碇レイさんシリーズ   作:ありやす

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離さないわ

「碇くん、私たちの事、離さないで」と、私が後ろから碇くんを

抱き締めながら言うと、碇くんは私の突然の行動に

驚いたのか、少し身体が強ばっている。

私はそんな碇くんの身体を温めてほぐすために、

さらに力を込めて身体を密着させる。

私の体温が伝わったのか、碇くんの身体はどんどんと

ほぐれているのが、私にも伝わって来る。

碇くんは私に、「急にどうしたの綾波?」と、

心配そうに聞いてくれる。

私はそれだけで嬉しくて心が温かい気持ちになる。

「嫌な夢を見たの」と、言いと碇くんは、

私の方へと振り向き優しく包み込むように抱き締め、

頭を優しく撫で始めてくれた。

私は碇くんの胸の中で「ありがとう」と言って、話を続けた。

「碇くんが、私とお腹に居るこの子を置いて、

どっかに行ってしまう夢を見たの」と碇くんの胸の中で

打ち明けると碇くんは、優しく私の耳元で

「大丈夫だよ綾波、僕は綾波とお腹の中に居る子を、

置いてく事なんてしないよ」と言ってくれた。

「あり…がとう…碇…くん…」と、

私の声は気付いたら震えていて、泣いていた。

あの時、碇くんが私に婚約をお願いしてくれた時の様な、

温かくて嬉しい気持ちで心が満たされているからだわ。

でも、私の心が満たされる理由はそれだけじゃないわ。

それは、碇くんの匂い。

碇くんの匂いは優しくて、私を落ち着かせてくれる匂い。

そんな良い匂いは、私を一瞬でダメにしてしまう程の

猛毒を持っていて、解毒剤なんてものは、存在しない。

もし、解毒剤が存在しても、私はその解毒剤を使おうなんて、

馬鹿な事は、決してしないわ。

私は何年も「碇くん」という優しい猛毒に侵されていて、

確実に私の身体を蝕んでいる。

なのに私は、嬉々としてその猛毒を受け入れ、摂取しているわ。

きっと、親友にその事を言ったら「バッカじゃないのっ」と

言われてしまいそうだけど、私は構わないわ。

だってそれは私が望んだ事だから。

多分、いえ確実に碇くんも「私」という優しい猛毒に侵されているわ。

私が猛毒となって、碇くんの身体を日々侵していると考えてみると、

なにか新しいものに目覚めてしまいそうだわ。

これは世間一般からは、「いけない事」なのかもしれないけど、

私は自然と「いけない事」とは思えないわ。

むしろ私には、「良い事」に思えるわ。

お互いがお互いの猛毒に侵されて、

お互いがお互いを必要として、生活していく。

それは一種の共依存なのかもしれないわ。

でも、私…私たちには必要で普通で、私たちは、二人で一人の人間。

どちらか一方が欠けては、意味が無い。

だから、私は碇くんの事を決して離さないし、離させない。

その考えは私が碇くんに恋した頃から、変わらない。

かつての恋敵だった、親友にも嫉妬した事もある。

中学生の頃は碇くんと同棲していた、親友が羨ましかったから

私は、碇くんや、ミサトさんを始めとした周りの人に我儘を言って、

高校に入学する年の春から、お互いのマンションを出て、

今、住んでいるマンションで同棲する様になったわ。

多分、あれを超える我儘は、はじめての夜で碇くんに、

子供が欲しいとせがんだとき位かしら?

まさか、あの一夜の出来事で本当に私が妊娠するとは、

思わなかったし、卒業まじかのところだったから、

妊娠している事がわかった時は、先生方に説明するのは、

大変だったし、二人揃って、こっぴどく叱られたけど

全部、碇くんが私とお腹の中に居る子を庇ってくれたわ。

その時は、とても嬉しかったわ。

それにしても、碇くんに包まれていると、安心して眠くなるわ。

私は碇くんに、「寝ても良いかしら碇くん?」と、

聞くと碇くんは、「そうだね綾波、今日はもう寝ようか」と、

言ってくれて、私をお姫様抱っこで、寝室まで連れて行ってくれた。

「私の王子様は優しいわ」と、言うと碇くんは、

「それは世界一可愛いお姫様だからね」と、優しく言ってくれた。

私は碇くんに、「じゃぁそんな世界一可愛いお姫様に、

免じて手を握ってくれるかしら」と言うと碇くんは、

「仰せのままにお姫様」と一言、言って優しく手を握ってくれる。

握られる手からは、「碇くん」という優しい猛毒が、身体全体に、

伝わって来るのが、わかってしまうわ。

碇くんにも「私」という優しい猛毒が伝わっているわ。

「絶対、離させないわ碇くん」と、一言残して私は、眠りについた。

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