「須川ー!」
「あれ、島田さん?」
教室に入る直前、島田さんが後ろから走ってきて声をかけてきた。おそらく補給するためにクラスに戻ってきたんだろう。
「さっきの美春の件は、巻き込んで悪かったわね。助かったわ!」
「悪いと思うなら次は巻き込まないでほしいかな」
「そこはそうでもないとか謙遜するとこでしょーが! まぁ、次回は………………気をつけるわ」
あ、こりゃまた現場で会ったら巻き込まれるなと確信した瞬間だった。
と、そんなグダグダずっと喋ってるわけにもいかなく、教室の引き戸を開けて島田さんと一緒に中に入る。
と、入った瞬間目の前に視界に入れるのも憚れる存在が仁王立ちで待ってい「まて、俺は邪神的ななにかか!?」いあ!いあ!くとぅr「やめろ!」しょうがない。
「雄二」
「色々言いたいんだが、置いておいてやる。よくやってくれた。これなら作戦は大丈夫そうだ」
「よく言う。別に遊撃隊がなくても問題なかっただろうに」
「ふん、それでも絶対じゃないんだ。なら成功の確立を上げるのは当然のことだろう?」
それもそうだな。念には念を入れて間違いはない。
さて、雄二の作戦ではこれから放課後まで時間を稼いで、下校中の生徒に混じって襲撃だったかな?
いや、原作ではその前に一つイベントがあったはずだ。そう、俺、『須川亮』に関係あるなにかが―――
「あ、そういえば坂本」
「ん? 島田か。どうした?」
と、そこで補給テストの準備を始めようとしてた島田さんが雄二に声をかけてきた。
「吉井から伝言よ。『今の状況で更に先生を呼ばれ戦線拡大したら前線が保たない。偽情報を流すなりして先生の注意を引いてほしい』だって」
「なに? できれば戻ってきた時真っ先に言ってほしい―――いや、そんなこと言ってる場合じゃないな。今さっき数学の木内がDクラスに呼び出されたと聞いた。てことは一気にケリをつけようとするはず……」
雄二が少し考えるように上を向き、結論が出たのかこっちを向く。
「採点の早い木内教論ってことは一気に畳み掛ける気か。だとすると採点に一人、すぐに戦闘できるように+戦線拡大のために前線に一人同じ科目の教師を呼ぶはず。だったら今の時間空いている数学の教師は船越女史のはず。だとすると確かに生徒を誘導するより教師を引っ掛けたほうが楽だな」
雄二がいいことを思いついたとでも言うようにニヤリと笑う。あー、なんてーか明久自分の首絞めた?
数学の船越先生......確か、45歳(♀)独身で、婚期を逃がしたから生徒に単位を盾に迫り始めた残念な先生だったかな。
ふむ、船越先生に偽情報……あー、思い出した。このイベントは―――
「……須川、本当はしたくない禁じ手なんだが明久からの頼みとあっちゃしょうがない。ちょい放送室に行って―――」
心底楽しいとでも言うようなニヤケ顏をしながら俺に指示を出す雄二。
はぁ、明久は大丈夫かな? まぁ、いっか。
__________
タッタッタッタ……
雄二に指示されたとおり放送室で偽情報を流すため小走りで放送室に向かっていた―――
って書くと道中になにかありそうだが、なにもなく放送室に着き手早く放送機材の準備をする。当然だけどあらかじめ職員室に行き言葉でだけだが許可はもらった。
「さて、あのまま流すかなー。いやでもそれじゃつまらないかなー。……んー、内容を雄二にしたら後が怖いな。やっぱ明久には犠牲になってもらうか」
―――ピンポンパンポーン ―――
《連絡致します》
《船越先生、船越先生》
《吉井明久君が校舎裏で待っています》
《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》
「……。さて、明久。君に幸あれ」
胸の前で十字を切った後、放送室を出てFクラスに向かって歩きだした。
明久は無事に(主に貞操が)帰ってこれるだろうかと心配しつつも手早く簡単に片付けを済ませ教室に走って帰って行った。
__________
「お、帰ってきたのじゃ」
「ああ、秀吉。戦場は今どんな感じだ?」
Fクラスに入ると教室を出ようとしていた秀吉とちょうど鉢合わせした。これから出るってことは点数の補充が終わったのかな?
「今から明久たちの援護に行くのじゃぞい。須川も来るかの?」
「そうだな。ついていこう」
点数補充が終わった秀吉の部隊に合流する。まぁ、俺はこのあとしばらく待機って雄二が言ってたけど、所詮雄二の言うことだし勝手に行動しても別に大丈夫だろう。
「あ、お前ら!」
「む、どうしたのじゃ代表? 焦ってるようじゃが」
「前線を監視してたやつから連絡がきた。明久たち中堅部隊が壊滅しそうなほどピンチらしい」
「なぬ。それは急がないといけないの」
「ああ、明久にはまだ戦死してもらっては困る。急ぐぞ!」
「そうじゃの。者ども、出るぞい!」
『『『『『おおーーーー!』』』』』
気合十分、明久のいるであろう場所に向かう。
にしても、報告してたようなやつは教室の中に入った時みかけなかった気がするんだが。
「雄二、監視部隊からの連絡ってどうやってるんだ?」
「無料トークアプリだ。ようするにL◯NE」
「……試召戦争中に携帯とか使っていいのか?」
「バレなきゃ違反にならねえんだよ」
少し不安になったが、俺は考えるのをやめた。
__________
「明久!」
「あ、来てくれたんだね雄二たち!」
戦場の近くについた。明久たちの部隊は報告通り壊滅しそうで、明久含め残り5人といったところだ。すぐに援護しなければならないが、明久のいる場所まではまだ時間がかかる。
「くっ、明久! まだもっていろ!」
「ええ!? くそっ、なら―――ああっ! 霧島さんと根元さんがイチャイチャしてるっ!」
『『『『『なにぃ!?』』』』』
「はぁ?」
あまりのピンチ的状況に頭がおかしくなったのか明久が意味のわからないことを言う。なにを言ってるやら―――
『…………ねえ、恭子』
『なんです? 翔子さん』
『…………またいっしょに《仲良い夫婦のなり方 死ぬまで一緒にいて》について議論したい』
『ええ、いいですよ。あと《㊙︎元気になる薬の作り方 〜上級者編〜》もいっしょにしてしまいましょう』
―――いた。しかも危ない話ししている。
その後も色々と『睡眠薬の作り方』やら『無意識に言葉を誘導する方法』やら危ない単語が飛び交っていたが、俺には理解できなかった。ていうかしたくなかった。
『…………なんか視線を感じる』
『いえ、この首筋ビビってくる感じの気持ちイイ視線は、須川君の熱視線が私に―――』
会話が詳しく聞き取れなかったが、なぜか悪寒がしたので咄嗟に目を逸らす。するとなぜか残念そうな顔をした恭子がこっちをじっと見つめてきた気がしたが、無視をした。
さて、切り替えていこう。まずは明久の救出だ。あ、そいやまだ秀吉やら雄二やらが壁になって明久側から俺は見えてないはずだけど、会った瞬間襲いかかってくるとかないよな? あの放送の内容を俺の考えとか勘違いして。
「よし、最後にこれをぶち当ててスプリンクラー作動させて、切り抜けたああああ!」
ブンッ! ガシャン! シャアアアァァァ……
どうやら俺が二人の会話に気をとられている間にDクラスの包囲網を抜け出しこっちに向かって走ってきていた。明久の通ったであろう道には割れた窓に、廊下全体に消化器をぶちまけたような白い粉がもくもくと立ち込め、さらには床を転がっている消化器に半分壊れたように作動しているスプリンクラー。これ、本気で退学とかになるよな普通?
「よし、明久がものすごく大変なことをしている気がするが今は気にするな! 援護部隊、行け!」
『『『おう!』』』
雄二の指示に従いまだ少し煙っている上にスプリンクラーが作動してる中に突っ込む援護部隊。びしょ濡れになるのによく躊躇わず突っ込めるなと思―――いや待てよ、あいつらのことだしDクラスの女子生徒が水で制服が透けて見えないかなとでも考えて突っ込んだりとか……めっちゃありそうだな。
『くっ、ここは退くぞ! 全員遅れるな!』
「深追いはするな! 生き残りを回収できたら俺たちも一旦退避するぞ!」
おそらく追って行って本体との正面衝突をするのを避けるためからの撤退命令だろう。みんな大人しく従い明久と戦場の真ん中に取り残されていた数人を回収しFクラスに戻る。
さてこれからどうなるか。今は雄二のほうを見て俺に気づかない明久がどう反応するか、少し楽しみな俺だった。
__________
「明久、今回ばかりはお疲れだったな」
「お疲れ様なのじゃ」
「ありがと。雄二、秀吉」
Fクラスについたらまず雄二と秀吉が明久を褒めていた。前線を維持できたのは明久のおかげだからな。
よし、点数の減った者は補充テストに行ったか。俺は……まだ、だな。もっと後に本気の点数補充をしよう。
「それより、放送聞いた?」
「聞いたが、それがどうした?」
白々しくも雄二は『俺はなにも知らない』とでも言うように首を傾げていた。指示したのはお前だろうに。
「そう。雄二、須川君は今どこにいるの?」
「ああ、今お前の後ろで笑いを堪えてるぞ」
「須ううぅぅぅ川くうぅぅぅぅん!!」
「おっと」
明久がいつ俺に気づくかなーと背後に立っていたら雄二に場所をバラされてしまった。てか笑い堪えてないし。明久が包丁を俺の横っ腹あたりを狙い、腕を軽く後ろに引いた状態から真っ直ぐ一直線に鋭く突き出してくる。
が、後ろ手に隠すように明久が包丁を持っていたことに気づいてた俺はほとんど予想通りだったので一歩下がり刺突を避けることに成功する。すると軽くバックステップした後、明久は包丁逆手に持ち替え姿勢を低くしてなんかの格ゲーで見たような構えをする。
「極刑に処す―――」
「あ、船越先生」
「―――前に退避いいいぃぃぃぃ!」
明久が低い姿勢のまま飛び出そうとしたところ、雄二が船越先生の名前を出したことによりロッカーにものすごい勢いで走って入っていった。
やだ……かっこ悪い。
「危なかったな須川」
「いやお前のせいだろ」
「いんやぁ? 俺は須川の場所を聞かれたから素直に答えただけだよぉ?」
ものすごくイラつく喋り方でニヤニヤしながら返してくる雄二。
と、俺たちがそんな馬鹿なことをしている間に補充が終わったのかFクラスの生徒がぞろぞろと立ち上がり俺たちのとこに集まってきた。
「よし、いいか皆!これからDクラス首級の首を獲りに行く! 明久という尊い犠牲もあったこの戦争、絶対勝つぞ!」
『『『『『おおーーーー!』』』』』
雄二が自分で生贄に捧げたことは言わずにそれをネタに全員の士気を上げる。上手いがああなりたくはないものだ。
さて、出陣。
ある程度の人数の準備が済み、一塊となり走っていく。俺と雄二も出発しようとしたところ、雄二が明久のいるロッカーに話しかけた。
「ああ、そうだ明久―――須川が放送する内容を指示したのは俺だし、船越先生がきたっていうのは嘘だ」
言い終わると同時に全速力で走り出す。その顔はとても清々しかった。
一拍遅れた後、明久の叫び声がこだましたのは言うまでもない。
__________
「下校しているやつらにうまく溶け込むんだ! 取り囲んで多対一の状況で作れ!」
『よし! じゃあお前はそっちから回り込め! 俺は後ろに下がって敵に備えよう!』
『わかった! ならお前はその後ろにいる敵の大群に突っ込んでくれ! 相手が残り少ないこの場は俺に任せろ!』
『てめっ! 楽なほう取りやがったなあああ!』
なんとも頭の痛くなる会話が戦場から聞こえてくる。
これで大丈夫だろうか……
『Dクラス塚本、打ち取ったりぃぃぃ!』
やけにハイテンションな声があがる。おお、塚本君を打ち取ったか。
塚本君はDクラス前線の隊長で、なかなか手を焼かされた人物である。
「よし、これなら―――」
『貴様らああぁぁ! 気張れぇ! このままではDクラスの精鋭としての名が泣くぞおおおぉぉぉ!』
どうやらDクラス代表の平賀さんが出張ってきたようだ。芯の通った大きな声が戦場全体に響き渡る。予想より少し早い……か。でもまぁある程度予想できてたしまだ誤差の範囲だ。
まだもうちょっと人数を削っておきたかったとこだが、しょうがない。
「雄二、どうする?」
「当然、今のうちに畳み掛けるっ」
雄二の指示を聞き、いつでも動けるように雄二から離れ人に紛れ込む。
さて、早くやらないと平賀さんの指示は伝達が早いのに―――
『本隊半分はFクラス代表を打ち取りに行けぇ! 他の隊員は取り囲まれてるやつを救出するんだ! とっとと動けぇえええ!』
『『『おおー!』』』
っ!!
平賀さんの号令のもと、Dクラスが動き始める。バラバラに襲っていたFクラスはあっという間に取り囲まれ、このままでは負けも時間の問題だろう。これは早くしないとまずいか。
『見つけた!』
『こいつがFクラス代表だ! 取り囲め!』
雄二が見つかったか。まぁ、まだFクラス本隊が周りにいる。まだ時間が持つだろう。
だが、早く決めないとヤバイことに―――
『ふっ、残念だったねFクラスの君―――』
『いや、作戦は成功―――』
かすかに聞こえてきたその声。どうやら大丈夫、かな。
俺は体を脱力させて、戦後対談について考える。よし、これでいいか。
『…………。見事な作戦だ。ここは戦場、卑怯とは言わない。賞賛しよう』
『Dクラス代表、平賀さん。打ち取ったのですっ!』
戦場に響き渡る姫路ちゃんの声。さて、後は戦後対談か。
俺は膝から崩れ落ちているDクラスの生徒を尻目に平賀さんのもとへ歩き出す。さて、ややこしいことにならなければいいなー。
遅れてほんまさーっせんっした! 葬炎です。
平賀さんの台詞を考え、TSしたがゆえに変わる内容をどうするか考えていたら時間かかってしまいました。結果原作の流れに戻って平賀さんの出番もそんなにないっていう、どうしようもないね(白目)。
さて、次の戦後対談もどうするか、平賀さんがどう対応するか、それとこれからどう絡ませるか考えるのでまた間が長くなるかもしれません。まぁ気長に待っていただけると嬉しいです。
感想・批判・意見なんかをいつでも待ってます。葬炎でした。