ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女-   作:バイオレンスチビ

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01.真夜中の魔女

ネット小説を含む多くの物語に描かれた転生者と呼ばれる存在は、きっと頭がおかしいに違いない。

彼らは躊躇いなく剣を振りかざして血を浴びる。そして、これを偉業とする。

【普通の】【平凡な】【どこにでもいる】そんな人間なら躊躇いなく人を殺したり、権力者に楯突いたりしない。ならば、単純に彼らは異常者なのだ。

 

あるいは私自身も既に化け物なのかもしれない。顔についた汚れと同じで、自分の異常性は自分では気づくことができない。この世界に転生して10年弱。人間が変質するには十分すぎる時間だ。

 

初めはあれだけ恐ろしくて震えが止まらなかったというのに、今の私は平然と何も思うことなく7.7㎜機関銃を手に空を飛んでいるのだから。

 

 

 

「こちら、グレーテル。これより攻撃を開始します。」

 

夜間においてネウロイの活動は低下する。無論、まったくのゼロではないが、現時点では夜襲こそがもっとも有効な攻撃手段であった。

 

私の装備は扶桑皇国で開発された急降下爆撃脚“99艦爆”である。本当ならもっと頑丈で速く飛べるものを使いたいが、頂き物に文句はつけられない。私たちが使っているストライカーユニットの過半数は国際ネウロイ監視委員会の厚意によって教習用に頂いた中古機なのだ。

 

 

 

高度を上げる。失速寸前で力を抜いて身体を横に倒す。180度回転して倒立状態になってからエンジンの回転率をあげる。俗にハンマーヘッドと呼ばれる動きは、降下度90度の超急降下攻撃を可能にする。

 

地面に垂直に降下する曲芸飛行だ。

 

耳障りな音と共にパンマガジンは回転する。発射された曳光弾がネウロイの図体に穴を穿ち、その結果を視認するより先に離脱する。

地上に長居すればどうなるか。そんなのは簡単だ。騒ぎを聞き付けたネウロイによって八つ裂きにされる。

 

 

「……っ!」

 

反撃。

 

“音”から推察するにデカブツか。多脚戦車型のネウロイが出鱈目な対空射撃を繰り返している。照準も何もあったものじゃないが、これ以上の敵に捕捉されると厄介だ。

 

「…いけるか?」

 

爆弾は品切中。既に本日三回目なので取りに帰るのは却下。黙らせるには残り少ない機銃を使わねばならない。これがなくなると私に残るのは下士官用の銃剣と借り物のブルームハンドルだけになる。別に撃滅を目的とした作戦ではない。首都ウィーンに来襲する敵を減らす【囮】になること。そして、下水道を利用して取り残された市民および軍人を瓦礫の町から避難させることが最終目標だ。ここで無理に殺す必要もない。

 

「しかし、脅威ではある。」

 

人間は地表から完全に撤退したわけではない。食料や武器の調達が滞りつつある現在、ネウロイの数を減らすに越したことはないのだ。

 

「…やるか。」

 

空が白んできた。夜の終わりが近い。

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