かずみ推しの女の子が転生した話   作:レイラレイラ

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今回はとある占い好きのぼくっ娘ちゃんの回です


占い少女との出会い①

 水名女学園。神浜市水名区に存在する奎あずみの通う学校の名前だ。

 

 『水名の女子は格式と伝統を重んじ、歴史と土地に恥じない立派な女子になるよう努めるべき』という風習もあるためだろうか、偏差値も近隣の学校と比べて高いものとなっている。

 

 当然、そこに通うあずみも水名女学園の制服に袖を通しているわけだが、それがよくも悪くも目立ってしまっている。

 

 白いロング丈のボタンがついたブラウスの上に、薄い淡い紫の上着を纏っている特徴的な制服。

 

 あずみの可愛らしい容姿も相まって、良くも悪くも多くの人の目に触れている。

 

 なにせあずみが今いる場所は水名女学園ではなく、正反対の方向にある老舗の饅頭店だからだ。

 

「いらっしゃいませー! お土産にするなら、こっちのカスタード饅頭がオススメだよ! 店長のお孫さんが考えたとっても美味しいお饅頭だから、よかったら買っていって!」

 

「…………じゃあ、それを二つ」

 

「ありがとう! また来てくれると嬉しいな!」

 

 接客態度としてはお世辞にもいいとは言えないが、店に入った人を魅了して止まないその笑顔を求めて来る客は非常に多い。

 

 客寄せの役割を充分に果たしているためか、店の売上はあずみが来る前よりかなりよくなっている。

 

「ごめんなさいね。いつもお手伝いさせちゃって、学校もあるのに大変じゃないかしら」

 

 店の奥から出てきたのは四十代後半ぐらいの着物に身を包んだ女性だ。

 

 申し訳なさと感謝の入り交じった複雑な表情を見せる女性に、あずみは満面の笑みで答える。

 

「ううん。わたしは全然平気だよ。本当ならサボりはよくないけど、毎日行かなくても単位は取れるから大丈夫。むしろ、このお店のお饅頭がすっごく美味しいのにお客さんが来ない方がおかしいくらいだよ!」

 

「あらあら、あずみちゃんはお世辞が上手なのねぇ」

 

「お世辞じゃないよ! こんなに暖かい気持ちにさせてくれるお饅頭は、他じゃそうそう食べられない。断言する!」

 

「もう…………誉めても何にも出ないわよ?」

 

 と言いながらも、店長のおばさんはタッパー(三セット)にカスタード饅頭を積めていき、ビニール袋に纏めて突っ込む様は何処からどう見ても誉められて舞い上がっているようにしか見えないだろう。

 

 しかも、あずみは純粋に心から思って言っているからこそ余計に質が悪い。

 

 

 話は変わるが、現在の時刻は八時半を過ぎようとしていた。

 

 本来ならHRが始まっている時間帯、もう既に遅刻は確定的であろう。

 

 そして、状況は唐突に変化する。

 

 あずみの魔法少女としての探知能力が魔女の魔力を捉えたのだ。

 

(距離はそこまで遠くない。被害が出る前に、最速で叩く!)

 

「ごめんね、おばさん! わたし急用が出来ちゃった!」

 

「あずみちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ♦️♦️♦️♦️ 

 

 

 

 

 

 

 

 お店から飛び出し、魔女のいるであろう路地裏へと駆け込んでいくあずみ。

 

 しかしその際、とぼとぼと俯きながら歩いている少女にぶつかってしまう。

 

「わわっ!」

 

 あずみは全力疾走に近いスピード出していたため、そのまま勢い余って少女を押し倒してしまう。

 

「痛たた…………。ごめんね、急いでて周りをよく見てなくって…………ッ!」 

 

「いえいえ、お気になさらず! ボクこそ前方不注意だったので、ごめんなさいです!」

 

 鼻先が触れ合いそうなほどの超至近距離、傍目から見れば路地裏で神聖な行為に及んでいるように見えるかもしれない。

 

 そんな状況下でありながらも、あずみは驚きのあまりとてもではないが動ける状態ではなかった。

 

 黄緑色の長い髪はポニーテールに纏められ、エメラルドを思わせる瞳はとても美しい。

 

 あずみはすぐにこの少女の正体にたどり着いた。

 

 安名メル。

 

 占いが大好きで、日々の行動を占いで判断する。

 

 その時の運勢によっては学校を休もうとする困った面がある。

 

 そして、いずれは魔女になる運命にある魔法少女。

 

 あずみが救わなければと考えていた魔法少女の一人でもあり、どうにかして会いたいと考えていたのだ。

 

 どうやらたまたま、メルの言う運勢が最悪な日にかち合えたということらしい。

 

「あ、あの…………そろそろどいてもらっていいです? 顔が、その…………近いので」

 

「…………あ、ごめんね。いきなり目の前に可愛い顔があったから驚いちゃって」

 

「か、かわっ…………」

 

 ポンっと湯気を立て、顔を熟れたトマトのように真っ赤にするメル。

 

 メルから身体を離し、魔女の結界の方向を見据える。

 

 あずみが見据える方向に何があるのかを理解したのか、メルは真っ赤だった顔を青ざめさせあずみの肩を掴んで引き止める。

 

「この先に行ってはダメです! 早くこの場を離れないと…………」

 

「えっ?」

 

 言われて初めて気づいたと言わんばかりに、あずみは変身を済ませてしまう。

 

 願いの影響によってか、あずみの衣装は『昴かずみ』のそれと酷似していた。

 

 露出が少ない白を基調とした衣装を前に、安名メルは目を見開いて驚きを露にしている。

 

「あなたも魔法少女だったですか!? であれば、二人で一緒に魔女を倒しませんか? 十七夜さんに無理矢理引きずり出されてムシャクシャしてたところです!」

 

「もちろん、大歓迎だよ! わたしは奎あずみ! よろしくね!」

 

「ボクは安名メルです! よろしくお願いしますです!」 

 

 

 ここに足跡の魔法少女チームが結成された。

 

 魔女を倒すため、死の運命を回避するため、目の前の魔法少女を救うためにあずみは彼女の手を取る。

 

 自分がいる限り、絶対に絶望の未来に進ませはしないと。

 

 

 

 

 

 




メルちゃんには生きていて欲しいという私のわがままでごぜえます。

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