綾小路......誰さんですか?   作:せーちゃん

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原作開始前
『原作主人公様』が“女の子”なわけないでしょ?


「R.I.P、そして、おはよう」

 

「...ああ、うん、おはようございます?」

 

 目が覚めたら真っ白な部屋に居た。

 条件反射で上半身を起こすと、飛び込んで来たのは草臥れた老人の顔面。────そして。

 

「おー? おう、えっと、何....? 転生?」

 

「正解じゃ。最近の若者は説明が省けて楽じゃのう。ここに来る内の三人に一人は起き抜けと同時に状況を把握しよるぞ」

 

「マジかよ。ヤベーな現代っ子。転生モノ好き過ぎだろ。てか、いつの間に死んだんだ、俺」

 

「生前については知らん。儂らもそこまで暇ではないのでの」

 

「オイオイ、アンタ神様だろ? そんな適当で良いのかよ」

 

「いや、そんな事言われてものぅ。そもそも儂、神じゃないし。どっちかというと、鬼とか悪魔の類いじゃし」

 

「は...? マジかよ。転生じゃないん? 鬼とか悪魔って、もしかしなくても地獄行きスか?」

 

「それも否じゃ。お主はセオリー通りこの後、転生する。転生関係の仕事が管轄上、神界ではなく獄界の住人に帰属するというだけの事。転生の理由は、死後に受ける閻魔様の裁定までの一時的な時間稼ぎじゃよ。お主は順番からして閻魔裁判まで数百年はかかるじゃろうから、既に基盤のある創作世界にブチ込んで黙らせとこうという話じゃ」

 

 えー、何?

 いきなり情報量多過ぎなんだけど......。

 

 ────話を額面通り、想像通りに飲み込むのなら、死者である俺のその後を決めるのにメチャクチャ時間がかかるから、とりま別の世界に転生させて待たせとけって感じか?

 

 

「うむ、その認識で間違いないぞ」

 

「ナチュラルに心読むなぁ。てか、ぶっちゃけアンタが神様だろうが悪鬼の類だろうが、死人の俺にはどうしようもない事だし、その辺の事情はカットでいいよ」

 

「む、そうか。現世は説明義務だの、倫理的行動だのと煩いからのぅ。後々文句を云われぬようにしたまでじゃよ。ホレ、説明が要らぬなら、さっさとソコに置いてあるダーツを持て。お主の転生先を決めるぞ」

 

「あいあーい」

 

 言われるがままに、さっさとダーツを持つ。

 うん、お約束過ぎて説明が無いのも、それはそれで味気無い。てか、さっきまで此処にダーツなんて無かったよね? いつの間にかルーレット板みたいなのも目の前にあるし。

 

 

「ホレ、はよはよ」

 

「急かすなよ、転生って事はこれからその世界で七、八十年は生きるわけだろ? 流石にちょっと躊躇う」

 

「ん? まぁ、そうじゃな、生きられると良いな、八十年くらい」

 

「怖い事言うなよ。急にキャラ変したな爺さん」

 

「いや、世界によっては生まれた瞬間死ぬような所もあるからのぅ。ゴッド◇ーターとか、バイオ◇ザードとか」

 

「......」

 

 怖すぎるんだが?

 

 

「別に良かろうて、死ぬくらい。どうせ、死んでも此処に戻って来て同じやり取りをするだけじゃよ」

 

「んー? まぁ、それもそっか」

 

「お主も、かるいのー」

 

 考えても仕方ない事は考えないようにしてるだけだし。

 

 ....そんなに言うならテンション上げてみるか。

 

「いけっ! 俺の運命! うぉぉぉぉおぉぉ!!」

 

「ダサいっ!」

 

 あらぬ方向に飛んでいきそうだったダーツが見えない力によって機動修正され、ギリギリ端の方にちょこんと刺さった。え? 俺、ダーツ投げ下手過ぎ...?

 なんて思っている俺を他所に、すでに爺さんはルーレット板に近づいていた。

 

「えーっと、なになに?」

 

 

 さて、そこに書かれていたのは

 

 『ようこそ実力至上主義の────

 

 

 

 

「ああ、“よう実”じゃの、死ぬ事はなさそうじゃな。ホレ、さっさ、転生特典の数を決めんか」

 

「......せめて最後まで読ませろよ」

 

 てか、よりにもよって“よう実”世界かぁ。

 俺、アニメ一期と二次創作しか読んでないんだけど。

 別に滅茶苦茶好きな作品とかでもなかったし......。

 来世では、もう勉強もがんばりたくないしなぁ。

 あーあ、出来れば“魔法科”とか、“禁書目録”とかの世界に行きたかったんだが......。

 あーあ! あーあ!

 俺も魔法とか超能力とか使いたかったなぁー!

 

 

 ......こうなったら転生した瞬間自殺して、人生リセマラでもするか。

 

「いや、最初から不満タラタラ過ぎじゃろ。ワクワクとかせんのかお主は......。あと、流石に自殺はやめよ。そういう命を粗末にする者は転生対象外じゃ。閻魔殿の前でそのまま数百年正座しとれ」

 

 はぁー、マジかよ。

 てか、お前、さっき“死ぬくらい”とか言ってたやろが。命がどうのとか言う資格ないだろ。

 

「さて」

 

 おい、思考抜き取れんだろ。無視すんなや。

 

「さて、次は転生特典じゃな。一つは好きな特典を自由に。残りは数も内容もランダムじゃ。はよダーツ投げよ」

 

「はぁー......あいあい」

 

 

 二度目は流石に掛け声なし。

 飛んでいくダーツ。

 

 刺さった場所は─────

 

 

「おお、みっつか。うむ。ふつーじゃな」

 

「ちなみに今までの最高記録は?」

 

「二千六百八十九個じゃな」

 

「ホンクソ。全然ふつーじゃねぇじゃねぇか。ソレ聞いた後だと、むしろ三個は少ないわ」

 

「まぁまぁ、大事なのは中身じゃから。ホレ、あと三回投げ投げ」

 

「......」

 

 怒りの全力投球。

 飛んで行くダーツ。

 

 グサリ─────結果は果たして。

 

 

「お? おお、ツイてるの。『才能全般A+』じゃ」

 

「ナニソレ」

 

「生まれつきの能力値と成長速度、成長限界値を底上げする“ぱっしぶ系統”の恩恵じゃな」

 

 なんかゲームみたいですね。

 

「まぁ、当然努力は必要じゃがの」

 

 えー、つかれるのはやだなぁ。

 それに、お勉強は前世でいっぱいしたからもういいでしょ。

 

「次」

 

 

 

 ─────グサリ。

 

 

「お? おお! さっきから汎用性が高いのばかりくるのぉ! 『美貌の人型A+』じゃ」

 

 もしかしてA+しか入ってないん?

 

「で? ナニソレ」

 

「分かりやすく言えば、優秀な肉体と、APP(外見的魅力値)の向上じゃの。だいたい数値的に十七後半くらいか」

 

「おー、クトゥルフ的にほぼ最大値じゃん」

 

「うむ、最高にイケメンじゃの。......女子に刺されんように注意せよ」

 

 

 ストーカー怖い。

 

 

「さて、さいごかー......」

 

「お主、なんか、どんどんやる気失せてないか? そんなに魔法使いたかったのかの?」

 

 

 当たり前じゃん。

 俺の子供の頃の夢は童話に出てくる“悪い魔法使い”だったんだよ。

 

「なんで幼少時から正義に憧れんのじゃ。歪み過ぎじゃろ」

 

 

 ─────グサリとな。

 

 

「さて、ランダムな特典はこれが最後なわけじゃが......ん? なんじゃコレ。こんな特典は用意しておらんかった筈なんじゃが......」

 

「なに? 魔法?」

 

「だから、魔法から離れよ......これは『幸運A+』じゃな」

 

「ナニソレ」

 

「運気が上がるタイプの恩恵、なんじゃが......おかしいのう。......功績点無しで運命に干渉出来るスキルが宿る筈が無いのじゃが───」

 

「あ、そのへんの裏話はいいです。どうせ聞いても分かんないんで」

 

「何じゃ、せっかく人がわざとらしい伏線を張って、後の展開にスパイスを加えてやっているというのに」

 

「いや、大変過ぎるのはNGなんで」

 

「やる気ないのぉ。......じゃぁ、最後じゃ。好きな特典を一つ選んで「魔法!」魔法は駄目じゃな。世界観を壊すものは特典に入れられん」

 

 は? ちょークソ。

 もう、閻魔殿前で百年耐久正座大会開くべ。

 

「やめぃ。すぐ自殺するのはやめよ。まったく......仕方ないのう。なら、条件付きで魔法を使えるようにしてやろう (噓)」

 

「マジで!?」

 

「うむ。条件は物語の舞台である“高度育成高等学校”に入学し、Aクラスで卒業する事じゃ」

 

「そうすれば、魔法が使えるようになるんだな!」

 

「もちろんじゃ (大嘘)」

 

「やったぜ!(無垢)」

 

「はぁ、よかったの。ホレ、さっさ最後の特典を決めんか。世界観を壊さんような、な?」

 

 

 マジかよ。やったぜ。ちょー嬉しい。

 魔法使いになれるって言うなら話は別だ。

 本気で勝ちに行く。

 

 そのためには─────。

 

 

 

 

 

「“よう実”世界から主人公である『綾小路清隆』を消してくれ」

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

「ん? いや、どう考えても邪魔だろ、清隆くん。Aクラスで卒業するのに、あんな公式チートがいたらラクして勝てないじゃん」

 

 それに、あいつ居るとそれだけでホワイトルームが攻めてくるしな。

 てか、もう危険な主要人物全員消して貰うか?

 “坂柳”とか“龍園”とか勝てる気しないし。

 ついでに仲間外れも可哀想だしBクラスいいんちょサマの“一之瀬”ともサヨナラするべ。

 

 うーし、これで大分ラクに魔法使いに成れるな。

 

 

 

「てことで、頼むぜ爺さん!」

 

「儂、世界観壊さんように言った」

 

「壊してないじゃん」

 

「ナシじゃ」

 

「ふぁっく」

 

えー、特典厳しくない? じゃあもう、これでいいや。

 

「“『綾小路清隆』から敵意を向けられないようにしてくれ”」

 

 これなら問題ないやろ。

 転じて好意的な感情を貰いやすくして、“道具”と思われないようにもしてくれ。

 

 これなら人類の極点たる、公式チート様も敵にはならんし、利用もされんやろ。上手く行けば味方として取り込めるまである。

 

 完璧だな。

 

「む? むー、まぁ、それぐらいなら良いか。うむ。お主の願い、確かに聞き届けた。では────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────裁定を待つ、一時の生。永く愉しむが良い」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして俺、『名前はまだない』は“よう実”世界に転生を果たした。

 

 

 

 一つ致命的な見逃しを残して。

 

 

 

 

  さーて、魔法使いになるためにがんばるぞー(無理)。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ふむ、行ったか......これも『幸運A+』の力かのぉ。まぁ、本当に刺されんように頑張るのじゃぞ。ほっほっほっほ」

 

 

 

 

────『ようこそ実力至上主義の教室へ

 

 

 

            ※綾小路清隆(♀)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




息抜き投稿なので投稿頻度は激遅です。
お、上がってんじゃーんくらいの認識でお願いします。

高評価チャンネル登録(違う)してくれるとモチベに繋がって投稿ペースが早くなるかもです。


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