ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女-   作:バイオレンスチビ

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1-03.模擬空戦

歓迎会をしようというレイヴォネン中尉を遮って今すぐにでも模擬空戦をしようと提案され、穴吹少尉の提案が通った。

“せっかく準備したのに…”そう言って肩を落とす中尉には“運動してお腹を減らしてからってことですね”なんて声をかけておく。

…まったく、せっかく歓迎してもらっているのに穴吹少尉は何をそんなに焦っているのだろう。私などは慣れない長距離の移動で体力を消耗しちゃって、できれば今日は飛びたくないのに。

 

 

「ハルカ曹長、私と組みませんか?」

 

私は基本的に夜戦ばかりしてきたウィッチなのでエース相手に勝てる気がしない。ならば、徒党を組んで囲んで棒で叩くのが正解だ。

 

「私を相手に全員でかかってきなさい。」

 

幸いなことに穴吹少尉は一人で全員を相手取るつもりらしい。だからこれはルールに抵触しない。実際、レイヴォネン中尉はハルトマン曹長にロッテの相方をお願いしている。(ロッテ戦術はカールスラント発祥の二人一組で行う戦い方なのでカールスラント軍人である彼女に持ちかけるのが合理的なのだ。)

ここで私はハルカを選ぶ。それは私の使用するストライカーユニットがハルカの所属する扶桑海軍で使用されているものと同じであるためだ。メーカーこそ違うが、設計思想や性能が近く連携には適しているはずと考えた。

 

「私、下手ですよ?」

 

どうやら自信がないらしい。本来なら爆撃を担当するウィッチを空戦ウィッチが護衛するのだが、確かに今回は逆にした方がうまくいく気がする。つまり、ハルカを襲撃する穴吹少尉を上空から急降下して叩く。そして、逃げる。ヒット&アウェイってやつだ。

 

「じゃあ、穴吹少尉の気を引いてもらえる?」

 

「あ、穴吹少尉の気を引く…!」

 

なぜか、とっても嬉しそうなハルカ。端的に表現するなら囮になれって言われてるのに…。それで良いのか、空戦ウィッチ。

 

「もう、貴女のことしか見えなくなるくらいに気を引くの。それこそ視線を釘付けにする勢いでね。」

 

「や、やります!やらせてください。むしろやりたいです!」

 

どうしよう、本当に大丈夫だろうか。心配になるくらいにノリノリである。

 

 

 

 

 

 

空戦を始めると同時にハルカが機銃を文字通り乱射しながら穴吹少尉に向かっていく。遠すぎる。早すぎる。あれでは無駄撃ちも良いところだ。しかし、今回は当てることが目的ではない。攻撃を察知して反撃に転じる瞬間…。それを作り出すのが目的だ。穴吹智子は確かにエースだろう。しかし、どんな強者であっても攻撃のタイミングだけは防御が薄くなる。ならば私はそこを狙って上からペイント弾を叩き込めば良い。

 

上空でハンマーヘッドターン。急降下しながらの対空目標への攻撃となれば、木の葉落としに近いやり方になるが、基本は同じ。失敗すれば、終わるだけだ。

 

「よし、このまま…!」

 

ウィッチであっても所詮は人間である。二次元で生きてきた人間である以上、頭上への警戒は薄くなりやすい。

 

『やーらーれーたー!』

 

ハルカの少し嬉しそうな撃墜報告。楽しんでいるようで何よりだ。

 

「…ターゲットをセンターにいれて、トリガーを引く。」

 

機銃の照準に納められた穴吹少尉。しかし、まだ引き金は引かない。まだ少し早い。ここじゃ避けられる。

 

 

 

 

ズダダダッ!ズダダダダダッ!

 

反動による跳ね上がりは許容する。近距離ならこうした方がいい。そうすることで、強烈な反動からくる跳ね上がりと毎分1000発に迫るという常軌を逸した連射性能を利用してショットガンのように弾丸を撒き散らすことができる。

 

『…あっぶないわね!?』

 

シールドの隅を辛うじて捉えたようだが、避けられてしまった。どうやら直前に気づかれたらしい。…勘のいい人だ。こういう人なら落ちたりしないんだろうな。

 

「目標、健在。再度襲撃に入ります。」

『あ、こらっ!待ちなさい!』

後方から追いかけてくるのを耳で察知する。しかし、急降下した勢いそのままに逃亡する私は格闘に付き合うつもりはない。そもそも、この勢いで格闘に持ち込んだら速度が出すぎて制御しきれないし、下手をすれば機材が壊れる。

 

このまま低空まで逃げて誰かに助けてもらおう。私を追って高度を下げた穴吹少尉を襲撃してもらうのだ。先生もいっていた。空戦の常道は上を取ること。お掃除と同じ。上から下なのだ。

 

 

 

…ん?

 

 

 

 

「ヤバイ、ヤバイ、これって完全にやらかした!?」

 

私は下に逃げる。高度を速度に変換して逃げる。それは良いだろう。しかし、しかしである。ここに来て気づいた。誰も助けてくれる気配がない。このままだと完全に上をとられることになる。地面と穴吹少尉によるサンドウィッチの完成だ。

 

「うってきてるよ、うってきてるよぉっ…!?」

 

ループやロールで避けるべきかもしれないが、そうすれば速度が死ぬ。追っ手との速度性能はそんなに変わらない。穴吹少尉のストライカーユニットと私のストライカーユニットは同じ扶桑軍の使用する機材なのだから道理である。つまり下手な機動をいれると追い付かれて強引に格闘に付き合わされることになる。

 

「当たれっ、当たれ…!」

 

グリップを握り直して機関銃を後方に向けて弾丸を撒き散らす。即座に応射。弾丸は頭上を押さえるように飛び、私を牽制する。ダメだ。振り切れない。もう時間がない。時間が足りない。

 

「すみません、本当にごめんなさいっ…!」

 

地面が近づいてきた。建物の屋根が鮮明に見える。雪に半ば埋もれた滑走路らしき部分とそこに並んだ雪だるま。除雪作業中の兵隊が空を見上げる。

 

「もうしませんからぁっ!」

 

…このままだと、死ぬ。

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