綾小路......誰さんですか?   作:せーちゃん

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さくせんかいぎ

 入学から二日目の夜。

 有栖と清隆に無事、部活動設立の申請が通った事を報告してからの事。

 俺の部屋にはパジャマ姿の長髪美少女が居座っていた。いや、居座っていたというか、なんというか。部屋に上げたのは俺なんだが....まぁいいや。

 いや、良くないな。やっぱおかしいわ。

 何でパジャマで来てんだよ、制服で来いよ。

 あとお前、後ろ手に持って来た枕、俺が気付いてないとでも思ってんのか? 

 流石に泊めないからな? 話し終わったらちゃんと自分の部屋戻れよ?

 

 

 ───なんだかんだそのまま部屋に泊めてしまい、後々自分の首を自分で絞め落としている光景が容易に想像出来たところで、俺は強引に思考を打ち切った。

 

 

「あー、水でいいか? そういや飲み物何も買ってなかったわ」

 

「いい」

 

 いい。

 要らないという意味の“いい”なのか。

 いいよという意味の“いい”なのか。

 俺は今までの付き合いから、後者であると判断し、コップに二人分の水を入れてくる。

 

 ───二人分。

 そう、三人ではなく二人分である。

 有栖は現在Aクラスの生徒との付き合いでこの場には居ない。恐らく二日目の段階で既に葛城派が台頭しているのだろう。

 初動で出遅れると辛いのはAもDも一緒なのだ。取り敢えず何かあったら互いに協力し合う事を確約し、有栖にはAクラスでの派閥作りの方に集中して貰っている。

 

 ─────さて。

 

「そっちは何処まで見抜けた?」

 

「─────“全部”」

 

 ────全部。

 流石過ぎるその一言に、しかし驚きは無い。

 史実の綾小路と違い、清隆は友達作りにやっきになっておらず、初期の段階からこの学校の解析に移っていた。

 加えて俺というホワイトルーム内での対抗馬があった事で、原作よりも能力値が格段に上昇している。

 当然、こっちの清隆は女の子なので、筋力値や骨格の関係から下がっている部分も存在するだろうが、頭脳系においては間違いなく高くなっているだろう。

 

 何より一番の違いは彼女が“事なかれ主義”を自称していない事だ。行動力が原作と段違いになっている。

 

 

「おk。ならお互いに学校に関する情報のすり合わせは不要だな」

 

「ん」

 

 無駄な部分は省いていく。

 俺も彼女もお互いの能力を疑っていない。

 故に、清隆が“全部”と答えたのであれば、それは全部“正しく”理解しているという事なのだ。

 であるなら、俺達の間に無駄な情報共有の時間など不要だろう。早速方針の方に話を移す。

 

 

「取り敢えず俺はAクラスでの卒業を目指す。お前はどうす「協力する」....はえーよ」

 

 

 理由とか聞かないわけ?

 

 

「......蓮夜が一番だと判断したならそれでいい。手伝う」

 

 

 そーかい。

 

 

「んじゃまず一つ。最低目標決定だ。俺とお前が卒業時にAクラスに在籍している事。これでおーけー?」

 

「おーけー」

 

「んじゃ、次。ホワイトルームをどうするか....と、いきたいところだが、ぶっちゃけ俺の方には白部屋の情報は殆ど入って来てねぇ。知ってるのは、ホワイトルーム内が派閥の乱立しまくってるカオス状態って事くらいか」

 

 

 そう。全くと言っていいいほど、俺の元には白部屋の情報が入ってきていなかった。

 二年間坂柳家に籍を置いていた俺ではあるが、奴らに対するまともな情報は何一つとしてないのだ。

 

 松雄に保護されていた筈の清隆なら何か知っているのではないかとも思ったのだが....。

 

 

「だいたい同じ」

 

「なら、考えても仕方ないな。今できるのは放置。お前の親父さんが来年度の新入生にホワイトルーム生を捩じ込んで来るのはほぼ確定だから、その時までに肉壁を何枚か用意しておくか」

 

「さんせー」

 

 

 俺と清隆には、それこそ人類最高峰の頭脳が搭載されている。しかし、ホワイトルームに関する情報は、それぞれの情勢どころか、各派閥の詳細や清隆の父親の所在についてすら回ってきていない。

 俺と彼女の頭脳を合わせれば、一の情報から百を得る事だって難しくはないだろう。しかし元の情報が零で、これ以上の情報入手も期待出来ないのであれば直接的な手を打つ事は出来ない。

 

 加えて、白部屋の勢力図に関しては、昔の俺がぶち壊して来てしまったのでもはや原作知識も役には立たない。

 故に白部屋関係は相手側からのモーションを待って、迎え撃つ形になる。

 

 

「情報が出揃っていない以上、考えても無駄な事は置いておいて、Aクラスでの卒業計画について話を戻すぞ」

 

「ん」

 

 さて、ここでDクラスに配属された転生オリ主がAクラスに上がる為に取れる手段は大きく分けて二つある。

 一つは、チートの限りを尽くし、クラスのリーダーとしてDクラスを三年以内にAクラスへと押し上げる事。

 二つ目は、2000万pptを秘密裏に貯めて個人でクラスを移籍する事。

 

 大体がこの二つになる。

 

 

 

「一応聞いておくが、お前はどっちのが楽だと思う?」

 

「....後者。Dクラスには使える駒が少ない。他クラスと戦争した時、試験の内容次第で兵力差から押し潰される可能性がある。....二人で動いた方が効率的」

 

 

 既に特別試験の存在まで把握している清隆。

 流石に試験内容までは知らないだろうが、二日でここまで辿り着くのは流石の一言しかない。

 断片的とはいえ特別試験について言及している以上、恐らく俺同様に上級生から情報を得たのだろう。

 ....俺が言えた事じゃないけど、あまりにもフットワークが軽過ぎやしませんかね。

 

 閑話休題。

 

 さて、清隆の動向は置いておいて話を進めるが、当然ながら俺の意見も彼女と全く同じものだ。

 Dクラスには役立つ兵隊が殆ど無く、性格的にも一つに纏めるのはかなり時間がかかる。

 前世では一点特化の磨けば光るクラスなどと評価されていたが、圧倒的にクラス単位での総合力が足りていないのである。

 加えて、将軍格の生徒やクラスの特色にも大きな当たり外れが存在する。当たりのクラスはAクラスとCクラスくらいだ。

 Dに関しては言わずもがなの半空位状態。Bクラスにいたっては一之瀬の影響力が強すぎるせいで、クラス全体に終始ダーティープレイの制限が入る始末だ。正攻法限定でクラス単位でAを目指すというのは全く現実的ではない。俺がもしBクラスで入学したとして尚且クラス単位でAを目指すのであれば、真っ先に一之瀬を中学時代の万引きネタで脅した後、初動のクラスカースト形成の段階から彼女を除外しなければならなかっただろう。

 

 

 と、まぁ話が少しズレてしまったが、このように高育では所属したクラスの特色により大きく初期方針を変えなければならないわけだ。

 

 ではDクラスをAクラスに持っていくにはどうすれば良いか。まず、平田の存在が邪魔になる。

 一之瀬同様、外道手段に制限をかけてくるような抑止力さんはいくら優秀だとしても害でしかない。うちのクラスには荒事に向いている生徒が須藤と三宅くらいしかいないのだ。

 俺と清隆を除外した場合、龍園からの裏工作にクラス全体が耐えられない恐れがある。

 よしんば俺や清隆が前面に出たところで、平田の存在がある以上、必然的にクラスメートを見捨てる事が出来なくなる為、下層のダメージを全て上層の生徒が請け負う事になる。龍園や有栖がそんなウィークポイントを見逃す筈もなく、ちょくちょく刺されて後退させられるのがオチだ。

 

 そう。つまりDクラスである以上、担任教師の茶柱の他に、クラス一の人気者である平田洋介を倒さなくてはならないのである。

 

 面倒くさい。ひじょーーーに面倒くさい。

 

 なので今回、俺はクラス単位でのAクラス昇格は一切狙うつもりはない。

 

 ────とは言わない。Dクラスは、謂わば俺にとって三年間の巣穴になるわけだ。申し訳ないが、俺が過ごしやすいように改造させてもらう。

 

 というわけで、クラス単位である程度Aを目指しながらも、自分自身の評判はしっかりと守りつつ、クラス内での平田の発言力を低下させ、自分は他クラスからヘイトを買わないように擬態する。それ等全てを担任含めて誰にもバレないように2000万pptを貯めながら行う───そんなハイブリッドな方法を提示しよう。

 

 

 その為に俺が最初にやる事は───

 

 

 

「取り敢えずDクラスを真っ二つに割ろう」

 

 

 

 

 

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