ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

19 / 38
体質が違えば進化方法も違う

 今日の予定の一つはキンセツジムに挑戦する事だった。

 大まかにペラッフィの能力も理解出来たし、手持ち的に相性も悪くないのでひとまず腕試し感覚で臨んでみた。

 だけど結果は惨敗。惜しくもなんともなく普通に負けた。

 シンプルにレベル負けしてるのもあるけど、何が悪いってライボルトが強過ぎる。“かえんほうしゃ"仕込んでんじゃねえよ。しかも電撃纏ってありえない程速くなったし。

 あとは……なんだ、ゲームにはいなかった形態(フォルム)のロトムとかか。

 ロトムは電化製品に入り込むという性質を持っており、テッセンは機械いじりが趣味の人だ。ロトムに対応する戦闘用の機械を開発していてもおかしくないわけで。

 テッセン曰く、その名もショットロトム。

 文字通り銃の形態になったロトムであり、『でんき』エネルギーをそのまま弾丸として撃ち出す性質上、レールガンというよりはプラズマ砲に近いんだけど、細かい違いはさておき恐るべきはその物量。

 固有のフォルムという事で、ロトムに最適化するよう作られてあるんだろう。凄まじい勢いで雷の弾丸が超乱射された。

 一発一発の威力は控えめではあるが、それを数でカバーする感じ。速度もそれなりだし、弾幕張られてる間は近寄る事すら出来なかった。

 見た感じ『でんき』と『はがね』の複合っぽかったし、『ほのお』や『かくとう』打点が無い今のパーティだと結構辛いものがある。

 ともあれ、今の俺たちじゃちょっと勝てそうにないので引き続き手持ちの強化期間だ。

 

 そういえばミツルくんは結局ジムに挑戦しなかったらしい。

 どうしてなのか理由はわからないけど、ゲームでの描写通りなら自分がまだ未熟なのだと理解したから、とかだろうか。そこに至る過程は違うけど。

 

 それはさておき、幸いキンセツシティという場所はバトルするには事欠かず、ジムはもちろんの事バトルフードコートやトライアルハウスなどがある。

 中でも()()()()()()()()()()()という、ありそうで無かった特殊な形式のバトルが出来る『バトルサービスさかさ』はハマった人も多くいるのではないだろうか。自分なんかはこの効果のルーム技が出ないかと妄想したものだ。

 ちなみにこの現象は『バトルサービスさかさ』を経営するサカサという人物の異能によるものである。

 尤も異能はまだ未完成であり、機械による出力ブーストでどうにか短い時間維持出来る、という程度らしいけど。

 

 とにかく今の俺たちに足りないのは経験だ。

 ハイペースでのバッジ取得はそれ自体はもちろんいい事だけど、同時にレベルが足りていないという事態が起きる要因にもなる。だから今はとにかくバトルをこなして経験値を稼ぐ事にする。

 それにレベル的にはもうすぐでパーティメンバーたちが進化しそうなのだ。ここはガッツリ鍛えていきたい。

 色んな施設に行って様々な相手と戦い、時にはハルカのバシャーモ(ちゃも)と組手をする。

 そうやって戦闘を重ねて約一週間の成果がこちら。

 

 意外な事に、一番最初に進化したのはキバゴ(ファング)だった。

 両手で抱えられるくらいだったのに、一気に二倍近く大きくなって体格もどっしりしたものに変化。特徴の牙も大きく伸び、皮膚も非常に頑強に。

 更に成長過程で“りゅうのまい"を習得。一気にアタッカー性能が上がり、攻撃技が『ドラゴン』タイプのみな事を除けば非常に頼れる存在となった。

 ただ、まだ進化したてで自分の力を持て余している様子。言う事を聞かないってわけじゃないけど、たまに指示を出す前に突っ込んでしまう時があるので要指導。

 そんなファングに感化されたかのように少し遅れてジュプトル(カイン)もジュカインに進化。ついに最終形態である。

 背丈が完全に俺を上回り、ジュプトル時代に一度失った尻尾もよりそれらしい形になって復活。全体的なフォルムに爬虫類っぽさが増して、顔つきも凛々しいイケメンと化した。

 こちらはファングと違って一度進化を経験しているからか、ある程度力の制御が出来ているらしい。ファングに力の制御を教えているかのような会話も何度か見た。

 

 そしてカインが最終形態になった事により、ついに技能や裏特性の仕込みに入れるようになった。ここからが真のスタートである。

 

 まあこれに関しては後で詰めるとして、問題はチルット(フォルテ)だ。

 進化レベルでいえば俺のパーティの中で一番早く進化するはずなんだけど、どういうわけかこいつだけバトルを重ねても進化する様子が見られないのだ。

 特異個体故に通常種と進化条件も変わってるんだろうか。とりあえず『かみなりのいし』を試してみたけど効果は無かった。

 他の特殊な進化条件といえば懐き進化や時間指定、通信進化等があるが、思いつく範囲で実行可能なものを試してみても成果は得られず。

 流石に進化しない……という事は無いと思いたい。

 その後もフォルテをメインにバトルに出しつつ色々試してみたけど進化の兆しは無し。今は悲しげな表情で俺の頭の上に乗っている。

 

「今日もダメだったかぁ……。こうなるとやっぱ他の要因が関わってそうだな」

 

「だね。体作りは多分もう出来てるから、進化のエネルギーを自分で作り切れないんだと思う」

 

 ハルカの見立てでもやはりレベルは足りているらしい。だけどあと少し何かが足りない。その少しが何かわからないから苦労してるんだけど。

 

「となると外部刺激とかか……? タイプ的に電気が関係してるとは思うんだけど……」

 

 例えば特殊な磁場を発しているシンオウのテンガン山や、洞窟全体が電気を帯びているイッシュの電気石の洞穴等、何かしらの刺激を受けて進化する可能性もあるが、そうなるとホウエンだとニューキンセツになる。

 けどあそこは場所が場所だし入場許可を貰える気がしない。行くにしても最低テッセンに勝ってからの話だろう。

 

「ま、とりあえずもう少し鍛えてみよう。カインも最初は進化遅れたし」

 

 ぶっちゃけテッセンのジムを突破するだけなら、他が育ってるしチルットのままでも問題無いと思う。だけど元々“そらをとぶ"要因としての役割もあったから、出来れば進化してもらいたいところだ。流石にチルットの背には乗れないし。

 

「ちる……」

 

「ああもう、そんな泣きそうな声出すなって。お前は頑張ってるよ」

 

 落ち込むフォルテを励ましながら頭を撫でる。

 なんというか、少し前のペラッフィとの模擬戦といい、パーティメンバーが立て続けに進化した事といい、フォルテが自信を無くしてしまっているような気がする。

 周りのメンバーが目に見える成長を果たしているのに、自分には何も起こらない。そんな現状に焦りを感じているんだろう。

 こういう部分はまだまだ雛鳥ながらもなんだかんだで『ドラゴン』らしいとも言える。

 ともあれ焦ったところで結果は出ない。今日の訓練は早めに切り上げてフォルテのメンタルケアをやるとする。

 

 というわけでやってきたのが『純喫茶歌声』。

 内装は至って普通の喫茶店なのだが、一つ特徴として客でも使えるピアノが置いてあるのだ。

 なんでも店主が相当な音楽好きらしく、たまに演奏会なんかも開かれるそうだ。少し前にも異国の演奏家が演奏していったんだとか。

 さて、ここで密かに持っていた俺の特技が役に立つ。

 実は俺は趣味程度の技量ながらピアノが弾けたりする。前世の親の影響というか、音楽がわりと身近にある家庭だったので自然と身に付いた技術だ。

 尤も、俺は親と違って才能が無かったので音楽の道に進む事はなかったんだけど、それはさておき。

 

 チルットというポケモンは音楽に強い関心を示す種族だ。鼻歌を歌いながら歩いているといつの間にか集まってきていた、という話もあるくらいに。

 そんなポケモンのメンタルケアはやはり音楽が効果的であり、その意味で言えばこの喫茶店はチルットにとって心地好い場所になる。

 喫茶店に入り、俺はフレンチトーストと『でんき』タイプが好むという黄色のグミ、ハルカがチョコレートパフェを注文し、店主に一言断りを入れてからピアノの前に座る。

 

「ね、また前のやつ弾いてよ。あれ好きなんだ」

 

 ハルカがフレーズを口ずさみながらリクエストしてくる。前にここに来た時にも弾いた曲……まあ前世であったポケモンのBGMなんだけども。

 ちなみにその時に弾いたのが水の都の映画のやつ。あれはとてもいい。

 ともあれ、注文が来るまでの待ち時間を潰すと同時にメンタルケアまで出来るのだから、どんな技術がいつ役に立つかなんてわからないな、と思った。

 

 

 * * *

 

 

 二曲目を終えて軽く伸びをしていると、また新たに客が来店してきた。

 なんとなくそちらの方を向いてみれば、そこにいたのはサングラスをかけたスーツ姿の男性。

 慣れた様子で『いつもの』と注文をしているあたり、きっと常連なのだろう。コガネ弁を交えて店主と雑談を始めた。

 注文したものが完成するまではもう少しかかりそうだったので、ピアノに視線を戻して三曲目を開始する。

 そう。ここまではよかった。

 

「…………」

 

 男の視線が突き刺さる。

 どうせ半ば手癖で弾いてるからそれがプレッシャーになるというわけでもないけど、とても居心地が悪い。そんなに睨まれる程下手な演奏をしてるわけじゃないと思うんだけど……。

 三曲目の終わり頃にようやく品が出来たので、視線から逃れるようにそそくさとピアノから離れて席に着き、フレンチトーストに齧り付く。

 それでもまだ男の視線はこちらに向けられ続けている。一体なんなんだ。

 

「……ねえユウキくん。さっきからずっと見られてるけど、ピアノに変な事でもしたの?」

 

「何もしてねぇよなんであんな睨まれてるんだよ……そりゃ別に上手いわけじゃないけどさ……」

 

 男を横目で見ながら、ハルカとひそひそ話をする。正直心当たりが全く無い。

 男とは初対面だし、ピアノを乱暴に扱ったわけでもない。店主が注意するのならまだしも、何故見知らぬ男に睨まれなければならないのか。

 ガタッと椅子が動く。男が席を立ったのだ。しかもこちらに歩いてくる。

 

「そこのキミ、ちょっとエエか?」

 

 ついに話しかけられてしまった。これはもう逃げる事が出来ない。

 男を威嚇するフォルテをどうどうと宥めながらそちらに向き直って。

 

「……えっと、何か気に障るような事でもしましたかね?」

 

「ん? なんで? ボクはキミの弾いてた曲が気になったから見てただけやで?」

 

 きょとんとした──サングラスでわかりにくいけど、多分きょとんとした顔で言う男。

 

「いやー、エエもん聴かせてもらったわ! ボクも音楽やって長いけど、今の曲は初めて聴いたなぁ。題名とか教えてくれん?」

 

 男が腕を組んでうんうんと唸る。わ、わかりにくい……。

 まあ悪感情を持ってたわけじゃないのはわかった。けど、俺が弾いた曲は当然ながらこの世界には存在しない曲だ。

 だから題名を教えたところでわかるわけがないし、かといって自分のオリジナルだというのは絶対に違う。

 故にここで出来るベストな回答は。

 

「覚えてないけど小さい頃にどっかで聴きました」

 

「そう? 残念やなぁ」

 

 この場合、下手に具体的な事を言う方がまずい。

 調べようと思えばなんでも調べられるこの時代、ふわっとした回答の方が誤魔化しやすいのだ。まして幼い頃の記憶だと言ったのだから、ケチをつけてくる事もないだろう。

 

「ま、仕方ないわな。ところでキミはトレーナー? そこのチルットもキミの?」

 

「そうですよ。今は休憩中です」

 

「そうか。そんならはい、これ。エエもん聴かせてもらったお礼や」

 

 言って渡されたのは『メトロノーム』。あまりメジャーじゃないけど、同じ技を使う毎に威力を増加させる道具だ。

 対戦ではあまり使われなくとも、ストーリー攻略に使った人もいるのではないだろうか。

 ……って、ん? 確かキンセツに『メトロノーム』渡してくる人がいたような……? 

 

「ん? な、何?」

 

 男をじっと見る。黒いスーツにサングラス。自分を超有名音楽家だと言ったあのモブもそんな格好だったはず。

 別に要らない……というか、そこら辺でも普通に買えるのでスルーするつもりのイベントだったけど、こういう形でも発生するのか。

 

「いや、なんでも。ほらフォルテ、おまえが持っとけ」

 

「ちるる♪」

 

 フォルテに『メトロノーム』を渡すと、モコモコの羽の中に収まっていく。

 見た目通りの質量ならどう考えても邪魔になる代物だが、この世界の道具の大半はデータに変換出来るようになっている。

 だからバッグに大量の荷物を入れても重さはほとんど無いし、ポケモンに持たせる場合でもうっかり落としてしまう事もない。

 ここら辺の謎技術については『ポケモン』という種族が存在するが故に発達したものなんだと思うけど……まあ正直どうでもいい事だ。

 

「チルットかぁ。懐かしいなぁ、ボクのパートナーもチルットやったよ」

 

 黄色のグミを啄むフォルテを見ながら男が言う。

 

「ボクがまだ小さい頃、鼻歌歌って歩いてたらどこからか飛んできて一緒に歌うんよ。その時ボクは思った。音楽は人とポケモンを繋げられるんやなって。それがボクの原点やったなぁ」

 

「はぁ……」

 

 そんな急に自分語りされましても……いや、でもこの人ゲーム内でも急に自分語りする人だったな。

 

「ああゴメン、興味無いよね。でもせっかく音楽出来るんやし、チルット育てるならそういう技術をベースに考えるのもエエんちゃうかな? ボクはトレーナーとちゃうから詳しい事はわからんけど」

 

 そんな事を言われる。

 確かにチルットやチルタリスといえば音楽──もっといえば歌のイメージは切っても切り離せないものだ。だけど俺にとってのチルタリスのイメージといえば、“コットンガード"や“はねやすめ"による耐久型なのである。

 こちらもチルタリスのイメージ通りの戦法だし、例えば場に出たターンに“コットンガード"を積むといった技能なんかは問題無く使えるだろう。加えてフォルテなら触れた相手を『まひ』させる事も出来るかもしれない。

 でもこの考え方はまだゲームのやり方に囚われているといえばその通りでもある。

 もっとチルタリスの本質に触れて、それを伸ばすような育成が出来れば。そのヒントが『音楽』にあるのかもしれない。

 

「……まあでも、それも進化してからの話だなぁ……」

 

 フォルテには聞こえないように呟く。

 現状進化方法がわからないわけだし、音楽をベースにした育成法を思いついたとて、それが自分のパーティに合うかは不明だ。

 変に色気を出すより、無難な育成の方が()()()の俺にはやりやすい可能性だってある。

 裏特性だ技能だといっても、結局のところはイメージ出来なきゃ教えられないし使えない。それこそゲームみたいに勝手に技を覚えるわけじゃないのだから。

 ともあれ、何をするにもまずは進化だ。どうしてもわからないようなら、また博士に進化条件を調べてもらわないといけない。

 ただ……ただでさえペラッフィの件で生殺しだったのに、この上特異個体のチルットを預けて『進化条件わかったら返してください』とか言おうものならトドメになるような気もする。あと単純にあんまり頼りすぎるのも博士に悪いし。

 そんな事を考えながら、トーストの最後の一切れを口の中に放り込んだ。




評価や感想、批評等あればよろしくお願いしマース。
ここすき機能なんかもご利用くださいませ。
あとツイッター始めてみたので興味があるなら是非。

戦力強化……と、ちょっとの躓き。ジム戦は次かそのまた次くらいになると思います。
暇な人はチルットの進化方法を予想してみてください。作中で言ってるようにヒントは『でんき』です。そこまで突飛なものではないです。


ついでにちょっとだけテッセンさんのデータ。

ロトム(ショットロトム)
『でんき』『はがね』
『裏特性』
『ガトリング』
自分が使う技の威力を1/3にして2~5回の連続攻撃にする。追加効果のある技なら当たる度に判定する。


ライボルト
『裏特性』
『たいでんたいしつ』
『でんき』技を使うか受ける度に、もしくは場の状態が『エレキフィールド』の時に一ターン経過する毎に『たいでんカウンター』を一つ乗せる。最大五つ。

『技能』
『でんきかっせい』
自分に乗った『たいでんカウンター』を全て消費し、その数×ターン数自分を『でんきかっせい』状態にする。

『でんきかっせい』
自分の『すばやさ』と『かいひ』ランクを最大にする。『でんきかっせい』状態が終わった時、自分の『すばやさ』と『かいひ』ランクを6段階下げる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。