トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第49話

「質問!!ヒビキトレーナー、この桐矢 京介が君の知り合いというのは事実だろうか!?」

「まあそうっすね。昔馴染みというか幼馴染です」

 

新年から数日経過したある時、ヒビキは理事長に呼ばれて理事長室へと訪れていた。其処で待っていたのは京介の資料とそれに関する質問などであった。

 

「この桐矢さんがこの中央でトレーナーの研修をなさるの事になったんです、それでお電話でお話を伺った際にヒビキさんのお名前が出ましたので」

「その確認って事ですか」

「肯定、しかしそれだけではなく幼馴染という事ならば君が案内をするのが相応しいのでは!!と思った次第」

「え~あいつの案内を俺がやるんですか、一応俺トレーナー復帰勢なのに」

 

やる事に対して不満はないが、自分が適任なのかと言われた微妙と思ったのが素直な所なのである。それだったらもっとトレーナーとして歴が長い先輩方の方が適任だろうとも思うのだが……。

 

「でもヒビキさんは数年間用務員を続けてますから案内という意味ではこれ以上の適任者はいないと思いますが……」

「それを言われたら痛いけど……あいつはトレーナーの研修で来る訳でしょ、それだったらトレーナーの先生役として相応しい奴が良いでしょ。ハナちゃんとか」

「ムムッ正論……選択、東条トレーナーにも話を通しておく、彼女の予定なども考慮するのでそれによって改めてお願いするかもしれないっという事でどうだろうか」

「まあそれで良いと思いますよ」

 

妥協案としてはそれなりのものだと思う、理事長の決定なら一般職員である自分が逆らうことに意味はないので黙って受け入れるだけ。まあ京介としては自分でも良いかもしれないが、トレーナーをやりに来ているのであれば確りとした実績がある先輩トレーナーを望むだろう。それはその時になってみるまで何とも言えないが……。

 

「まあその時が来たら引き受けますよ、仕事として」

「ウムッ宜しく頼むぞ!!あとまたニンジンケーキが食べたくなってきたのだが」

「もう理事長」

「分かりました、明日辺りに持ってきますよ。勿論たづなちゃんの分もね」

 

ウィンクしながら君の分もあるからねっと合図すると頬を僅かに赤らめながらも感謝するたづな。それらを受けながらも理事長室を出る。

 

「あいつが来るのか……なんかそこはかとなく、ちょっと嫌な予感がするのは何でだろうねぇ~……」

 

帰った時も言われたが、京介は自分がトレーナー職に復帰する事を望んでいなかった。自分はアスム専属のトレーナーだと、勝手に復帰するのは許さないと。だけどこのまま、何もしないままというのも自分は許せる気がしなかった。

 

「担当、か……」

 

窓から空を見つつ思わず、新年会で言われた事を思い出してしまう。今は復帰した事もあってサブトレーナー扱いとして仕事をしているが、それも何れ終わってトレーナーとして担当を持ったりチームを持つ事になるだろう。それはトレーナーとして当たり前の事、復帰すると決めた時にそれは分かっていたし受け入れるつもりでいたのだが……改めて担当を持つ事を考えると途端に頭が真っ白になってしまう。

 

自分にとっての担当というのはアスムでしかないのか、それとももう自分には担当を持つ資格などはないという事なのかは分からない。だがその先の思考をする事が上手く出来ない、本当に担当していいのかと迷っている自分が居る事だけは分かる。

 

「儘ならないなぁ……」

「おっ~見つけたぁぁ~!!!」

 

そんな事を想っていると誰かが此方へと走ってくる、トレセンの廊下は静かに走るならば走っても良いという事になっている。が、如何にも喧しく声を上げながら疾走してくるウマ娘がいた。其方を見てみると納得の顔がそこにあった。まるで捕食者のようにジャンプしてヒビキへと突撃をかますのだが―――肝心のヒビキはそれを上手く回転しながら受け止め、衝撃を殺しながら相手を着地させる。そして彼女は此方を元気に指差した。

 

「見つけたぞぉっヒビキのおっちゃん!!」

「誰かと思ったらツインちゃんじゃない、どったの」

 

やって来たのは青髪のツインテールとオッドアイが特徴的なウマ娘のツインターボ。元気いっぱいのウマ娘で自分に良く突撃をかましてくる子でもある、普通の人間なら吹き飛ぶがそこは鍛えているヒビキ。何の問題もない。

 

「フフンッ聞いたよそろそろ担当を取るってね!!」

「何、それも噂になってんの?」

「サブトレーナーの期間って早くても1年位で終わるって聞いてるからな、皆ヒビキのおっちゃんに照準を定めてるぞ!」

「喜んでいいのかなそれ」

 

ヒビキは極めて人気が高い。用務員時代から考えても人気だけでもワントップと言ってもいい状態だった、そこにトレーナー資格があるという話が加わり、今度は正式なトレーナーとして活動するので必然的に担当やチームを持つ事になるのでは!?という話に発展しているらしい。実際既にスペやスカーレットなどからなって欲しいという話を受けてしまっているので割かし洒落にならない。

 

「っという訳でヒビキのおっちゃん!!ターボのトレーナーになれ!!」

「お断りさせて頂きます」

「ウェェェェッ~何でぇぇぇ!?」

「だってまだサブトレーナーだから、担当決めるに早すぎる」

「ムムムッ時期総称って奴だな!!」

「時期尚早ね」

 

あれっ?と素直に首を傾げた、そんなツインターボにアキラのような可愛さを感じて思わず頭を撫でてやってしまう。

 

「ヒビキのおっちゃんが頭を撫でるとは、これはターボにメロメロという訳だな!?」

「愛玩動物的な意味ではそうかもね」

「そうかそうか!!ってあれ、それなんかターボバカにされてない!?」

「してないしてない」

 

素直に癒される感がする。それだけである。

 

「おっなんやヒビキのおっちゃん何やっとる」

「何だタマちゃんか。そっちこそどうしたのよ」

「これから昼って何で肩車してるん」

「フフン如何だぁ~これこそターボの究極系、ヒビキターボだぁ!!」

「……なんやおっちゃん、何時から子守りのバイト始めたん?」

「いや別にそういう訳じゃないんだけど……」

 

何時の間にか肩へと登ったターボ、普段味わえない巨人の感覚を味わいつつもこのまま走ったらターボ最強なのでは!?と究極系と言っている。ターボの基本戦術は何も考えずに最初からのアクセル全開でぶっ飛ばす大逃げ。圧勝する時は見事なまでに圧勝するが、負ける時には逆噴射とも言われる程に失速して、盛大に負ける。なのでヒビキの体力と身長が加わると考えると確かに究極というのも理解出来る。まあ結局夢物語だが。

 

「お昼なら俺が作ろうか、昨日漬け込んだ紅茶豚が良い具合なんだよね」

「ええなそれ!!」

「ターボも食べたい~!!」

「せやっオグリもええか、一緒に食べる約束してるだけど」

「いいよ」

「もう来てるぞタマ、早く行こう。お腹空いた」

「ってぇ何時の間に来たんや!?」




雷電 響鬼。

アスムの兄である京介がトレセンに来る事を聞いて、ちょっと複雑な気持ちになっているおじさん。何れ、担当を持つのでは!?という噂が広がっている事にげんなりしていたが、ターボの元気に救われて、少し回復した。
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