トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第15話

「さて今日もダンスの特訓をやるぞ、その後に走るがな」

「ってあのっテイオーさんいませんけど……」

 

チームスピカの部室、そこで本日の予定を聞かされるのだがそれを聞いたスペは思わず聞き直した。歌とダンスの先生として生徒会長であるシンボリルドルフから遣わされているテイオーの姿が見えないのである。昨日のカラオケのように姿が見えると思ったら全く見えないのである。

 

「まあいないっつったらおっちゃんもいねぇけどな」

「ヒビキさんはしょうがないと思いますけどね、そもそもが無理矢理トレーナーが巻き込んだもんだし」

「だよな~トレーナーは罰として俺達と同じメニューさせられるのは爆笑したけどな」

「うるせえ……さて、テイオーには勿論ダンスの先生として参加して貰うが……先に行ってるんだ、ホラッ行くぞ」

 

トレーナーに連れられて外へと出て歩いて行く、てっきりまたカラオケかと思ったが如何やら違うらしい。学園の外に向かうのではなく敷地内を歩いて行く、だがウマ娘達は歩いて行く内にその優れた聴力で何かを聞き取った。重低音が連続して響いている。

 

「何かしらこの音……」

「わかんね」

「でも良いなこれっこの重低音超カッコいいぜ!!」

 

バイク趣味があるウオッカはこの重低音が既にお気に召しているらしい、そして見えてきた先が漸く分かった。そこには用務員室であった、それを見てウマ娘達の耳がピクピクと動いて尻尾も嬉しそうに揺れ動いている。それを見て沖野はヒビキの慕われ度を改めて思い知るのであった、そして到着したそこでは―――増設されたガレージから出された大きな和太鼓を叩いているヒビキとそれに合わせて踊っているテイオーの姿があった。

 

「おおっおっちゃんがやってたのかこれ、アタシもやりてぇな!!」

 

とゴルシは別の方向でやる気を出してしまっているが、別に太鼓をやらせる為に連れて来たのではない。

 

「ハッ!!ハッハッハッ!!!」

 

時折入る勇ましい掛け声、それと共に唸る剛腕によって高速で振るわれるバチは凄まじい速度で太鼓を打ち鳴らしている。そして重低音に混ざるように入れられる歯切れのよいカッ!!という音、それを入れつつも鼓面を叩く。それに合わせて踊るテイオーもかなり凄い、太鼓の音のみだが曲として成立しているが太鼓のみで踊るのがかなり難しい筈―――だが確りと踊っている。加えてボーカルまでやっている。

 

「……フゥッ……おじさんこれ最高!!ねぇねぇねぇ僕のウイニングライブでもこれやってよ絶対に盛り上がるって!!」

「あのね、ウイニングライブは走り切ったウマ娘達が主役でお客さんもそれを見に来てるの、そこにおじさんが紛れ込む訳にはいかないでしょう。というかうまぴょい伝説って意外とむずいね……時折ミスったよ……んっ皆来たか」

「皆遅いよ~」

 

首掛けていたタオルで汗を拭きながらも此方を見たヒビキとテイオー。

 

「もしかして此処で特訓するんですか?」

「そう言う事だ、カラオケの割引券が毎回ある訳じゃないし時間の制限もあるからな。いやぁとっつぁんから提案されて助かったわ、俺の財布にも限界はあるからな」

「普段から金欠の癖に何言ってるんだか、そういう自覚あるならハナちゃんに集るのやめなさい。まあそういう事だから俺もダンスの特訓に協力する事になったから、流石にライブのあれはまずいからねぇ……」

 

ヒビキに言われて改めてそれを自覚する一同、まあ原因はダンスの練習を疎かにしたトレーナー側にもあるのだが……此処は追及しないでさっさと練習を行う事にしよう。

 

「それじゃあ僕がまずは手本を見せるからね、おじさんもう一回お願い~」

「せめてもう一回楽譜見せてくれないかな、まだ覚えきれてないんだけど」

「え~!?僕おじさんの太鼓で踊りたいのに……それじゃあ軽くみんなでやってみようか」

 

渋々だがラジカセの電源を入れて先日の復習と題して踊り出すテイオーに慌てて続くスペ達、それを見つめながらもヒビキはライブで使われる曲の楽譜へと目を通していく。そんなヒビキへと沖野は改めて感謝の言葉を送る。

 

「あんがとなとっつぁん、お陰でみんなのやる気も爆上がりだ」

「お礼を言うつもりがあるなら他のトレーナーさんに事情の説明しといてね、来てるんだから顔出してくれって奴」

「あ~……しなきゃダメ?」

「駄目に決まってんでしょ」

 

ヒビキにとって今の所一番の問題が他のトレーナーからの誘いなのである、時折上手く丸め込んで誘い込みを行おうとするトレーナーもいるので困っている。なのでそもそもの原因なのである沖野に文句を言えと言う風に最近は言うようにしている。

 

「もう面倒臭いからやっちまえよトレーナー」

「……」

「お、おいとっつぁんなんかすげぇ悪い顔してるぞ何考えてんだ!?おいちょっと待ってくれマジで何を考えてるのか教えてくれ!!」

 

流石の沖野もやばいっと思ったか大慌てになったが、その時にはもう遅い。

 

「お~い皆、沖君が皆の成長振りと頑張りに感動したからうまぴょい伝説やって見せてくれるってさ」

「はあああああぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

皆はマジで!?みたいな顔をしているが、普段からの行いが災いしたのか、それともヒビキと通じ合っているのか即座に悪い顔になっていく。

 

「マジかトレーナー!!よしっアタシカメラ回すぞ永久保存版だな!!」

「やめろゴルシィ!!ぜってぇやらねぇからな!?」

「逃がさないわよ」

「覚悟しろ、踊るまで帰さねぇからな」

「か、勘弁してくれよ!!?おっおいだったらとっつぁんも踊れよ!!」

「あっ俺は太鼓やるから、安心していいよ全力で魂込めるから」

「そういう事じゃねぇえええええええ!!!」

「後真面目にやらないと何度でもやらせるから」

「ぎゃああああああああ!!!」

 

「えっえっと……スズカさん如何しましょう……?」

「う~ん……でもちょっと見てみたいかも」

「僕も~!!」

 

この後、やけくそ気味に沖野トレーナーはうまぴょい伝説をやる事になった。やっている最中、ウマ娘達は爆笑していたり必死にそれを抑えていたりと様々だった。

 

「なんて羞恥プレイだ……」

「あっゴルちゃん、映像こっちにも回してね」

「フフフッおっちゃんも悪よのぉ~」

「いえいえゴルちゃん様こそ~」

「好い加減にしろやそこ二人ぃ!!!」




雷電 響鬼。

スピカのダンス特訓の為にライブで使われる曲の楽譜を練習中のおじさん。そして普段の仕返しとして沖野にうまぴょい伝説をやらせる事に成功して大爆笑、そしてゴルシに録画したデータを回して貰ったので、いざという事はこれをトレセン中にバラまくつもりでいる。

本人的にはやって欲しいと言われたらうまぴょい伝説を歌って踊ってもいいと思っている。というか普通に好きな曲らしい。
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