道連れにするつもりのようだ。

 

 ゆきかぜ達の脇奥には、凜子がゆきかぜ達のために用意した空間跳躍の 泡沫(ゲート)が浮かぶ。

 

(今の二人に 泡沫(ゲート)に逃げ込む余裕はない……)

 

 達郎は瞬時に判断を下し、後方にいるであろう凜子に指示を飛ばす。

 

「凜子姉《姉さん》、出口側の 泡沫(ゲート)を消してくれっ!!」

 

  泡沫(ゲート)の出口のみを消し去る。その意味するところは即ち……入口に足を踏み入れたら最後、永遠に次元の狭間を彷徨(さまよ)うことに他ならない。

 

「なっ!?それは駄目だ、往くな達郎!!」

 

 達郎の意図に気付いた凜子が必死に静止を促すも、達郎の脚は止まらない。

 

(流石、凜子姉《姉さん》。察しが良くて助かる…)

 

 ゆきかぜの下へ急ぐ達郎には、凜子が指示に従ってくれたかどうかは分からない。今はただ…凜子を信じるしかなかった。

 

 黒井が妄執の一撃をゆきかぜに叩きつけるべく、その右腕を振り下ろさんとしたその瞬間ーー

 

ドガッ!!

 

 達郎は黒井の間合いに一気に詰め寄ると、走る勢いに任せて左横っ腹目掛け体当たりを仕掛けた。

 

「……っう!貴様、何をっ!?」

 

 視覚外からの横やりに驚きの声を上げる黒井。刹那、黒井の腹にしがみついた達郎とゆきかぜの視線が交錯する。

 

(ぇ……達郎?)

 

 二人の間をスローモーションのように刻が流れる。突如現れた達郎に目を見開くゆきかぜ。達郎はゆきかぜを安心させるように優しく微笑むと、声にならない言葉を口にした。

 

『大丈夫、ゆきかぜ……俺に任せて』

 

(そんな…分かんないよ。何言ってんのよ、達郎……)

 

 ゆきかぜの困惑を他所に、達郎は渾身の力を以て黒井の身体を圧し込んでいく。

 

「うぉおおおお!!」

 

 如何に黒井が暴れ逃れようとしても…達郎は離れない。シャボン玉の如く七色に輝く空間跳躍の泡沫(ゲート)へと徐々に前進し…己を(かえり)みず黒井もろとも入口に飛び込んだのだった。

 

「…ぅあ、達郎が……あぁ、嫌ぁあああああ!!」

 

 遠く(かす)かに聞こえる悲嘆の声は凜子か、それともゆきかぜか。次元の狭間に落ちゆく達郎には、もはや判別することすら敵わなかった。

 




 いかに二次創作とはいえ、遊んだことのないゲームの主人公の名前を出すのは、流石に失礼かなと思いまして……今回は伏せ字にさせていただきました (_ _)

 また、過去の稚作では淫魔側に(くみ)していた静流さんが、今作では対魔忍側に加勢していますが、これはその…法外な金額でエージェント契約を結んだということで、ご理解いただければと思います。
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