輝が正式にライデンアキラとしてウマ娘としてトレセン学園へとやって来た、ヒビキの姪っ子が転入してきたというのは優れた話題性であった為にあっという間にトレセン学園中に広まっていった。初日は転入の手続きや寮へと入る為の作業で潰れてしまったので走れなかった、なので後日、アキラは見学時にお世話になった人達の前で再びウマ娘として脚を振るっていた。
「AAAALaLaLaLaLaie!!」
「またなんかに影響されてんなあれ……」
何処かで聞いた事があるような声を上げながらも爆走していくアキラに丁度仕事で通りがかったヒビキが呆れた声を出す、元気があるのは良い事だがもう少し抑えてくれたら自分としては嬉しいのだが……と言わざるを得ない。だが、その走りに注目する観客達。
「流石兄弟が見込んだ奴だ、良い走りしやがる」
「いや如何いうスタミナをしてるんだ……全くスピードが落ちてないぞ」
「矢張りと言うべきか走り方はかなり粗い……でもそこに安心してる自分がいるっていうのがかなり複雑だわ……」
初めてアキラの走りを目の当たりにしているトレーナーたちは驚いていた、何故ならば目の前で走っている少女は少し前まで一般校に通っていた中学生なのだから。それゆえの粗さはあるのだが、それ以外は一級品なのだから。
「おやっヒビキさんじゃないか、アキラの応援かな」
「違うよ、仕事だよ仕事。姪っ子贔屓する程暇じゃないんでね、今日も芝の修繕だよ」
「いつもありがとう、貴方のお陰で何時も気分良く走れている」
「そりゃどうも、んで今あいつは如何よ」
話を振って来たルドルフへと話を聞いてみる事にした、周りを見てみればチームリギルのメンバーだけではなくスピカ、当然黒沼の姿もあった。あわよくばスカウトしようというのだろう、実際アキラの走りは魅力的なのだ、育ててみたいという欲が掻き立てられる。
「今は芝2000mを走らせている所だ、以前マイルをあれだけ快走してくれたから中距離でも見たいと思ってね」
「まあ基本マイル行けるなら中も行けるからねぇ……それで感想は?」
「―――万馬奔騰、それに尽きるな」
今、最後のコーナーを過ぎる所だが以前のように内ラチをギリギリを一切スピードを落とすことなく突っ込んでいく異常な精神力。スタートから一切スピードを落としていないのにも拘らず、直線に入った途端に加速出来る程のスタミナと精神力。直線に入ってから数段階に分けての加速、最早どんな根性なのかと言いたくなる程のそれに皆が圧倒される。そしてゴールフラッグをヒシアマゾンが振り下ろすと急ブレーキをかけて停止する―――が、息が全く上がっていない。多少乱れていても直ぐに元に戻ってしまう。
「爆発は平均より少し上程度だが、スタミナと精神力が桁違いだ。加えて坂路では逆に速度が上がる、とんでもない存在だよ」
「ずっと山籠りしてたようなもんだからなぁあいつ」
文字通り山が遊び場であったアキラ、しかもそこは神社こそへと続く道以外は一切整備が成されていない自然の山。文字通り、大自然を相手に鍛錬をし続けていた彼女の肉体は驚く程に頑強で力強いのである。ヒビキはトレーナー陣へと声を掛ける。
「どうもっトレーナーの皆さま方、うちの姪っ子は如何ですかね」
「とっつぁんじゃねえか、いや中距離でもこれって改めてすげぇって思うぜ」
「正しく原石よ、あのスタミナと根性ならどんな戦法を取らせてもありだわ」
「鍛えがいがあるに尽きるな、擽られるな」
驚きと確信、そして高揚感が全員を包んでいると言っていいだろう。特筆すべきはスタミナと精神力とパワー、力強さに加えて根性によって加速していく走りを見せる。その力強い走りは山野によって鍛えられた故。悪路や坂路にはめっぽう強いのでダートだろうが適応出来る。
だが、その走り方はまだまだぎこちなく走り方が分かっていない様な印象を受ける。走り方、つまり脚質も彼女が自分に合っているかも理解せずに走っているだけなので指導次第で追い込みだろうが差しだろうが逃げにだって出来る。そして距離もそうかもしれない……トレーナー次第で如何様にも姿を変える事が出来るウマ娘、それが今のアキラ。故か三人の瞳は輝いていた。是非育ててみたい……そんな色をしている。
「参考までに、皆はどんな風に育てる?」
「そうだなぁ~……自然にやってる先行で様子を見つつ他のも勉強させるかな、あのスタミナだからステイヤーにもなれるだろうからそっち方面を目指させるのも良いなぁ……」
「あの度胸を活かすのもいいわね……逃げで進ませながらもあの内ラチ攻めを活かして後ろのウマ娘達のペースを乱す……それも面白いわ」
「速度を抑えての差し。あの速度を維持させられるなら、体力を保って最後に数段階のスパートを強化する、俺ならそうする」
元のアキラを活かしながら当人の考えを重視する沖野、クソ度胸のそれを活かして他のペースを崩す逃げを考えるハナ、スタミナの使い道を変える事でラストにスパートを仕掛けさせる考えの黒沼。見事なまでに別れた指導方針の違い。どれも違ってどれも面白そうと素直に思ってしまっていた。
「ヒビキ君だったらどうするのよ、参考までに聞いても良いかしら」
「そうだな……俺だったら―――追い込みかな」
ヒビキの選択は追い込みだった。言うなればゴールドシップのようなスタイルの走り方という事になる。
「ちょっとズルいかもしれないけど、俺はあいつとは付き合いも長い。あいつ負けん気が強いんだよ、俺の鍛錬にも体力が尽きてるのに根性だけで喰らいついてくるし。自分が負け続けるのを許せないタイプ、良くも悪くも精神が肉体に影響を与えるタイプだよあいつは」
アキラが鬼の称号を欲しているのは憧れだけではない、自分に勝ちたいから。自分に勝利するための最低条件、それが輝鬼になる事。そしてそれが最低限のライン、そこから自分を鍛えまくって自分に勝った響鬼に勝つと思っている憧れこそが最大のライバル、とでも言うべきだろう。そこまで言い切った時、不意に三人からの目が変わった。
「随分と良いご意見を言うねぇとっつぁん」
「野暮からも知れないけどヒビキ君、貴方良い目してたわよ」
「ああ。唯資格を取っただけ……って奴の目じゃなかったな」
「何年用務員やってると思ってるのさ、資格だけじゃない事にもなるよ」
第一線で活躍するウマ娘達と鍛錬したり、時たまアドバイスもしたりしてきたのだ。この位は当然だと毅然とした態度で返す、それに揺さぶる失敗かと肩を竦められる、この程度の揺さぶりなんて揺さぶりにも入らないと言われたような気がしたのだ。
「はぁいっヒビキ君、お元気♪」
「あらっマルちゃんじゃない、元気も元気よ」
背後から弾むような声と共に肩を叩いてきたのはある意味ヒビキと最も距離が近い言ってもいい存在のウマ娘だった。艶やかな長い髪を靡かせながらも柔らかな物腰と気品のある優しいお姉様ウマ娘、だがその走りからスーパーカーとも呼ばれる程の実力者のマルゼンスキーであった。
「あの子よね、噂のヒビキ君の姪っ子ちゃんって」
「ああそうだよ、如何だいマルちゃんから見たら」
「う~んそうね~……今のところ元気いっぱいなウマ娘ちゃん、としか言えないかしら。でもいい顔してるわね、走るのを楽しんでる」
まだまだ走り方はなっていない、だが走る事を楽しめている事は満点だった。自分のやっている事に楽しさを見出せるものは強い、楽しい物の為なら人は努力を容易く積み重ねていける。楽しめるというのは上達の最短コースでもある。
「フフッ何だかあの子と走りたくなっちゃったわ、良いかしらヒビキ君」
「アキラが良いって言えば良いと思うよ。寧ろ君のレースはあいつにとってチョベリグな筈だよ」
「まぁっお上手ね相変わらず♪それじゃあブイブイ言わせて来るわね~♪」
ウィンクと共に投げキッスをしてから走っていくマルゼンスキーへと手を振るヒビキ、そして何やらアキラの驚く声と共に早速併走が決定したらしい。
「とっつぁん、前から思ってんだが……なんでマルゼンスキーとあんなに仲良いんだ?」
「さあ?なんか落ち着くからだと思うよ」
「分からなくはないけど……良く平然と死語使えるわね」
「流石おやっさんだな、そういう所も尊敬するぜ俺は」
「何だろう、なんかバカにされてない俺」
「うひゃああああっ!!!こんなにゲキマブなチャンネー様が学園にいるとは……しかも先程のおじ様とのやり取り、トレンディな香りを感じます!」
「あら御上手ね、フフフッヒビキ君の事は好きよ私。でも何処までかは秘密よ、あんまり強く聞かないでね、まいっちんぐだから♪」
「グフッ……何だこのたづなさんとは別路線な大人の色気は……私は、どっちを目指せばいいんだ……何だこれは、如何すればいいのだ!?」
アキラは早速影響を受けた。
雷電 響鬼。
姪っ子が正式転入してきて、どうなるのか少し楽しみな用務員のおじさん。当人的にはアキラは追い込みの素質があると思っているとの事。
曰く、マルゼンスキーと一番仲が良いかもしれないとの事。一番馬が合うかららしい。
ライデンアキラ。
早速マルゼンスキーの影響を受けて死語が出るようになったおじさんの姪っ子。何処のチームに入るかなどは決めていないが、担任の錦山の紹介もあるので黒沼トレーナーが第一候補らしい。
自然と死語が出る事ってあるよね……というかマルゼンスキーを書くに当たって死語を調べましたが……やっこさんとかって死語だったの!?って凄いショックだったんですが……ハッスルとかも死語とか……何か、何をしゃべっていいのか分からなくなってきた。