綾小路......誰さんですか?   作:せーちゃん

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原作一巻
『Hello world』


 ───────人生には目標が必要だ。

 辿り着くべき果ての無い道は、もはや道ではなく檻と同義だ。結末が無ければ過程は生まれ出ない。

 

 目指すべき到達点こそが、道中に意味を持たせるというのは言葉にするまでもないだろう。

 

 

 ────俺は窓の外に視線をやり、生まれる前の色褪せた記憶を想う。いや、あの無限に続く停滞に始めから色など付いていなかったのか。

 ならば今世の視界がこんなにも極彩色に輝いて見えるのは、やはり望む終わりが明確に見え、結末までのレールが途切れる事なく続いているからなのだろう。

 

 

 ──────今の俺には進む為の“脚”があり、行動する為の“理由”がある。

 

 それがどれだけ突飛で不合理なものだとしても構わない。寧ろ直ぐに達成出来ないという事にこそ意味がある。

 

 病室の白色を想起させるあの部屋を抜け出し、初めて見る色彩に溶けるよう俺は空白を着飾る。

 

 ──────世界よ識れ、今のオレは間違いなく生きている。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 窓から這入る春風の若い冷たさに、呆けた意識が研ぎ直される。────どうやら、俺は結局一睡も出来なかったらしい。

 

 回らない頭を抑え、木の香りが残る古びた時計に視線を移す。────時針の指し示す数は、五と十三。そろそろ彼女を起こしに行かなくては。

 

 

 朝日の混じる薄暗い部屋で、寝床を軋ませながら立ち上がる。身体を鳴らしてから、無駄に広い一室を五秒以上かけて跨ぎ切り、そのままドアへと手を伸ばす。

 ────────途端に光量を増す自室。

 

「....自室?」

 

 どうやら俺の白紙も、二年という時間で随分とこの場所に染められたらしく、自然と借り部屋の筈の此処を“自室”と称してしまっていた。

 

 ────いっそ苗字も変えてしまうか。

 

 そんな下らない戯言を呑み干して延々と続く廊下に出る。今日でこの廊下も見納めだと思うと、横切る速度も比例して遅滞していく。

 

 一つ。二つ。......そして、三つ。

 ゆっくりと扉の数を数えながら、大窓を横切り目的の場所へ足を進める。

 

 ────少し歩いてから、足を止める。

 他の部屋と比べて一際着飾った扉の前。

 親の愛情なのだろうか。俺が今世で得られなかった何かを感じるその装飾を意識的に切り捨て、扉を叩く。

 

 ─────コンコンコン。

 初めて訪れた時よりも一つ、音は減っていた。

 

 

「有栖─────入るぞ」

 

 返事は聞かない。

 ただ、何時もより力を込めて扉を開き───

 

 

 

「....はぁ。何時にも増して自分語りが恥ずかしいので話し掛けないで下さい。眠気が飛ぶ代わりに、聞いてて死にたくなります。流石に朝からセルフナレーションはキツ過ぎますよ蓮夜くん」

 

 

 

 ─────寝起き姿の彼女から何時も通りの罵倒を受けるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 良い朝ですねー。

 どうも、おはようございます。

 居候系転生者、新一年生で御座います。

 いやー、ああいう意味も無く無駄に長い語りってのを一回やってみたかったんですよ。

 

「それにしても、冗長が過ぎますよ。入学初日から遅刻してしまってはどうするんですか」

 

「ほら、そこはパパさんの立場で握り潰してもらおうかなー、と」

 

「はぁ....まったく」

 

 そんな無益な会話をしながら、長い長いテーブルで隣り合って朝食を摂る。

 今日も、使用人さんの作るご飯は美味しいなぁ。

 

 

「「御馳走さまでした」」

 

 

 さて、食べ終わったら、それぞれ杜撰だった身支度を整え直して玄関前で待ち合わせる。

 

 ──────時刻は丁度、七時半だ。互いに時間管理が完璧なようで何より。

 

 

「そいじゃ、行きますかね」

 

「ええ」

 

 

 一度だけ振り返った後、俺の右手を彼女の杖へと変えて家を出る。さーて、ようやく原作一巻スタートですよ!

 

 

 

 




転生前のオリ主のスペック

【学 力 】:A
【知 性 】:C-
【判断力 】:D
【身体能力】:E-(F)
【協調性 】:E
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