ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
非番だというのに朝から穴吹少尉に叩き起こされた。どうやら朝練などという謎の文化を持ち込みたいらしい。ちなみに私は元々ナイトウィッチとして訓練されていた人間である。(よほどなことがない限りは)夜通し空を守り、朝には床につく生き物である。
「集まったのは、これだけなの?!」
集まったのは右から穴吹少尉、ハルカ、ウルスラである。ここにいないのはエルマ中尉、ビューイング少尉、キャサリンである。
「本当にこんなに朝早くする必要が…?」
スオムスは確かに殺人的に寒いが本土決戦となったオストマルクと比較すれば天国である。なぜか?そんなことは簡単だ。外で寝ていたら死ぬという点では共通するが、後者の場合は屋内で寝ていても殺されるのだから比較することすらバカらしい。こんな恵まれた場所で何をそんなに生き急ぐ必要があるのだろう。
「何よ。文句でもあるの?」
そういえば、昨日の歓迎会が終わったあとに召集されて朝練をすると言われたような言われていないような…。
「はい、いいえ。ないです。」
正直、昨日は色々と疲れていたので眠たくて眠たくて仕方がなかったのだ。あまり覚えていない。
「トモコ先生、エルマ中尉は会議があって休みです。」
とりあえず、朝から元気な穴吹少尉を茶化しておきましょう。決して昨日の疲れが抜けきっていないところを文字通りに叩き起こされた報復ではない。決してこれは混乱のあまり“うっかりお母さん現象”をぶちかました報復ではないのだ。
「誰が先生よ!」
「先生、先生。この迫水ハルカに個別指導をお願いします!課外授業でも良いです!」
下らない茶番とジョークは人間関係でも意外と使える便利な道具だ。…正直なところ昔から人付き合いは苦手なタイプだったが、私だってそのくらいは知っている。
「ちょっとハルカは黙りなさい。あとで色々と教えてあげるから。」
「手取り足取り教えてください!」
…なぜかクネクネしているハルカは置いておくとして、視界の端で気配を消して屋内に戻ろうとしているウルスラは問題だ。
「カールスラント軍は忠誠宣言とかしないの?」
前回の大戦において敵を前に逃げ腰になった将兵に対して『カールスラント軍人の忠誠宣言はどうなったのか』と視察に来ていたカールスラント皇帝が直々に問いかけ、戦線を押し上げたことは有名なエピソードである。
「…する。」
この忠誠宣言で注目すべきは『憲法』に従い『国家』『皇帝』『上官』に忠誠を誓っているという点である。つまり、軍人による上官に対する抗命はNGとされているのである。
ちなみにカールスラントと同じく神聖ロマーニャ帝国にルーツを持つオストマルクでも忠誠宣言は受け継がれている。また、壊滅した軍隊の再建をカールスラントに支援してもらったこともあり、軍隊におけるルールや文化にも近いものがある。
「私も忠誠宣言をしたんだ。私はカールスラント軍じゃなくてオストマルク軍の宣言なんだけどね。だから私は最期まで忠実でなければならない。」
教科書からすべてを学ぶという発言。エルマ中尉にカールスラント軍の規範について書かれた本を渡すという行動。そこから考えれば、彼女が非常識なほど真面目なウィッチであることがわかる。
「…ウルスラ曹長。初日ぐらいは参加しましょう?」
あまりこういうことはしたくない。階級を盾にモノを言うのは好きじゃない。しかし、愚かな私には彼女に参加してもらう手段が他に思い付かなかった。
「わかった。」