ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
葉巻に火をつけて紫煙を吐き出す。リベリオン製の紙巻きタバコも悪くはないが、どうにもあれは一本程度では吸った気がしない。
「またやっているのか。」
あの軍服を見るとオストマルクからの撤退戦を思い出す。良くも悪くも見慣れてしまった軍服だ。私の所属した国際ネウロイ監視航空団はネウロイを相手に正面からぶつかった。オストマルク軍もそうだ。
本土決戦となったオストマルク軍は死兵となって戦った。まだ訓練も終えていないであろうウィッチが泣き叫びながら空を飛んだ。魔法力の減退が始まって久しいウィッチが手慣れた手つきで“初陣”を飾った。
…たくさん死んだ。老いも若きも関係なく無作為に無差別に熱線は人々の営みを消し飛ばした。
そして、私はそれを見ていた。伸ばした手は空をきって彼女は地面に吸い込まれていった。
「働き者ねー」
談話室で新聞を広げているキャサリンは呑気に言う。まったく…。彼女は良くも悪くも牧歌的が過ぎるのだ。
「そういうのなら、混ざってくればいいものを」
マルグレーテが起きるまで勢いよくトモコ少尉がノックするものだから近い部屋にいる我々が意味もなく早く起こされてしまうのだ。しかし、早く起きたところで特に
することもない。故に私たちは朝食の時間まで連日のように談話室で屯することになる。
部屋の暖房設備が乏しいために自然とこうなるのだ。単純に金がないだけなのか。この状況を狙っているのかはわからないが、どちらにしてもスオムス軍の上層部は少し頭を使うべきだ。
「寒いのはどうにもダメでーす。雪遊びをするのは子供だけで十分ね。」
そう言いながらウルスラに視線を向ける。忘れられがちだが、彼女は10歳でマルグレーテより1つ歳上なのだ。
「私は見ての通り忙しいので。」
いつものように分厚い学術書を読んでいる。いや、今に始まったことではない。彼女は朝から晩まで本を読んでいるのだから。ここまでくると空を飛びながら読みはじめても驚かない。
「子供は外に出て遊ぶものでーす」
調子外れなブリタニア語で言う。彼女は暖炉のそばに移動させた安楽椅子を揺らしながら返答する。
「私は子供じゃないので」
金髪ウィッチ二人組の親子漫才を横目に見ながら煙を吸い込む。…町に降りて買ってきただけはある。また暇なときにまとめ買いしておこう。
食堂でキャサリンが二人の手を引いて現れた。
「噂のエルマ中尉とマルグレーテを捕まえて来たネ!」
軍隊という狭い世界。特に人数の少ないウィッチという職種は噂好きの集まりだ。数ある話題の中でも色恋沙汰は大好物。良くも悪くも年頃というわけだ。
「…さて、話を聞こうじゃないか。」