ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
少尉は小さかった。今日、空域に向かうために抱っこしたときも思ったけれど彼女はきっと同年代の女の子よりも華奢で小柄なのだ。
『太陽の中からの
私はそんな彼女に先鋒を譲り、私たちは連なるように降下して奇襲攻撃に入った。結果として私たちの放った弾丸はラロスの翼端を抉りとったものの、撃墜には至らず。そこに近くにいたトモコ少尉の射撃がヒット。ここでネウロイは殲滅された。
普段の私ならトモコ少尉に任せるだけで一歩も動けなかったかもしれません。そんな私が敵機に向けて飛び込んでいけたのは彼女と一緒だったからでしょう。
「…どうかされましたか?」
私に見つめられていると思ったのか少尉は不思議そうな顔をしてこっちを見た。
「小さいのにすごいなぁって思って。私が9歳の頃なんてお母さんに甘えてばっかりだったよ。」
彼女はクスクスと笑って口を開く。
「そんな気がします。中尉は優しいですから。きっと優しい人に囲まれて来たんだなってそう思います。」
私は私の育った国を育ててくれた人々を守りたいと思ってウィッチになった。訓練は厳しかったし、落ちこぼれたりもしたけれど止めようとは思わなかった。
そこが私の原点なのかもしれない。
「そ、そうかなぁ。」
そう言われると何だか少し照れる。
私が第一中隊に入った頃も皆でサウナに入った。しばらくはアホネン大尉に連れられて中隊全員で入っていたと思う。私たちを含めスオムスの人々にとって昔からサウナは神聖な場所で特別な場所だった。みんなで訓練してみんなでサウナ。特別な場所だからか。外から隔離された独特の雰囲気からか。みんなで外では言えない本音を言い合ったり、外では言えない話で盛り上がったりしていました。…まぁ、アホネン大尉の趣味の問題でもあったのかもしれませんが。
「…な、なんですか?その枝。もしかして、体罰ですか!?」
そして、みんなで叩きあったものです。
「えぇっ?!そ、そんなことないですよ!ヴィヒタですよ。ヴィヒタ。知りませんか?」
ヴィヒタで叩くと血流がよくなり、たくさん汗が出るようになります。そういう道具です。
「ほ、本当ですか?扶桑海軍の精神注入棒みたいなものの隠語じゃないですよね?」
一緒に過ごした時間は長くはないけれど、マルグレーテ少尉は変なところで博識です。
「違いますよ!そもそも、“精神注入棒”ってなんなんですか?」
ヴィヒタはヴィヒタです。それ以上でもそれ以下でもありません。
「お尻を叩く棒です。扶桑海軍所属のハルカの方が詳しいかもですが。」
「お尻をっ…!?」
精神注入ってそういうことなんですか!?ビックリしました。体罰なんてものは基本的に私たちウィッチには無縁の話です。故に専用の道具があるとか知りませんでした。
「えぇと、こうやって使うんです。」
目の前で自分の身体を叩いて見せる。
「なるほど、マッサージ用の道具だったんですか。…あぁ、ビックリしました。エルマ中尉が優しいからって甘えすぎちゃったかと思いました」
私の方がビックリです。
「そんなことないよ?今日だって頑張ってたし、上手だった。弾だってちゃんと当たってたんだから。すごく助かった。むしろ、もっと私を頼っていいんですよ?私は中隊長でみんなの“お姉さま”なんだから。」
自分で言うのは少し恥ずかしいですが、少なくとも彼女よりはお姉さんなのです。それに私は頼れる隊長でなきゃいけません。
「それじゃあ、よろしくお願いします。お姉さま。」
頬を染めながら口にする彼女は、とても可愛らしくて。部下に“お姉さま”と呼ばせているアホネン大尉の気持ちが少しわかってしまったような気がします。
「はい、こちらこそよろしくね。グレーテル。」
彼女は大人っぽく見えて、時おり年相応の反応を見せてくれるみたいだった。私たちにとってサウナは生活の一部だし、改めて意識することなんてなかったけれど。彼女にとっては初体験。
「これは何ですか?」「あれは?」
たくさんの質問が出ました。なんだか小さな妹ができたみたいでした。アホネン大尉もこんな感覚だったのでしょうか。…私ってそんなに子供っぽかったかしら。
ヴィヒタを怖がられたのは驚きましたが、今回のサウナを通して距離が縮まった気がします。