ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
撃ち込まれた弾丸は獲物の翼を半ばより抉り取る。そして、バランスを崩した敵機はキリモミ回転をして地面に叩きつけられ、
「爆装してるっ…!?」
爆弾を装備している。それは、奴等の目的が対地攻撃にあることを示唆している。この先には街があり、基地があり、そこに営みを持つ人間がいる。
たしかにケファラスやトゥーパリェフに代表される純粋な爆撃型ネウロイと比較すれば、その攻撃力は大したことはないだろう。しかし、それは彼等の侵攻を許す免罪符にはなり得ない。
「隊長、おそらくネウロイの目的は対地攻撃です!」
『…絶対止めます!』
そこまでは覚えている。覚えているのだが…。
そこから先はよく覚えていない。ただ必死に戦ったということは何となく覚えているのだが。どんな手段で何をどうしたのか。私のような弱小ウィッチがどうやって戦ったのか。これがさっぱりわからない。
「そうですか。皆さんが無事でよかったです。」
体当たりしたとか聞かされたときには自分の無謀さや無能さに目眩がしたが、結果として私は勝利したということだろう。…いや、私たちは勝利したのだ。私たちは誰一人として傷つけさせなかったのだから。
「それと、ご心配をお掛けしました。」
医師によれば脳震盪だという。目立った外傷こそ負っていないが、爆発による衝撃で脳が揺さぶられてしまったのだとか。ウィッチじゃなかったら死んでいましたね。
「最悪、街ごと中隊壊滅という結果まで考えてましたから。」
目覚めは最悪だった。襲い掛かってきたのは吐き気と頭痛。そして目眩に倦怠感だった。起き抜けの記憶は定かではないが、起きてから少なくとも二回は戻したと思う。軍医さんは笑いながら背中を擦ってくれたが、私は彼女の仕事を増やす申し訳なさと押し寄せる苦しさで一杯一杯だった。
お見舞いに来たエルマ中尉には泣かれるし、他のメンバーには謝られるし。なんだか今日は疲れてしまった。私が怪我をしたのは無謀にも体当たりなんて方向に走ったからだ。誰かのせいじゃない。だから気に病むことなんてないのに。
「そうですか。しかし、レイヴォネン中尉を除く義勇独立飛行中隊の面々はスオムスの正規軍人ではないのです。あまり無理をされると困ります。」
さすがは雪女とまで呼ばれたハッキネン大尉。爆弾を抱えたネウロイが基地目前まで迫ったというのに冷静です。ついでにこのロジカルな言い回し。私は嫌いじゃないですよ。
「ウィッチはどの国家においても貴重な人的資源。これを浪費するような下手を打てば国際問題ですから。」
心配してるのか、していないのか。どうにも分かりにくい台詞。そして普段とあまり変わらない表情。しかし、きっと心配してくれたのだろう。そう思う。そうでなければ、基地司令部所属の彼女が病室を訪れたりはしない。彼女たちだって暇ではない。空を飛ばない彼女達もまた私たちとは違う方法で戦っているのだ。ましてやネウロイによる襲撃のあとのことである。忙しくないはずがない。時間は有限だ。その限りある時間を非力な私のために使ってくれている。
「はい、すみませんでした。次からはもっと上手くやります。」
この小さな身体でどれだけの人を守れるだろう。この短い腕でどれだけの人に手が届くだろう。この非力な手でどれだけの人を救えるだろう。
先は見えない。不安は減らない。それでも投げ出すようなことがあっちゃいけない。そんな安易な逃げは許されない。私は最期の瞬間まで私でいなくてはならない。
「それでは三日間の休みを与えます。その間は空を飛んだり激しい運動を行ったりすることがないように。それでは、お休みなさい」
「はい、わかりました。お休みなさい。」
彼女が照明を落として出ていく。戸が閉められる。そして部屋は暗闇に包まれた。