「おはようたづなさ~ん!!」
「おはよう御座います」
トレセン学園の朝はたづなとの挨拶で始まるといっても過言ではない、理事長秘書である彼女は朝校門に立ちやってくる生徒たちを笑顔で出迎える。それがウマ娘たちにとって最初の元気の源になるのである。
「おはようたづなさんってあれっヒビキさん!?」
「おっはっ」
「今日はヒビキ兄さんも一緒なんだ珍しい~」
「偶にはね~あとおじさんでいいぞ~」
そんな校門には今日はヒビキの姿もあった。今日は何時も以上に早起きして何時もの時間までに仕事を行い、その後に自分の朝練に付き合うスピカの面々に付き合った後に朝食を流し込んでその後に仕事をこなってここにきている。中々に身体に来る物があった、だがこれはこれで鍛錬になると思う辺り自分も結構あれなタイプの人間だったのかと思えてきて来た……。
「それにしてもヒビキさんとご一緒するなんて思いませんでした」
「調子狂うかい」
「いいえ、ちょっと嬉しいかもしれません。私がお声掛けするときはお仕事なさっているときが多いですからですかね」
「たづなちゃんと一緒なのってご飯食べに行く時が多いもんね」
ヒビキとたづなは基本的に仲がよい。同僚というだけではなくたづな自身理事長の行動に振り回されたりする事もある為のそのフォローに付き合ったり、独断で購入してしまったウマ娘のトレーニング機材の管理などなど……それらの一部をヒビキが代わった事もあったりした関係もあるからか関係はかなり良好。
「それで今日は、ああそうでしたね」
「そういう事。あとは夕方ちょろっと仕事する程度になるようにめちゃくちゃ早起きして頑張りました」
「でもヒビキさんって基本4時起きですよね、それで普段の朝練が5時頃から……そうなると何時起きだったんですか?」
「3時に起きるつもりだったけど2時半に目覚めてた、因みに夜は10時に寝た」
「それって4時間位になるんじゃ……」
本当にそれで身体を休める事が出来ているのか甚だ疑問だが、逆に鍛えまくっているが故にスタミナも尋常じゃないのでそのあたりも大丈夫ということなのだろう。そんな話をしているとこちらへ迫ってくる小さな人影が見えてきた、たづなはタマモクロスかなっと思ったのだが違った。見えてきたのは―――
「おじ様~お待ったせしました~!!!」
「あの方が」
「ええ、うちの姪っ子です」
参上した輝、タマモクロスのようなかなり小柄な体には不相応なほどに大きな登山用バックを背負いながら登場した。が、輝は自分を迎えに来てくれたおじの隣にきれいな人がいることに声をあげながらアニメのようなポーズをとりながら驚愕した。
「どひゃああああああっおじ様の隣にすんごい美人なお姉さんがいるぅぅっ!?まさかおじ様の職場にこれほどまでにお美しい方がいるなんてェ!?」
「まあお上手ですね」
「しかも微笑み方も凄いですっ嫌味とかも全然感じないほどに清楚で僅かな妖艶さを感じさせる大人の色気……これです、これが輝が目指すべきパーフェクトナイスバディなお姉さんの理想形……!!」
勝手に何やらテンションMAXになっている姪、ヒビキは本当にタマモクロスに会わせてみても良いかもと思い始めた。絶対にこの二人の組み合わせはドンパチどんな感じで賑やかで楽しい事になるだろう。
「お姉さんっどうかおじ様をよろしくお願いいたします、お姉さんならおじさまもきっと幸せになれると思います!!」
「大丈夫ですよ、もうヒビキさんとは仲良し宜しくやってますので」
「にゃんですとぉ!!?おじさまと仲良しよろしくやっておりますとなぁ!?まさか、そうかそうだったのかこれが伝説に聞いたあのうまぴょ―――」
「輝いい加減にしなさい」
いい加減に暴走する姪っ子を止める為に以前もやったように力を込めて頭を撫でまわすという身長縮ませの刑に処す。
「うみゃああああああおじ様お止めくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!」
「突然来るって言っておいて次はこれかなバカ姪っ子、一体おじさんにどれだけ迷惑をかけるつもりなのかなぁ?ねぇあ・き・ら・ちゃん?」
「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃっ!!これ以上はおやめください、私のナイスバディへの夢がぁぁぁぁぁ!!!私の身長がぁぁぁぁ身長そのものがぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「ヒビキさんそのあたりにしてあげたらどうですか、私は気にしてませんので」
たづなの言葉も輝への制裁はこの辺りにしてあげる事にした、手を離すと息を荒くしながらもへたれこんでしまった。
「た、助かった……唯でさえ背が小さいのにこれ以上小さくなったらたまったもんじゃないですからね……って誰がオチビですかァ!!!輝はオチビじゃなくてこれから成長期を迎えるんです!!」
「何も言ってないのに自分でボケとツッコミやってたら世話ないな」
「ハッつい大阪出身のお母ちゃんの血が……うずく実にうずくぞぉ……!!」
「たづなちゃん京都行きの新幹線って次何時だっけ」
「えっと確か15分後ですけど流石に難しいですね、1時間半後だと如何でしょう」
「すいません調子こきましたせめてお土産買ってから帰らせてくださいお願いします」
心の底から尊敬しているおじと憧れの具体例と言えるほどに完璧お姉さんに目の前で自分を奈良へと返す為のチケット獲得の為に携帯を取り出してマジで話し合っている姿に流石にやりすぎたと本気で反省する。
「全く……ゴメンねたづなちゃん、うちの姪っ子が失礼なことを」
「大丈夫ですよ、寧ろ嬉しい位です。憧れのお姉さんなんて言われて」
「気を悪くしてなくて良かったよ、全く漫画に影響されすぎ」
「だってカッコいいじゃないですか~!!輝だって漫画とかアニメとか特撮とかゲームの登場人物みたいに輝きを放てる人になるんです!!」
「色が混ざりすぎて見れたもんじゃない輝きになってるからな現状」
元気よく空に指を指しながらもノリノリでポーズを取る輝を呆れたような目で見つめるヒビキ。そんな様子に二人の信頼関係が見て取れる、心の底から信頼しあってる、それは家族だからどうこうという問題ではなく、ヒビキという個人と輝という個人がそれぞれ結びついて出来た絆があるとたづなは感じている。
「改めまして本日はトレセン学園中央校にようこそいらっしゃいました、私は理事長秘書をしております駿川 たづなと申します」
「理事長の秘書!?ひゃああああっ綺麗でナイスバディでお仕事も出来るとか完璧超人すぎるぅ!!流石は私が憧れと見込んだ人、ぜひ師匠と呼ばせてください!!」
「うふふっ考えておきますね、それまではたづなと呼んでくださいね」
「はいたづな師匠じゃなくてたづなさん!!」
「いや本当に騒がしくてごめんね……?」
確かに賑やかだと思うがノリが良いだけで本質的にはかなりいい子だということを見抜いている、この元気は確かにスカウトも注目するはずだ。そこに居るだけで空気を明るくしてモチベーションの向上につながる天性のムードメイカー、これで実力も確からしいので将来有望のスーパースター候補と言う所だろう。
「それじゃあ行きましょうか、本日は私もご案内する事になってますので」
「おじ様だけではなくて!?おおっこれはテンションMAXでイッテイイーヨ!!って事ですかい!!?」
「いい加減にしないともう一回やるよ」
「マジすんませんでしたおじ様」
雷電 響鬼。
実家の姪っ子が最初っからエンジン全開過ぎていきなり頭が痛くなってきた用務員のおじさん。たづなとはよく食事に行く関係。
駿川 たづな。
スカウト一推しの期待の新人の案内をヒビキと一緒にすることになった理事長秘書。輝からの言葉は素直に嬉しく思っているが、ヒビキも幸せになれると言われて一瞬結婚生活を思い浮かべてしまって恥ずかしくなった。
雷電 輝。
中央トレセンのスカウトを受けて見学に来たおじさんの姪っ子。直ぐに色んなゲーム、漫画、アニメ、特撮等々……好きな物に影響されたりして口調や台詞を取り入れてしまう悪癖がある。
ナイスバディになるという夢が、たづなのようなお姉さんになるという夢に変わった。尚、現実的には相当に厳しい目標。