綾小路......誰さんですか?   作:せーちゃん

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『入学二日目』の他愛無い“日常”

 昨日はそのまま寮へと戻り、腫れた頬を庇いながら、足りていなかった睡眠をしっかりと取った。

 そして現在、学校生活二日目の朝。

 昨日の時点で既に時間割の発表も終わっており、今日から最初の授業が始まった。と、言っても初回という事もあり、殆どの授業が授業方針と教師の自己紹介程度に終わっていたのだが。

 

 しかし、本格的に授業が始まった所で、俺や清隆にとっては何年前の復習だよといった感じの内容なので、現状俺は別の事に気を割いている。

 

 それは、隣の席の女子生徒に対してだ。

 昨日、清隆との顔合わせから現実逃避して机に顔を伏せていた間、ちょちょいと再構成したAクラスでの卒業計画に彼女の協力が必須なのだ。協力を取り付けられないのであれば、早期にプランの変更を考えなくてはならない。期日は最長でも一週間。今のクラスカーストと彼女の印象が定まっていない時期に動かなくては間に合わなくなってしまう。

 そんなわけで、俺は必死に彼女を観察しているのだが、残念ながら欲しかった情報は得られなかった。

 

 

 明日からは授業も本格的に始まる。

 

 まだ、捨てプランにするには早いだろう。

 コレが出来ればDクラスは面白い事になる。

 

 

 

 何より、裏工作は早い内に終わらせてしまいたい。

 俺の原作知識モドキが通用する一年生編の間に、出来るだけ有利な舞台を整えなくてはならない。

 

 物語のスパンは飽くまでも三年間。

 原作展開により既知となっている一、二年生編だけでは物語は終わらないのだ。

 未だ見ぬ“三年生編”を含んだ原作未登場のキャラクターへのアプローチは、現段階では行えない。であれば今すべき事は、二年後の今、どれだけ自分に有利な舞台を整えられているかになってくる。

 

 出来れば、新しい敵キャラが原作で登場した瞬間に、既にコッチの世界ではソイツが詰んでいるような状況にまで持って行きたいものだ。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 どうも皆さん、こんにちわ。

 転生系オリ主の菊白蓮夜です。

 さて、お昼時の現在。俺は今────

 

 

「あ、菊白くんもどうかな? お昼。一緒に行かない? あと、左の頬が腫れているけどどうしたんだい?」

 

 

 ────うん、ありがとう。平田くん。

 けど今俺、画面の向こうに挨拶中なんだよ。

 誰かいるかは知らんけど、これでも一応転生オリ主だからさ。

 

 

 ....あと、頬の事は何も言うな。

 

 

「あー、うん、行く。行かせて貰いますともさ。あ、清隆も誘っていい?」

 

「清隆? ....ああ、綾小路さんか。勿論いいよ。知り合いかい?」

 

「あー、そんなとこ。幼馴染ってヤツだ」

 

「なるほど、じゃあ僕達は教室の外で待ってるから」

 

「あいよー」

 

 そんな会話をする。

 一人でボーッとしている俺を心配したのか、クラスの人気者たる平田くんが声をかけに来てくれたのだ。

 いや、俺は俺でそこそこ重要な事をしてたんだが....まぁ、いいや。

 

 

「おーい、清隆。飯行こうぜ」

 

「....ん。行く」

 

「平田達が一緒だが大丈夫か?」

 

「だいじょうぶ」

 

 了承が取れたので清隆を連れて平田の待つドアへと向かう。....向かうのだが。

 

「なんか、視線多くね?」

 

「......?」

 

 教室内の異様な雰囲気に、ヒソヒソと聞こえる声。

 そして山内と池の射殺さんばかりの憎悪の目。

 コレはアレか。俺がいきなり美少女に声をかけたからクラスの雰囲気がザワついたのか。

 それとも、自己紹介で“悪い魔法使い”になりたいなどと口走った男が行動を起こしたから揺れているのか。

 

 どっちも有りそうで判断がつかない。

 

 

「おっす、お待たせ平田」

 

「あ、ああ、うん。大丈夫、全然待ってないから。というか、本当に知り合いだったんだね」

 

「はい?」

 

 え、なに? 疑われてたの? 俺。

 

「ああ、いや。そうじゃないんだ。気を悪くさせてしまったらすまない。そうじゃなくて、自己紹介以降、綾小路さんの声を聞くのが初めてだったから、少しびっくりしちゃっただけだよ」

 

 はい?

 

「....えっと、清隆さんや。誰かに話しかけられたりした?」

 

「......した」

 

「そっか、それで? お前、なんて答えた?」

 

「............。」

 

 ああ、うん。これ、なんも答えてねぇわ。

 絶対相手の事、無視しただろ、お前。

 初期の堀北じゃねぇんだからさ....。

 

「で、誰に話しかけられたわけ?」

 

「......ん」

 

 彼女の示す視線の先へと目を向けると....。

 

「ああ、なんだよ山内か。じゃあ、別に何も問題ねぇな。行こうぜ」

 

「....ん」

 

 

「えぇ!? ちょ、それはどうなんだい!?」

 

「いや、どうせ山内がしつこく話しかけて来たとかそんなオチだろ」

 

「ん」

 

「ほれ」

 

「ほれって、彼女、否定も肯定もしてないけど!?」

 

 いや、ぶっちゃけ真偽とかどうでもいいし。

 山内だし、扱いもこんなもんだろ。

 その証拠に、平田の背後で話を聞いていた複数の女子生徒からは同意の視線を貰っている。

 入学二日目で女子にここまで嫌われるとか、流石過ぎるだろ山内。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 さて、他愛のない話をしながらも、数分ほどで食堂へと到着した俺達。途中、恋愛話大好きな女子生徒達に清隆との関係を根掘り葉掘り聞かれたが、のらりくらりと明言を避けて、適当に躱しておく。

 

「平田くん何食べる〜?」

 

「そうだね、僕は日替わり定食かな。ちょっと気になってるし」

 

「あ、なら私もそれにしよーっと」

 

 平田、人気者だなぁ。

 

「菊白くんは何食べんの〜?」

 

 あ、俺の方にも話回って来た。

 

「あー、じゃあ、俺はアレだ。山菜定食にする」

 

「え? そんなの無いよ?」

 

「いや、端っこの方に載ってるだろ」

 

「あ、あった! ....これかぁ。って、0円!? こんなのあったんだ....おいしいのかな?」

 

「さぁ? なんかこれだけ0円らしいし、面白そうじゃね? マズそうだけど」

 

「....菊白くんって、やっぱり変人さん?」

 

 いや、やっぱりってなんだよ。ノーマルだわ。失礼な。

 

「え? だって魔法使いになりたいんでしょ?」

 

「アレは忘れて下さいお願いします」

 

「あっは! なにそれ〜」

 

 うん。イイ感じに馴染めているのではなかろうか。

 だから、一つ問題があるとすれば....。

 

 

「清隆、痛い」

 

 

 有栖なら洒落で済むけどお前の握力で腕抓られるとリアルに肉が抉れるんですが....。

 

 

「あー、彼女さん嫉妬してるみたいだし、私もう行くね? 美味しかったら私にもわけてね?」

 

 彼女じゃないんだが?

 つーかタダなんだから自分で頼めよ。

 

 

 そう言って去って行く女子生徒Aさん。さようなら名前も知らないクラスメートさん....出来れば俺をこの状況で一人にしないで欲しかったんだが。

 

 平田の方へと駆け寄る彼女を早々に見送り隣の茶髪ちゃんへと向き直る。

 

「悪かったよ、誘ったのにほったらかして。そう言えば結局昨日はどうなったんだ? 俺が消えた後、有栖とは上手くやれてたか?」

 

「....ん。だいじょうぶ」

 

 だいじょうぶ。

 それは、どういう意味の大丈夫なのだろうか。

 いや、怖いから考えないけど。

 

「ま、いいや。で? お前は飯、何にすんの?」

 

「....蓮夜と同じものでいい」

 

「いや、絶対不味いぞ?」

 

「.........軍資金は多いに越した事はない」

 

 流石、清隆さん。分かっていらっしゃる。

 この学校のシステムも、既に大凡の目星はついているのだろう。

 

「おk、なら方針は今晩話し合おうぜ。情報共有もしておきたいし」

 

「分かった。部屋は?」

 

「後で部屋番送っとく....って、そういや携帯交換してなかったな....ほれ」

 

「ん」

 

 

 ピロンと、安っぽい音を立てて、俺の携帯端末に彼女の名前が表示される。

 

「....なんか、普通の学生みたいでいいな」

 

「新鮮味がある」

 

「なー」

 

 

 そういや色々有り過ぎて有栖とも交換していなかったな。今日明日中に聞いておかなくては。

 

 ....最悪、部屋凸される恐れがある。

 

 

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