ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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親を探して地下二階

 さて、ゴローンたちから逃げてる間にここがどこだかわからなくなってしまったわけだけど。

 

「『あなぬけのヒモ』って便利だよなぁ……」

 

 この道具は使うと出口の方向を示してくれるという、洞窟探検には必須の代物だ。

 流石にゲームみたいに出口にワープなんて超技術ではないものの、現在地がわからなくても出口までナビゲートしてくれるこの道具は本当の意味で命綱となる。

 だからまあ、脱出に困る事はそうないんだけども。

 

「さて、こいつどうしようか」

 

「え? 捕まえないの?」

 

 咄嗟に助けてしまったこのキバゴの事だ。

 ハルカの言う通り捕まえたいところなんだけど……。

 

「お前、俺と一緒に来る気はあるか?」

 

「……キバ」

 

「だよなぁ……」

 

 案の定というか首を横に振られてしまう。そんな雰囲気じゃないもんなぁ。

 

「多分だけどこいつ迷子だよ。ハルカの言った通り、うっかりゴローンの縄張りに入って追われてきたんだと思う」

 

「キバキバ」

 

「ほら」

 

 コクコクと頷くキバゴ。

 まあ仮に迷子じゃなかったとして、せっかく助かったと思ったのに別の人間に捕まるとか俺がキバゴの立場なら相当嫌になると思う。

 だから一応確認してみたわけだけど、まあ予想通りだったな。

 

「……じゃあその子を群れに返すの?」

 

 ハルカが俺の腕の中にいるキバゴを見て言う。

 

「そのつもりだけど」

 

「……うーん……」

 

 煮え切らないハルカの返事。何か問題でもあるんだろうか。

 

「……さっきも言ったけど助けるなら責任を持つべきなんだよ。それこそ自分がずっとお世話するとか。人の臭いがついた子って野生界だと爪弾きにされる事が多いから」

 

「あ……」

 

「もちろん全部の群れがそうとは言わないけど、その子の群れはどうかな……キバゴはともかくオノンドやオノノクスは嫌がるかも」

 

 言われてみれば確かにそうだ。

 野生の諍いにちょっかいかけるなっての、縄張り争いとか食料事情とかだと思ってたけどそういう理由もあるのか……。

 

「えー……結構ガッツリ触っちゃったんだけど……大丈夫かなこれ……」

 

 遅まきながらキバゴを地面に降ろしておく。本当に遅いけど。

 

「どうだろ、敏感な子は本当に少しでも嫌がるから。いざという時はちゃんと受け皿になってあげなきゃだよ?」

 

「それはもちろんそのつもりだ。出来ればこいつの意志を尊重してやりたいし」

 

 そんなイジメみたいな現場あんまり見たくないけどな。まあ手を出してしまった俺が悪い。万が一の時は俺が世話してやらねば。

 

「んじゃこいつの群れを探すか。この階のどこかか?」

 

「いや、多分下だと思う。単体でならここでも見るけど、群れとか大きな集まりは基本的に深いところから出てこないから」

 

「マジかぁ……地下二階には行くつもりなかったんだけど……」

 

 ここ(地下一階)ですら危なかったというのに、ここより下となると出てくるポケモンの強さも上がってくるはずだ。そうなると俺の手持ちだけじゃ対処出来なくなってくる。

 となれば……。

 

「ハルカ、ごめん。助けてくれ」

 

「……しょうがないか。でもあたしは極力手を出さないからね。ユウキくんの命が危なくなった時だけ介入する。それでいい?」

 

 ハルカというセーフティはあくまでも予想外への対抗手段であり、それを能動的に使おうとするのは趣旨が違ってくる。

 それでも許可をくれたハルカには感謝しかない。

 

「ありがとう。……じゃあ行くか」

 

 想定外といえば想定外だけど、逃げる事だけを考えればまだなんとかなるだろう。

 カインをすぐ側に、フォルテを頭に乗せて地下二階を目指す。

 

 

 * * *

 

 

 地下二階は魔窟でした。

 開幕ローブシンとハリテヤマの縄張り争いの現場に遭遇し、必死で息を殺しながら気付かれないように横をすり抜ければクチートの大群が見えたので慌てて引き返すと、今度はゴルバットとクロバットが編隊を組んで襲いかかってきた。

 気持ち程度にフォルテが“でんきショック"や“でんじは"やらで応戦してたものの、果たしてどこまでハルカの役に立ったのやら。

 

「ハァ……ハァ……し、死ぬかと思った……!」

 

「レベル的には大した事ないんだけどねー。ここまで来るとグループで行動するポケモンが多くなってくるから」

 

 そんな事を言うハルカだけど、それはあくまでもハルカの手持ちが強いというだけであって、レベルも数も上回られている俺にとっては脅威以外の何者でもない。本当にハルカがいてよかった……! 

 

「早くこいつ群れに帰そう……一刻も早くここを出たい」

 

「そうだね。あんまり人が長居するのもよくないから……あ、イワーク」

 

「くっそ休む暇もねぇ! カイン!」

 

「ジュッ!」

 

 “リーフブレード"

 

 カインが先手を取って草の刃でイワークを切り裂く。

 しかし流石にレベル差があったのか、イワークは多少の余裕を残してしっかりと攻撃を耐えて。

 

「グォォォォォ!!」

 

 “いわなだれ"

 

 返す刀に“いわなだれ"を放ってきた。けど密着状況で素早いカインにそれは当たらない。

 隙間を縫うようにするすると回避し再び接近。

 

 “リーフブレード"

 

 二度目の刃が閃きイワークが沈む。いくらBが高くてレベル差があっても四倍弱点を二発受ければ流石になぁ……。

 

「ナイスカイン。いい感じだぞ」

 

「ジュッ」

 

「ちるちる♪」

 

 カインの頭を撫でてやる。単体で出てきたゴローニャ系列やイワークは任せてもらうように言ったけど、これならなんとかなりそうだ。……それ以外が絶対に無理なんだけど。

 迷子とはいえ地下二階なら覚えてる場所もあるらしく、キバゴのナビゲーションも頼りにしながら先に進んでいく。

 

「にしてもやっぱりハルカは強いな。頼りになる」

 

「えへへ、そう? ありがと」

 

「なんでそんなに強くなったんだ? やっぱり博士の手伝いしてたら自然とって感じ?」

 

 地味にずっと気になってた事を聞いてみる。

 本来のハルカはあくまでもフィールドワークの一環でトレーナーをやってただけであり、強さを求めるようなイメージはない。

 まあそれでも最終的にチャンピオンになった主人公と同等近い域まで達してたりするけど、それはまあゲームの都合だから置いとくとして。

 だとしてもそこまで成長するのには主人公というきっかけが必要なはず。

 原作開始前の時点でここまで成長した理由はなんなのか。

 

「必要だから強くなったって感じかな? ほら、図鑑完成させようと思ったら危ないところにも行かなきゃだし、そうなると強くならなきゃなーって」

 

「そうなのか。でもそれならリーグに挑戦する必要はなくないか?」

 

「一応あたしもトレーナーだからね。どこまで行けるか試したくなったんだよ」

 

 すらすらと答えるハルカ。

 なんだかんだハルカもトレーナーだったか……いやまあ、少なくともヒワマキくらいまでは主人公に先行してるくらいには強いもんな。

 現実にあって意思が存在するならそういうもんか? 

 

「やっぱりそういう闘争心必要かなぁ……俺そういうのあんまり無いんだよな……」

 

 別に問題さえ解決出来れば個人的にチャンピオン目指す気も無いんだよな。ハルカの言葉を借りるなら『必要だからやってるだけ』。

 ダイゴさんにも変な期待されたけど、バッジをコンプリートしたとして果たしてリーグに挑戦するかは怪しいところ。

 

「あはは、ユウキくんはちょっと珍しいかもね。でも才能はあると思うから、あたしとしては行けるところまで行ってほしいな」

 

「どうなんだろうな。まあやるだけやってみるか」

 

 とはいえ期待される分には悪い気はしない。

 こんな言葉でやる気が出るんだから自分でも単純だと思うけど、かわいい女の子にこんな応援されたら誰だってやる気を出すものじゃないだろうか。

 

「とにかくまずはキバゴを群れに戻して──」

 

 “げきりん"

 

「ッ! 危ないっ!」

 

 ドンっとハルカに突き飛ばされる。次の瞬間、轟音を響かせて何かがその空間を叩き潰した。

 砂が巻き上げられて状況が把握出来ない。大きな何かがそこにいるだろうことだけがシルエットを通してわかった。

 

「おい、ハルカ!? おい!」

 

「大丈夫!」

 

 一瞬最悪の想像が頭を過ぎったがすぐに返事があった。

 ほっと胸を撫で下ろしてシルエットを見る。

 煙が晴れて現れたのは、攻撃を受け止めたハルカのバシャーモ(ちゃも)の姿ともう一つ。

 二足歩行で立つ金の鎧のような鱗を持った、斧のような牙が特徴的なそのポケモンの名は──。

 

「──オノノクス……!?」

 

 いるだろうとは思っていた。けど、あんなデカいやつの接近に気付かないとは……! 

 

「グルルルルッ!」

 

「ちゃも!」

 

「シャッ!」

 

 “ブレイズキック"

 

 炎を纏った蹴りがオノノクスの腹に突き刺さり、出来た隙でバシャーモがハルカを抱えて離れた俺の近くまで来る。

 けど、少し呻き声を上げたくらいであまり効いた様子は無い。やっぱり半減だとそんなもんか……。

 

「なあ、あいつ……」

 

「うん、多分跳んで来たんだと思う。明らかにユウキくんを狙ってたから危なかったね」

 

「おいおい……」

 

 シャレになってない。あんなの受けたら即死じゃないか。

 

「キバ!」

 

「あっ、おいキバゴ!?」

 

 何を思ったのかキバゴがオノノクスに向かって飛び出して行った。何考えてんだアイツ!? 

 

「キバキバ! キバ!」

 

「グルォォォォォッ!!」

 

「キバッ!?」

 

「フォルテ“でんじは"!」

 

「ちるっ!」

 

「グルァッ!?」

 

 咄嗟に相手をマヒさせる“でんじは"を使わせる。

 それを受けたオノノクスが僅かに動きを鈍らせ、飛び込みながらキバゴを回収し急いでその場から離れる。

 

「お前バカか!? 勝てるわけねえだろ!?」

 

「キバ、キバキバ!」

 

「何!? わからん!」

 

 何か訴えてるのはわかるけど言いたい事が伝わってこない。

 オノノクスとキバゴ(自分)を交互に指差してる? 何? 

 

「あっ! まさかアレお前の親とかボスなのか!?」

 

「キバ!」

 

 力強く頷くキバゴ。

 だったら話は早い! 

 

「それならあいつ説得してくれよ! お前を送り届けに来ただけだって!」

 

「キバ……キバキバ……!」

 

「多分その子さっきやろうとしてたよ。興奮してるせいで聞く耳持ってないけど」

 

「ちくしょうふざけんなよ! あ、でももうこれで目的達成だしこのまま逃げればよくね?」

 

「いやー、あのオノノクス結構怒ってるから追ってくるんじゃないかなー。あたしたちがキバゴを攫ったとか思ってるかも」

 

「はあ!?」

 

 冗談じゃない。なんで必死の思いで送り届けに来たのに殺されかけなきゃならないんだ。

 

「ちょいタンマタンマ! 俺たちはこのキバゴを群れに帰そうとしただけだって! ほらお前もなんか言ってやれ!」

 

「キバキバ! キバァ!」

 

「グルァァァァァッ!!」

 

「うおお危ねぇ!? ダメだこれブチギレてる!」

 

 正に聞く耳持たずで攻撃を仕掛けてくるオノノクス。これどうすんだよ! 

 

「うーん、倒すしかないかなぁ……会話は無理そうだし」

 

「倒すって……うっわレベル六十超えてるし! ごめんハルカ頼んだ!」

 

「了解。手荒になるけどゴメンね──あれ?」

 

 バシャーモとオノノクスが対面し、いざ打ち倒さんとバシャーモが動き──だそうとして、その前にぬっと闖入者が現れ、オノノクスの頭を地面に叩きつけた。

 そのあんまりな光景に思わず黙ってしまう俺とその手持ち。とキバゴ。

 

「もう一匹のオノノクス? でも敵意は無さそう?」

 

 ハルカがそう分析する。確かに怒ってる様子は無さそうだけど……。

 オノノクスの頭を叩きつけたオノノクスがこちらに歩いてくる。な、なんだ? やる気か? 俺じゃ勝てないぞ? 

 思わず身構え、せめてキバゴの前に出て盾になろうとすると、俺の目の前で止まったオノノクスがぺこりと頭を下げた。なんだ? 

 

「……もしかして……謝ってる?」

 

「グルル……」

 

 なんだこのオノノクス? 漁夫りに来た別の縄張りのポケモンか? でもそれにしては穏やかというか……。

 

「キバキバ!」

 

「グルォ」

 

 キバゴがオノノクスと何やら話してるように見える。でも親ってあの倒れてる方のオノノクスのはずで……あ。

 

「……もしかして、母親?」

 

「キバ!」

 

「……マジかぁ」

 

 どの種族でも母親って強いんだなぁ……。

 

「……えーと、どうすればいいんだこれ……?」

 

 予想外の展開に頭がついていけてない。キバゴを返す……でいいのか? 

 

「と、とりあえずそちらのお子さんです。上で迷子になってたっぽいので連れてきました」

 

「グル」

 

 抱えたキバゴをオノノクス(母)に差し出す。するとキバゴがぴょんと跳ねて母ノクスに抱き着きにいった。感動の再会である。

 

「キバキバ、キバ」

 

「オォ? グルルォ……」

 

「キバ!」

 

 何やら会話したかと思うと、キバゴが今度は父ノクスの方へ歩いていきぺちぺちと顔を叩き始めた。

 アレ起きたらまた暴れたりしないだろうな。

 

「キバキバ」

 

「……グルル……グルォッ!? グァァッ!」

 

「キバ、キバキバ、キバ」

 

「グルァッ!?」

 

 おいなんか父親めっちゃ睨んできてんだけど。何言ったアイツ。

 その後も会話の合間にちょくちょく敵意を向けてきたけど、なんやかんやで家族会議が終了した。最後なんか母親に黙らされた感あったけど。

 母ノクスがキバゴを抱えてこちらに歩いてくる。

 

「グルルッ」

 

「え? いいの?」

 

 明らかに差し出されたキバゴ。それはつまり『この子を頼む』という意思表示以外には思えなくて。

 

「お前、最初に聞いた時は行かないって言ったのに」

 

「んー、元々その子外の世界に興味があったんじゃないかな。だから他のポケモンの縄張りに入っちゃったんだろうし。最初に断ったのはお母さんたちに挨拶したかったからかな?」

 

「キバ!」

 

 元気なキバゴの返事。そういう感じなの? 

 

「えー……? じゃあ一緒に来るか?」

 

 モンスターボールを取り出してキバゴに差し出す。

 そうしてキバゴがそれに触れ、何の抵抗も無くボールに収まった。

 

「……本当にいいのか? 父親の方めっちゃ不服そうだけど」

 

 ゴリゴリの敵意を飛ばしてくる父ノクスは大いに何か言いたげだったけど、母ノクスが一睨みするとすぐに目を逸らしてしまった。あんな情けないオノノクスの姿は見たくなかった。

 

「グルル」

 

 最後に一鳴きしてオノノクス夫妻は洞窟の奥へと戻っていく。おそらくは自分たちの巣に帰るのだろう。

 

「……行っちゃった。よかったのか?」

 

「いいんじゃない? 親公認だよ?」

 

「それはそうなんだけど……随分とすんなり任せてくれたなと思って」

 

「さっきキバゴを助けようと飛び込んだり、お母さんが近付いて来た時に前に出たりしてたじゃない? それを見て任せられるって思ったんじゃないかな」

 

「そうかな……ならちゃんと応えないとだな」

 

 キバゴの入ったボールを見て。

 

「それじゃ、これからよろしく──ファング」

 

 かたり、とボールが揺れた。

 




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あとツイッター始めてみたので興味があるなら是非。裏設定とか愚痴とか呟いてる事もあります。

今回出たのは二匹でしたが一応地下二階のトップに君臨してるのがあのオノノクスの群れです。だから縄張りも比較的広いんですけど、その分目の届かない範囲に行く子が出る事もある。
ちなみにボスは別の個体。
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