本の召喚士(僕のヒーローアカデミア×超多重クロスオーバー)   作:アママサ二次創作

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第2話 顕と神代家

「あら兄、力、夕食にするよー! 遊んでないで降りてこーい!」

「はーい! 今行くー!」

 

 1階からそう大声で呼ぶのは、力の双子の妹である光だ。一卵性双生児の双子である2人は個性も全く一緒であり、そして何故か口調まで似通っているというそっくりぶりを見せている。外見は流石に15にもなると男女の差異はあるのだが。

 

「行こうあら兄」

「あとちょっと」

 

 光の声でストレッチを切り上げた力とは違い、顕は黙々とストレッチを続けている。身体の整備はかかしてはならない。強くなるためには、鍛錬と同じぐらいその準備と後処理も大切である。多くの先人達が教えてくれたことだ。

 

「もー、なるべく急げよあら兄」

「ん」

 

 黙々と身体のあちこちを伸ばし続ける顕を見た力は、呆れたようにそう言って一足先に階下へと向かった。半年たってもまだ、顕は家族と食卓を共にするという普通の習慣に慣れていないのだ。かくいう神代家も絶対的に家族一緒の食事を大切にしているわけではないので、顕に強制するようなことはしていない。

 

 更に20分以上をかけて身体の整備を終えた顕は、軽く汗を拭って部屋を出た。1階へと降りてリビングに入ると、双子と義理の母が一緒に食事をしている。

 

「あー! あら兄遅い! 片付けはあら兄の番だからな!」

「ん、わかった」

 

 リビングに入ってそうそう妹の光にそう怒られながらも、席についた顕を手を合わせてから食事を始める。光と力が学校のことなどを話しているのをBGMに食事をしていると、2人の言い合いが途切れたところで母が顕に話しかけてきた。

 

「顕、明日の編入試験、ちゃんと覚えてる?」

「ん。準備した」

「そ。なら良いわ。明日は雅人が朝迎えに来てくれるから」

「ん」

 

 明日は顕の編入試験の日である。

 とある理由があって顕は通常日程で高校入試を受けることが出来ず、こうして変則的な編入試験という形で高校入試を受けることになった。普通の立場では当然そんなことが許されるはずもなく、そのためのコネというべきか、話を通して編入試験を取り付けてくれたのは、義理の母の弟で現役のプロヒーローである神代雅人、ヒーロー名『アンペア』である。

 

「あら兄もついに高校か……。受かるの? 雄英でしょ?」

 

 ごちそうさま! と元気よく手を合わせた光がそう尋ねてくるので、顕は首をかしげることで口に出さずに答える。

 

 雄英高校とは、この個性超常社会においてヒーローを養成するためのコースであるヒーロー科で最も優れていると言われている学校である。トップヒーローと呼ばれるようなヒーローのランキングで上位にランクインしているヒーロー達の大半はそこを卒業しており、他の卒業生たちも実力派のヒーローとして活躍している。そんな学校を、雅人のコネもあって顕は受験出来ることになっていた。正確には編入試験を受け、合格すれば一年の途中から編入するという形を取れるのである。

 

 実力で言えば。個性の汎用性や為せること、それに顕自身の実力を考えれば確実に合格できる、とは元雄英高校卒の雅人が断言してくれたが、一方で個性の特性や前科、それに顕自身の考え方によって蹴られる可能性もあると顕自身は考えていた。編入試験となると面接もある可能性があるからだ。

 

「受かるだろ。あら兄が負けるなんてありえないし」

「むう、そう言えばそうだけどさ。まあ受かるか」

 

 一方で、試験を受けるのが自分ではない力は受かって当然だと言うように光に答えている。力は光と比べて男同士ということで顕と絡む時間が多かった分顕の個性のこともよく知っているし、顕自身の努力についても知っていた。だからこそ力はそう断言し、光もそれに納得した。

 

 それに、2人は顕の前科についても知っているが、それに対しても子供らしい純粋な思考で顕の側に非が一切無いと判断していた。だからこそそれが顕が不合格になる理由にはなりえないと。

 

 そう言われては、顕も『合格するかどうかわからない』などとは言い出せない。最も自分からそこまで発言することは基本的にないのだが。

 

 

******

 

 

 顕の前科は、顕がこの家庭に養子として迎え入れられた事にも大きく関わってくる。

 

 顕の両親、実の親は、有り体に言って屑であった。顕を虐待し、家事など様々な事を押し付け。食事の量だけは惜しみなく与えたが、それ以外はただただ鬱憤を晴らす相手として顕を使っていた。食事も、サンドバックが勝手に壊れては困るという理由で与えていたのだろう。多少の頭が回ったので外に見える部分には攻撃しなかったし、顕に与える衣服は絶対に長袖と長ズボンだった。髪も長く伸ばさせていたので顔の傷もほとんど外には見えなかった。

 

 さらには、顕の個性を自分たちの私欲のために使わせ、犯罪行為まで行わせようとしていた。犯罪行為に関しては個性の都合上結局行うことが出来なかったものの、虐待は日常茶飯事であり、身体が両親に対抗できる程度に育った後でも顕が積極的に反抗しないのを良いことに非道を尽くしていた。おかげで顕は小中と友人と遊ぶようなこともほとんど出来なかったが、それ自体は顕にとってはどうでも良いことだったので特に文句も言わなかった。虐待に関しても、精神的に特殊なところのあった顕は難なく堪えていた。実際顕の両親に顕を拘束する実力はなく、顕がやりたいことがあれば家を離れて好きな場所に行っていれば攻撃されることもなかったので精神的に堪えられれば問題は無かったのである。

 

 だが。両親は、顕がヒーロー科を受験したいと言ったところで顕がヒーローになどなると自分たちが逮捕されると考え、また顕が支配下から離れてしまうと束縛を強くしようとした。それに対抗する形で、顕は個性を使って両親を脅し、家から彼らを排除しようとした。その際顕が両親を傷つけることはなかったが、小賢しい両親はそれを子供が親を個性を使って殺そうとしたとすり替えたのだ。

 

 その結果顕は少年審判を受けることとなり。結局その事件の際に顕を止めてくれたアンペアの証言もあって一切罪には問われなかったものの個性の無断使用で厳重注意は受け、また時期が時期だけに受験までにもろもろのゴタゴタが片付かずに5月も末となるこんな時期まで編入試験が遅くなってしまったのだ。

 

 

******

 

 

 そんな顕の事情を義理の両親も双子も知っているが、顕自身が全く語ろうとしないしそれで苦しんでいる様子も見せないので、触れることもまったくない。ただひたすらに、顕を家族として迎え入れてくれようとしていた。ちなみにこの家庭と顕の実両親は遠縁の親戚である。親戚関係でここまで屑と人を思える人間が生まれるというのは面白いものである。

 

「あら兄、今夜も鍛錬する?」

「ん」

「じゃあ俺も行く」

 

 一足先に食事を片付け終えた力がそう声をかけてくる。二月ほど前から、顕が強くなるための鍛錬をしているとそれに気づいた力が参加してくるようになった。先刻のランニングもそうである。

 

「何? 力とあら兄何かしてるの?」

 

 その会話を聞きつけて、自分の分の食器を洗い終えた光が食器を下げてキッチンへと向かった力と入れ替わりになるように食卓に戻ってきた。力がすぐ戻ってくる様子は無く、仕方なく顕が応対する。

 

「鍛錬してる」

「鍛錬、ってヒーローになるための?」

 

 コクリ、と顕が頷くと光がキッチンの力の方に大きな声で呼びかける。

 

「力なんで鍛錬なんてしてるの? ていうか私も誘ってよ」

 

 それに対する力の答えはシンプルなものだった。

 

「俺雄英行くから。もう準備始めないと」

 

 もともと、力と光は一卵性双生児として見た目がそっくりなのと同様に2人とも全く同じ個性を持っている。そしてその個性がヒーロー向けなために叔父の雅人の影響もあってヒーローを志しているのは以前から同じなのだが、行くのは近くの雄英ではないヒーロー科の高校にするとなんとなく言い合っていたのである。

 

 だから光の驚きはかなりのものだった。

 

「は、え? ほんとに?」

「ほんとだよ」

「ちょっと、私聞いてない! お母さん知ってた!?」

「言われたわよ。『俺も雄英に行きたい』って」

 

 詰め寄る光に、力も母も事も無げに答える。神代家は放任主義というか、大切な部分を外さなければ子供の選択を尊重しバックアップをする、という方針なので特に問題が無い雄英進学に関しては両親とも力に何かを言うわけではないのだ。

 

 だが、そんな簡単に決めてしまう両親と双子の兄の決定が、光にとっては許せないものだった。

 

 『そんな大事なこと決めるなら私にも教えろよ』と。双子故にずっと一緒に育ってきた2人にとって、互いの事をよく知っているのは当然のことだったのである。

 

「そういうのは! 私にも教えろよ!」

「は、いや、光そんな本気な感じじゃなかったじゃん」

 

 思わずと言ったように力が答える。2人ともヒーローになることは決めていた。ただそれは、高校に入ってヒーロー科に行ってから訓練をすればいい、と顕と出会うまでは考えていた。だが力は、顕と接し。そして顕の友人たちと接する中で、自分の中にある何かに火をつけられて、今から訓練を始め、最高峰の舞台である雄英を目指そうという考えに至ったのである。だからそれはあくまで部活動を選ぶぐらいのノリだったのだ。

 

 だが、光にとっては力がより上を目指すというのは、自分に知らせなかったという怒りや置いていかれるという不安を呼び起こすものだった。

 だから、光はその場ですぐに決めた。

 

「……お母さん!」

「はいはい。光も雄英を目指すのね」

「うん! ということでよろしく!」

「……ごちそうさまでした」

 

 力と雄英を目指すことにしたという光がぎゃあぎゃあと言っているのを尻目に、顕は自分の分の食器を下げ、鍋などと一緒に洗う。それらを洗い終えて全員分の食器を拭き、棚に戻すまでが今日は顕の担当だ。

 

「あら兄、鍛錬って何するの?」

「組手、とか」

「私もいきなり出来る?」

「……出来る事を教える」

「ありがとう!」

 

 う―! 楽しみ! と伸びをする光に水を差すように、力が話しかける。

 

「俺はもうランニングとかやってるから」

「ぬー! でももともと私の方が運動神経良いからね!」

「ちょっとの差だろ。今は絶対俺の方が走るの速いから」

「負けないし!」

「勉強もちゃんとしなさいよー」

 

 力と光は双子であるがゆえに、様々な物事において互いを競争相手と見なしてそれに負けまいと努力してきていた。おかげで出来ないことというのは全くと言っていいほどない。常に相手より出来たいと競った結果高い水準で様々なものがまとまっているからだ。もともと何かをしたくなったときにそれが出来るようにと取り敢えず勉強させるのが家庭の方針であったために勉強はできるし、個性もヒーローになるには十分に強力だ。顕やその指導役と一緒に訓練をしていれば雄英でも十分に合格することが出来るだろう。

 

「あ、あら兄。もう行く?」

「8時から」

「了解! 今日も屋上ね!」

 

 たいてい顕の訓練は、3階部分とも言える2階建ての家の屋上に広がっているスペースか、近くの山上の公園などで行っている。特に派手な事をする場合は人気の無い公園などに行っているが、普段はそんな目立つことはしないので屋上で十分なのだ。




顕にA組とB組どっちに入ってほしいとかありますか?

主人公の設定を考えているうちに頭の中で勝手に動きはじめて、気づけばこんな家族が……。あんまり家族関係とか書く気無かったんですけど、どうやら書くことになりそうです。

誰登場させようかなって名言集見てたら一日がたってました。やっぱり自分悪役結構好きだなってのも確認できました。
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