本の召喚士(僕のヒーローアカデミア×超多重クロスオーバー) 作:アママサ二次創作
今日のヒーロー基礎学の演習では、ヴィラン役1人、ヒーロー役2人で鬼ごっこをすることになっていた。ヴィラン役はヴィランになりきって思考する練習にもなるが他方で、相手のヴィランが強力であったり数が多かった場合、対処に向かったヒーローが追跡される側になるというのも起こりうることである。そのため、ヴィラン側も極力街並みを破壊しないようにという縛りが設けられている。
実施されるのは演習場。今日はビル群ではなく、通常の民家やアパートが並ぶ一角が演習エリアとして指定されていた。
「それでは、今日の演習を始めていくぞ! 諸君、新しいクラスメイトがいるからって緊張して転んじゃ駄目だぞ!」
オールマイトが説明する中、顕は隣に立っていた轟に今日の概要について尋ねる。その向こうにいる八百万も、顕の質問を聞いていてくれた。
「何の演習?」
「鬼ごっこだ。ヴィラン役が1人、ヒーロー役が2人。ヴィランはヒーローを倒しても良いし、逃げ切っても良い」
「なるほど」
その後八百万からより細かい説明を受けていると、オールマイトが顕に声をかけてきた。
「本道少年! 君はどうする? 参加するかい? 今日は初めてだから見学しても良いんだけど」
「……参加、します」
顕自身としては別に参加しないでも良いかななんて考えていたのだが。周囲から向けられる好奇心が多分に含まれた視線を感じていると、適当に見せておいた方が言葉で長々と説明しなくてすみそうで楽に思えたのだ。
「わかった! では本道少年含めて21人でくじを引こう! これならみんな同じ回数になって良いね!」
もともと20人で一度の試合に3人となると、誰かしらが2回する必要があったので顕が参加したほうがそう言う意味ではちょうど良かった。
委員長である飯田の騒がしい指示を半ば無視して、芦戸や切島らクラスの中でも元気の良い面々からくじをひいていき、最後に顕、轟、八百万がくじを引く。顕の試合は3試合目で役割はヒーローだった。
「3試合目のヒーローの方、どなたでしょうか。本道さんがペアなのですが」
八百万がそうクラスメイトに問いかけると同時、大きな舌打ちの音が聞こえる。
「え、爆豪もしかしてお前?」
「うるせえクソ髪。ペアなんざ誰でも良い」
その言動で、皆には顕のペアが誰かわかってしまった。よりにもよってクラスで一番話しかけづらい爆豪だ。誰もが、初対面の相手にも爆豪はいつもどおりなのだろうと思った。
「おい、フード。足引っ張ったら殺すぞ」
「フードって爆豪お前、ネーミングセンス無いな!」
「うるせえクソ髪! あいつの名前なんざ何でも良いんだよ!」
「いや転入生にいきなりそれは無いだろ爆豪」
「うるせえアホ面死ね」
「待って……俺と切島の扱いが違う……」
顕の方をにらみながら言った爆豪は、すぐに近くにいた切島や上鳴に絡まれて爆発をそちらに向けてしまった。話す間も何もあったものではないが、どちらにしろ爆豪と顕だと会話にはならないだろう。爆豪は相手の話を聞く気がないし、顕は聞いてもらうつもりがない。コミュニケーションの相性は致命的た。
「ああいう奴だ」
「ん」
「轟さん、それでは説明不足ですわ。爆豪さんは口調や言動が荒いところはありますが実力は非常に高い方ですわ。初めてのことなので戸惑うでしょうが、是非話してみると良いかと」
「……個性は?」
「手のひらから出た汗を爆発させます。ですが、それ以上は私から教えることは出来ませんわ。そうした情報収集や想定、即興の連携も含めてこの訓練なのです」
ヒーロー科の訓練では、事前に内容とペアなどが指定される訓練とそうではない訓練がある。今日の訓練は後者で、鬼ごっこは以前もしたことがあるものだが、ペア自体は当日の直前まで指定されないことになっていた。ヒーローは即席で共闘したり、個性が未知のヴィランを相手取ることも数多くある。それに対応するための訓練を、よく見知ったクラスの中で行うために、ペアは直前に決めるようにしているのだ。
「そ」
だが。いくらでも味方を増やすことのできる顕にとって、味方との連携というのはまさしく意味が無いものとなる。なんなら、全員下がってもらって顕が召喚したキャラクター達に任せた方が効率が良かったりする。そのため顕も、特段爆豪とコミュニケーションを取ろうというつもりは無かった。
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クラスメイト達の試合が行われている間は隣の轟とほんの僅かにだが言葉を交わしながらそれを見て、試合が終わって反省会になると八百万が試合の細部について解説してくれた。想像力が高くそうした訓練や思考もしている顕が自分で気づいていたことも多くあったが、クラスメイトの性格や立ち回りの癖、これまでの訓練など知らないこともかなりあった。
「猿夫の動きは、個性?」
「尾白さんの個性は尻尾だけですわ。体術は幼い頃から武道を学んでいたそうです」
1つ前の試合では、ヒーロー役が砂藤と芦戸、ヴィラン役が尾白であった。顕が言っているのは、マンションの外壁をベランダ伝いにするすると下に向かって降り、更に街灯や電信柱を器用に飛び移って2人からの追撃を交わしていた尾白の動きについてだ。上下、左右方向ともに機動力において完全に相手を上回り、逃げる側としては完璧な動きをしていた。
それが個性によるものなのか、それとも鍛錬によるものなのかというのが、顕が試合を見ていて抱いた疑問だった。尾白の見た目上の普通の人間との差異は尻尾だけである。だからそういう、特別な部位があるだけの個性かと思っていたが、どうも動きがこなれて見えた。だから、猿などの能力を持っているのかと考えたのだ。
「お前、尾白と仲良いのか?」
顕が八百万から試合の解説を細かく聞いていると、轟がそう話しかけてくる。
「話したことない」
「じゃあなんで猿夫って呼んでんだ?」
轟の問いかけに、顕は何を言われているのかわからないという表情をする。尾白猿夫だから猿夫。そう呼んでいるだけだ。
「名前じゃだめ?」
「本道さん、轟さんがおっしゃっているのは、何故名字ではなく名前で呼んでいるのかという疑問ですわ。轟さん、その言い方では責めるようになってしまってます」
「お、そうか。悪い」
言葉足らずさを謝る轟に対して、顕も自分の他人に対する呼び方について説明する。八百万に言われて、顕は改めて自分が名前で呼んでいる理由を説明した。
「いつも名前で呼んでるから。ごめん」
それは、これまで関わってきた相手ほとんどを、名前の部分で呼んできたからである。本の登場人物などはその本の中で呼ばれていた名前でそのまま呼ぶことが多い。それ以外で相手を名指しで呼ぶのは今の家族ぐらいなので、全員名前で呼べば良いと考えているのだ。
「いや、別に責めてねえ。単純に気になっただけだ」
「まあ。では私はなんと呼ぶのですか?」
八百万の妙に期待に満ちた問いかけに、顕は普通に答える。
「百。焦凍」
「お」
ついでに名前を呼ばれた轟が思わずといったように声を上げる。人を、例えクラスメイトや友人であっても名前で呼ぶ、あるいは呼ばれる機会というのは存外少ない。家族以外からその呼び方をされるのは皆慣れていないのだ。
「名前で呼ばれるというのは、何かくすぐったい感じがしますわ」
「なんか、変な感じだ」
「やめる?」
「いえ! 別に嫌というわけではありません」
「俺も別に嫌ではねえ。慣れねえだけだ」
結局。2人から許可をもらい、顕が2人の名前を呼ぶ際には名字ではなく名前で呼ぶことになった。ちなみに今後これがほぼ全員で繰り返され、顕はクラスメイト全員を名前で呼ぶこととなる。
そんな話をしていると会場の修理が終わり、次の試合になる。次の試合は鬼側が顕と爆豪。そして逃げる側が緑谷というおどおどとした少年である。
「え、えっと、よろしくねかっちゃん」
「うるせえくそデク。話しかけんな」
「ご、ごめん! 本道君も、その、よろしく」
「よろしく」
これから戦う相手だというのに、緑谷は律儀に爆豪と顕に挨拶してきた。それに対して、流石に無言でペコリは悪いと思ったので顕も短く答える。
その後指示があって、緑谷が範囲の中央まで移動する。鬼側はエリアの端から。逃げる側は中央から開始して逃げる。緑谷が移動している間、爆豪は機嫌悪そうな表情でそれを待っていたので、顕も隣に並んで立っていた。
そんな時間が数十秒経った後、爆豪の方から顕に話しかけてきた。
「おいフード。てめえは何もすんな」
「……なんで?」
「俺1人で十分だからだ。わかったら大人しくしてろ」
「……嫌だ」
「あ゛?」
「参加したから俺もやる」
顕の言葉にぶっちり行きかけた爆豪だが、大きく息を吐いて自分を抑える。こういう何を考えているかわからない相手というのは爆豪が一番キライなタイプだ。つっかかってくる相手はムカつく。言い返してくる相手もだ。だがそれ以上に、何を考えているかわからないというのはイラつくのだ。
今もそうである。こいつは強く言えば怯えるのか、あるいは無視するのか。それが全くわからない。必然、そういうのを相手するときには爆豪が大人にならざるを得ないのである。
「てめえが何かする前にデクは俺がやる」
「……頑張って」
やはりむかつく。爆豪は顕を、再度そう認識した。
顕と他キャラの関わりを書くためとはいえ少々無駄に長くなり気味ですかね。
まあ次話は戦闘シーンということで。
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