トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第5話

「鍛~えろ身体、腕をっ脚を。磨けよ自分、男前~」

「申告!!既に男前であると!!」

「おっ嬉しい事言ってくれますね理事長、この後ニンジンパウンドケーキでも如何ですかね」

「感謝!!」

 

ヒビキの鍛え癖、ほぼ毎日行っているトレーニングは基本的にウマ娘でないと実践出来ないほどに馬鹿げている。数十キロの重りを背負ったまま階段ダッシュやそのまま跳躍のみで石段を登っていくなどなど……常人では到底出来ない物ばかり、ヒビキ自身はウマ娘などではないし普通の人間。唯単純に昔から鍛え続けて着た結果らしいが……それだけでコースの整地用ローラーを転がすなんて事が出来るだろうか。しかも理事長を肩に担いだまま。

 

「謝罪、普段ならば専用重機を扱う所なのだが……故障してしまうとはなんという不覚っ!!」

「だから俺が緊急時用のこのローラーを引っ張ってる訳ですからね、まあ生徒に引かせる訳にはいきませんもんね~練習に影響出たら大変だし」

「同意、しかし済まないこのような事をさせてしまい……」

「いえいえいい鍛えになりますよ、何ならみんなが走る前にこれ引っ張っていいですかね?」

「驚愕、気に入ったのか!?」

「良い感じの重さですからね」

 

額に汗を流しながらもローラーを引っ張るヒビキ、コースの整地用のローラーの重さは相当な物なのに平然としながら転がしていく。肩に載っている理事長はそこまで重くないにしてもとんでもない光景に前準備に来たトレーナーは呆然とする。

 

「えっ何、あれ……」

「あんな馬鹿でっかいローラーを、引っ張ってる……!?」

「しかも理事長を乗せたまま、あんな平然としながら……!!?」

 

「何だ新人か、あの位で驚いてたらトレセンじゃやっていけないぜ」

「ああ。お前達も絶対にヒビキさんに頼る日が来る、今のうちに見ておけ」

「そうそう、ヒビキさんはウマ娘並の肉体を持っている用務員さんなんだから」

 

ヒビキのとんでもさ加減に驚愕する新人トレーナーという図は最早毎年の恒例行事、そしてそれを見て自分もあんな時があったなぁと懐かしむトレーナーがいるのも何時もの事。

 

「うえええ~!!?おじさん何やってるの!?」

「まあ何をやってるかって言われたら……ねぇ理事長」

「ウムッ!!一目瞭然!!」

 

コースへとやって来たテイオーが走っているヒビキと理事長の姿を見て声を上げた。ドヤ顔をしながら扇子を広げた理事長にテイオーは何故か頬を膨らませた。

 

「理事長ずるいよ~おじさんに肩車して貰うなんて~!!僕もして貰いたいよ~!!」

「あれそっちなの?アマちゃんは引っ張るのやらせてほしいって言われたんだけど」

「僕は肩車の方がいい~」

「了承!!ではトウカイテイオーと交代だな!!」

「あっ俺の了承は取らないのね、まあいいけどさ」

 

何だか良く分からない方向に話が進んできたが、理事長を降ろしながらもテイオーは自らの象徴的なステップを踏みながらも見事なジャンプをしながらもヒビキの肩の上に着地する。

 

「よしっおじさん出発進行~!!」

「よ~し行くぞぉ~」

 

と今度はテイオーを乗せたヒビキは先程よりも速度を上げてローラーを転がしていく。理事長の場合は体格と帽子の上の猫の事を考えてゆっくりめだったのだが、テイオーの場合は確りと身体が出来ているしレース経験もあるのでそこまで気にしなくても問題はない、寧ろ彼女が望んでいるのはこういうスリル的な物なのだろうと理解している。

 

「わっ~結構早~い!!背が高いって言うのもすご~い!!おじさんってどのぐらいあるだっけ?」

「195㎝だったかな」

「凄~いもう巨人だね!!」

 

そんな風にはしゃぐテイオーを乗せたままローラーを走らせ続けたヒビキ、30分もしたらコースの整地は完了して走れる状態へとなったのであった。

 

「はい~コース周回便響鬼号にご乗車ありがとうございました~」

「楽しかった~!!背が大きい景色って凄いね!!」

「楽しんでもらえたようで何より、ほれっ下りな」

「は~い」

 

存分に巨人気分を楽しんだテイオーはルンルン気分で響鬼号から下車すると改めてお礼を言ってからトレーニングへと入っていく。そんな姿を見送っていると理事長からドリンクが差し出される。

 

「称賛!!ヒビキ用務員、君は本当に素晴らしい。ウマ娘への対応も用務員としても!!」

「大袈裟だなぁ俺は俺が出来る事をやってるだけですよ」

 

そうは言うが年頃の娘を肩車して顔色一つ変えないのは尊敬の視線を向けるしかないだろう、ウマ娘達は基本的に見目麗しい。故にトレーナーを志望する者の中にはそう言った方面を期待する者がいない訳ではない、そんな人間にヒビキを見習って貰いたいというのが素直な思いである。

 

「確かに皆可愛い子だけどそう言った目じゃ見ませんよ、というか俺今年で32ですよ」

「否定!私の目から見てもヒビキ用務員はイケメンだしイケていると保証しよう!!」

「ハハハッ誉め言葉として受け取って置きますよ」

 

本人曰く、流石に10歳も年齢を下回るウマ娘達をそういう目で見る事は出来ないしこんなおじさんにそういう目で見られるのは嫌だろうからしないようにしているとの事。実際はヒビキは顔もいいし人気は高いので理事長的にはそっち方面に行っても可笑しくはないと思っている、まあ行って貰わない方が助かるのだが……。

 

「さてと理事長、ニンジンケーキでも食べます?」

「提案、たづなも共に食べるという事も出来るだろうか」

「勿論出来ますよ、んじゃ理事長室行きますか」

「ウムッ!!再度提案、私を乗せて貰う事は可能か?」

「気に入りましたか響鬼号」

「肯定!!」

 

後日、度々ヒビキに肩車される理事長が目撃されるようになった。




雷電 響鬼。

早朝のメニューに整地ローラー転がしが追加された。時々ヒシアマゾンと一緒に引っ張ったりしている。
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