トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第24話

輝へのスカウトがルドルフがその一端を担ってしまった事が判明した所で一先ずこれで見学は終了となった。折角なので参考にと輝はハナと沖野からどんなことを教えたりしているかを聞いたりしている。

 

「へぇ~……そうなんですね」

「嬢ちゃんはどんな風に鍛えてるんだ?うちでもとっつぁんの朝練に付き合う子が多いんだ」

「最近は特に増えたらしいじゃない、特にスピカのメンバーが参加してるって聞いたわ」

「ありゃダイエットの為だよ」

 

瞳を鋭くしながら沖野を睨みつける、此方はヒビキから拒絶され続けているのに其方は上手く丸め込んだ上でダイエットというなの体調管理メニューを任せているに等しい状況。全く以て腹立たしい限りである。それを聞きながらやっぱりおじは此処でも人気なんだなぁと思う。

 

「それで嬢ちゃんはどんな風に?」

「どっちを言えばいいんだろう……休日ですか、それとも平日?」

「じゃあ平日から」

「早朝は4時に起きてそこから10キロのランニング、近くの神社の石段ダッシュ30本と腹筋背筋腕立て腿上げを300回。それで学校終わって帰ってきたらまた10キロ走ってから同じ事します、その後は太鼓の練習ありますし」

 

シレっと語る輝のメニューに驚愕する二人、ウマ娘ではあるがまだ中学生のするようなメニューでは決してないからだ。しかも平日という言い方をしている事から毎日行っている事になる。

 

「マジかよ……」

「遊んだりしないの、友達と」

「ウマ娘なのにレースに興味の無い奴なんて異端児扱いで気持ち悪がられて相手にされませんよ、まあ多分先生もそれを察して見学行けって言ったんでしょうけど……」

 

彼女はもう気にしていないが、矢張り彼女は異端扱い。他にもウマ娘はいるがそれでもレースには一定の興味を示すしトレセンを目指したりなどなどをしたりする。だが輝はそれが一切ないので相手にされない、ウマ娘の同級生はいるが矢張り反りが合わず積極的には接しない。それでもレースの仮想敵としては誘われたりはする。なので基本的に孤独でいる。

 

「それで休日は山を駆け回ってますね、食事以外の時は基本的に鍛えまくってますね」

「おいおいおい、それじゃあ身体が休まらねぇだろう。ちょっと身体っていうか筋肉触らせてくれないか、消耗度具合とか見たい」

「貴方ねっ一言言えばいいって訳じゃ―――「いいですよ~」いいの!?」

「モチのロンです!!寧ろ、鍛え抜かれた身体を御披露しましょう!!」

 

そう言いながら上着の肩口を掴むとそのまま一気に引き剥がすかのように脱ぎ捨てた。

 

「フフンッ遂に成功した、これぞ極道だけが極められるという極脱ぎ……!!」

「もう何を目指してんだよお前」

 

と呆れたヒビキの言葉とアハハッ……と乾いた笑いを浮かべるたづなの声が木霊する中で輝の身体が露わになった。身長こそ酷く低いがそこにあったのは極めて堅牢に築け上げられた肉の要塞。無駄な脂肪など一切無くガッチリと鍛え込まれている、沖野が一言断ってから足に触れるが、その硬さに驚く。

 

「おいおい何だこれ、筋肉を触ってる感じしねぇぞこれ……」

「伊達に5歳の時から鍛えてませんから!!」

「しかしこれは凄いな……」

 

そこにあるのは完璧なアスリートとしての肉体、いやそれすら超えていると言ってもいいかもしれない強靭にして柔軟な肉。そして驚くべきなのは消耗が一切見られない所だった。

 

「サンキュな、いや凄い回復力だな……そんな時からやってたから回復力が増強されたのかもな」

「エッヘン!!」

「ああでも、もしかして成長する分がそっちいったかもな。小さい頃から鍛えると背が伸びないって聞いた事あるし」

「―――えっ……」

 

沖野の何気ない言葉が輝の心を粉々に砕いてしまった。先程までの力強さが消え失せて膝をついてしまう。

 

「まさかっ私の今までの鍛錬が私の夢を阻んでいた……!?鍛錬をしなければ今頃ったづなさんのようなナイスバディは夢ではなかった……!?ウゾダドンドコドーン!!!」

 

手をついて顔を真っ青にしながらも震えたまま、慟哭の叫びをあげてしまう輝。低身長に悩まされ続けて来た輝にとってナイスバディになるというのはそれ程までに大切な夢だった。だが、その原因が自らの原因だった。という事に信じたくない叫びが感情となって爆発した。

 

「沖野君訂正しなさい!!今すぐにッ!!!」

「いやだってこういう事はちゃんと言わないとダメじゃねぇかっておハナさん首っ締まってる締まってるぅ!!?」

 

同じ女性として分かるからか、それとも将来有望なウマ娘の姿に見ていられなくなったのか沖野に迫りながら訂正しろと叫ぶ。

 

「お、おいおっちゃんなんか言ってやれよ。すげぇ叫んでるぞ」

「身長を望む気持ち……分かるわね」

「ああ、デカい方がカッコいいもんな」

「ヒビキさん、あの何かフォローを」

「してあげてください」

 

スピカメンバーから色々せっつかれるヒビキ、隣のたづなをチラリと見てみるとたづなが耳元である事を囁いた。きっとこれなら元気になると、ヒビキもそれに賛成して聞き取りにくい言葉を連発している輝に声を掛ける。

 

「輝その辺りにしとけって、大丈夫だとその内大きくなるよ。ダスカちゃん見てみなよ、少し前までランドセル背負ってたんだよ?」

「ウェイ……ってあのツンデレヒロイン要素を全部混ぜ込んだような人ですか……?」

「いやなんだよそれ……」

 

視線の先ではえっアタシ?と困惑するダイワスカーレットがいる。実際彼女は中等部で少し前まではランドセルを背負う立場にあったのである。それがウマ娘の成長期の凄まじさを物語っている。

 

「まあ兎に角、ウマ娘の成長期がまだ来てないだけだろ。寧ろ来たらババンとたづなちゃんみたいになれるかもな」

 

チラリとたづなの方を見るとそこではニコやかに微笑みながら頷いている、それに元気づけられたのか、それともやっぱり自分が主張していた成長期がまだ来ていない説が有力化した事が嬉しくなったのか元通りになった。

 

「そう、ですよねっ!!私の鍛錬が私の夢を阻む事なんてありえない!!鍛錬とはっ自身の夢に向かう為の開拓の心を具現化させるための手段である!!敢えて言おう、私は鍛え続けると!!」

「ハァッ……本当にこの姪っ子は……」




雷電 響鬼。

姪っ子の事で不安を覚え続けている用務員のおじさん。姪っ子が何処に向かっているのか、何処に向かいたいのか本当に分からなくなってきている。


雷電 輝。

もう色んな要素に汚染されている姪っ子。が、異端児的な考えなどで学校でも孤立している。それ故か、サブカルチャーで寂しさを埋めているからかもしれない。それの影響で最近早脱ぎを習得した。背中に刺青はない。入れてみたい気持ちはある。

尚、鍛錬かナイスバディのどちらかを取れと言われたら、鍛錬を選ぶとの事。
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