ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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想像力を働かせてみた

 ──終わりの始まりだった。

 

 海は荒れ狂い、空は厚い暗雲に覆われ、そこから滝のような冷たい豪雨が降り注ぎ、そのくせ時折(まばゆ)い灼熱の日差しが降り注ぐ、そんな異常気象の真っ只中に俺はいた。

 そして目の前では原始の姿を取り戻した赤と青の怪物──ゲンシグラードンとゲンシカイオーガが互いの領域を主張するように激しくぶつかり合っている。

 正しく天変地異としか言い様の無い状況で少女が一人笑う。

 

 狙い通りだ、これで世界は救われると。

 

 何を言っているのかがわからなかった。

 世界が救われるどころか、滅亡へ一直線としか思えないこの状況を目の当たりにして狂ってしまったのではないかと、そう思った。

 そうして少女は空に叫ぶ。

 

 ──さあ龍神様! どうかあの二匹をお鎮めください! 

 

 やがてその叫びに呼応したように、雲を裂いて現れたのは緑の龍。

 グラードン、カイオーガに並ぶ──あるいは超える、ホウエンに語り継がれる伝説の一体。

 自分の記憶と照らし合わせればあれがおそらくレックウザで──それを喚び出した目の前の彼女はきっとヒガナなのだろう。

 

 かつての再来。古代の再現。

 大地の化身と大海の化身。その二匹ぶつかり合う時、裂空に座す者現れ争いを鎮める。

 そんな神話の物語がまさに目の前で行われようとしていた。

 荒れ狂う二匹にレックウザが咆哮し、争いを止めんと攻撃を仕掛ける。

 互いの事しか見えていなかった二匹が咆哮を受けてレックウザへと向き直る。

 一般の枠から大きく逸脱した力を持つ強大な三匹が激突して。

 

 レックウザの攻撃が届くより先に、グラードンの爪が胴体を深く切り裂き、カイオーガが引き起こした津波に呑み込まれた。

 

 そんな光景を目の当たりにして、ヒガナと思われる少女が絶句する。

 そんなはずないと。龍神様が負けるはずがないと、うわ言のように呟く。

 力が足りないのだ。

 グラードンとカイオーガがかつての力を取り戻しているのに対し、レックウザは元の姿のままだった。

 メガシンカもしていない、ただのレックウザ。

 本来であれば伝承者たるヒガナの祈りに呼応して、レックウザは真の力を解放出来るはずだった。

 しかし長い時を経てレックウザの力は失われている。元の力が失われているのだから、当然解放する力も存在しない。

 それではあの二匹を同時に相手取って勝てるはずもなく、敗北は必然であった。

 

 邪魔者がいなくなった事で二匹の争いは更に激化する。

 海は絶え間なく津波や渦を生み出し、日差しは熱量と輝きを増し、世界の全てを侵食せんと領域を拡大していく。

 最早あれらを止められる者など存在しない。絶望の二文字が脳裏に浮かぶ。

 

 かたり、と腰のボールが揺れた。中に入っているのは相棒にしてエースのジュカイン(カイン)

 自分を出せ、と言っているのだろう。だけどもう手遅れだ。何をしても結末は変わらない。滅びの未来は確定している。

 

 止められなかった。俺が止めなきゃならなかった。そのはずなのに。

 己の無力を嘆く事すら出来ない。こんなものを相手に一体何が出来ると言うのだろう。

 やはりあいつらを復活させてはならなかった。何をしてでもアクア団とマグマ団を潰しておくべきだったのだ。

 そんな過去の後悔も意味は無く、ただ滅びを待つ事しか出来ない俺の目に、一つの姿が目に入った。

 

 グラードンとカイオーガの上空を飛ぶ、飛行機のような流線型のフォルムの赤いポケモン。その背に乗っているのは一人の少女。

 距離は遠くとも見間違えるはずもない。あれは、あの少女は──。

 

「──ハルカ──?」

 

 

 * * *

 

 

 飛び起きる。

 辺り一面は海──という事はもちろん無く、至って普通のホテルの一室だった。

 

「……夢……か……?」

 

 嫌にリアルな夢だった。豪雨も、熱射も、伝説の重圧も、そしてあの絶望感も。人の想像力のなんて豊かな事か。

 さほど暑いわけでもないのに身体中が汗に塗れている。どう考えてもあの夢のせいだ。

 窓の方に目をやると、カーテン越しに薄く光が差し込んでいるのが見えた。起きるにはまだ少し早いくらいの時間のようだ。

 少し迷ったもののこのままだと気持ち悪いし少し身体も冷えてしまったし、シャワーでも浴びて汗を流そうか、なんて考えベッドを出ようとすると。

 

「……あー、もう……」

 

 いつものようにベッドに潜り込んでいたハルカが俺の手を握って寝息を立てているのに気付いた。

 これどうにかして辞めさせられないだろうか。何度言っても聞かないし、何が悪いって俺が寝てる間に潜り込んでくるから対処の仕様もない。別に寝苦しいとかは無いけどさ……。

 ともあれ汗を流すべく、起こさないよう握られた手を優しく解きながらさっきの夢を思い出してみる。

 グラードンとカイオーガの激突。ヒガナによるレックウザの降臨。そして……レックウザの敗北による終焉の確定。

 世界線がORASのクセしてグラカイが同時復活してる事については何も言うまい。夢なんだから何でもありだし元々その可能性も考慮はしてる。

 問題はレックウザがあっさりと屠られたあのシーンだ。あれがあまりにも強烈に印象に残ってる。

 そりゃメガ出来てないレックウザがゲンシカイキした二匹に勝てるわけないよねって話ではあるんだけども。

 所詮これはただの夢だ。だけどゲームの知識とこの世界で得た認識を合わせて考えればああなる可能性は十分ある。

 それにレックウザの力が失われてるのはほぼ確定と見ていいはずだ。ここまで大まかにはゲーム通りに進んでるし、レックウザだけ例外なんて事は無いだろうから。

 となるとやっぱり復活させた時点で対抗策が無いので詰み、という事になる。

 

「……やっぱ復活させちゃダメだよなぁ……」

 

 戦って勝つ、あるいは捕まえるというのは多分無理だ。

 ホウエン全土の戦力を集結させればわからないけど、少なくともゲームみたいに一対一なんてのは勝負にもならない。伝説相手に勝算を考えるよりはアクア団やマグマ団を潰す方が絶対に簡単だと言える。

 最初からその方針だったけど、あの夢を見たせいかその気持ちが強くなった気がする。今まで適当にしてたつもりは無いけど、もっと本腰を入れて対策を考える必要があるかもしれない。

 

「ん……よし」

 

 手も解けたのでとりあえずそれはシャワーを浴びながら考える事にする。

 布団から出てベッドから降り、脱衣室へと向かう──ところで。

 

「待って」

 

 そんな声と共に俺の腕が掴まれる。どうやら起こしてしまったらしい。

 

「あ、ごめん、起こしたか?」

 

「ううん。それよりどこ行くの?」

 

 振り返って見れば、どこか不安そうな目で俺を見るハルカがいた。

 なんとなく捨てられた子犬を連想させるような、そんな目。様子がおかしい。

 

「ハルカ?」

 

「……あ……ごめん……」

 

 ハッとしたように手を離すハルカ。

 今のハルカはトレードマークの赤いバンダナも外して髪を下ろしたパジャマ姿だ。部屋の薄暗さも後押ししてるのか、普段の快活的な姿とは打って変わって寂しげな印象を受ける。

 表情も暗いし本当に何があったのか。

 

「どうした? 俺はただ汗を流しにシャワーを浴びようとしただけだぞ?」

 

「あ……そっか……。うん、それならいいの。ごめんね引き止めて」

 

 そう言ってハルカが笑う。だけどその笑顔は無理やり作ったみたいにどこかぎこちない。

 

「……なあ、本当にどうした? もしかして変な夢でも見たか?」

 

「……うん。そんな感じ」

 

 もしやと思って聞いてみれば図星のようだ。どうやら俺と同じように悪夢を見てたらしい。

 それなら不安になる気持ちもわかる。今の俺が正にそうだし。

 どうするべきか少し迷って──決心を固め、ハルカの頭に手を置いた。

 

「大丈夫。夢は夢だ。現実とは関係無いって」

 

「……うん」

 

 優しく数度その頭を撫でる。

 

「それに俺も変な夢見たからさ。お揃いだよお揃い」

 

「……うん」

 

 冗談めかして言うと、ハルカの声色が少し明るくなった。

 

「……落ち着いたか?」

 

「うん……ありがと」

 

 頭から手を離す。ちょっと恥ずかしかったけど効果はあったようだ。

 ……いやまあ、自分でもクサい行動だと思ったけど結果良ければいいじゃんよ。

 

「じゃあ俺汗流してくるから」

 

「あ、待って」

 

 気恥ずかしさを紛らわせるべくその場から離れようとすると、ハルカにストップを掛けられた。出来れば早く逃げたいところなんだけどなぁ……。

 振り向いて見れば、ハルカが両手を広げて立っていた。……何かなこれは? 

 

「ん」

 

「ははは……何してるんだ?」

 

「抱いて?」

 

「よーし言葉はちゃんと使おうな!? 『抱き締めて』だな!?」

 

 この状況でその言葉だと違う意味にも取れるんだよ! いや十一歳に何言ってんだと思うけども! 

 

「……ダメ?」

 

「いや……ぐ……お前それはズルだろ……」

 

 またさっきみたいな子犬の目になってしまった。

 よほど嫌な夢を見たんだろうか。どうあれここで断れるような精神を俺は持ち合わせていなかった。

 

「あーもう……ほら!」

 

「うん」

 

 俺も両手を広げると、その中に身を預けるようにしてハルカがストンと収まってきた。

 胸に耳を押し当ててハルカが呟く。

 

「ユウキくんの心臓の音が聞こえる」

 

「あー……その、なんか恥ずいからあんまり言わないでほしい……汗かいたからアレだし……」

 

「そう? あたしは好きだよ。生きてるーって思うもん」

 

 好き、という言葉に心臓が跳ねる。

 

「あ、少し早くなった」

 

「……だから言わないでくれって……」

 

 男なら誰でもこうなると思う。ただでさえ密着されてるのに。

 

「……あのーハルカさん? いつまでこうするつもりです……?」

 

「もう少し」

 

「……本当に少しだからな」

 

「うん」

 

 そうして時間にして五分くらいだったか、それとももっと長かったのか。

 ようやく満足したらしいハルカが離れたので汗を流すために脱衣場に向かった。

 なお『あたしも一緒に入っていい?』とか抜かしてきやがったのは丁重にお断りした。流石にそこまで許すつもりは無い。

 

 

 * * *

 

 

 そんなやり取りがあった今日の朝、カイナシティを発つことにした。

 元々カイナシティに留まっていたのもアクア団がまだ潜伏してるかもしれないという考えがあったからで、その事を詳細をぼかしながらハルカに説明したところ、博物館での視線をハルカも感じてたらしく納得してくれたので、この数日間は観光がてらに街をパトロールしていた。

 

 で、結果から先に言えばアクア団の気配は綺麗さっぱり感じられなくなっていた。

 

 これはハルカも同意見だそうで、俺たちは『アクア団は既にこの街から撤退している』と結論付けた。

 もしかしたら数人くらいは潜伏してるのかもしれないけど、造船所に荷物を送り届けた時点で警備はより厳重なものになってるし、あの状況から強奪が成功するとも思えない。

 だとすると少なくともあの船──潜水艇が完成するまでの間はとりあえず安全と思っていいはず。

 それに荷物を運んだ際にクスノキ館長とは連絡先を交換しているから、もしも万が一の事があった時はすぐに連絡を取って駆けつけられる。

 金にものを言わせてカイナ市場で欲しいものは買えるだけ買ったし、生のコンテストも見れたし、改めて海の科学博物館をゆっくり鑑賞出来たしで、この街でやりたい事もだいたい終わったのでそろそろキンセツシティに向かっても大丈夫だと判断したわけだ。

 

 そしていざ進むは例の()()()()──かつてのプレイヤーにトラウマを刻み付けた悪名高きあの橋の下がある110番道路である。

 ……と言ってもあの場所を通過しても特に何も無かったわけだけど。

 そもそもハルカと一緒に行動してるから突然のバトル、なんて事にはならないわけで。

 あの場所に着いた瞬間『じゃあバトルしよっか!』とか言い出すかもと思ったけど杞憂だった。そんな事になったら絶対勝てないけど。

 そんなわけで何事も無くキンセツシティに到着──したんだけど、これがまた凄い。

 

「うおお……実際に見るとやっぱり凄いな……」

 

「凄いよね。街一つが丸ごとショッピングモールだもん」

 

 ホウエンにはいくつか大都市があるが、その中でもキンセツシティは一番スケールが大きいと言える。

 なにせハルカの言った通り、街のほとんどが巨大なショッピングモールなのだ。ここまで思い切った街は他地方を探しても無いだろう。

 どこを見ても明るく煌びやかで賑やか。好奇心を擽られてしまうのも仕方の無い事なのだ。

 

「……ユウキくん、ウズウズしてるね?」

 

「そりゃそうだろ。だってこんな大都市だぜ? ワクワクするじゃん」

 

「あはは、あたしも初めて来た時はそうだったよ。一緒に見て回ろっか」

 

「おう!」

 

 お腹も空いてきたしまずは何か食べたいところ。ゲームだとキンセツキッチンとか喫茶店とかあったし、探せば多分フードコートもあるだろう。何からどうすべきかとても悩ましい。

 

「これも贅沢な悩みってやつだなぁ……ん?」

 

 そんな風に悩みながら歩いていると、奥の方に見覚えのある人物がいた。

 あれは……ミツルくんか? 隣にいるのはミツルくんの叔父さん……と、もしかしてテッセンかな? 

 

「すまんのう。今日のところは諦めてくれ」

 

「ほら、こればっかりは仕方ないよ。諦めよう、ミツルくん」

 

「うう……」

 

 なんか揉めてるっぽい? というかジムにシャッターが降りてる? 

 

「なんだろ? 揉め事かな?」

 

「さあな。とりあえず行ってみようぜ。すみませーん」

 

「……あっ!? ユウキさん、ハルカさん、お久しぶりです!」

 

「うん、久しぶり。元気になったみたいだな」

 

「はい!」

 

 元気よく返事をするミツルくん。ちょっと前まではあんなに病弱そうだったのに変わるもんだな。やっぱり病は気の持ちようって事だろうか。どうあれ喜ばしい。

 

「んで何話してたんだ?」

 

「あ、それは……」

 

「それはワシから話そう」

 

 そうして話に入ってきたのは恰幅のいい白髪白髭のお爺さん──キンセツシティジムリーダーのテッセンだった。

 ゲームでも気さくで朗らかな人という印象があったけど、この世界でもやっぱりその人となりは変わってなさそうだ。

 

「ワシはテッセン。この街のジムリーダーをしておるよ。そっちの子は久しぶりじゃな。元気じゃったか?」

 

「はい! とっても!」

 

「うむうむ! いい笑顔じゃ! 笑顔は健康の秘訣! そら、お前さんたちも笑えーい! わっはははは!」

 

「わははー!」

 

「わ、わははー!」

 

「わ、わはは……」

 

 ノリノリで笑うハルカと戸惑いながらも応じるミツルくん。

 そして俺はといえば急なノリについていけず硬い笑みを浮かべるばかりだった。いやだって急に笑えと言われても……。

 

「そ、それより何があったんですか? ジムのシャッターも降りてるし……」

 

 このままいくとロックオンされそうな気がしたので話題を振る。話が気になるのも事実だし。

 まさかジムの閉鎖問題とか……? 

 

「うむ、実は数日前にジムの鍵を失くしてしまってのう。しばらくの間ジムを開ける事が出来なくなったんじゃよ」

 

「え」

 

 衝撃の発言。

 

「あ、合鍵とかは?」

 

「少し特殊な鍵じゃからのう。替えは無いんじゃ。鍵を交換するしかないの」

 

「ええ……?」

 

 テッセンが溜め息を吐く。

 じゃあ新しく鍵が作られるまではジムに挑戦出来ないって事か? それはちょっと困るかもしれない。

 

「ち、ちなみにそれが出来るのっていつ頃ですかね……?」

 

「数週間かかると言われた。それまでジムは休業じゃのう」

 

「数……!? マジか……」

 

 まさかこんな形で足止めを食うとは思わなかった。そんなイベントゲームじゃ無かったじゃん……。

 

「どこで落としたとか心当たりは無いんですか? 僕探してきます!」

 

「気持ちは嬉しいんじゃがのう。もちろんワシももう何度も探したが見つからんかった。どうしてもと言うなら教えるが……」

 

「お願いします!」

 

 ミツルくんはそう言うけど、数日前の落し物が見つかる可能性は極低いだろう。まあ探すなら俺も一緒に探そうとは思うけどさ。

 

「うーん……なんか変じゃない?」

 

 ハルカが首を傾げながら言う。

 

「変って何が?」

 

「鍵を失くした事。だってジムの鍵なんて大切なもの、そう簡単に失くすとも思えないし」

 

「そういう事もあるだろ。人間誰だってミスくらいするさ」

 

「そうはそうだけど……」

 

 どれだけ気を付けてたってミスは起こる。今回たまたまそれがジムの鍵だったというだけの話だろう。それほど不思議な事でもない。

 

「アノ、スミマセン」

 

「ん? 誰……って、ぺラップ?」

 

 上から声が降って来たかと思えば、なんとぺラップが話しかけてきたではないか。

 確かにぺラップは人の言葉を真似出来るけど……これちゃんと意味理解してるのか? 

 

「おお、チョウチョウ」

 

「チョウチョウ?」

 

「うむ。最近この街にやってきたポケモンでな。どうやら人の言葉を理解しておるようで屋上で住民と話してるのをよく見る。それで付いたあだ名がチョウチョウ(町長)じゃよ」

 

「ハジメマシテ」

 

「お、おう、初めまして……」

 

「凄い、会話出来るぺラップなんて初めて見たよ。こんにちは!」

 

 ハルカが知らない……って事は本当に最近なんだな。110番道路に生息してるやつが流れて来たんだろうか。人馴れしてるなぁ。

 

「それで何か用か?」

 

「クレッフィヲシリマセンカ? イナクナリマシタ」

 

「クレッフィ? ああ、お前さんといつも一緒にいた子か。そう言えば数日前に一匹でいるのを見かけたっきりじゃな……」

 

「ソウデスカ……」

 

 そんな会話をするテッセンとぺラップ(チョウチョウ)

 さて、ぺラップとクレッフィ、一見何の関係も無さそうな組み合わせなんだけど、実はこの二匹は相性補完が凄まじいのである。

 というかなんならレート戦の環境にいたレベルだ。生息域もそこまで離れてないし、仮に野生のポケモンがこれを理解して組んだのだとすれば本当に知能が高いと言える。

 

「クレッフィトケンカシマシタ。ナカナオリシタイデス。サガシテホシイデス」

 

「む、そうじゃったのか。しかしまたどうして喧嘩を」

 

「クレッフィ、カギアツメガスキデス。デモムリヤリトルノダメ。ダカラチュウイシテタライナクナリマシタ」

 

「ふむ? 屋上でのやり取りは合意だったように見えたが……わかった。見かけたら伝えておこう」

 

 そんなテッセンとチョウチョウのやり取り。だけど俺はこれに引っかかりを覚えた。

 クレッフィ……鍵集め……数日前に喧嘩別れ……。

 

「……あっ」

 

「オネガイシマス。デハ」

 

「ちょい待ち!」

 

 去ろうとするチョウチョウを引き止める。多分事件の原因これだ。

 

「ナンデスカ?」

 

「今からそのクレッフィを探す。一緒に来てくれ」

 

「ユウキくん?」

 

「……あっ、そういう事ですか!」

 

 どうやらミツルくんは俺の言ってる意味が理解出来たらしい。それじゃあそのまま説明をお願いしようかな。

 

「さっきテッセンさんは数日前にクレッフィと会ったって言いましたよね? 鍵を失くした日もその日なんじゃないですか?」

 

「む、確かにそうじゃが……まさかクレッフィが鍵を盗んだと? 確かにクレッフィには鍵を集める習性があるが、それは普段屋上で住民から色々貰っとるから満たされてるはずじゃぞ」

 

「それもきっと不要になった鍵とかですよね? それだときっと満足しなかったんです。だからテッセンさんに──ジムの鍵に目を付けた」

 

 ミツルくんは続ける。

 

「ジムの鍵は特殊なものなんですよね? つまりそれはいわゆるレア物なわけで、クレッフィにしてみれば宝物に見えたはずです。それがどうしても欲しくなってしまった」

 

「ハイ。タシカニクレッフィハアノカギヲミテコウフンシテイマシタ」

 

 チョウチョウの注釈が入り、ミツルくんが頷く。

 

「多分喧嘩っていうのもそれが原因じゃないでしょうか。ぺラップはダメと言うけどクレッフィはそれが欲しい。それでどうしても抑えきれなくなって、ぺラップと別れてテッセンさんから鍵を盗んだ……きっとこういう事です」

 

「俺もミツルくんと同じ考えだ。だからクレッフィを見つけられれば──」

 

「鍵も見つかるって事だね!」

 

 ハルカの言葉に頷く。もちろん予想だから確実じゃないけど可能性は高いと思う。少なくとも何もしないよりはいいんじゃないかな。

 

「むう……じゃがどうやって探す? あのクレッフィは普通の個体より少し小さいんじゃ。それをこの広大な街から見つけるのは至難の業じゃぞ」

 

「そこはまあ……ミツルくんの出番かな?」

 

 ミツルくんの持つポケモン。それが鍵だ。

 




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ちょっと探偵っぽい事やってみたけど上手く出来てますかねこれ。難しい。
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