ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

10 / 38
ハギ老人が116番道路にいたのマジで謎。


どうしてどいつもこいつも袋小路に行きたがるのやら

 ジム戦終了から一日目。

 タマゴを抱えて街内を歩きつつ、そこらのトレーナーにバトルを吹っ掛ける事にした。

 道路や洞窟内じゃないとバトル出来ないという事はなく、普通に街に滞在するトレーナーもいるので、承諾が得られればそのままバトルという流れは可能なのである。

 勝ったり負けたりしたが概ね好調。カインもやれる事が増えたのが楽しいのか、今までよりも積極的にバトルを望んでいるみたいだった。

 俺もバトルの楽しさというものが段々とわかってきたので少し好戦的になってるかもしれない。まあ悪い変化じゃないだろう。

 タマゴが孵るにはまだまだ時間がかかりそう。

 

 三日目。

 タマゴが少し動いた。その瞬間めちゃくちゃ騒ぎ立てたのをハルカに諌められる。なんか恥ずかしかった。

 それはそれとしてちゃんと孵りそうで安心した。時間はまだまだかかるだろうけどこのままいけば無事にチルットが生まれてくるだろう。とても楽しみである。

 アクア団の動向はと言えば未だに不明だ。船のパーツ完成がいつになるかわからない以上、先手を取る事は出来ない。

 多分既にデボン内にアクア団のスパイが紛れ込んでると思うからそいつを捕まえられれば楽なんだけど……まあ見分けなんかつくわけがない。

 仕方がないので普段通りに辻バトルをしていくとする。

 当たり前と言えば当たり前だがハルカに挑むトレーナーもそれなりにいたし、何人かはハルカが何者なのかも知っているようだった。

 元々リーグ優勝者という肩書きがあるのでハルカという人物は実はそれなりに有名人なのである。

 その上で挑んで来る者はもちろん最終進化系を手持ちにしていたんだけど、たった一つの例外も無くバシャーモ一匹で蹴散らしていた。強すぎだろアイツ。

 

 五日目。

 俺たち──というよりはハルカの存在が広まってきた。

 きっかけは言うまでもなく挑戦者をちぎっては投げちぎっては投げしてたあのバトルだろう。

 この時くらいからトレーナーの質というかレベルが劇的に向上した。俺はオマケでメインはハルカのバトルと化し、公園の一角にはちょっとした人だかりが出来るまでになっていた。最早イベント扱いである。

 ハルカ自身は申し訳無さそうにしていたけど、ハイレベルなバトルが見られるならそれはそれで経験になるのでそのまま続けてもらった。

 ただぶっちゃけバシャーモが蹴り入れるだけで終わるようなバトルは何の参考にならないので大した実りは無かったと言えよう。レベル差があるとバトルはイジメでしかないというのがよくわかった。

 

 で、これが良くなかったと悟るのが七日目。

 

「ま、待ってぇー! その荷物を返してぇぇぇー!!」

 

 そんな悲壮な叫びが聞こえた。どうやら遂に盗難事件が起こったらしい。

 まさか警察がいてこんなにあっさり事が起きるとは思っていなかったので、アクア団の下っ端はそんなに優秀なのかと思ったがどうやら原因は俺たちにあるっぽい。

 こっちで勝ち抜き戦のイベントが発生したせいで、警察の方としても何かが起こった時の為に人手を回さざるを得なかったのだとか。

 そりゃ人が多いところの方が何かしらの事件が起こる可能性は高いよねって話で、完全に墓穴を掘った形である。

 

「なんっでこう裏目に出るかなチクショウが!」

 

「な、なんかゴメン……」

 

「いやハルカのせいじゃないけど……違うけどチクショウ!」

 

 ハルカがわけもわからずといった感じで謝ってくる。

 実際ハルカのせいじゃないし、本気で防ぐつもりがあれば手段を選ばなきゃ防げた事件なので誰が悪いかと言えば俺になる。でもこんな形になるのは予想してなかった。

 とりあえず全力ダッシュで声のした方──デボンコーポレーションの方へと走っているが間に合うかどうかは微妙なところ。

 

「これ間に合わなかったら戦犯だぞ……!」

 

「ならあたしが上から探す! ちるる!」

 

「──ちるっ!」

 

 ボン、とハルカの投げたボールから飛び出したのは、綿雲に包まれた青い鳥のような姿のポケモンのチルタリス。

 ハルカが軽い動作でその背に乗り、大空へと羽ばたいていく姿を見て。

 

「お、おい! 探すったって見つかるのか!?」

 

「大丈夫! 怪しい人を見つければいいんでしょ!?」

 

「いや簡単に言うけどお前──!?」

 

 俺が言い終わる前に飛び去っていくハルカ。見かけによらずチルタリスの飛行速度は速い。

 というかハルカはああ言っていたけど、まさかアクア団だとわかりやすい服装はしてないだろうし、上空から判断できるものなんだろうか。

 ──なんて考えていたら、カナズミの北側出口の方に荒々しいオーラを纏う放射状の攻撃が飛んでいくのが見えた。

 アレ『りゅうのいぶき』か!? 何してんだアイツ!? なんで街中で技ぶっぱなしてんの!? 

 ハルカの考えてる事が全くわからないままデボンコーポレーションを過ぎ、そのまま走っていくと白衣を着た人が息を切らしているのが見えた。多分あの人が荷物パクられた人だ。

 

「おーい、そこの人ー!」

 

「ぜぇ……ひぃ……ん……? お、おお! キミはもしやあの森の!?」

 

「話は後! 泥棒どこに逃げた!?」

 

「え、ええ、多分あっちの方です」

 

 そうして指差したのは東側出口──つまりゲームと同じく行き止まりがあるカナシダトンネルの方角だ。

 この世界においてもカナシダトンネルは騒音でポケモンが暴れるのを問題とし、機械作業を断念してそのまま人力で掘っているという事実は変わっていない。

 そしてこの程度の情報はちょっと調べればわかる事だ。トウカの森での経験からして、こっちが逃走経路に向いてないのは理解してると思ってたけど間抜けな団員だったんだろうか。

 ……と、ここまで考えてはたと気付き。

 さっきの『りゅうのいぶき』は多分団員がそちらに逃げようとしたのを潰す為のものだ。それで結果としてルートが制限され東側に行くしかなくなったと。

 

「……意外と考えてるな、ハルカ……」

 

 どうやって団員かどうかを判断したのかはわからないけどお手柄だ。それなら後は追い詰めるだけでいいはず。

 お礼を言って116番道路へと向かい、先行していたハルカと合流する。

 目の前には一般人──に扮したアクア団の団員と思われる男が一人。そして──。

 

「へへへ……それ以上近付くなよぉ……」

 

「ひぃぃ……た、助けてくれぇ……」

 

 ──これ以上無いくらいわかりやすく人質に取られたハギ老人の姿がそこにあった。

 だからなんでいるんだよハギ老人! 何故トウカの森を超えてここにいる!? 通行不可のカナシダトンネル前まで来る理由って何!? つーかキャモメ(ピーコ)ちゃんどころか本人が人質に取られるのかよ! 

 腹立つくらいゲーム通りに事が起こるのに全くゲーム通りに進まない。

 でもまあ確かにポケモン取って逃げるよりは人質取った方が逃げやすくはあるよなぁ……! 

 

「……どうする、ハルカ?」

 

「うーん……“でんじは"とかで動きを止められればいいんだけど、あのままだとハギさんも巻き込んじゃうし……あっ」

 

 別のボールに手を掛けていたハルカが上を見ながらふと気付いたように声をあげる。

 その視線の方に目を向ければ、何か小型の岩のような物体が団員の上空にふよふよと浮かんでいた。

 あれは……確かチビノーズだっけか? という事は──。

 

「あン? んだこりゃ──」

 

「“でんじは"!」

 

「うぎゃっ!?」

 

 チビノーズが団員に押し当てられ、それが電撃を発した。

 電撃を食らった団員が身体を痙攣させながら崩れ落ち、ハギ老人を解放する。

 それと同時にいつの間に追いついていたのか、警官が団員に手錠を掛けにいった。

 

「──ふぅ、これで解決ですわね」

 

 上から声が降ってくる。

 そちらを見上げれば、そこにいたのは予想通りツツジ──と、ツツジを頭に乗せたダイノーズだった。浮かんでいるのは“でんじふゆう"だろうか。

 

「サンキューツツジ。助かった」

 

「いえ、これもジムリーダーの責務ですから。間に合ってよかったですわ」

 

 治安維持に努めるのもジムリーダーの仕事の一つではあるが、それにしたって対応が早い。もう少し時間がかかるものだと思ってたけど。

 

「ハルカさんから要請がありましたの。怪しい人物を追い掛けているから手を貸してほしいと」

 

「い、いつの間に……」

 

「さっきちるるに乗ってあの人を追いかけてた時だよ。人手は多い方がいいでしょ?」

 

「……そりゃそうだ」

 

 俺も追いかけてる時にツツジにコールかけりゃよかったな。必死だったもんで忘れてた。今後何か困った事があれば頼ろう。

 

「おおーう、助かったぞー! ありがとうよー! キミたちは命の恩人じゃあー!」

 

「ああうん、お礼ならこの二人に」

 

 こちらの手を握ってぶんぶん振り回しながら感謝の意を伝えるハギ老人を二人にパスする。尽くアクア団関連で何もしてねぇな俺。

 

「というかなんでこんなところにいたんです? ここ何も無いですけど」

 

 これはゲーム時代からずっと気になってた事だ。

 買い出しに出るならトウカでいいし、わざわざ森を抜けてカナズミまで来る必要が無い。まして行き止まりの116番道路に足を運ぶ理由が全く思いつかない。

 

「ん? ああ、デボンの社長に呼ばれておってな。部品作りを手伝っていたんじゃよ。それも終わったからピーコちゃんと散歩してたらこんな事に……」

 

 ああなるほど、そういう理由でカナズミまで来てたのか……。散歩場所にここを選ぶ理由はわからんけど……まあピーコちゃんの気まぐれとかそんなんだろう。この人手持ちに激甘だし。

 

「まあそれはいいんじゃよ。それよりキミたちの目的はこれだろう?」

 

 言いながらハギ老人が差し出して来たのは小脇に抱えられるくらいの大きさの荷物。ゲーム風に言えば『デボンのにもつ』だ。

 

「ああ、それそれ。それを取り返してくれって頼まれたんですよ」

 

 荷物を受け取って鞄の中に仕舞う。……これさっきの“でんじは"で壊れたとかないよな? 

 

「……ふむ。とりあえずカナズミシティまで戻ろう。少し話がしたい」

 

「え? まあいいですけど」

 

 この場面でハギ老人から話とかあったっけ? などと思いながら、ハギ老人を護衛しつつカナズミシティに戻る事にした。

 

 

 * * *

 

 

 そして場所はデボンコーポレーションの社長室。

 ツツジはジムに戻っていったのでこの場にいるのは俺、ハルカ、ハギ老人、キノココ好きのデボン社員、そして──。

 

「初めまして。わしはデボンコーポレーションの社長をやっているツワブキだ。うちの社員を助けてくれたんだってね?」

 

 ──デボンの社長であるツワブキ氏。つまりダイゴさんの父親だ。

 

「なんでもトウカの森でも世話になったとか。重ねて礼を言おう」

 

「……それやったの俺じゃないです。こっちのハルカです」

 

 なんかもうこういう流れになる度に罪悪感が凄い。何もしてないのに手柄だけ掠め取ろうとしてる感が半端じゃない。早く自立したい。

 

「む? そうなのか。まあ細かい事はいいんだよ」

 

「はぁ……」

 

「それよりもどうだい、あの話を受けてくれないかい?」

 

 あの話、というのは要するにデボンの荷物をカイナシティの造船所にいるクスノキ館長に届けてくれというやつだ。

 元々はここの社員がカイナシティまで運ぶ予定だったんだろうけど、怪しい連中に二度も襲われた前提があってなお敢行するのは得策ではない。この状況で戦闘能力の無い一般市民を向かわせるには不安が残る、という事だろう。

 そこで白羽の矢が立ったのが俺たちというわけだ。正確にはハルカだけど。

 ちなみに立案したのはハギ老人だった。まあ正直俺もあの社員は頼りにならないと思う。

 あとはまあ、チャンピオンを息子に持つツワブキ社長ならハルカの事も当然知ってるわけで、戦力的に考えれば妥当な話ではあるのだ。

 

「もちろんタダでとは言わない。それなりの謝礼を払おうじゃないか」

 

「……って言ってるけど、どうするハルカ?」

 

 聞かれてるのは俺だけど、いざと言う時に働くのはハルカだ。俺の一存で首を振ることは出来ない。

 

「あたしは別にいいよ。荷物を届けるだけでしょ?」

 

「それはそうだけど、さっきみたいな連中が襲ってくるかもしれないぞ?」

 

「負けないからいいよ〜」

 

 言い切った。

 凄い自信である。

 

「……あー、じゃあまあ、承ります」

 

 一応ハルカの了承も得たので依頼を受ける事にする。

 ……俺の旅とはいえ、こういう時くらいはハルカが主導になってほしいなぁ……。

 

「助かる。では前金としてこれを受け取ってもらおうかな」

 

 そうして差し出されたのは二枚の封筒。俺とハルカの二枚だろうか。

 中身を見れば、そこには数字の書かれた紙──つまり小切手が入っていた。

 取り出して数字を確認する。一、十、百、千、万……と、そこまで数えて無言で封筒に戻した。子どもにポンと持たせるような額ではない。

 ちなみにハルカは平然としていた。お金の扱いに慣れていらっしゃる。

 

「足りないかな?」

 

「お返ししてもいいですか?」

 

「それは困る。責任を感じたのならしっかり届けてくれたまえ」

 

 金で縛ってきやがった。これだから上流階級の人間は……!

 

「まあすぐにとは言わない。おおよそ二週間以内に運んでもらえれば十分だ。向こうにもそう伝えておこう」

 

「え? すぐじゃなくていいんですか?」

 

 わざわざ頼むくらいだから早急に必要なのだと思ってたけど。

 

「ハギのお陰で予定よりも早くパーツが完成したからね。急ぐ必要はない」

 

 なるほど、浮いた期間分を自由時間として与えるって事か。

 

「んー……それならムロ経由してからでもいいですかね?」

 

「期間に間に合うのなら好きにしてくれて構わないよ。ムロに行くなら息子──ダイゴもそこにいると思うからよろしく言っておいてくれ」

 

「わかりました。会えたら言っときます」

 

 多分石の洞窟にいるんだろうなぁとか思いつつ。

 

「なら船はわしが出そう。助けてくれた礼じゃ。小さい船じゃがな」

 

 そう申し出てくれたのはハギ老人。結局こうなるのか。

 まあ一日の回数が決まってる定期便よりは小回りが効く個人所有の船の方がありがたいけども。

 

「うーん……なんか俺に都合良く物事が進んでる気がするなぁ……」

 

「そう? 結構厄介事に首突っ込んでると思うけど」

 

「うん……まあ……そうなんだけどさ……」

 

 都合良く進むから厄介事に見舞われるのか、厄介事に遭う運命にあるからある程度都合良く進むように出来ているのか。

 まあ通じる内は主人公補正を最大限利用させてもらおう。じゃなきゃやってられない。

 とりあえずはムロタウンに行ってタマゴ孵化させて、その後に石の洞窟で目当てのポケモン探す感じになるか。……二週間で足りるかこれ? 

 まあやるだけやってみよう。別に荷物渡してから戻ってもいいわけだし。期限だけ忘れないようにして動けばいいか。

 

「それじゃ行くか。今から船出せます?」

 

「よし来た! かっ飛ばしていくぞい!」

 

 何やらハギ老人が張り切っている。船旅はあまりした事がないからちょっと楽しみだ。

 




評価や感想、批評等お待ちしておりマース。
あとここ好き機能なんかも使ってくれれば喜びます。



いつもの雑談なので嫌な人はブラバ……というか、この欄は大抵雑談か技能とかの設定書いてるんで見たくない人は閲覧設定で前書きと後書き遮断した方がいいかも。










評価バーがついにMAXになりました。これからも頑張っていきたいです。
あと最近初めて評価にコメント付いてたのに気付きました。ありがとうございます。
中々話が進まないのは申し訳なく思ってるけど、多分このペースは以降もあまり変わらないと思います。
どうでもいいけどハギ老人の理由は上手く落とし込めたと思う(小並感)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。