ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女-   作:バイオレンスチビ

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04.ウィーン市街戦

ウィーンには高射砲塔がある。アホみたいに分厚いコンクリートで覆われたカールスラント製の対空要塞だ。それらは全て地下で繋がっていて、非常時には人々を収容する避難所として機能する。

 

「まさか、こんなことになるとは…」

 

ちなみに高射砲塔は史実西暦世界においても“作ったは良いけど壊せない”ものに含まれ、その常軌を逸した頑丈さから“解体費用がヤバイ”“そもそも爆破解体が困難”という理由で多数が現存しているというロマンに満ち溢れた巨大建築物である。

 

失業者対策も兼ねて6基もの建造が決まった際には税金の無駄遣いだと新聞を片手に級友と笑っていたものだが、現在進行形で人々の生命を救っているのだから馬鹿にできないものである。

 

…高射砲塔に収容された避難民は地下通路を通り、物資輸送用あるいは避難経路として接続されている鉄道を利用して郊外へと脱出する。空を飛び、地表を這い回るネウロイとて地面を掘り返して進むことはない。…少なくとも今のところは。

 

 

 

 

 

 

 

「きっついなぁ…。」

 

昼には普通に人命救助の仕事をして、夜には夜間爆撃に従事している。航空ウィッチの数が少ないのだ。昼も夜も飛び続けているために日付感覚がおかしくなって久しい。花粉を巣に持ち帰る働き蜂にでもなった気分だが、あいにくと人間なので叩かれた頬は痛む。

 

『どうして、もっと早く来てくれなかったんだ!』

 

私の昼間の仕事は聴覚を頼りに負傷者を探し、高射砲塔に届けることだった。着陸して気が抜けたところを泣きながらグーで殴られた。倒れた私に彼女が馬乗りになって再度拳を振り上げたところでガスマスクを装着した兵隊が飛んできた。負傷して衰弱した素人を職業軍人が取り押さえるのに大した手間はかからなかった。拘束されながらも彼女は泣いていた。その啜り泣く声は私を内側から酷く責め立てるようで、殴られた頬より胸が苦しかった。

 

【死体を運び込むな】

 

私たちは、そういわれている。瀕死の重症を負った人を運び込んでも助かる見込みがなければ、死人と同じ。発電施設や貯水施設を持つ高射砲塔といえど、遺体安置室はない。死人の居場所などないのだ。また、戦時中の軍隊のトリアージは軽傷ほど優先度が高くなる。

詰まるところ、逃げ遅れた人々の救出に当たる私たちは命の取捨選択をするのだ。傲慢にも人の命を選びとるのだ。それは人殺しと何が違うのだろうか。

 

トラックの荷台から助け出すときに『彼と共に助けてほしい』と彼女はいった。『彼』は既に死んでいた。私は抵抗する彼女を無理矢理にでも連れていかねばならなかった。ペアルックの二人。お揃いの指輪。しかし、彼女は生者であり彼は死人であった。

 

私に馬乗りになったのなら、そのまま首を絞めて殺してくれればよかった。お前が悪であると裁いてくれれば、どれだけ心が楽だっただろうか。

 

 

 

 

 

十中八九“こんなこと”になったのは、昼間の一件が原因である。おそらく、ストレスだ。

 

吐いてしまった軍用食料から目を背ける。

 

「まさか、ついに寝食を放り出せる化け物にでもなったか…?」

 

でも、まだ戯れ言を口に出せるなら大丈夫だ。身体が受け付けなかっただけ。きっと不味いから吐いてしまっただけのこと。いくらでも言い訳できる。言い訳ができるなら“そういうこと”にしておける。こんな状況で精神が参ってしまいましたなんて、言えるわけがない。…あぁ、近くに掃除用のバケツがおいてあったことと、この姿を誰も見ていなかったのは幸いだった。

 

残りを水筒の水で流し込んで、食事を終了した。

 

バケツを洗って乾かして、一睡もしないまま仮眠スペースを飛び出して格納庫に向かって走る。

 

 

 

…こうして、また夜がはじまる。

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