トロフィーを獲得しました ー銀色の景色ー   作:ウホホ・ウホホイ

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Chapter.20 選抜レース②

私は本日、芝1200mの選抜レースに出走を決めたとあるウマ娘である。

 

小さい頃はクラシックディスタンスで3冠を夢見ていた。

しかし、そんな儚い夢は2年前あるウマ娘とレースしただけで軽く吹き飛んだ。

 

地元では負け知らずで、自分のことを類まれなる才能に恵まれたエリートだと思っていた。

だがトレセン学園に進学してからは、そんな戯言は一度も思ったことは無い。

 

私は彼女と一度走っただけで、クラシックディスタンスの夢を諦めた。

この魑魅魍魎の中で生き残るためには、その選択を取るしかなかったんだ。

 

同級生の中にも、王道路線を夢見ていた子たちがいっぱいいた。

そんな彼女らも、あのレースでの絶望が原因でダート、マイル、そしてスプリント路線に進路変更していった。

 

中距離をどうしても諦められない子はクラシック期をトリプルティアラ路線で過ごし、

シニア級になったらマイル路線に切り替えようとしている。

 

なんて酷く醜い足掻きなのだろうか。

 

とにかく彼女と同じ舞台に立ってはならない。

プライドをかなぐり捨ててでも、中央で生き残るためにはそうするしかない。

 

私も断腸の思いで、スプリント路線に変更したウマ娘である。

夢を諦め、自分が勝てる希望を見出せる環境を選んだのだ。

 

中距離から短距離に進路変更することは容易ではない。

使う筋肉やレースの感覚、仕掛けどころなど大きく変わる。

距離が減っただけなのだから、走るペースを早めればいいという単純なものではない。

 

進路変更してからの練習は本当に厳しかった。

教官も私の決意を真面目に受け止めてくれて、遅くまで練習を見ていてくれた。

 

確かにきっかけは諦めだったかもしれないけど...今は将来日本を代表するスプリンターになるためにこの選抜レースの1200mのレースに出走する。

 

ここで結果を残し、チームリギルやスピカなどの有名チームに入って重賞レースを勝ちまくって、応援してくれる地元の人達に恩返しするんだ...!

 

そんな決意を胸にレースに臨むのだが、今日の出走表を見て違和感を覚える。

 

私は日々の練習では、基本的に同学年の子達には大きく勝ち越している。

 

私の家は逃げの家系で、逃げの技術を代々受け継いできた。その恩恵もあり、逃げから先行が有利とされている短距離戦において、2年という短期間で勝てるまでに成長した。

 

しかし、今日の出走表に短距離で見慣れない子の名前があることに一瞬で気づいた。

 

「シルバー...メモリー...」

 

シルバーメモリー、彼女はクラス違いではあるが同級生のウマ娘である。

 

彼女と話したことは無いが、噂はかなり耳にしている。

曰く坂路練習しかしないだとか、曰くトレーニングルームに住んでいるとか、曰くゲートの中で睡眠をとっているとか。

 

彼女の気狂いエピソードは学園内でもかなり有名だ。

 

また、あのミスターシービーやシンボリルドルフと一緒にいるところをよく見かける。

半年ぐらい前は中距離用のターフでは、毎日のようにあの3人が並走していた。

ウォーミングアップ中にも仲睦まじい姿を見せていた。

 

しかし、私には正直彼女が皐月賞ウマ娘であるミスターシービーと

私達に絶望を与えたシンボリルドルフと肩を並べる存在には全く思えない。

 

彼女らの並走を見ても、シルバーメモリーが先着したところは見たことは無いし、私から見ても平々凡々のウマ娘にしか思えない。

 

そもそもシルバーメモリーは中距離王道路線を目指していたはずだ。

その3人でいつも並走していたことが何よりの証拠。

 

中距離以外の路線を目指していたのであれば、中距離での並走は意味がない。

 

しかし、そんな彼女は今日こうして1200mのレースに参加を表明している。

 

正直出走表を見る限り、私の敵となり得る子はいない。

しかしこの銀髪銀眼のウマ娘がどうも気になる。

 

中距離路線を諦めて短距離レースに参加したのか...それとも気まぐれでの参加か...

 

どちらにせよ、この出走は私達を舐めているとしか思えない。

 

今日このレースに参加する子達は、皆スプリント路線に誉を思い出走を決めている。

最初は諦めだったり、空き巣狙いだったり不純な思いはあっただろう。

 

しかし、鬼教官の下で距離適性を無理矢理変える地獄のような特訓をこなしてきた過程で、私達の魂は立派な短距離選手そのものになったんだ。

 

だから私にもプライドがある。

 

こんな舐めた出走をするウマ娘に1着を取らせるわけにはいかない...!!

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

『レースがスタートしました!!!!』

 

 

(よし...!!最高のスタートが決まった...!!)

 

完璧なスタートを決めて先頭に躍り出る。

 

1200mという高速の電撃戦では、最初にハナを奪ったウマ娘がそのままゴールすることが多々ある。

逃げの家系である私は、最初からこの戦略で戦うこと決めていた。

 

(開幕で後続に1バ身差を確保できたのは行幸...!このまま逃げ切ってやる!!!)

 

こうなってしまえば勝利の黄金パターン。

 

このペースを維持すれば私に勝てるウマ娘は同級生にはいない。

 

(シルバーメモリーの姿が見えない...やはり気まぐれでの出走か)

 

ちらりと後ろを振り返るが、気になっていた銀髪の子の姿が確認できない。

慣れていない短距離だ。中距離とは比べ物にならない開幕の苛烈なポジショニング争いに飲まれたのだろう。

 

(所詮は中距離志望だったってことか...気にするほどじゃなかった)

 

(このまま経済コースを独占した状態で最終直線に直行する....!!!)

 

 

 

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最終コーナーを回り、最終直線に入りかけた瞬間

 

ドン!!!!!と

 

背後から何かが吹き飛んだような爆音が一つだけ炸裂した。

 

(えっ何...!ッ?)

 

脳裏では、このままとんとん拍子にレースを支配できると確信していたため、

あまりにも唐突な出来事に後ろを振り向いてしまった。

 

振り向いた瞬間

 

私の背後から、銀色の何かが先頭を走るウマ娘を食い殺す勢いで突っ込んできた。

 

(..........ッ!!!!???)

 

その銀色のウマ娘は、コンマ数秒の間で私が支配していた経済コースを奪い去った。

 

(なんで!!!???あの子はバ群に飲まれたはず...!!そもそも私の近くにいなかったのに!!!)

 

電撃戦では一瞬の思考の乱れが命取りになる。

1200mというあまりにも短いレースでは、気の動転を立て直す時間など存在しない。

 

(やめて!!!私から短距離も奪わないで!!!!!!!!!!)

 

最終直線に差し掛かる手前で、逃げウマ娘が先頭を取られた。

この現象はレースを知るものには、あまりにも重い事実として捉えられる。

 

事実上の敗北。

 

逃げという戦法は、序盤から中盤にかけてレースを支配できる代償として最終直線での末脚勝負は不可能である。

 

(やめて.....!!お願いだから...!!)

 

前を封じられ、最短距離を駆け抜けるルートは奪われた。

 

そんな逃げウマ娘を待っているのは、末脚勝負してくる後続の猛追である。

 

一人に抜かされ、二人に抜かされ、三人に抜かされ...

 

(あっ....あっ...ああああああ)

 

練習で負けたことがない子にも抜かれて...

 

私がゴール板を駆け抜けたとき、私の後ろには誰もいなかった。

 

 

 

-----

 

「ハハッ...!アハハハハハ!!!!!」

 

なんだこれは

 

あの時の絶望を遥かに凌駕する衝撃が走る。

 

当の一着を取った銀髪の子を見てみると、勝利の余韻に浸るわけでもなく、さっさとターフの外に走っていった。

 

「アハハハハ......なにこれ......」

 

笑いが止まらない、なんだこの茶番は。

 

これが中央なのか。

 

決死の思いを胸に、今日のレースに臨んだのに

 

私を支えていた闘志の炎が、今完全に消し飛んだ。

 

「うっ...うっ...うえぇええ!!っげぇ!!!」

 

唐突に体液が至る所から噴出する。あまりの気持ち悪さに思わず膝をつく。

 

もう、ダメかもしれない。立ち上がる気力など一切湧いてこない。

 

...そうか、私はここにいるべきじゃなかったんだ。

 

そうだ、そうだよ。こんだけ頑張っても重要なレースで勝てないのだから。

 

私程度の才能が中央で走るなんて、めちゃくちゃ失礼なことだったんだ。

 

こうして、私は地方に転校することを決めたのであった。

 

 

 

-----

 

 

「さて、次は1600mか...」

 

銀色のウマ娘は、人生で初めて一着を取ったにもかかわらず

()()()()()は気にも留めず次のレースに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 




うお~!!銀髪の子が勝ったあああ!!次もがんばえ~~!!!

いつも高評価、ご感想、誤字のご指摘、誠にありがとうございます。
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