ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女-   作:バイオレンスチビ

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穴吹智子の帰還・医務室にて


1-20D.たった二人の中隊(終わり)

間に合わなかった。私たちは間に合わなかった。ネウロイに立ち向かったのは第一中隊とエルマ中尉、マルグレーテのペアのみであった。

 

「話にならないわ。理由があって飛べないじゃなくて、飛ばないだなんて少なくとも私には信じられない。息巻いていたようだけど、正直なところ失望したわ。」

 

アホネン大尉から投げられた言葉。返す言葉が出なかった。たしかに休むことは悪いことじゃない。でも、冷静に考えてみれば私を含めた過半数のメンバーが抜けたらどうなるかなんて、わかりきったことだった。

 

 

「私が、私が悪いんです。誰かの申請を断ればよかっただけなんです。」

 

エルマ中尉は今にも泣き出しそうな顔で言う。

 

「…いえ、互いに確認しなかった私たちの方こそ落ち度がありました。本当にすみませんでした。」

 

エルマ中尉とマルグレーテは第一中隊の撃ち漏らしたラロスを相手に戦った。たった二人で半ダースのネウロイと戦ったのだ。しかも、相手のラロスは爆装していたという。つまるところ、本来ならば制空のための空戦を行うラロスが対地攻撃を目的に飛ぶというイレギュラーな事態だった。お世辞にも経験豊富なウィッチであるとは言い難い二人にとってどれ程の重圧だっただろうか。

 

「彼女、最後のネウロイにシールドを叩きつけて、それで爆弾が爆発して…」

 

結論から言えばマルグレーテは無事だった。命に別状はない、という意味であればだが。

一撃離脱(ダイブ&ズーム)を繰り返す中で機銃弾を使い尽くした彼女は、リロードをすることを諦め、そのまま斜め後方から押し潰すようにシールドを展開して体当たりを敢行した。本人は爆発の衝撃で気絶してしまい、そのまま地面に衝突する寸前でエルマ中尉によって救出された。

そのエルマ中尉の腕の中でも譫言を呟いていたという。中尉は腕の中で痙攣する彼女を抱えながら飛んだ。生きた心地がしなかったらしい。

…医師からの診断によれば近距離で起きた爆発によって生じた脳震盪であり、時期に回復するという。

 

 

ナイトウィッチ特有の肌の白さも手伝ってベッドで眠る彼女は人形のようにすら見える。透き通るようなそれに温度すら感じない。造形物のような無機質さすら感じる。

 

 

 

「もしかしたら今回の戦闘で私は彼女に頼りすぎたのかもしれません。こんなに小さな彼女に先鋒を任せて突撃を繰り返しました。本当なら、きっと私が先にいかなきゃダメだったんです。」

 

エルマ中尉は俯き涙を溢しながらながら言う。街は守られた。しかし、メンバーが負傷した。下手をしたら死んでいたかもしれない。そして、この避けられたはずの犠牲を彼女たちに支払わせたのは、私だ。…できるはずのことをしなかった私だ。

 

「…いいえ、エルマ中尉は悪くありません。私が悪かったんです。できることをしなかった私が悪かったんです。」

 

そうだ。私はウィッチだ。乙女にして空を飛び、鉄砲を担ぐ職業。そして、エースだ。国を人間を守る希望の星。そうありたいと思ってきた。そうあるべきだと思ってきた。

 

「どうか、チャンスをください。」

 

…そう、あるべきなのだ。

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