ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
「嫌な音ですね。」
今回の攻撃は随分と気合いが入っているらしい。ラロスの煩わしい羽音に混ざるソレはオストマルクで散々に聞かされた騒音。
あの太く耳障りな音は破壊を運ぶ。地下にまで響く爆撃の音。お腹の底にまで響く音は地表を焼き払い人間を根絶やしにしようという意思すら感じさせた。
「…私には何も聞こえませんが、もしかして緊張していますか?」
エルマ隊長から声がかけられる。…これは、緊張なのだろうか。緊張なのだろう。自身の神経が高ぶっているのを自覚する。私たちは失敗するわけにはいかない。そう思うと息苦しさすら感じる。
「たぶん、緊張はしています。それこそ、心臓が喉から出てくるくらいには…。隊長はどうです?」
ここで私たちが失敗すれば後がない。そう思うと気が触れそうなほどの重圧を感じる。
そうだ。ここを突破されれば後がないのだ。人力で行われる対空砲火?時限信管?そんなもので奴等がネウロイが防ぎきれるものか。効果がないわけではない。まったくの0ではない。しかし、それは最終手段だ。そんなことで解決できるなら最初から私たちウィッチなど存在しない。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。大尉が率いる第一中隊はすごく強いんだから。今までだって敵を返り討ちにしてきた。グレーテルも見たでしょう?」
緊張した様子のグレーテルを励ますように言葉を掛ける。しかし、一方で私の胸の中で渦巻く不安な気持ちを拭いきることはできなかった。それはネウロイの編成の変化によるものだ。
これまでトゥーパリェフに護衛の戦闘機がつくことはなかったと思う。上の人たちによる分析でもトゥーパリェフは単独あるいは複数での偵察あるいは空襲を目的にした侵出を繰り返してきたとされている。そのはずだ。それが今回は違う。
更に不気味なのが
何故、護衛対象を喪失したはずの敵機が侵攻を続けているのだろう。
私だってスオムスの正規軍だ。たしかに成績はよくなかったけど、第一中隊に所属して何度も空戦を行った。しかし、それでも初めてのパターンだった。
わからない、ということは恐ろしいこと。十分に気を付けて戦わないと“みんな”どころか、自分の身も守れなくなるかもしれない。
「敵機を視認しました。」
ポツリ、ポツリと黒点が視界に入る。おそらくは第一中隊が処理しきれなかったラロスだ。ラロスは制空権を握るための空戦を得意とするけど、対地攻撃ができないわけではない。つまるところ、何をどうやってもネウロイたちを先に進めるわけにはいかない。
「これより、交戦します。」
…頑張らなくちゃ。