ストライクウィッチーズ-真夜中の魔女- 作:バイオレンスチビ
ロージカ・フリーデル『キャプテンRの追憶』オストマルク帝国出版 1979年 124頁より
01-00.飛行船の中で
スオムスは北欧に位置する寒冷な気候を持つ国である。ついでにサンタクロースとニシンの缶詰、世界一不味いグミで有名な国である。
「怪我さえしなければなぁ…」
先日まで包帯でガッチリと巻かれていた左足は、完治までにもう少し時間がかかるらしい。幸いなことに折れた部分は膝よりも下の部分なのでストライカーユニットの運用には困らないが、少しばかり麻痺が残っているために最前線での勤務には支障が出ると判断された。
オストマルク軍人の多くはカールスラント軍やブリタニア軍に参加しており、亡命先でオストマルク軍の上層部もこれを容認した。
しかし、政府や政治家はこれに納得しなかった。オストマルク軍人が他国の軍で活躍したとしても、それはオストマルク軍の功績とはならない。対ネウロイの戦争で自国軍が何一つ貢献できなかったとなれば、戦後国際社会におけるオストマルクの地位は地に落ちる。
そこに来て、義勇軍を募集する国家があった。それがスオムスである。北欧であり、欧州の中心から離れた国家であるスオムスは独力でのネウロイの撃退が困難であるとして、国際連盟を通して世界各国に腕利きのウィッチを派遣するように頼んだのである。
…これはチャンスであった。腐ってもオストマルクこそが中欧の大国であると見せつけるチャンス。
手元にあり、前線に投入できず、昼夜を飛ぶエース。
…なるほど、私は送り込むのには最良の人員であったわけだ。
カールスラントに借りれば良いものを修理したばかりの国産飛行船を引っ張り出してきた。ツェッペリンと呼ばれる形式の飛行船は非常に巨大であり、そのインパクトは見物客や記者の皆様の心に十二分に作用したことだろう。
「…まったく、見栄を張る以外にも他にやるべきことがあるだろうに。」
確かに飛行船は飛行機と比較して大量の物資や人員を鉄道よりも早く輸送できる優秀な乗り物だ。(その大きさと鈍重さから的になりやすく、乗り合わせた多くの人員に分け隔てなく二階級特進という栄誉を授けてくれる素晴らしい一面もあるが。)
「こんな私についてきて、よかったんですか?」
各国から腕利きが集まるということで、スオムス空軍のカウハバ基地までの出張を申し出たという記者さんは私の意地悪な問いかけに苦笑する。
「私は本国の皆さんに夢と希望を届けるのですよ。」
軍が認める取材は一般の雑誌や新聞に掲載される記事と違い、“事実”を伝えることを求められない。検閲によって不都合な事実は削り取られ、都合の良い真実やプロパガンダを描くことを求められる。
「…お仕事、頑張ってください。」
そう、仕事だ。私は公の僕であり、彼は真実の徒である。彼はペンを執り、私は剣を取った。しかし、向かう相手は同じである。どんな道を選ぼうと私たちは戦う他ないのだ。
…そして、この世界はそれ以外の道を許しはしないだろう。