本の召喚士(僕のヒーローアカデミア×超多重クロスオーバー) 作:アママサ二次創作
「個性は、文字で表現した存在を召喚できる。遅れたのは裁判」
特に個性を隠すという事情もないので、顕は端的に個性と、入学が遅れた理由を説明した。
「両方すげえ気になるんだが」
「そう、ですわね。詳しくお聞きしてもいいですか?」
「ん」
尋ねる2人の目の前の食器はもうほぼ空っぽになっており、後は尋ねるだけの時間だ。一方の顕も、カツカレーのカツを最後に楽しむ分だけが残っていた。
「個性の文字で表現した存在というのは、具体的にはどんなものを召喚できるのですか?」
「何でも」
「制限などはありますの?」
「無い」
「どうやって個性を使うんだ? 文字ってことは本でも持ち運ぶのか?」
轟にそう尋ねられ、顕は個性いつでも使えるようにいつも携帯しているメモ帳をポケットから出して机の上に置く。そしてそこにボールペンで『ボールペン』と書き、個性を使用した。
「使うと文字が消える。時間は消えた文字の量とか」
書いたボールペンという字が浮き上がって出来たボールペン。ちゃんとオリジナル同様に字も書ける。ただ顕自身が集中しておらずまた単語だったために、30秒ほどでその存在を失って空気に溶けるように消えてしまった。
「存在、ということは、動物や人間はどうですの?」
「出せる。みんな友達」
「……凄いな。じゃあ強いやつ、とかで召喚も出来んのか?」
「それは無理」
「出来ないんですの?」
「俺がはっきりわかってないと駄目」
顕の個性で呼び出せる存在は、明確にイメージが出来ていなければ違うものが出現したり、そもそも出現しなかったりする。例えば今のボールペンも、書く段階で明確に持っているボールペンと同じ形状のものを想像した。だから召喚できた。
一方で強いやつ、とただ書いたとき、何をもって強いとするのか顕自身も想像出来ていない。だから、それを召喚することは出来ない。例えば小説の強力な能力を持つキャラクターであれば、それは強い理由、あるいは『どう強いか』が明確にイメージできる。だから顕はそれを召喚できる。
他方で。例えば人物を召喚するとき、その強さだけなく性格や立ち居振る舞いまでも想像する必要がある。そうでなければ、ただ能力を持っただけの操り人形のような存在になってしまう。だからこそ、顕が自分で作って使役している精霊は元のイメージが存在しないため、あえて単純な造形と『指示に従う』という単純な設定だけの存在なのだ。
「とても強力な個性ですわね」
「先に準備できれば」
「即応性はねえ、けど全部想定して先に使えそうなもん用意しとけばどんな場面でも対応できるのか。すげえな」
顕の個性の強みは、その多様性、強力さもそうだが消費するものの特殊性にある。通常個性を使用する場合何らかのエネルギーを使用する。それは体力であったり、自身の持っている熱エネルギーであったり糖分であったりと様々だ。そしてそうしたものを消費するので当然、使う際には限度が生じる。
だが顕においては、その限度の上限が無い。例えば八百万が個性を使えるのは、自分が溜め込んでいるカロリーの分だけだ。それには上限があるし、切れてしまえば補充しなければならない。
一方で顕の場合、平穏な時にひたすら書き溜めておいて有事の際にだけ使うようにすれば、何日もかけてストックした分を自由に使うことができるのである。
「あの、ところでもう一つ気になっているのですが」
「裁判?」
「はい、あの、どういうことかと気になりまして」
個性の話も一段落ついたところで八百万が切り出したのは、先程顕が述べた裁判という単語についてである。
「親が虐待とかしてて。家から追い出した。個性使ったから傷害で訴えられた」
「虐待、ですか?」
「大丈夫なのか?」
虐待、と。そう聞いてよりリアルにそれをイメージしたのは、自分も似たような目にあっていた轟のほうだろう。最も彼の方が行き過ぎた教育であったのにたいして、顕に向けられたものが明確な悪意であったことを考えると、同じものとして扱うのは躊躇われる。
「もう一緒にいない。裁判勝った。今は親戚の家に住んでる。弟と妹も、そこの双子」
「そうでしたのね……。すいません、何も考えずに」
「別に。友達いたから気にならなかった」
「友達、ってさっき言ってた字から出す動物とか人間とかか」
「そう。小説の主人公とか、悪役とか。みんな友達」
実際は顕に対しても問答無用で攻撃しようとするので危なくて呼び出せないやつもいるのだが。ほとんどは友達である。
「その本の登場人物の方とはよく話すのですか?」
「……たまに」
そこで顕の口調は重くなる。
それは、顕がヒーローになろうとしていた理由に関わってくる話になる。そして顕は、それを積極的に話そうとは思っていなかった。自分が自分で成し遂げればいいだけの話なのだ。変な同情や説得など求めていない。
「じゃあ会ってみてえやつがいたら本道に頼んだら会えるのか」
「……友達、だから。会いたい時に会えるけど、見世物とか道具にはしない。本当に会いたいなら、呼べる」
顕の個性について少しばかり話していると、やがて昼休みの終わりが近づく。今日は午後にヒーロー基礎学の演習が入っているため、昼休みいっぱいまでのんびりしていることは出来ないのだ。
「あら、もう時間ですわね。そろそろ行きましょうか」
「お、そうか。午後は演習だったな」
「ええ。本道さんも行きましょう。更衣室への案内は轟さんにお願いしますわ」
******
食器を返却して一旦教室に戻った後、顕は2人に説明されて壁に内蔵された棚から自分のコスチュームケースを取り出す。顕のケースは21番。入学の際と比べて時間は無かったが、顕が特段特殊な物を求めていなかったので用意は間に合ったらしい。
「じゃあ、行くか」
轟の言葉にコクリとうなずいた顕は彼の後をついていく。他のクラスメイト達も興味津々の様子であったが、先刻顕が多人数に詰めかけられるのは苦手と言ったために遠巻きにして眺めている状態だ。それでも、その視線もフードを外した顕にとっては少しばかり煩わしいものだった。
更衣室についた後、コスチュームに着替えていく。顕のコスチュームは、とあるゲームのキャラクターのコスチュームを参考にしたものだ。そのゲームシリーズの主人公達は皆フードを被っているので、それが顕にとってちょうど良かったのだ。またフード以外は動きやすい服装であるというのもポイントである。
「なんつーか……民族衣装、っていうのか? それ」
「18世紀の海賊の服、を真似してるのを真似してる」
「なんかの登場人物か?」
「古いゲーム」
それは、物語な大好きな顕がインターネットで見つけた登場人物。本来なら本を好むことが多い顕だが、本になっていないアニメや映画などは映像という手段で見ることもある。コスチュームの元となったキャラクターも、そうしてプレイ映像と動画サイトで見たものだ。
「かっこいい」
「そう、か?」
「うん」
轟から見ればむしろ地味で、あまりヒーローとしてのきらびやかさが無いように思えるが、顕はそれが何故か好きだった。
基本は布製の服だが、その上に革製の肩当てや上腕前腕を覆う革製の防具。その防具は薄いものなので、ベストのように上半身に着込んでいる。下半身はコスチュームということで動きやすいように多少伸縮性に飛んだズボンと、革製のブーツ。このあたりは純粋に使い勝手というより見た目に拘った結果だ。原作通りなら各部に仕込まれている暗器類は、流石にヒーローとしてアウトということで用意できなかった。
そして一番のこだわりは、やはりフード。首の後ろにかけられているかなりゆったりとしたフードは、被ることで顕の顔を半ばほどまで隠してくれる。自分の世界を作るための手段だったフードは、いつのまにか見た目として顕の好きなものになっていたのである。
顕のコスチュームは、アサシンクリードブラックフラッグの主人公をイメージしてます。フードというところから考えたとき、自分が今一番好きなフードの見た目がこれでした。
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