本の召喚士(僕のヒーローアカデミア×超多重クロスオーバー)   作:アママサ二次創作

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第5話 編入試験・1

 雄英高校に到着した2人は、付属の駐車場に車を止めて徒歩で雄英高校の正門をくぐる。何やら厳重な警備が行われていて2人の身分証も細かく検査されたが、ニュースなどでその理由を知っている2人は特に文句を言わずにそれを待った。

 

 やがて2人が確かに本人であることが確認されると、テストを担当する職員に連絡するので待っておくようにと指示される。もともとここの生徒であった雅人は施設や校舎の配置も理解しているので職員室までの移動ぐらいなら問題は無いのだが、雄英の側としては部外者を自由に歩き回らせたくないのだ。

 

 2人が待っていると、やがて数分の後に一人の職員がやってきた。

 

「こんにちは。アンペアと、本道顕君ね」

「ミッドナイト、教師としてその格好はどうなんだ?」

 

 やってきたのは、雄英高校の教師の一人でありプロヒーローでもある18禁ヒーローミッドナイトだ。その学生時代から色々な意味で目立っていたコスチュームに、先輩だった雅人は苦言を呈する。

 

「これが私のコスチュームですよ先輩」

 

 そう断言したミッドナイトは、顕の方に一歩近寄ってフードの下の顔を覗き込んでくる。一方の顕は、その男子高校生にとっては刺激的なコスチュームにも対して興味を示さず、茫洋とした瞳で目の前の顔を見返していた。

 

「はじめまして本道顕君。今日は私が雄英を案内するわ。編入試験はまた別の教師が担当するから、緊張しないでね」

「そいつは緊張とは無縁だぞ」

「そう? じゃあ取り敢えず、試験の時間が10時までなのでそれまでは学校を案内するわ」

 

 行きましょう、と促すミッドナイトに案内されて顕は雅人とともに雄英の施設へと向かっていく。生徒が学習する本校舎の他に、サポート科と呼ばれる、ヒーローなどの個性をサポートするアイテムを開発するコースで使用される実験棟や、ヒーロー科の演習で使う大規模な演習施設などを案内される。雅人が通っていた頃には無かったり、その頃とは機能が変わっている施設もあって雅人は雅人でその見学を楽しんでいた。

 

 中にはヒーロー科の生徒が演習を行っている場所もあって、3人でしばし足を止めてそれを見学した。ミッドナイトの言った自分は編入試験の担当ではないという言葉は本当だったのか、顕に何か話を振って情報を収集しようと言う様子も無く、主に雅人とばかり話している。顕の方もそもそも話すつもりが全く無いので、それを気にせずただ周囲の物を観察していた。

 

 おおよそ外の施設の見学を終え本校舎に向かおうとしたところで、ミッドナイトに連絡が入る。

 

「出動か?」

「みたいです。立てこもりらしいので私が行くしか無いですね」

 

 雄英高校の教師達はプロヒーローとしての仕事も兼務しているので、こうして緊急の招集がかかった場合には行かなければならない。雄英は後発の優秀なヒーローを育てる必要もあるということで優秀なヒーローが集まっているということもあり、こういうのは日常茶飯事なのだ。

 

 その後、他の人を呼ぶというミッドナイトに対して雅人が待ったをかけた。

 

「職員室に行けばいいなら俺も道はわかるぞ」

「……そうですね。じゃあ職員室で待っておくように言っておきます」

「はいはい。じゃ、気をつけてな」

 

 手を振る雅人に、ペコリと軽く頭を下げてからミッドナイトは走り去っていった。残された2人も、本校舎に入って職員室へと向かう。

 

 来客用の入り口から入って職員室へ向かって歩いていると、ちょうど授業と授業の休み時間だからか複数の生徒とすれ違った。その中の一人、緑の髪をした生徒が雅人の顔を見て何やらはっとした表情をしていたが、雅人の方は特にそれに反応することはなく、他人に反応を示さない顕も無視して素通りした。

 

「どうした緑谷君? 今の方達か?」

「う、うん。大人の人、どこかで……それに学ランって……」

 

 そんな声が聞こえるのは、ブレザーばかりの雄英高校の中で職員では無い男が歩いているのと、学ランを着ている顕が目立っているからだろう。

 顕が意識を後ろから前を行く雅人に戻すと、その表情がわずかに笑っているのに気づいた。どうしたのか、という顕の視線に気づいたのか、雅人が笑みの理由を説明してくれる。

 

「俺の事を知ってるやつなんているんだと思ってな」

「……ヒーローだろ」

 

 ヒーローだから知っているやつはそりゃあいるだろうと。そう返した顕に、雅人は説明を続ける。

 

「ヴィラン倒したり災害救助をやるヒーローと比べて俺のやってることは目立たないからな。知ってる奴がいるのは珍しいんだよ」

 

 それだけ目立たないであろう自分の仕事を知ってくれている者がいる、というのは、ヒーローにとっては嬉しいことなのだ。対ヴィランや災害救助など人気となるヒーローと比べて、雅人が主としているのはひと目につかないことであり、そんな雅人の事を知っているということは、言い換えれば目立たない雅人の仕事もある程度は評価してくれているとも言えるのだ。

 

 職員室についた雅人がその扉を叩こうとすると、隣の廊下の先から『やあ!』という声が聞こえた。そちらに目を向けると、小さなネズミのような人間が片手をあげている。

 

「お久しぶりです、校長先生」

「神代君も久しぶりなのさ! さ、こっちに来るのさ」

「先生が編入試験の担当ですか?」

「僕と一年ヒーロー科の担任2人なのさ!」

 

 校長、と雅人が呼んだ相手の後を追って、顕と雅人は応接室へと連れて行かれる。

 

「2人の準備に時間がかかるからもう少し待ってほしいのさ!」

「ありがとうございます」

 

 紅茶を出してくれた校長は、そう言って2人の座っているソファーの対面側に座る。

 

「はじめましてなのさ。本道顕君」

 

 顕を名指しで話しかける校長に対して、顕はペコリと頭を下げる事で応対する。基本的に、言葉にしないで返せる場合には顕は言葉を発しないか短い言葉だけで答えることが多い。彼の敬意の全てが、現実に生きる人間にではなく、彼が呼び出すことの出来るキャラクター達に向けられているからだ。

 

「本道君はなぜヒーローを目指そうと思ったのさ?」

「……ヒーロー資格が必要だから」

「ヒーローになりたいわけじゃないのさ?」

「ヒーローにはなりたい」

 

 要領を得ない顕の返答に、彼の事をよく知っている雅人は口を挟んだ。

 

「簡単にで良いから言うなら説明しとけ」

「……ん」

 

 そして校長の方を向き直った顕は、自分がヒーローになろうとしている理由を話し始める。。

 

 

******

 

 

 世界の風潮、価値観を変えるのには、大きな力やタイミング、様々な要素が必要となる。その中で一つ。常の革命家、変革者達が突き当たってきた問題が存在する。即ち。

 

 『暴力を用いるか否か』。

 

 現代以降においては変革者とは得てして少数派だった。なぜなら体制側は、少なくとも市民がある程度は満足できる状態を苦心して作り上げてきたからだ。

 

 そんな中で、変革者たちが変革を行うのに十分な賛同を得るというのは困難なことであった。民主主義が普及したこの日本において、体制を変えたければ過半数以上の賛成が必要となるからだ。

 

 少なくとも、人々にある程度の満足が与えられている状況では、無用な混乱を招くかも知れない変革などそうは望まれない。

 

 だから多くの変革者や革命家は暴力という手段を構想し。そしてその暴力という手段故にほとんどの場合において失敗してきた。

 

 だからこそ。顕は彼らと同じ轍を踏まないために。正規の手続きを踏んで、発言力が圧倒的に高く、市民の思想に影響を及ぼすことの出来る正規の立場を目指さなければならないのだ。

 

 かつては存在し得なかった。だが超常全盛期である現代には存在するそんな存在。それが、ヒーロー。

 

 

「本道君は、それで世界をどう変えたいのさ?」

「……秩序が正義で、自由が悪という風潮を変えたい」

「どういうことなのさ?」

「顕」

 

 顕と校長が話していると、そこでずっと黙って聞いていた雅人が口を挟んだ。

 

「それ以上はやめとけ」

「……ん」

「興味深い話だから教えてほしいのさ!」

 

 静止する雅人に対して校長は話の続きを促してくる。例えばヒーロー科に入学するものでもここまで思想的なものを調査する面接などは行われないが、編入となるとまた話は別である。教育の中で教師が見出してくそれぞれの考え方などを掴む時間もなく受け入れなければならないのだ。

 

 それだけでなく、現在雄英は様々な事に非常に敏感な状態になっている。だからこそ校長も、雑談の中でそうしたことを探ろうとしたのだ。

 

「校長……個人の思想的な部分に関わるというのはあまりよろしくないと思いますが」

「あくまで個人としての好奇心なのさ! どうかな、本道君」

 

 雅人と校長がバチバチと火花を散らす中で、顕はゆっくりとそのかぶっていたフードを下ろした。

 そして、その蒼い瞳で校長を見る。

 

「俺の友達は、俺が個性で呼べるキャラクター達だけだった」

 

 それまでの話すのが億劫と言いたげな口調とは打って変わって静かに、そして力強く語る。

 

「この世界の秩序側のルールは、彼らが存在する事を許さなかった。だから、俺がヒーローになって個性を自由に使えるようになって。彼らが存在する事を何者にも咎められない世界をつくりたい」

「……個性なら家の中でも使えるのさ」

「友人と話し共に生きる場を、何故他人によって限定されなければならない。そんな理不尽は俺が捻じ伏せる」

 

 言い切った顕は、再びフードを被りそれ以上話すつもりは無いと示す。

 

 顕が話したのは、非常に限定した情報だけを示し、あるいは多くの事を示唆する言葉だった。

 

 『彼らが存在する事を何者にも咎められない』とは。ただキャラクター達を呼び出す顕の個性の使用の自由だけでなく。

 

 それぞれのキャラクター達が持つ無数の思想それぞれがその前提から否定されることの無いような、真の意味で多様性に溢れた世界にする、という意味であり。

 

 『世界を作りたい』とは。自分が個性を使えるということに限定した話ではなく、世界の基準として、そうした個性の使用を個人の自由のレベルまで落とし込みたいという意思である。

 

 最初は、ただ自分が個性を使って彼らと一緒にいたいと。それだけのことであった。だが、もはやそれでは足りないのだ。顕は、彼ら全員が好きなのだ。一部例外はあれど。それを認めない世界を変えてやりたい。そんな、顕の挑戦なのだ。

 

「本道君の気持ちはわかったのさ。どんな形であれ本気でヒーローを目指す以上、雄英は君の事を歓迎するのさ!」

「校長……まだ試験やってませんよ」

「もうそろそろ彼らが来るのさ」

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