ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
スオムスは雪国である。その雪深さには目を見張るものがあり、時には空軍基地にとって必須である滑走路さえ雪に埋まる日があるという。
秋の深まる11月。しかし、北欧に位置するスオムスは事実上の冬を迎えていた。
眼下には一面の銀世界が広がっている。ウィーンの冬も十分に冷えるが、これほどではない。防寒着を貫く刺すような冷たい空気は慣れるのに時間がかかりそうだ。
「ようこそ。スオムス空軍カウハバ基地へ。エースの到来を歓迎します。私は司令部所属のハッキネン大尉です。以後、よろしくお願いします。」
「…オストマルク空軍所属、マルグレーテ・ホールンマルク少尉です!こちらこそよろしくお願いします。」
景色に気をとられ、反応が遅れたが怒っている様子はない。細かいことだが、気にする人は気にするのだ。
先日、軍楽隊による演奏と共に大袈裟に送り出されたものだから“どんな激戦に投入されるのか”と戦々恐々としていたが、どうやらそれほどでもないらしい。
「失礼します。」
先に雪上車に乗り込んだ記者さんの手を借りて年代物のそれに乗り込む。こういうとき、足を負傷していると不便だ。ちょっとした動作が円滑にできない。
「それでは出発します。」
心配になるくらいに揺れる車内で外を眺める。ハッキネン大尉は口数の多い人ではないらしい。…まぁ、それはそれで楽で良いのだが。
あまりの振動に顔を真っ青にした記者さんが上を見たり外を見たりと視界の隅で忙しい。ウィッチとなり三半規管が鍛えられたからこそ、平然としていられるが常人なら吐いても仕方ないと思う。その点、彼は頑張っているといえるだろう。
「基地が見えてきました。一度そこでマルグレーテ少尉には降車していただいて、以降はエルマ・レイヴォネン中尉の指示にしたがってもらいます。それ以外の方は私が案内いたしますので、よろしくお願いします。」
その言葉に青白い顔で目を見開く記者。なんとか理由をつけて降りようとするものの、「規則ですので」と一蹴されている。私のような少女と移動してきたことで忘れているのかもしれないが、れっきとした軍事施設だからね。他国の記者が好き勝手できる道理はない。
…うん、同情はするけど私にはどうにもできないかな。
「あそこでスコップを片手に手を振っているのがレイヴォネン中尉です。…何をやっているのかしら?」
見えてきたのは随分と年期を感じさせる外見の建物だった。オストマルク軍のように気取った外見でもなく、無駄を削り落とした武骨な印象を受ける。
エルマ中尉は優しい人だった。私が足を怪我していることから滑らないように雪を退けていてくれたらしい。ウィッチであり中尉である彼女が行う必要はないと思うけれど、何となく人となりがわかった気がする。
「私がエルマ・レイヴォネン中尉です。今日から、よろしくね?」
まさか敬礼ではなく、手を差し出されるとは思わず反応が少し遅れてしまった。なんとか動揺を隠しながら握手に応じる。
「マルグレーテ・ホールンマルク少尉です。不束者ですが、よろしくお願い致します。」
なんだか微笑ましいものを見るような目で見られているような気がするが、その辺りは気にしないことにした。9年もやっていれば少しは慣れるものである。
「カウハバ基地へようこそ。一緒に頑張ろうね。」
自然な流れで手を引かれたことに驚きながらも私は任地に到着したのであった。