ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
親切な住民にお勧めされた店は洒落た雰囲気で、アルコールも取り扱っているようでもあった。さすがに軍隊に所属するウィッチが昼間から飲酒するのは色々とよろしくないので、昼食とコーヒーを頼むことにしよう。そう思ったのだが。
「…それで、何であんたたちがいるわけ?」
小声で尋ねる。客の一人に見覚えがあると思えば、酒を飲むビューイングだった。そして、同じ机にキャサリンとウルスラ。
「食事に来たんだ。ゆっくり食べさせろ。」
そう言いながらグラスを揺らす。
「それ、どう見てもお酒じゃないの。」
落ち着け。落ち着くのよ。穴吹智子少尉。ここで怒ったら身内の恥を外部に知らしめることになりかねない。そんなことをしたら色んな人に迷惑をかけることになる。ここは穏便に済ませるの。
「ここは酒を飲む場所だからな。いい店でいい酒を飲む。それ以外に何がある?」
真っ昼間から酒を飲むなんて正気の沙汰じゃない。ただでさえ、ウィッチの飲酒について外部の目は冷たいのだ。これは、非常によろしくない。
「あんた、ご飯を食べに来たって言ったじゃないの。そのくらいにしておきなさい。」
これ以上は飲むな。そう遠回しにいっておく。
「細かいことを気にするな。モテないぞ。」
コイツらはどうしてマイペースなのだろうか。身内での振る舞いなら許せるが、意識の切り替えというものがないのはどうかと思う。
「あんたがダメ人間なだけよ。それに生憎だけど私だって扶桑じゃモテモテなのよ。」
「あと、ウルスラは食事しながら本を読むのをいい加減にやめなさい。行儀が悪いわ。」
私たちは軍服を着て外出している。軍服は自分が軍隊に所属するウィッチであることを示す要素である。そして、この服を着ている限り、私たちの過ちや失態は軍や基地といったものにまで影響してしまう。それらは私たちだけのものでなくなってしまう。
「…あまり口うるさいとモテませんよ。」
先程のビューイングの真似だろうか。ただ、10歳の女の子に言われると怒るとか怒らないとか以前に複雑な気持ちになるわね。
「だからモテモテだっていってるでしょうが。…というか、ビューイングもビューイングでウルスラに変な言葉を覚えさせないの!」
「そうですよ!扶桑の女の子でトモコ少尉のことを知らない子なんていません!」
聞き捨てならないとばかりにハルカが抗議の声をあげる。しかし、何故だろう。あまりフォローにはなっていないような気がする。
「女の子にモテてどうするの!」
私に
「恋愛も自由であって然るべきだってグランパもいってたネ。トモコ、ファイトですよー。」
さすが自由の国。しかし、そうではない。そうではないのだ。
「どっち方向に誰とファイトさせるつもりなのよ!?」
私たちのやり取りを穏やかな笑顔で見守る店主に注文する。幸いなことにブリタニア語のわかる人らしく、メニューもスオムス語とブリタニア語の両方で書いてあった。親切なお店だ。
「ランチはAセット。ドリンクはオレンジでお願いします。ハルカも同じのでいい?」
「なんだ、子供っぽい注文だな。」
「ビューイング、あんたは引っ込んでなさい。」
店主が裏にいったことを確認してから言い返す。たしかにビューイングは私より年上だが、だからといって子供扱いされる覚えはない。
「…それ、吸いすぎじゃない?」
「そんなことはない。三人の合計なんだから。」
平和だった。年頃の少女たちがテーブルを囲んで盛り上がる様はスオムスという国家が平穏な日常に包まれた普通の国であるかのように錯覚させた。そこに戦争などはなく、ネウロイによって明日を脅かされることもない平和な世界であると私たちに感じさせた。
…しかし、幸せな幻想はすぐに叩き壊された。
サイレンの音が聞こえた。空襲警報だ。