トレセン用務員のおっちゃん   作:魔女っ子アルト姫

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第67話

「とっつぁん最近なんか調子いいみたいだな」

「まあね~。年頃の娘さんを指導する立場が沈んでると教わる側にも伝染する恐れあるじゃん、だからちょっち元気出してんの」

「なんかちょいちょいマルゼンスキーの影響出てるよな」

「ちょっちね、ちょっち」

 

ヒビキのこれからについて色々と手助けをするつもりで連携を取っている沖野、最近は明るくなってきている様子を見て少しは影響が出てきたのかと思いたいところだが、京介曰く、外面を保つのが得意なので油断は出来ないとのこと。故にこれから如何するか、上手い事相手を見つけさせる作戦についてはこれからもちょくちょく婚活パーティに誘ったり合コンに誘うつもりではいる。まあ来てくれるかは謎だが。

 

「んでとっつぁんは今何やってんだよ」

「理事長からチーム結成の誘いを受けちゃってねぇ、結成はしなくていいから俺の目線で有望なウマ娘を纏めてくれとか言われちゃってねぇ……別に担当希望の子でもいいとは言われたけど」

「あ~あれか、俺も出された事あんな。まあ俺はそれ言われてから直ぐにスピカ立ち上げたけど」

 

これもトレーナーが少ない現状故の致し方ない処置ともいえる。新人ならともかく、担当経験があるトレーナーにはチームを作ってもらって一人でも多くのウマ娘を見てもらうように学園は計らいをしている。現状でも担当トレーナーはいない、が名義だけを借りてレースに出るウマ娘というのは多い。

 

名義貸しというのは担当トレーナーやチームには入れていないウマ娘にとっての最後の砦でしかない。出来ればそれをさせずに確りとしたトレーナーにトレーニングを受けてほしいというのが理事長であるやよいの願いなのである。流石にヒビキにこれを渡すのは気が引けていたらしいが……なので決まりだから渡しておくと前置きされた。

 

「んじゃとっつぁんもチーム持つのか?」

「まあ何時かそれもありかもねぇ……乗り気ではないけど、というか持つなってハナちゃんに言われた」

「そりゃまたなんで」

「リギルから脱退者出るかもって、一番人気がナリちゃんで二番人気はアマちゃん」

「あ~……なんか、分かるなそりゃ」

 

他にも名乗りを上げるとしたら色々と考えつく、というかスピカからだって着いて行きそうなメンバーは普通にいる。主にスぺとかが大本命だろう。

 

「んでとっつぁん一押しの奴とかいんのか」

「そうだねぇ~……色んな子が居るから一口には言えないかな」

「んじゃこういう奴を育ててみたいっつうのはねぇのか?天才型とかスピード型とかさ」

 

そう言われると何だろうか、過去のアスムの事を踏まえて何とも言えない。彼女は日常的に超長距離を走り続けてきた典型的なステイヤータイプ、その経験が応用できると考えれば体力型のステイヤー、それとも別の馬娘を育てるというのも気持ち的には悪くはないと思っている。

 

「……癖がある子がいいかな」

「癖ってどういう」

「直線勝負だとピカイチだけどコーナーが全然とか、その逆とか、スピードはあるけどスタミナが全然とか。そういう子を見たいかな、チームを持つなら」

「何つぅか、随分と変化球だな」

 

トレーナーとしては育てやすいウマ娘とか才能に溢れた逸材他にも精神性が優れていたりなどなどを望む筈だがヒビキのそれはどうにも同意しにくい物だった。トレセン一の曲者を預かっている身としてもなんとも言えない。

 

「癖っていうのはマイナスに考える人も多いけどさ、やっぱり生まれ持って才覚だと俺は思うんだよね。元々持ってるから本人的にもそれに従わせてあげると身体も精神も自然についていく、だからその癖を生かすようにしたいかな」

「癖、癖か……ある種、スズカの先頭への執着も似たようなものか」

「そうだね、スズちゃんの場合の癖は正しくそれだね。だから彼女の場合はその癖を尊重してあげたのほうがためになる」

 

癖は才覚、そういわれると納得する。癖を短所ではなく長所に変える、生涯のパートナーとして決めていたウマ娘が生粋のランナーだったからこそ言えるセリフかもしれない。兎に角走れればいい、故に走り続けていたアスムは尋常ではない体力に物を言わせて長距離ではラストの勝負所までは常に70~80%の力で走り続けていたらしい。

 

「それでよく持ったな……」

「レースで走る何年も何十キロも嬉々として走り続ける疾走狂だよ、そのぐらい楽勝だよ」

「おい、恋人にんな事言っていいのかよ」

「いいのいいの。事実だしあいつも自覚してたから、アタシってばランナーズハイ所じゃないですよね~って」

 

此処まで来ると本当にスズカに似ていたんだなと思わせる。スズカは中距離を短距離並みのスピードで走り続ける、アスムは長距離を中距離並みの速度で走り続けていく。一応先行ではあったらしいが、結果的に先行になっただけで本質的には脚質なんて存在しない。好きに走らせていただけというのが真実。

 

「チームか、ちょっと真剣に考えようかな。ハナちゃんには嫌な顔されそうだけど」

「俺だって嫌な顔するぞ、今スピカからスぺとかに抜けられたらまたメンバー探しに苦心する羽目に何だから」

「そこはトレーナーの才覚と性格の問題じゃん、取り合えず腿を触る癖をなくせば少しは来ると思うよ」

 

トレーナーとしての才覚は強い方なのだから、放任主義と悪癖さえ少し自重すれば何とかなるだろう。放任主義というのは相手を選ぶ主義、教わる側の主張が強かれば上手く噛み合うが、弱い場合はとことん噛み合わない。スピカのメンバーが少ないのはまさしくそれが原因なのだから。

 

「俺が今気になる子としたら……この辺りかな、仲いいし」

「ライスシャワーにハルウララ……確かに癖あるといえばあるか……ってベーオ、ウルフ?」

「ああ、最近見つけた有望株って奴。直線勝負なら負けなしだけどコーナー苦手な上に調子の上下が激しいタイプ、面白そうじゃない?」

「いや面白そうだけどよ……とっつぁんってあれか、ギャンブルで大穴かけるタイプ?」

「マジの賭け事はやったことないけど、基本大穴狙いかな」

「ある意味納得だわ」




雷電 響鬼。

チーム結成についての資料を貰い、前向きになっているのでチーム結成に向けて割かし真剣に考えていたりする。

最近発掘したベーオウルフというウマ娘は面白いなぁと思ったりしている。


秋川やよい

チームなどを持っていないトレーナーに配るチーム結成の関連の資料をヒビキにも出さなければいけないと思い、ひどく気まずく、出したくない……と苦悩していた理事長。尚、本人は前々期にしていない。
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