ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女-   作:バイオレンスチビ

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1-02.愉快な仲間たち

手を引かれて案内され、辿り着いた部屋には張り紙がしてあり、そこには≪スオムス義勇独立飛行中隊≫と手書きされていた。

 

「さぁ、入って入って。」

 

レイヴォネン中尉に背中を押されるまま、ドアに手をかけた。なんだか、転校生になった気分だ。転校などしたこともないが、とにかく人見知りをする私にはキツい。

 

ガラガラッ…

 

「失礼しま…した。」

 

そして私は静かにドアを閉じた。見るからに機嫌の悪そうなウィッチの目線にビビったわけではない。決してそんなことはない。そんなことはないのだ。

 

「ど、どうしました?」

 

どうしたもこうしたもない。ウィッチ(未成年)なのに堂々と葉巻を加えてる人、見るからに苛立ってる人、なんか大きい人。…どうしろと?

 

「…取って食われるかもしれない。」

 

上手く口には出せないが、身の危険を感じた。

 

「食われませんよ!?」

 

これが各国から集められたエース。なるほど、養成所上がりの新米ウィッチとは空気が違う…。

 

「頭からバリバリ食われるかもしれませんっ…!」

 

「大丈夫ですよ。たぶん、みんな良い娘ですよ。たぶん。では、一緒に入りましょうか。」

 

たぶんって二回もいったよ中尉さん。でも、義勇独立中隊のトップは中尉だから一緒に入れば安全なのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして、私がスオムス義勇独立飛行中隊の隊長を勤めるエルマ・レイヴォネン中尉です。みんな、がんばろうね!」

 

頑張れ。頑張るんだ中尉さん。この淀んだ空気に負けないでください。

 

「スオムス義勇独立飛行中隊って長いと思うので、名前を変えてみたいと思います。私が考えてきたのは、ペンギン中隊です。かわいいし、寒いしピッタリでしょ?」

 

…みんな何か言おうよぉ!ほら、中尉さんが頑張ってしゃべってるんだよ?直属の上司だよ?

 

「良いと思います!ペンギン、かわいいと思います。それに“落ちない”鳥だから縁起も良い。」

 

とりあえず、持ち上げていきましょう。

 

「スオムス義勇独立飛行中隊のままで良いわ。そもそも、ペンギンは飛ばないじゃない。」

 

…扶桑の人、空気読んでください。何でマジレスするのさ。扶桑人って空気読むとか気遣いとか得意なタイプじゃないの?そして何故そんなに不機嫌なの?あと、怖いからイライラを表に出さないでください。

 

「…そ、そうですね。それにペンギンさんは南極ですね。うっかりしていました。」

 

縁起とかそういうことじゃなくて、天然だったんですか中尉さん…。

 

 

「じゃ、じゃあ…。えっと、自己紹介をしていきましょう!一番窓際の人から順番にお願いします。」

 

自己紹介。学校を思い出しますね。クラス替えの度にドキドキしていたのを今でも覚えています。昔から人前に出ると緊張してしまうから苦手だったんですよね。

 

「エリザベス・f・ビューイング。ブリタニア軍、階級は少尉だ。」

 

タバコのお姉さんはビューイング少尉。大丈夫、メモしました。

 

「…えと、終わりですか?好きな食べ物とか特技とか他に何かありませんか?」

 

そうそう。円滑な人間関係は相互理解からって偉い人もいうじゃないですか。

 

「聞いてどうする。」

 

ど、どうするって…。そこは、素直に答えましょうよ。中尉さん、困ってるじゃないですか。

 

「じゃあ、ストライカーユニットは?」

 

そうだね。気になるよね。これから一緒に仕事するんだもの。扶桑の人はわかってるなぁ。

 

「ハリケーンだ。」

 

ビューイング少尉は、そうやって一言で回答を終わらせ、足を組み直して新しいタバコに火をつけた。もう話すことはないらしい。

 

「…つ、次の人!」

 

今にも逃げ出したい空気だが、エルマ隊長が頑張っていらっしゃられる…!私だけ逃げるわけにもいかない!

 

「ウルスラ・ハルトマン。所属はカールスラント軍。階級は曹長。私はすべてを教科書から学ぶことを信条としております。よって、隊長にもカールスラント軍人の規範に沿って行動していただきたく思います。」

 

そう言ってカールスラント語の表紙を持つ本を隊長に渡すのは、基本的に本から目を離さない読書好きのウルスラ・ハルトマンさん。一番年齢が近そうだし、私も読書好きだから仲良くなれたら良いな。

 

「ここ、スオムスなんですけど…。」

 

中尉、強く生きてください。

 

 

 

「私はキャサリン・オヘア。クラッシャー・オヘアとは私のことネ!リベリオン軍の少尉でーす。ストライカーはビアスター・バッファロー。」

 

なるほど、新大陸の人だからブリタニア語に癖があるのかな。最初はなんか大きくて怖い人かと思ったけど、そんなことないのかもしれない。

 

「特技はこれネ!」

 

…銃声。椅子から転がり落ちるように倒れ、そのまま床に伏せる。

 

「oh!ソーリーね。でも空砲だから大丈夫ね!」

 

足を怪我しているのを見かねてか、立ち上がるのに手を貸してくれるオヘア少尉。ありがたいけれど、さっきのは実弾ですよね…?レイヴォネン中尉の横に設置された黒板には真新しい銃痕。

 

…部隊結成の当日に危うく殉職者が出るところだった。

 

 

「私は、オストマルク空軍所属のマルグレーテ・ホールンマルク少尉です。ストライカーユニットは扶桑の99式艦爆です。まだまだ新米の不束ものですが、よろしくお願いします。…あと、前の部隊ではグレーテルと呼ばれていました。よかったら皆さんもグレーテルって呼んでください。」

 

…ダメだこれ。さっきのオヘア少尉のピストルで台詞が全部どこかに吹っ飛んだわ。ごめんなさい、レイヴォネン中尉。私はこれ以上話せません。次の人に託します。

 

「迫水ハルカです。扶桑海軍所属で階級は曹長。使っているのは12試式艦上戦闘脚です。えっと、趣味は料理で好きなものは団子。お団子ってわかりますかね。お餅を丸めたような扶桑のお菓子なんですけど。」

 

「初めて普通の自己紹介が来た…」

 

そんなことに感動しないでください。

 

 

 

「扶桑陸軍所属の穴吹智子よ。階級は少尉。使用機材はキ27。」

 

先程から不機嫌な扶桑のお姉さんは穴吹さんというらしい。陸海軍で別々にウィッチを送ってくる辺り、史実西暦世界の大日本帝国の陸海軍の対立と同じで扶桑の陸海軍も仲がよくないのだろうか。

 

「トモコ少尉は扶桑海事変で7機を撃墜したエースです。そんな偉大なウィッチがスオムスに来ていただけたこと、本当に頼もしく思います。」

 

中尉が誉める。なるほど。少し前に映画になった『扶桑海の閃光』の主人公が彼女だったかもしれない。名の知れたエースほど心強いものはない。

 

「…ありがとう。」

 

少し機嫌がよくなったか…?

 

「訓練とか色んな場面で頼らせてもらうことになるかもしれないけど、よろしくね。」

 

 

 

「それは私に一任してくれると考えてもよろしいですか?」

 

 

 

 

 

 

…結論として、スオムス義勇独立飛行中隊は、とんでもない集団であった。カールスラント、扶桑、ブリタニア、リベリオンといった列強から派遣されてきたのは一癖も二癖もあるウィッチばかりであったのだ。

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