ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
訓練の様子と着陸時の大騒ぎを見ていたアホネン大尉に笑われた。そして、それが悔しくないのかと問われた。私は何も答えなかった。誰も答えなかった。トモコ少尉はますます機嫌を悪くした。内容はよく覚えていない。扶桑語が混ざっていたところを見ると相当頭に来ていたようだ。
『もう貴女たちには期待しないから。』
ただ、その言葉だけが耳に残った。もう慣れてしまったはずだ。勝手に期待されて勝手に失望される。ただ、ここに来ても聞かされるとは思わなかった。別に今さら傷ついたりはしない。ただ、心が重たくなるような気がした。
「さ、いきましょう。ウルスラ、ご飯に間に合わなくなるね」
キャサリン少尉に促されるように私はそこを後にした。
朝からハッキネン大尉に呼び出されたのは新しいストライカーユニットの受領のためだった。新品のBf109。私の使っているローマーニャ製G.50と比較しても破格の性能を有している。
「これ、第一中隊の人と同じものですよね。余りがあったのですか?」
どう見ても新品だ。ご丁寧に取り扱い説明書までついている。
「はい、メーカーこそ違いますが同じE型。つまりBf109シリーズの最新型になります。また、これは先に調達したストライカーユニットの余りではなく、義勇軍を派遣してくれたオストマルクからの支援物資です。」
オストマルクかぁ。カールスラントと仲のいい国だ。スオムスもカールスラントとは仲良くしているけれど、オストマルク程ではないと思う。それに工業力もあって暖かいなんて羨ましいなぁ。
「G.50から乗り換えてください。」
私のG.50は色々と限界な機体を延命するために他のストライカーの予備パーツだったりネジや部品だったりを使って補修してる状況。きっとハッキネン大尉は私のために準備してくれたのです。そうでなければ、新品のストライカーユニットなんて手元に置いておけません。
「わかりました!」
これは期待に応えなきゃいけません。
「でも、G.50も使える状況にはしておいてください。第一中隊で故障した場合に困りますので。」
「…へ?」
G.50を予備としろと言うことでしょうか。
「新品のストライカーユニットを手元に確保し続けるためにはウィッチが必要です。使いもしない新型など持っていってくださいと宣伝してるのと同じですから。」
…それはつまり
「私のためじゃ、ないんですか?」
ハッキネン大尉は即答します。
「はい、違います。」
そんなにはっきり言い切らなくてもいいのに…。
「くれぐれも事故を起こしたりしないように。特に壊したり怪我をしたりしないように気を付けて使用してください。」
「わかりました。」
頑張らないと。新設された飛行中隊の隊長に抜擢され、理由はどうであれ新しいストライカーユニットを受領したのだから今まで以上に頑張らないと…!
「そういえば、どうして私をスオムス義勇独立飛行中隊の隊長にしたのでしょう。他に適任な人がいくらでもいたと思うのですが…。」
アホネン大尉に言われたように私の実力は決して良くありません。いえ、そもそも私は落ちこぼれていました。それをどうして推薦されたのでしょう。
「他に余っているウィッチがいませんでした。」
「やっぱり…」
そんな気はしていました。スオムスは今日も人手不足です。きっと明日も人手不足です。だからダメダメな私にも中隊長なんて重たい仕事が回って来てしまったのです。…でも、任されたからには頑張ります。みんなを守るためにとにかく前向きに。前向きに頑張ります!
「そろそろ朝食の時間が終わります。私は済ませてきましたが、貴女はまだでしょう。急ぎなさい。」
そのためにも早く中隊のみんなと仲良くならなくちゃいけません。
「はい、失礼しました!」