「ごめんなさいね...小町さん。」
「いえいえ、まさかこんなことになってしまうとは...」
雪ノ下束が退室した後、雪ノ下雪乃は比企谷小町に謝っていた。
「でもすごいですね、これ。」
「そうね...姉さんがいつもつけているうさ耳と同様のものだと思うのだけど改めてみるとすごいわね。」
と、取り外されたカチューシャ型の猫耳と尻尾に視線を向ける。
「あの人って、雪乃さんのお姉さんなのですか?」
「あら、気がつかなかったかしら。小町さん。雪ノ下の姓があるからすでに気が付いているものだと思っていたけど...束姉さんは私の七つ上の姉さんよ。」
「姉だったのか。意外だな。」
「そうね...正直、私もあの人の妹であるとは今でも信じられないわ。」
と、雪ノ下はうつむく。
「そういえば、もう一人姉がいなかったか?」
「ショッピングモールであった、陽乃姉さんのことかしら?」
「そうそう、陽乃さんしかり、お前の姉さんすごい人だらけだな。」
「そうね...束姉さんは私が数百人集まったところで追いつける気がしないもの。」
「そうじゃねーよ。」
と、同様の件になると思いつつ俺は口を開いた。
「何というか、あそこまで他人に無関心というのも珍しいなと思ってな。」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。でも私に猫のカチューシャをくれたよ。」
と、小町が口をはさむ。
「小町、束さんがお前の対応をしているときお前の要望に耳を傾けたことがあったか?」
「うん、まあ確かに。」
「そうだろ。だけどその反面、雪ノ下に対してはいろいろ手を貸したり話を聞いたりしている。だから今年で24、25だというのに、人に対してここまで露骨に興味がないという態度が取れることがすごいな、と思ってな。」
「そうね...」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「平塚先生、どうしたんですかこれ?」
と、肝試しの打ち合わせ後に、外に出てみると近くに平塚先生がそして隣に何やら縄でぐるぐる巻きにされた人がいた。
「おお、比企谷か。雪ノ下束だよ。束。あまりにも勝手に動きすぎるのでな...」
と、はぁと、平塚先生は疲れたように大きくため息をつく。
「何、やったんですか?」
「こいつは、肝試しを盛り上げるということで、ここら周辺を霧で覆わせたり強制的に月食を起こさせて月を赤くしたりいろいろなことをやっているからな。」
「え、冗談ですよね。」
と、自然と聞き返す。
平塚先生は、こういったくだらない噓はつかないはずである。現に軽く雲で覆われているが夕日が見える。
すると、平塚先生は、頭を押さえて、
「嘘だったらよかったのだがな...」
「
と、いつの間にか縄から抜け出していたのか雪ノ下束が平塚先生に後ろから抱き着いていた。
「束、どうやって抜け出した。」
と、とても驚いた顔をしている。
「そう私がぬけぬけと、縄にくるめられているわけないでしょ。ブイブイ」
と、両手をピースして平塚先生の周りをまわっている。
「
と、頭の上についているうさ耳を、シュンとさせた。
「んな、わけあるか。」
「苦労しているんですね先生は。」
「はぁ。本当にな。」
と、平塚先生は、遠くを見る。
「ねえねえ、
「仕方がない、この後小学生の指導をするから手伝え、決して私のそばを離れるんじゃないぞ。」
「幼稚園児の対応だな。」
「オッケー。まっかせて。じゃあ行ってく...」
と、束さんが走り出そうとする。
それを、平塚先生は首根っこを捕まえる。
「どこに行こうとしているんだね。」
「とりあえず研究所に戻って、小学生に言うことを聞かせるy...」
「もういい、とりあえず私の後についてこい。それだけでいいから。」
「必死だな。」
と、俺は苦笑いをこぼした。
「すまないが、肝試しのほうは手伝えそうにない。後は、任せたぞ。」
と、平塚先生に視線を送られた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
肝試しが終わり、怪しく輝く赤く染まった満月を片目にしつつ平塚静は、元凶である一匹の大きな兎を抱えながらログハウスに帰っていく。
「ところで、肝試しはどうだったの?雪乃ちゃん怖がっていた?」
「んな、わけあるか。雪乃はおどかす側だよ。」
「ちぇー。せっかく怖がるシーンが撮れると思ったのに残念。」
と、落ち込んだせいか、うさ耳が垂れ下がる。
「ところで、お前印の猫耳と尻尾を付けたやつがいたが問題ないのか?」
「猫耳と尻尾......ああ、あの子ね。全然問題ないよ。あんなもの。雪乃ちゃんも喜んでくれたみたいだしね。」
「そ、そうか」
「そうだ。
「いや、まったく。」
と、平塚静はしらを切った。
少しは興味はあったが、言葉にすると面倒なことになるとわかっていたからだ。
「ふーん。」
と、私の顔をしたからのぞき込む。
「なんだね。本当は、ほしいんじゃないかなーと思ってね。」
「そんなわけあるか。」
と、顔をそらす。
「ほらー、顔をそらしたー。
と、即見破られてしまった。
「さてさて、どうしよっかな。」
と、蟹股歩きで私の周りをまわりながら全身を嘗め回すように見られる。
「そうだねー。
「やめろ、気持ち悪い」
と、私の周りをまわっている束の頭をつかむ。
「まって、まって、3サイズはかっていたっだけだけだよ。ほお、お胸が1.2センチのびtt...痛い痛い痛い。」
と、こめかみをぐりぐりする。
そのようにじゃれていると、唐突に
ぴぴ、ぴぴ、でんわ、電話だよー。
と、可愛らしい声が聞こえてきた。
束は、一瞬で私の手から抜け出し、ポケットの中からピンクのスマートフォンを取り出し電話に出た。
「うん、どうしたの?」
「もう結果出ちゃったの?りょーかい。」
と、軽くやり取りをすると、こちらに帰ってきた。
「と、言うわけで研究所に帰るねー。狼耳と尻尾は期待していてねー。」
と、一言を残し、私とは逆方向に全速力で向かっていった。
「本当に、嵐みたいなやつだな。」
私は、独り言ちログハウスへと戻っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
サポートボランティアの役割を終えた私は、平塚先生が運転する車で総武高校の正門まで来ていた。
そこには、
「雪乃ちゃーん。昨日ぶりだね。」
と、自由気ままな姉がそこにはいた。
「束姉さん...帰ったはずじゃ。」
「雪乃ちゃんと、陽乃ちゃん、二人に会えるってわかったからね。待機してたんだよー。ほらあそこ。」
と、束姉さんは指をさす。
そこには、こちらに向かって走ってくる高級車が一台あった。
「え、?」
「お母さんの考えることも見え見えなんだよねー。単純すぎてバカに思えちゃうくらい。
と、呆けている私を放って平塚先生のほうに向かっていった。
「昨日、おとなしく帰ったと思ったらこれか。」
「そうだよ~。それでね、これ、つけてみてよ。」
と、狼の耳と尻尾を渡される。
普通に買ったものならまだしも、束印の製品だ。つけないにこした、ことはないだろう。
私は、なんとかつけるのを避けるために、
「ああ、ありがたく受け取っておくよ。」
と、返す。すると、そううまくことは運ぶことはなく、
「えー、せっかくだから装着してみてよ。」
「勘弁してくれ。」
「えーしょうがないなー。」
と、言うなり束は、雪ノ下のほうへと向かっていった。
「お、とまったじゃん。」
と、同時に陽乃ちゃんが、車から出てきた。
「はーい。雪乃ちゃん。」
と、いつも通りの姿の陽乃ちゃんが出てきた。
と、同時に、束は、
「は、る、のちゃーん会いたかったよー。」
と、宙に飛び上がり、陽乃の首に抱き着いた。
「え、束姉さん。いたの?」
「そうだよー。陽乃ちゃんに会いに来たんだよー。」
と、頬を摺り寄せる。
陽乃は、嫌な顔をせず、手慣れているように、束の頭をなでる。
「えへへへ。」
「それよりも、雪乃ちゃんに用があるんだけど。」
と、陽乃は一通り束を撫でまわした後、雪乃に向きいう。
雪乃は、肩をびくっとさせ、陽乃たちのほうに振り向いた。
「ね、姉さん」
「どうせ、母さんが、雪乃ちゃんに帰ってこいって言いたいだけでしょ。そんなことよりも、どう私の研究室に来ない?せっかく三人姉妹そろったんだし。」
と、戸惑う雪乃を物理的に担ぎ上げて束は、陽乃のところまでもっていく。
雪ノ下は、困惑を隠せない表情をしながら、
「ほら雪乃ちゃんもどう?」
「え、え?」
「即座に否定しないってことは問題なさそうだね。じゃあ行こうか。」
「束姉さんに言われたんならしょうがないわね。で、どうやっていくの?」
「そりゃあ、もちろん。大空を見よ。」
と、陽乃はあきれた声で言う。
束は、雪乃を、御姫様抱っこをしながら、空を指さす。
すると空より一つの金属箱が道路に落下してきた。
「それは、」
「じゃん、じゃじゃーん。」
と、束が言うと、金属箱の中身が現れた。
中には、真っ黒な車体をしたバイクと、それに付属するサイドカーがあった。
「これは...アストンマーチンの100台限定販売の新車か?」
「おー、流石
と、御姫様抱っこをしていた、雪乃を、サイドカーに乗っける。
「えっと...」
「ほら、陽乃ちゃんも早く後ろに乗って。そんなわけで、今度は私のバイクで、デートに行こうね
と、束は、二人を乗せて走って行ってしまった。
「行っちゃったね...」
「そうだね。なんか、すごい人だったね。」
「ああ、そうだな。あきれるほどすごいやつだよ束は。」
「.........。」
と、皆は取り残された運転手が困ったように通話しているのを片目に話していた。
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