トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第14話

「ライデンアキラか……良い名だな、シンボリルドルフだ」

「シンボリルドルフ……凄いカッコいい名前ですね!!」

「フフフッ有難う」

「輝、ウマ娘界の皇帝様にその反応はないでしょ」

「えっ皇帝、エンペラー……ああっ!!?」

 

あの皇帝!?シンボリルドルフ!?と漸く気付いたのかオーバーリアクション気味にひえええっ!!と声を上げて驚く少女にルドルフは思わず笑みを作った、何とも新鮮な反応だからだ。自惚れではなく、自分の名前はそこまでに有名だからである。それなのに指摘されるまで気付かなかったというのは中々に嬉しい気がした。

 

「すいませんすいませんっ私、そういうのに全然興味なくて……!!偶にテレビに映ってるのを見た事がある程度で……!!」

「気にしていないから顔を上げてくれ」

「ううっ……何か恥ずかしい……」

 

輝自身、ヒビキに会えるという事でかなり舞い上がっていたのもあったが彼女自身が有名なウマ娘に興味などが引かれないタイプだったのもあったらしい。そう言うタイプにはルドルフ自身も覚えがあるので余り不快には感じていないので気にしていない。

 

「ライデンアキラちゃんっと呼んだ方がいいかな」

「輝で結構ですよ、皆にそう呼ばれてますので」

「そうか。ではそのように……アキラはヒビキさんに何を届けに来たのだ?」

「フフンッとってもいい物です!!」

 

胸を張ってそう断言する輝、兎も角それを降ろす為にも用務員室へと案内する事にした。初めて来るトレセンに興味津々と言わんばかりに瞳を輝かせている輝にルドルフは先輩として声をかける。

 

「中央は興味深いか、アキラは何処から来たんだ?」

「奈良県から来ました。そこで普通の中学に通ってます」

「何っ奈良のトレセンには通っていないのか?」

「ええ、学費もバ鹿になりませんから」

 

それを聞いて納得した、ウマ娘として活躍する為の養成学校であるトレセンは良くも悪くも学費としてかなりのお金が掛かってしまう。それを考慮して支援制度もかなり充実しているがそれでも家庭の事情で通う事が難しいウマ娘も少なくない。なので高等部からトレセンに入るっというのもよくある話でアキラもその類だろうと納得する。

 

「良し此処に置いて」

「は~い、よっこらセパレート」

「おやっさんの口調移ってるよ」

 

ギャグめいた言い回しに思わずルドルフは口元を抑えて込み上げる笑いを抑えた、このようなギャグもあるのかと思いつつも参考にさせて貰おうと内心で思っていた。そして後日、生徒会室で似たような事を言って副会長のやる気が下がった。降ろされた荷物の包みなどが剥がされていき中身が露わになった、そこにあったのは―――太鼓であった。

 

「これは和太鼓……か」

「そっ俺の趣味って言うのは太鼓なんだよ」

 

運ばれてきた太鼓は二つ、3尺サイズ*1でもう一つは1尺と3寸*2と言った所だろう。小さなものでも一般的に想像される太鼓のサイズだが、3尺の物はそれ以上の存在感を放っている。1尺の方は何処か初々しいというか酷く新しいという印象を受ける。

 

「ありっこの太鼓は?こっちのは俺のだけど……」

「そっちは私が作った太鼓なんです、記念すべき第一号!!」

「えっマジで?凄いなばっちゃんが認めたんだ」

「大まけだって言われちゃいましたけどね」

 

てへっと言いながら舌を出す輝、ルドルフはそれに驚いた。素人目には見事な太鼓にしか見えないこれを作ったのがこの少女だというのだから、それをヒビキは優しく触りながら感触を確かめている。その瞳は酷く真剣で見た事がないような物だった、そして太鼓の面を摩ると……輝の頭を優しく撫でた。

 

「うんっ上出来上出来。輝ならもっと凄くなるさ」

「えへへ~おじ様ならそう言ってくれると思いました、なのでこれは私からのプレゼントです!!ぜひ使ってください」

「いいのかい輝、自分の合格一発目を」

「一発目だからおじさまに使って欲しいんですよ、私の目標である響鬼さんに」

 

何処か真剣な瞳を向ける輝、目標という言葉にもルドルフは興味を惹かれた。常に敬意を払っているのかそれは呼び方にも表れている、唯のおじと姪という関係ではないように思えるがプライベートに関わる事だと思ったので追及はしなかった。

 

「アキラ、折角来たのだから此処で走っていかないか?先程の走りは見事だった、是非君の全力を見たいのだが……」

「アハハッそうしたいのは山々なんですけど……奈良から此処まで走ってきたのでもうくたくたなんです」

「―――何っ!?」

「あ~……やっぱりか」

 

呆れたような声を上げるヒビキ、如何やら自分の予想通りだったのか……と溜息混じりに強く輝の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわす。余りに強い力に輝は悲鳴を上げる。

 

「うみゃあああああ!!?」

「このおバ鹿」

「やめてくださいおじ様ぁぁぁっ!!?背がっ背が縮むぅぅぅぅぅ!!!!」

「三日も駆けて此処までくるおバ鹿なんて縮んでしまえい!!」

「ぃぃぃぃやぁぁぁあああああ私はナイスバディになりたいんだぁぁぁぁ!!!!」

 

目の前で行われる寸劇には意識が行かず先程の言葉の意味にルドルフは驚いた、考えがあっているのであればアキラは奈良県から此処まで和太鼓を背負って走ってきた事になる。奈良から此処、東京の府中にあるトレセン中央校は直線距離で結んでも300キロ以上はある筈。普通ならばそんな事をしようなんて考えもしない、加えてこんな大荷物を背負ってである……そこから考えると彼女のポテンシャルはとんでもない事になる。

 

「良くもそんな無茶を……」

 

呆れるヒビキとは対照的に素直に感嘆してしまうルドルフに輝は頭を押さえながらも尊敬するおじの真似をした。

 

「私も結構鍛えてますからっしゅっ」

「だからってそういう事は二度としない事、約束しろ。それで今日はこの後どうするの」

「分かってますって……ホテルで一泊してから新幹線で帰るつもりです、というかこの後すぐにホテルを取って寝ます」

「ならば良し。会いに来てくれたのは嬉しいけど今度は普通に会いに来なさい」

「は~い……」

 

輝は若干落ち込んでいるようにも見えた、此処まで文字通り自分の力だけでやって来たのだからそれだけ自分の身体は鍛え込まれている。それを褒めてくれることを期待したのかもしれない。がっヒビキは肩を竦めながら今度は優しく頭を撫でる。

 

「でも凄いぞ、流石は俺の姪っ子だ。今度来た時は一緒に太鼓の合わせをやろうな」

「うんっよろしくお願いします響鬼おじ様!!」

 

完全に心が通じ合っているやりとりをルドルフは少し羨ましそうに見つめていた。自分もあんな風に撫でられたい……と思う中、輝を正門まで送っていき、そこで輝はタクシーを拾ってそのままホテルへと向かって行ったのであった。

 

「何ともパワフルな姪が居たんだなヒビキさん」

「よく一緒に鍛えてたからね、ここんところ帰れてないから見てあげれてないけど、あの様子だと俺のメモとか使ってずっと鍛え続けてたな。だからと言っても此処まで走って来るとか完全にバ鹿の所業だけど」

「ハハハッ……しかし素晴らしい逸材だな……」

 

と何処か瞳を輝かせているルドルフ、何を考えているのか敢えて言及はしないでおく。

 

「それでヒビキさん、あの太鼓は何に使うんだ。趣味の他にウマ娘の鍛錬にも使えると理事長に言っていたらしいが」

「ああ、ほらっスピカのダンス特訓の足しにでもなればいいと思ってさ。ウイニングライブでダンスが酷かったじゃない」

「ああ……あれは本当に酷かった。学園の恥だ」

 

ルドルフもそれには同意していた、スペだけに言えた事ではないがスズカ以外のスピカのウイニングライブはかなりひどい有様だった。故に彼女からもテイオーにダンスの特訓をスピカにするようにと指示を出しているらしい。

 

「少なくともリズム感覚とかは俺でもなんとかなると思うから」

「そうしてくれると助かります、因みにヒビキさんは踊れるんですか?」

「踊れるよ。何なら試すかいシンちゃん、Shall We Dance?」

「機会があれば是非お願いしよう」

*1
1尺は30.303㎝

*2
1寸は3.0303㎝




雷電 響鬼。

実家から来た姪っ子の行動に呆れている用務員のおじさん。姪っ子作の太鼓は中々の出来前で大切にしようと思っている。

後以外とダンスも出来る。
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