トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第17話

「えっとっこんな感じ、かなぁ……?」

「そうそう上手上手。やっぱりこういうのは女の子の手を借りるのが一番かな」

「そ、そんなに褒めないでよぉ……」

 

普段通りに仕事をしているヒビキ、要望のあった花壇の仕上げである花を植える作業を行っていたのだがそんな彼を手伝う一つの影があった。男としてもかなりの大柄であるヒビキの隣にいるとその小柄な体が余計に際立っている。少々影があるが、精一杯に笑顔を浮かべようと努力している姿が見えている。臆病で弱気だがとても優しい心を持つなウマ娘、ライスシャワー。

 

「にしても悪いねライちゃん、手伝って貰っちゃって」

「いっいいのライスがしたくてしてる事だから……邪魔じゃなかったらっもっとお手伝いしたい……」

「有難い位だよ、如何してもこういう花を植えるセンスは女の子の方がいいからね」

 

パンジーを植えながらもライスの頬は少しだけ赤く染まっていた。素直に自分の事を褒めてくれていたり、話しかけてくれたりしているヒビキに彼女も懐いていた。特に朝食などは姿を見れば隣に座って食事を取ろうと誘ってくれるほどに仲良しだとヒビキは思っている。

 

「よしっこんなもんか、ライちゃんはこの後どうする?」

「え、えっと……おじさまと一緒にご飯食べたいかな……?」

「ありゃもうお昼の時間随分オーバーしてるな……ごめんねライちゃん、長く付き合わせちゃって」

 

ライスシャワーはヒビキの事をおじさまと呼ぶ。ヒビキ自身はおじさんで良いというのだが、曰く彼女自身が好きな本の中に出てきて主人公を支える素敵なおじさまにヒビキは似ているらしい。正直輝が呼ぶおじさまとはまた意味合いが変わってくるし気分も悪くないので好きなように呼ばせている。なので自分は素敵な用務員のヒビキおじさまっという事らしい。

 

「んじゃ俺がご飯作ってあげるよ、丁度ハンバーグのタネを作ってあるからニンジンハンバーグなんて如何だい?」

「うんっライス大好き……!!」

「あとニンジンポタージュがまだ残ってたはず……後はニンジンサラダも作ろうかな。ハンバーグにはチーズと目玉焼きも付けるかい?」

「美味しそう……!!」

 

キラキラと目を輝かせるライス、彼女は見た目は中学生のように見えるがかなりの健啖家。その身体の何処に入っていくんだという量を平気で食べる、以前も一緒にラーメン屋に行った時はウマ娘用のサイズでの特盛でトッピング全乗せを普通に頼んで平らげていた。

 

「んじゃ行こうかお姫様」

「ふぇっ!?ラ、ライスはお姫様なんかじゃないよ?」

「女の子は皆お姫様になる権利があるんだよ、このおじさまにお姫様を守る騎士をさせて貰えないかな?」

「え、えとえと……それじゃあ……私を連れて行ってね騎士おじ様」

「畏まりましたライス姫」

 

そんな寸劇を咄嗟にするのだが、お互いに耐えられなくなったのか思わず吹き出してしまって一緒に笑いながら用務員室へと向けて歩き出した。ライスは早く行こっ♪と手を引っ張る姿は本当に可愛らしかったとヒビキは語る。こんな笑顔を作れるんだから不幸なんて起こる訳がないよっと内心で彼女に向けた言葉を放つ。

 

「さて出来たぞ~お腹も膨れて足が速くなるご飯だよ~」

「おっ美味しそう……!!」

 

思わず生唾を飲み込みながらテーブルの上に広げられたニンジンハンバーグにサラダ、ポタージュ、野菜スティックと見事にニンジン尽くし。特大のハンバーグには目玉焼きが二つが乗っかっており、傍にはチーズの入った容器がスタンバイされている。

 

「ごめんねサイズ大きくしちゃったから時間掛かちった」

「ううんっ大丈夫だよおじさま」

「その代わりご飯も含めてお代わりも焼ける間に準備したからたんとお食べ」

「うっうん!!」

「それじゃあ手を合わせて―――」

『いただきます!』

 

礼儀正しく挨拶をしてから食事に手を付ける、ヒビキも量こそ違うがライスと同じメニュー。但しハンバーグに刺さっているニンジンは箸でも割れる程に柔らかくなるように丹念に調理をこなった物。その影響か甘さがかなり凄い事になっているが、デミグラスソースとの相性は最高でパクパク行ける。

 

「おじさまおいひぃよ~……!!」

「ハハッそりゃ良かった」

 

破顔しながらも溢れ出る幸せが分かる程に耳と尻尾が揺れ動く、どの料理も美味しい為に次はどれを食べようかと迷う程。折角なので卵の黄身を破って中身をソースへと融合させる。それを絡めたハンバーグの上にニンジンを乗せながらそこへ更にチーズを掛ける。出来る限り最高の組み合わせに思わず喉を鳴らしながらライスはそれを口へと運ぶ。

 

「おいひぃ~!!」

「ハハハッそんな風に笑われるとこっちが嬉しくなっちゃうな」

 

如何やら渾身の出来だったらしい、彼女の顔を見れば一目瞭然。矢張りウマ娘は笑顔でなければいけない、ライスは周りで起きる不幸は全て自分のせいと思い込んでいる。実際は間が悪いだけなのだが起き過ぎてジンクスのようになってしまい、彼女は常に暗い。だがこれを見るがいい、こんないい笑顔を浮かべるライスが不幸を呼ぶわけがない。

 

「おじさまっお代わり貰ってもいい……かな?」

「おういいよいいよ、どんどん食べな。ライちゃんてばちょっと線が細すぎるからね、食べて英気を養って運動すればもっともっと綺麗な人になれるよ」

「ほっ本当?おじさまが言うんだからそうなのかな……じゃっじゃあいっぱい食べるね」

「食べなさい食べなさい」

 

うんっ♪笑顔を浮かべたまま自分でお代わりを取りに行くライスは酷く愛らしい。小さい頃の輝を思い出す、ヒビキはリモコンでTVを付ける。するとそこにあったのは―――スペが今日出ているレースが映っていたがそれはもう終わった場面だった。遅かったと思うが―――そこにあったのは1着でゴールしたセイウンスカイが客席へと向けて手を振っている姿。そして……3着でゴールし疲れからか動けなくなっているスペシャルウィークが映った。

 

「……そうか」

「如何したのおじさま?」

「うんっ?いやなんでもないよ、やっぱりライちゃんは笑顔が似合う子って思ってさ。そのままいつもニコニコしたら幸せいっぱい来るよ、笑う門には福来るってね」

 

そうかな……?と戸惑っているライスを見ながらTVを消した。

 

「……似てたな、あいつに」

「ふぇ?」




雷電 響鬼。

花壇の花植えをライスシャワーに手伝って貰った用務員のおじさん。ライスは不幸どころか幸運を運んでくると思っている。

そして、スペシャルウィークを誰かと重ねていた。
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