ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
『私たちウィッチは自分達で思っているよりも頑丈だが繊細だ』これは教科書にも掲載されている言葉であり、自覚した言葉でもある。
高射砲塔を中心にウィーンの防衛を行っていたときのこと。同級生と喧嘩した先輩が末帰還となり、翌日信号機に突き刺さっていたのを発見したことがある。百舌鳥の生え贄のように信号と合体した彼女は見るに耐えない状態だった。死体なんて見慣れつつあった中でも凄惨な死体だったのを今でも覚えている。感情のままに泣き叫ぼうとする同級生を『ネウロイを呼び寄せて私と心中するつもりですか』と黙らせて私は彼女のドッグタグを回収した。そうすることしかできなかった。自分でも驚いてしまうほどに冷たい声が出たのを覚えている。今になって言い訳をするならば私には致命的に余裕がなかったのだ。それほどに一杯一杯だったのだ。次の日、その同級生は死んだ。噂によれば着陸時の事故だったという。私の知る限り彼女は成績上位で実技においては現役ウィッチに迫るとまで言われた人物だった。少なくとも事故なんて起こすような人物じゃなかったはずだ。そんなことで死ぬような人には見えなかった。彼女たちの間に何があったのかはわからない。なにがどうして彼女たちを絶命足らしめたのか検討もつかない。もしかしたら私が少しでも寄り添えば寄り添おうとすれば避けられた死だったのかもしれない。名前も思い出せない同級生。私が殺してしまったのか、彼女が勝手に死んだのか。そんなことはわからない。わかりたくない。…でも、彼女たちが何らかの原因で死んだのは明瞭な事実なのだ。
今、中隊の雰囲気は最悪だ。
『人は三人集まれば派閥を作る』とはよくいったもので、今の中隊は分裂状態にある。これは非常に好ましくない状況だ。相互に好影響を与え合うどころか傷つけあってしまうかもしれない。そしてその傷がどんな影響を与えるのか想像もつかないのだ。
そんなことで、もう目の前で誰かが死ぬのは御免だ。というよりも耐えられないかもしれない。それが顔見知りの人間とならば、正気を保っている自信すらない。
食堂へ続く廊下でレイヴォネン中尉を見たとき。“いける”と思った。思ってしまった。もしかしたら優しくて暖かな雰囲気を持ち、上位者である彼女に無意識に甘えてしまったのかもしれない。この人なら何とかしてくれるかもしれない、なんて思ってしまった。
『気軽にエルマと名前で呼んでください。そんなに畏まらなくていいからね。気楽にいこう、ね?』
たぶん、エルマ中尉は優しすぎるのだ。それも、つい甘えたくなってしまうほどに。しかし同時にそれは中隊を纏めることを難しくしてしまっているのかもしれない。
「私が何とかしなくちゃいけない」
明らかに手練れであるビューイング少尉や穴吹少尉はどうだかわからないけれど、きっと他のメンバーはウィッチの殉職がどういうものなのかを知らないのだ。空に一番近いはずの魔女がどうやって死ぬのか知らないのだ。どうか知らないままでいてほしい。
ヘイトを稼いで団結させる?いや、私が死んだら崩壊する。そもそも、そんなやり方は歪で不完全だ。
エルマ中尉を御輿に担ぐ?いや、エルマ中尉にそれはできない。それをするにはもっと軽い御輿が必要だ。エルマ中尉にそれはできない。したくない。
何も思い付かない。
「とにかく、明日は朝練に出席して昼間に慣らし運転をして、夜は待機。」
とにかく目の前の問題をどうにかしよう。