ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが? 作:名無しのナナシ
「
「ワンリキー!」
カナズミの時とは違って障害物の無いフィールドへ互いにボールを投げる。
今回はちゃんとジムトレーナーを突破した上で迎える一戦。
相手はトウキ。『かくとう』タイプを専門としたムロタウンジムリーダーだ。
こちらの初手はフォルテを出した。本来のチルットと違って『ひこう』が無いから相性不利だけど、石の洞窟で経験を積んできた分レベルはそれなりに上がっているからいい勝負が出来るはず。
「なるほどチルットか。それに色違いとは珍しい。見たところ『でんき』を使える特異個体かな?」
トウキがフォルテを見ながら呟く。
フォルテの特徴として色違いという見た目の違いはもちろんの事、よく見ると綿のような羽が見てわかるくらいに帯電しているというものがある。
これは本来チルットが持っていない『でんき』というタイプが発現した事による現象であり、フォルテが徐々に電気の扱いに慣れてきたという証でもある。
特殊な変化を起こした存在。本来とは異なる性質を獲得したもの。そういったポケモンは『特異個体』と呼ばれるのだと博士から聞いた。
「まあそんなところです。んじゃ行きます!」
“でんきショック"
フォルテの身体から電撃が放たれる。遠くから放った故にワンリキーには楽々避けられてしまったけど、目的は当てる事ではなく誘導。
何発か牽制で撃ちながらタイミングを見計らって──。
「──今だ!」
「ちるっ!」
“でんじは"
「リキっ!?」
相手を『まひ』させる“でんじは"が見事に決まった。
身体能力が高い『かくとう』タイプにこういった命中不安の技を当てるにはちょっとコツがいる。
例えば今回やったのは技で相手を動かして本命を当てるという初歩的な技術だけど実践すると結構難しい。ハルカを相手に練習しておいてよかった。
「うん、いい指示だ! だけどワンリキーの特性を知ってるかい!?」
「もちろん!」
ワンリキーの特性──それは自分が状態異常の時に気合いで『こうげき』を上昇させる“こんじょう"か、相手の攻撃をモロに受ける代わりに自分の技も必ず命中するようになる“ノーガード"、もしくは怯む度に己を鼓舞して『すばやさ』を上げる“ふくつのこころ"のいずれかだ。
そしてトウキのセリフから察するにワンリキーはおそらく“こんじょう"だろう。今物理技を受けると手痛いダメージになりそうだ。
「いくぞ! “からてチョップ"!」
「リキィ────ッ!!」
「飛んで逃げろフォルテ!」
「ちるっ!」
ワンリキーが『まひ』がなんぼのもんじゃいと言わんばかりに雄叫びをあげながら腕を振り上げて突撃してくる。
けれどそれは羽を羽ばたかせて空中に逃げたフォルテに当てる事は出来ず空振りに終わる。飛べるポケモンはこういう直接攻撃が主な手段の手合いには滅法強い。
「そこから“チャームボイス"!」
「ちるる〜♪」
フォルテから魅惑的な歌声が発せられ、その音がワンリキーを苦しめる。
どういう原理なのか全くわからないけど、あまねくポケモンの技にはタイプというエネルギーが宿っているので、一見ただ歌ってるだけにしか見えないこれも『フェアリー』の力が宿っているという事なんだろう。多分。
「いいね! ポケモンの能力を活かせている! だけど飛んで逃げる相手は何人も見てきたさ! ワンリキー!」
「リキッ!」
そんな攻撃を受けながらもトウキの指示。
そして指示を受けたワンリキーは特性で上昇した筋力をも利用してフォルテのいる上空まで大跳躍した。
いや待てそりゃジャンプくらいなら出来るだろうけど未進化で『まひ』のお前がそんな速く跳べんの!?
「ちるっ!?」
「マズ……! 逃げ──!」
「いいや逃がさないね! “ちきゅうなげ"!」
「リキィ!」
フォルテが驚いている隙を見逃さずワンリキーががっちりホールド、そのまま地面に思いっきり叩きつけた。
ゲームだとレベル分の固定ダメージという技だけど、こっちだとタイプ相性が適用された上で能力値に応じて固定ダメージが変動してる気がする。
まあ要するに何が言いたいのかというと、ワンリキーのレベルがだいたい二十でフォルテに抜群だから確定した数値で見たダメージとしては四十くらい?
で、ワンリキーの『こうげき』が上がってる状態だからダメージに更にボーナス。つまり──。
「……お疲れ、ごめんなフォルテ」
──一撃KO。着地したワンリキーが得意気にポージングを決めていた。
目を回してしまったフォルテをボールに戻す。
今のは俺が良くなかった。跳躍という手段は予想出来てたのにあまりの速度に硬直して指示を出すのが遅れてしまったのが原因だ。
フォルテは産まれたばかりだし戦闘経験が浅いのもあってアレに反応しろというのが無理な話。トレーナーの俺がしっかりしなければ。
さて、こうして迷ってる間に“ビルドアップ"とか積まれたら面倒だ。次に切り替える。
「頼んだ、
「キバっ!」
初陣その二。次鋒はファングだ。
特に相性の差は無いけどフォルテが残してくれた『まひ』をどう活かすかだな。
確かに跳躍速度には驚いたけど、あれは溜めを作って出した一瞬の加速だ。平常時の速度が下がってる事に変わりはない。
「“ダブルチョップ"!」
「“からてチョップ"!」
互いに似たような性質の技。
けれど『まひ』で出来た『すばやさ』の差と手数でファングがやや有利。そして──時間をかければいつかは
「リッ……!?」
「
「キバァッ!」
ワンリキーが痺れて動けなくなった一瞬、完全に無防備になったところにキバゴがラッシュを叩き込む。
一発、二発、三発。そして四発目を入れたところでワンリキーが沈んだ。どれかが急所に当たったかな。
「うん、ちゃんとチャンスを見逃さない目も持ってるね。でもこいつを倒せるかな!? ハリテヤマ!」
「はぁ!?」
今なんて言ったコイツ!?
なんて言うまでもなく、トウキが投げたボールから出て来たのは相撲取りを連想させる姿をしたがっちりとした体格を持つハリテヤマだった。
おかしい。バッジ一つに使っていいポケモンじゃない。
「ちょっ……!? もうハリテヤマ使ってくるのはズルでは!?」
「普通ならマクノシタだけどキミの話はツツジから聞いているからね。なんでも本来より高いハードルを超えたそうじゃないか。ならボクも相応のポケモンで相手をするよ!」
「いらねぇそんな親切心! おいハルカお前のせいだからな!」
「頑張れユウキく〜ん」
「ああ頑張るよチクショウ!」
クッソこれ多分全ジムリーダーに連絡回ってるだろ! 下手したらまた指令とか使ってくるだろこれ!?
出来ればフォルテとファングだけで勝ちたかったけど
「なあファング、多分お前じゃ勝てないけどやるか?」
「キバ……キバっ!」
「そうか、よし頑張れ! いけるとこまでいくぞ!」
どう見ても勝てないような相手に手持ちをぶつけるのは個人的にはナシだけど、本人にやる気があるならそれを無碍にもしない。
格上を相手にする経験は積める時に積んでおいた方が色々お得だ。メンタル面とか経験値的に。
「とにかく回避優先! しっかり相手の動きを見ろ!」
「キバ!」
攻撃したところで大したダメージは入らないだろう。それなら少しでも長く相手の動きを見る事に集中する。
もちろんいけそうなら攻撃するけど、迂闊に飛び込めば四倍くらいある体格差に押し潰されるのがオチだ。タイミングは慎重に計らないといけない。
ここは小さな身体を活かして撹乱するのがベストだと判断する。
「“りゅうのいかり"!」
「振り払え!」
とりあえず遠距離から“りゅうのいかり"で攻撃させたけど、まあ案の定というか技ですらない片手で薙ぎ払われた。特殊方面に適性が無いのとレベル差があるからなぁ……。まあいいや。
「構わない! いけると思ったらどんどん撃ち込め!」
「キバァ!」
しばらくはファング自身の判断に任せつつ相手の判断に即応出来るように構えておく。
ハリテヤマが遠距離攻撃手段を持ってるかはわからないけど、こういう引き撃ち戦法に対応出来ないわけがない。
重量がある分ワンリキーのような急加速が出来るとも思えないし、果たしてどうやって距離を詰めてくる?
「不利な接近戦は避けて遠距離に徹する、と。だけどキバゴにその戦い方は向いてないんじゃないかな?」
そのポケモンに向いた戦い方をしないとね、とハリテヤマが動き出した。ただファングに向かって突撃するというそれだけの行為。
ファングが迎撃しようと“りゅうのいかり"を放つも、圧倒的な耐久にものを言わせて突っ込んできた。
ただまあ、それくらいならやってくるだろうと予想出来てたので冷静に距離を取るように指示を出す。
元々体力方面に優れたポケモンだから“りゅうのいかり"くらいなら構わず突撃してくるくらいは平然とやれそうだし、事実その通りになった。
これがいわゆる『読み』というやつになる。……まあセオリー通りに動く相手にしか通じないんだけども。技能とかある中でこれを通せと言われても今の俺じゃ無理。
「今度はちゃんと避けたか。ならそろそろこっちからも動こうかな! ハリテヤマ!」
「ハリィ!」
ハリテヤマが四股を踏むように大きく足を振り上げて。
「っ! ファング跳べ!」
“じならし"
ドスンッ! と勢いよく地面に足を叩きつけた衝撃が地面を伝わりグラグラと揺らす。しかしそれは先んじて空中へと跳んだファングには当たらない。
こういう露骨な事前動作がある技は見てから対処が楽だから助かる。まあ手加減してくれてるからこうなってるだけだろうけども、裏を返せば『これくらいは対処しろ』という事なのだから。
「お、判断が早いね。このまま逃げ回られるとちょっと面倒になるかな」
なんてトウキは言うけど、まず間違いなくハリテヤマを削り切る前にファングのスタミナやPPが先に尽きる。
基礎能力が違うんだから結局のところこれは時間稼ぎでしかない。だからどこかのタイミングでカインと交代したいところではあるんだけど。
「仕方ない。ハリテヤマ!」
「ハリィ!」
“きあいだめ"
ハリテヤマが気合いを入れて。
「“つっぱり"だ!」
「ハリハリハリハリハリィ────ッ!!」
“とうきかいほう"
“つっぱり"
全身に気合いを漲らせたハリテヤマが虚空に向かって“つっぱり"を始めた──かと思うと、張り手を象った闘気が凄まじい勢いで飛んでくるではないか。
そういうのは聞いてないが!?
「──なん……っだソレ!? くっそファング回避!」
「キッ、キバッ!」
迫り来る張り手の嵐をどうにか避け続けるファング。
あれ多分技能だな。“きあいだめ"状態の時に接触技を非接触技に変えて威力上げるとか多分そんな感じだ。確かZ技であんなのあったぞ。縮小規模とはいえ再現してくるなよ。
「当たり前のように技能使ってきやがって……! 俺はまだろくに使えないというのに……!」
「キミ相手なら解禁していいって聞いたからね。さあ、どう突破する?」
「これ勝てたらその認識改めてもらうように連絡してもらえます!?」
「いや、勝てたらむしろこの認識で正しいという判断になると思うけど」
「そりゃそうですね! ああもう!」
頭を抱えながら戦況を見る。
ハリテヤマはどうやら“きあいだめ"状態が解除されてるようだ。多分あの技能を使うと解除されるようになってるんだろう。
となるとさっきの技は“きあいだめ"をもう一度使わないと使えないはず──ではあるけども。
「
「ハリィ!」
“きあいだめ"
使うのを阻止出来るわけでもないんだよなぁ。攻撃しにいったとして耐久に任せて無理やり使ってくるに決まってる。
さっきは何とか避け切れたけど次も同じように出来るかといえば怪しいところ。
アレを見た以上逃げ切れるとも思わないしここは勝負を掛けるべきか。
「ファング」
「キバっ」
ファングが頷く。どうやら俺と同じ考えらしい。ここら辺の判断力というか、勝負どころを見極めてくれるのはありがたい。
「当たって砕けろ、だな。頑張れファング!」
「キバァ!」
ここからはファングの好きなようにやらせる。
一撃当てられれば最高。何も出来ずにやられてしまってもそれは仕方ない。この場面でファングがどう動くか、どう動きたいかを見れれば十分だ。
「その意気や良し! ハリテヤマ“つっぱり"だ!」
「ハリハリハリィ────!!」
さっきと同じように闘気で形作られた張り手がファングに迫り来る。
小さな身体を活かして回避し、時には当たりながらもハリテヤマに向かって懸命に突き進む。
そうして懐に潜り込む事に成功し、絶好の攻撃チャンスが訪れた。
「キ……バァ────ッ!!」
一際強くファングが咆哮し、その手に竜のオーラが収束する。
それはやがて爪の形を形成して。
“せんとうかん"
“ドラゴンクロー"
今のファングじゃまだ覚えられないはずの“ドラゴンクロー"がアッパーカット気味に振り上げられハリテヤマを切り裂く。
一撃当てた! 上出来すぎる!
「ハリッ……!?」
「怯むな! “はっけい"だ!」
予想外のダメージだったのか一瞬ハリテヤマが硬直するもトウキの指示で即座に行動、ファングが技を振り切った後隙に“はっけい"を撃ち込まれる。
直撃を受けて吹き飛ばされたファングは目を回して戦闘不能。だけど──。
「お疲れファング。ナイスガッツだったぞ」
新しい技を習得した上にしっかりダメージも入れた。更に“きあいだめ"状態まで解除したのだ。これ以上無い程の成果と言っていい。
「さあ後輩が頑張ったぞ! 決めろカイン!」
「ジュアアアアアア!!」
最後に出すのはもちろんカイン。二匹が頑張った分ここで決める!
「“こうそくいどう"!」
まずは身体から余分な力を抜いて『すばやさ』を上げる“こうそくいどう"を積む。
これで観察している限りだと見た目通りの『すばやさ』しかないハリテヤマがカインを捉えるのは難しくなったはず。
「続けて連続の“リーフブレード"!」
そうして動きで撹乱しながら足を止めずに“リーフブレード"で切り刻んでいく。これで『受けて反撃』というハリテヤマの得意技は使えないだろう。
「なるほど、流石に速い。だけどね──」
しかしトウキが不敵に笑う。
「──そういう相手を捉える訓練もしてるよ!」
“みきり"
高速で動き回るカインの右腕をハリテヤマが掴む。
今のはおそらく“みきり"だ。それを使って高速化したカインを捉えた──!
「こうなれば自慢の『すばやさ』も活かせないだろう! さあ
ハリテヤマが両手と共にカインを持ち上げ地面に叩きつけようとする。
そうだ。『かくとう』タイプのジムリーダーのポケモンが“みきり"を使えないわけがない。
スピードで撹乱しようとすれば、それを止めるために必ず“みきり"を使ってくるであろう事は想定して然るべきなのだ。
「カイン!」
「ジュッ!」
ドンッ! と重い音が響く。
あの“はっけい"をまともに喰らえば『ひんし』とは言わずとも大ダメージは免れないだろう。もしかしたら『まひ』状態になるかもしれない。
「──ッ! これは……!」
そう、
最初から想定出来ているなら事前に対策を仕込んでおく事だって簡単だ。
カインは捕まって地面に叩きつけられる瞬間、頭から伸びた長い葉をハリテヤマの腕に巻き付けて身体ごと張り付いたのだ。
元々木々の多い場所に生息する種族だ。こうやって何かにしがみつく動きをマスターするのにそう時間はかからなかった。
ハリテヤマは想定外だったけど、念の為にゴーリキーとか出してくる事を想定して練習させておいてよかった。
そしてハリテヤマは全力の“はっけい"を撃ち込んだから後隙で動けない。多少体勢が悪かろうがこの距離なら関係無い!
「
「ジュアアアアアア────ッ!!」
左腕の刃が輝き、がら空きの腹を振り向きざまに一閃する。
避けようのない急所への一撃がハリテヤマの体力を一気に奪い去って。
「ハ……リ……ィ……」
ズゥンと重い音を響かせながらフィールドに沈んだ。
誰が見ても戦闘不能なのは明白。つまり──。
「──おめでとう。キミの勝ちだ」
「よっしゃ!」
──ムロジム戦、無事に制覇完了だ!
評価や感想、批評等あればよろしくお願いしマース。
あとツイッター始めてみたので興味があるなら是非。たまに何か呟いてます。
ちょっとシンプルめなジム戦でした。
最初と違って危なげなく勝ってるように見えるのは対策量の差ですね。進〇ゼミならぬハルカゼミでやったところが出ました。
ここから下はいつもの設定解説。いらない人はブラバ推奨。
特異個体
ポケモンが原種の生態をほとんど保ったまま特別な変化を起こした個体の事。一番ポピュラーな例が色違い。
他にもサイズが極端に大きかったり小さかったりした場合もこれに当たる。USMのぬしやアルセウスで言うオヤブンもこれ。
実際に出たわけじゃないけどデルタ種もこれに当たります。
これに関しては作者がデータ作る時にわかりやすいよう設定してるだけなので作中で表記する事はあまり無いと思います。図鑑表記ですらやらない。
ハリテヤマ
『技能』
『とうきかいほう』
自分が“きあいだめ"状態の時、自分が使う『かくとう』タイプの技の威力を1.5倍にして非接触技にする。また、連続攻撃技の場合必ず最大回数使う。この技能を使ったターン終了時に“きあいだめ"状態を解除する。
闘気を纏ったり放ったりでダメージを上げるイメージ。気力が充実してるから連続技も張り切って最大回数使うといった感じ。
ちなみに名前はシャレとかではないです。
キバゴ
『裏特性』
『せんとうかん』
確率で技の威力が1.1倍になる。また確率で受けるダメージが4/5になる。
戦闘勘。
ユウキが仕込んだわけじゃなく、生来保持してる才能のようなもの。
ただ今のところは本人も自覚してないので未完成。今回はたまたま発動したのでこの時点で片鱗に気付いたのはトウキとハルカだけ。
ちなみに6V個体=天才はデフォルトで複合的にこの裏特性を備えてます。このキバゴは6Vじゃないけど戦闘面でこういう才覚があった。