ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女-   作:バイオレンスチビ

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1-07.いらん子の洗礼

私は予備機としてBf109を受領していた。Bf109はカールスラント製のストライカーユニットで世界で一番生産されているユニットであるといわれている。オストマルクのウィーナー・ノイシュタットでは全体の25%を生産していたとされ、オストマルク軍でも広く使われていた。

予備機として99式とは真逆の特徴を持つBf109を押し付けられたのは、地球の裏側からの舶来品である99式に比べて調達が圧倒的に楽であったからだろう。

そんなBf109が見つからない。99式が奥の作業台で点検のために分解されている現在、私が使うことができるのは予備機であるそれだけである。しかし、どこを探しても見つからない。

 

「…予備機がないってどういうことですか?」

 

思わず棘のある声が出る。私の99式がオーバーホールされているのはわかる。あれだけ強引な着陸をしたのだから当たり前の話である。しかし、予備機がないとなると私は空を飛ぶこともできないわけで…。

 

「大変申し訳ないのですが、どこを探しても見当たらないのです。」

 

整備兵に矛先を向けるのは間違っているかもしれないが、私はここに戦争をしに来ているわけで予備とはいえど仕事道具を“なくしました”では困るのだ。そして、これが私の私物なら私が黙っているか警察に駆け込むかの二択だが、なくなったのは軍事物資でありストライカーユニットである。

 

 

 

 

 

「あら、こんなところでどうしたんですか?」

 

ちょうどいいところにアホネン大尉が来た。大尉ならば何か知っているかもしれない。

 

「恥ずかしながら、探し物です。私の予備機が見つからなくて…。アヴィア社で生産されたBf109を探しているんですが見ませんでした?」

 

一日目で墜落し、二日目で失せ物探し…。こうも不出来だと自分に嫌気がさす。

 

「…さぁ、見ていませんね。スオムスでは多種多様なストライカーユニットが使われています。世代もモデルもメーカーもバラバラです。もしかすると、誰かが持っていってしまったのかもしれません。」

 

持っていってしまったかもしれない?それはどういうことですか?

 

「困りました。ストライカーユニットは軍事技術の塊です。それに非常に高価な代物です。また、これがなければ航空ウィッチとしての仕事ができません。」

 

それは時と場合によっては始末書ものの騒ぎなのでは?教本には何て書いてあったかしら。

 

「言い方を変えましょう。我が軍には主力機であるBf109(メルス)を遊ばせておく余裕はないのです。銃も弾丸も足りないものばかりなのです。お嬢さん、お分かりになって?」

 

「…なるほど。」

 

つまり、私宛の物資を横取り(接収)したのだ。これは白黒つけにくいグレーゾーン。たしかに私宛の物資ではあるが、送り先はスオムス空軍のカウハバ基地。どう使われるかまでは明言していないだろう。

 

「納得してくれたようで何よりですわ。素直な子は好きよ。それじゃあね。」

 

何だかスッキリしないが、別にアホネン大尉が悪い訳じゃない。そもそも誰も悪いことをしてはいないはずだ。この件に関しては恐らく誰もルールを破ってはいない。

それに私が騒ぎ立てるのは得策ではない。

ここはスオムスであってオストマルクではない。仲良くやっていくためには多少の妥協(アウスグライヒ)も必要なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「信じられない!つまり、それって予備とはいえ貴女のストライカーユニットを勝手に使われているってことでしょう?」

 

朝から元気なのはいいことですが、もう少し音量を下げてください。

 

「仕方がないことです。きっと、何かの手違いですから。わざとじゃないかもしれません。スオムスでは良くあることらしいのですよ」

 

「大問題じゃない!?」

 

実際、今の私は飛ぶこともできないわけで。戦場においては何の価値もない小娘である。むしろ何もできないくせに一人分のリソースを食い潰す害悪ですらある。

 

「99式が使えなくなってしまったのは私の失敗ですし、点検作業も夜には終わるらしいですから。」

 

しかし、私が嘆き悲しんだところでどうしようもない。喚き散らしたところで事態は好転しない。

 

「…わかったわ。そこで見学してなさい。」

 

智子先生はますますご立腹。いやはや申し訳ない限りでございます。

 

「了解しました。」

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