トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第61話

「とっつぁん、合コンいかね」

「何よ急に。行くなら行くでまずはセクハラ癖を直すところからスタートだね」

「グフッ……」

 

唐突に合コンの誘いを掛けられるヒビキだが、それを一蹴しつつ逆にカウンターを仕掛けて沖野の胸を抉るのであった。

 

「いやよ、知り合いの付き合いで行く事になったんだけど欠員が出てよ。だれが代わりいないかって言われてさ」

「それ俺って訳かい、合コンなら若い子でしょ。南ちゃん辺り誘えばいいじゃない」

「用事あるってもう断られてんだよ」

「そりゃ残念、勿論俺も断るから」

「えっ~」

 

何処か未練がましく此方を見つめながら行こうと誘って来るのを受け流しておく。

 

「いいじゃねぇか、とっつぁんだって見た目は若いしイケメンだから人気になるぜ?」

「別に俺は人気になりたいなんて思った事無いし、女性陣がワイワイやりたいなら裏方に徹する方が好きなんだよね。という訳で行きたきゃ別の人とどうぞ~」

 

そう言いながらさっさと立ち去って行ってしまうヒビキを見送る事しか出来ずに思わず舌打ちと共に指を鳴らす。先日、理事長に呼び出された際に協力を求められたそれに沖野は積極的に協力するつもりでいる。元々自分がトレーナーにもっとも誘っていたのだから、自分が何とかしなければいけないというのもあったのかもしれない。

 

「つってもなぁ……如何すりゃいいんだよ……」

 

ウマ娘の指導以上に難しい案件だと言わざるを得ない。自分以外にもリギルの東条に黒沼、そして南坂も協力してくれる事になっているのだが……如何すれば良いのか今の所検討すらつかない、それなのに時間も余り残されていないのもあった。

 

「んで如何だった」

「梨の礫だ、やんわり否定されるついでにディスられたわ」

「だったら少しは直しなさい」

 

夜、行きつけのバーで酒を飲みながらも進捗状況などを報告しながらも作戦会議のような物をしている沖野、東条、黒沼。南坂には相談という名目でヒビキを飲みに連れ出して夜の鍛錬をさせないようにして貰っている。

 

「実際さ、とっつぁんの気持ちは俺も分からなくねぇと思うんだ。トレーナーとウマ娘がそういう関係になるってのはぶっちゃけ其処迄珍しくはないだろ」

「まあそうね、特に担当とマンツーマンの場合はそれが多いというのも聞くわ」

「年頃の娘相手だからな、そうなっても可笑しくはないからな」

 

実際、トレーナーの数が深刻というのもその辺りの事が問題だったりもするのである。ウマ娘達側からすれば3年という自分にとってかけがえのない時間の間の中で自分の為に力を尽くしてくれたトレーナーには並々ならぬ思いを抱く子は多い。そして競争心や闘争心が強いので、それらと結びついて他の子には渡さないという考えに及ぶものも多い。

 

「とっつぁんの場合は幼馴染な上にずっと一緒に頑張って来た訳だろ、それがさ……大怪我した上で……」

「辛かった、なんて言葉じゃ語り切れないわねきっと」

 

トレセン学園のそれとは比較にならない程に時間による積み重ね、絆がそこにあった筈。それが突然失われてしまったのだ、残された者が狂ってしまったとしても可笑しくはないとさえ思える。

 

「だからこそ……とっつぁんに新しい相手を宛がうとかムリゲーだろって思う」

「俺はずっとあいつと一緒にいる、か……おやっさんらしい言葉だ」

「女としては一度でいいから言って貰いたい言葉ね」

 

これ程までに思われ、思い合った関係であるヒビキとアスム。最高のトレーナーと最高のウマ娘の関係性の事を指す人一体の言葉に正しく相応しい。

 

「だが如何する、ハッキリ言って俺達がどうだこうだ言って聞き入れるとは思えん」

「そうよね……聞き入れるなら、桐矢君の話でどうにかなる筈」

「―――いっその事、強引にやらせてみるってのは如何だ」

 

強引という言葉に沖野と東条は黒沼の方を見る。強い酒をグイっと飲み干しながらもお代わりを注文しながら、その心中を語る。

 

「正直此処まで来ちまったらもう実力行使か強引な手しかない、だったらもういっその事―――しかないだろ」

「だけどどうやんだよ」

「幸いな事に、おやっさんはウマ娘の名家とも繋がりがある。メジロやシンボリ、ナリタやエアっていうデカい家にも顔が利く。そこらに協力を仰ぐのは如何だ」

 

かなり大体な発案だが、悪くはない案だと東条は思う。多少強引にも話を持って行かないと死者にしか目を向けない彼の認識を覆す事なんて到底無理だろう。

 

「だけど協力してくれんのかって事もあんだろ」

「大丈夫でしょ、少なくともヒビキ君はメジロ家の御当主様とはお茶するぐらいの仲よ」

「とっつぁんどんだけ」

 

以前聞いた話では、メジロライアンのトレーニングに付き合っていた流れでマックイーン、ドーベル、パーマー、アルダン、ブライトといったウマ娘達とも仲良くなっていく中で御礼としてメジロ家に招待された時に現当主と仲良くなったらしく、専属になる気はないかとも言われた事があるとか。今でも時折メジロ家には顔を出すらしい。

 

「俺からも桐生院に話を通しておく、あいつもあいつでおやっさんには世話になってるらしいからな」

「よし、何とかやってみっか……大変そうだけど」

「三冠ウマ娘を育てるより難しいわね」

「だな、まあこれも一つの経験で人助けって奴だ」

 

そんな事を言いながら最後にお代わりを皆で注文して乾杯するのであった。




雷電 響鬼。

沖野から合コンの誘いを良く受けるようになったおじさん。合コンは若い子がいくイメージがある為抵抗があるので断っている。

メジロ家ではライアンと一番仲が良く、よく一緒に筋トレをしている。
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