ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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お久しぶりです。そして長めかつちょっとわかりにくいかも。
フィーリングと雰囲気とテンションで読んでください。

※7/6に文章を少し変更。変更内容は後書きにて。


ジム戦だと初めて負けたのでリベンジマッチ

 さて、ここまでジム戦を順調に突破出来た事から勘違いされそうではあるが、基本的にジム戦というのは突破される事を前提に作られているが、何も必ず一度で突破する必要はない。

 ゲームだと主人公は当たり前のように一度で全てのジムを突破してるけど、そんな事が出来る人間というのは稀であり、大抵の場合はどこか──特に終盤──で一度や二度負けるのが普通だ。

 故に何度負けても自分が諦めない限りは再挑戦が可能で、そこに制限はかからない。もちろんあまりに短期間に連続で挑戦すれば多少注意は入るけど。

 

「ふむ、鍛え直してきたのかの?」

 

「ええ。今回は勝たせてもらいます」

 

 ジムトレーナーについては既に突破済みなので今回はパスとなり、直接ジムリーダーであるテッセンと相対する。

 裏特性や技能についてはまだまだ未完成だけど、それでも対策はしっかり仕込んだ。

 ジム戦である以上は試験であり、相手の戦法が変わる事はまずない。ジムリーダーとは相手の戦法にどう対処するのかを見るのだから。

 前回は単純にポケモンの性能差が大きかった。そこはかなり埋めてきたから落ち着いてやれば今回は勝てるはず。

 一度息を吸い込み、ゆっくり吐き出す。緊張はもちろんあるけど、固まって動けない程でもない。

 

「──挑戦者ユウキ、ジムバッジをかけて勝負を挑みます!」

 

「うむ。ジムリーダーテッセン、その勝負を受けよう!」

 

「ペラッフィ!」

 

「ゆけいコイルよ!」

 

「ペラッ!」

 

「ビッ!」

 

 戦いの火蓋が切って落とされ、互いにボールを手に取り、そして投げる。

 テッセンの初手はコイルだった。前回と同じなら“エレキフィールド"を張りつつ、“でんじは"や“ボルトチェンジ"で有利展開を作ってくるだろう。

 向こうが場作りから始めるならこちらも同じようにやらせてもらう。

 

「“エレキフィールド"!」

 

「壁を貼れ!」

 

「ビッ!」

 

「フィーッ!」

 

 “いたずらごころ"

 

 “リフレクター"

 

 “ひかりのかべ"

 

 “エレキフィールド"

 

 相手の行動に先んじてペラッフィが両壁を展開し、僅かに遅れてコイルの“エレキフィールド"が発動してフィールドがパチパチと帯電し始める。

 相手の火力は上昇したが、こちらも壁を貼れたので受けるダメージはトントンといったところか。

 二手目。

 

「“でんじは"じゃ!」

 

「戻れペラッフィ!」

 

「む──」

 

 テッセンのメイン火力は『でんき』技であり、まして“エレキフィールド"まで貼られてるのだからそれを読むのは簡単だ。

 特殊な技術があったとて、有利な状況での安定行動というのはどこの世界でも変わらない。

 

チルット(フォルテ)!」

 

「ちるっ!」

 

 迫る“でんじは"をタイプで無効化し、無償降臨に成功。ここは攻撃技でもダメージを最小限に抑えられたのでそれ程変わりはない。

 さて、フォルテ側からコイルに対して有効打はないが、それは相手も同じ事。技の撃ち合いになれば壁がある分こちらが有利になる。

 三手目。

 

「“ボルトチェンジ"!」

 

「こっちも“ボルトチェンジ"だ!」

 

「ほう!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “ボルトチェンジ"

 

 “ボルトチェンジ"

 

 秘策その一。フォルテに“ボルトチェンジ"──の、劣化版を仕込む。

 もちろん俺は“ボルトチェンジ"のわざマシンなんて持ってないが、ハルカに借りたわけでもない。

 ではどうやって覚えさせたのかというと、簡単に言えば教え技の要領である。

 “ボルトチェンジ"自体は一度目のジム戦で既に見たし食らってもいる。後はひたすら反復練習を繰り返せば、完璧な再現とはいかずとも()()()()()()()()としてならなんとか成り立つのだ。

 元より今回フォルテに攻撃性能は期待していないので、最低限交代効果さえあればサイクルを回せる。

 コイルとフォルテが電撃を纏い、ぶつかりあった瞬間互いに弾かれたようにボールに戻っていく。

 壁ターンを消費する為に居座ってくる事も考えられたが、その場合でもここはボルチェンで正解。しかし相手も交代という事は、火力で上から殴り倒す気なのだろう。そしてそれが出来るのは──。

 

「やりおるのう! ロトム!」

 

「来たぞオノンド(ファング)!」

 

 ──予想通り、前回辛酸を舐めさせられた銃形態の(ショット)ロトム。

 こいつは裏特性か何かで技を連射する事が出来るらしく、この前は“チャージビーム"の連射で能力を最大まで上昇されて壁ごと突破された。

 だけどここまでは全て俺の読み通りに事が運んでいる。秘策その二の切りどころだ! 

 

「“チャージビーム"!」

 

「“ばかぢから"!」

 

「ぬぉっ!?」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “ガトリング"

 

 “チャージビーム"

 

 “せんとうかん"

 

 “ばかぢから"

 

 ここでテッセンが驚愕の表情を見せた。

 ファングが電気エネルギーの弾丸の雨を掻い潜り、時には被弾しながらも力任せに拳を振り抜く。

 技の乱射体勢に入っていたロトムは攻撃に備える事が出来ず『はがね』を複合するショットロトムに『かくとう』技が直撃した。

 

「ロ……ト……!」

 

「オノォォォッ!」

 

 “ドラゴンクロー"

 

 ロトムが一瞬耐える素振りを見せたが、すかさず追撃のドラゴンクローが入り今度こそダウン。ほとんど何もさせずに落とし切る事が出来た。

 

「っし!」

 

 思わずガッツポーズ。ここまでは完璧な試合運びだ。

 ハルカのバシャーモ(ちゃも)から“ばかぢから"を教えてもらえてよかった。“ボルトチェンジ"と違って直接指導してもらえるからこっちは完璧に技として覚えられた。

 

「ぬう……普通なら『じめん』タイプを用意してロトムを乗り切るんじゃが、まさか読みで突破してくるとはのう」

 

 ロトムを戻しながらテッセンがぼやく。

 テッセンが言うように、タイプ相性で考えるなら『じめん』タイプを用意して『でんき』技を無効化するのが定石だろう。

 少し先に進んだところにある炎の抜け道に生息しているドンメルなんかは、あのロトムに対して特攻的な存在にもなる。

 要するに強力な一芸を持ってる相手に対してちゃんとメタを用意出来るか、というのを見てるのだろう。まあ俺のやり方でも合格ラインのはずだ。

 とはいえまだ勝ったわけじゃない。あれは言わば中ボスであり、まだラスボスが残っている。

 テッセンが最後のボールを取り出して。

 

「ではいくぞい、ライボルト!」

 

「──ラァイ!」

 

「……来たぁ……」

 

 “らいうん"

 

 青と黄色の体毛、特徴的な鬣を持つほうでんポケモンのライボルトが吠えると、室内だというのに頭上に小さな黒雲が一つ生み出される。

 あれはターン経過毎にランダムで“かみなり"が()()()()()()()()()()降り注いでくるのだ。

 いつ来るか、どっちに飛ぶかが予想出来ないし、光ったらとりあえずその場から飛び退くという対処法しか取れない。

 一応ライボルトがいる時限定かつ、設置技扱いなので“きりばらい"とかで消せるらしいけど、そんなもん俺のポケモンは覚えてない。

 

「“10まんボルト"!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “10まんボルト"

 

「戻れファング! 受けろフォルテ!」

 

「ちるっ!」

 

 能力が下がったファングを一度戻し、中継の為にフォルテと交代する。

 おそらく世界で尤も有名な『でんき』技が飛来し、フォルテがタイプ相性と壁の効果で余裕で受け切るが、ここでこちらの両壁が消える。

 しかし同タイミングで使われた向こうの“エレキフィールド"は消えてないので、持続ターンを伸ばす道具、ないし裏特性か技能を持ってるらしい。

 

「ほれ、もう一発じゃ!」

 

「戻れフォルテ!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “()()()()()()()"

 

「あっ、くっそ!」

 

 もう一発、などとほざいておきながらテッセンが選んだ技は“ボルトチェンジ"。本当ならここは“ボルトチェンジ"を使いたかったけど、ライボルトの特性は『でんき』タイプの技を吸収する“ひらいしん"だ。これはもう必要経費として割り切るしかない。

 交代際に出したペラッフィに“ボルトチェンジ"が迫り。

 

「ペラッ!」

 

「フィッ!」

 

 “クレスガード"

 

 天性の才能でタイプを変更しながら等倍で受けて大ダメージを免れ、ライボルトが弾かれながらボールに戻って再びペラッフィとコイルが対面する。

 

「壁だ!」

 

「こっちもフィールドじゃ!」

 

 “いたずらごころ"

 

 “リフレクター"

 

 “ひかりのかべ"

 

 “エレキフィールド"

 

 状況が最初に戻る。“エレキフィールド"は切れてなかったが、別にフィールドが残ってるから使えないなんて事はなく、普通にターンの上書きが出来る。ここもゲームとは違うが、現実ならそりゃそうだろうなとなる部分だ。

 ともあれ、なるべく壁を切らせるわけにはいかない。基本的にこっちのポケモンに対して『でんき』技は半減だけど、どんな攻撃が飛んでくるかわかったもんじゃないのだ。受けるダメージはなるべく減らしたい。

 さて、再び“ボルトチェンジ"──といきたいが、いい加減向こうも読んでくる頃合いだろう。

 それでもここはフォルテ交代が安定だ。相手に『じめん』タイプの“めざめるパワー"でもあれば別だけど、基本的に有効打は絶対に無い。

 

「戻れペラッフィ! いけフォルテ!」

 

「随分と回すのう! “ボルトチェンジ"!」

 

 こんな風にパーティをくるくる回すなら、ペラッフィの方にも何か交代技を一つは仕込みたいところだ。じゃないとどうしても一手遅れてしまう。

 交代で繰り出したフォルテがコイルの“ボルトチェンジ"を受け、テッセンのボールから再びライボルトが出現する。

 

「そら、耐えられるかのう! “ボルトチェンジ"!」

 

「耐えろペラッフィ!」

 

「ペラッ!」

 

「フィー!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “ボルトチェンジ"

 

 “クレスガード"

 

「む、居座りか」

 

 電気を纏って猛スピードで突っ込んでくるライボルトの攻撃をなんとか耐えるが、おそらくペラッフィで受けられるのはこれが最後だろう。

 それでもここまで十分仕事は果たしてくれた。最後に一発入れて後は休んでてもらおう。

 

「“おしゃべり"!」

 

 “おしゃべり"

 

「アホ──ッ!」

 

「ビッ!?」

 

 交代で出てきたコイルに“おしゃべり(悪口)"をぶち当てる。効果は今一つだけど、目的は削りと追加効果の『こんらん』での足止め。

 

「コイルよ、しっかりするのじゃ!」

 

「ビッ……ビッ!」

 

「ファング!」

 

「オノッ!」

 

 そしてコイルを『こんらん』から覚ます一手分の時間でファングを無償降臨。時間はかかったけどようやくこの対面を作れた! 

 

舞え(“りゅうのまい")ファング!」

 

「ぬ──“でんじは"じゃ!」

 

 ファングが己を鼓舞して一時的に能力を上げる(A・S+1)舞を踊り、『こんらん』から目を覚ましたコイルがその隙を狙って“でんじは"を繰り出す。

 外れてくれればと思ったがそう都合よく事は起こらず、命中してファングが『まひ』状態に。せっかく上げた『すばやさ』もむしろマイナスなった。

 

「“マグネットボム"!」

 

 その隙を逃さずコイルが『はがね』のエネルギーで作られた爆弾をいくつも作り出し、それをファングに放つ。

 本来であれば『まひ』の効果でファングの運動性能は大きく下げられている──が。

 

()()()“ドラゴンクロー"!」

 

 積みアタッカーが『でんき』タイプの専門を相手にその手の対策を取らないわけがない。

 ファングに持たせておいたのはクラボのみ。『まひ』になった時に食べる事で即座にその状態を回復する。

 そしてファングの上昇した運動性能は、本来であれば対象に吸い付くように炸裂する“マグネットボム"の合間すら潜り抜けてコイルに迫り。

 

「オォォォノォォォッ!」

 

 “ドラゴンクロー"

 

 竜のエネルギーで形作られた爪がコイルを一閃する。相性不利の技だが、ここまで何度も削りを入れたしここでコイルは落としたい──が。

 

「まだじゃ! コイル!」

 

「ビッ……ビッーッ!」

 

 “エレキフィールド"

 

 “はんぱつ"

 

「くっそ……耐えるか!」

 

 ギリギリのところでコイルが耐えて“エレキフィールド"を再展開した上に、まるで磁石が弾かれるようにコイルがボールに戻っていく。

 耐えられたのは“ばかぢから"を使わなかった──能力上昇を消したくなかった──甘えだとしても、フィールド展開要因を残してしまった。

 更に時間(ターン)の経過によりこちらの壁は消える。向こうの有利なフィールドだけが残った状況だ。

 

「ふむぅ。これでワシはライボルトだけで残りポケモン全員を突破しなきゃならんわけか。ワッハッハ! 追い詰められたのう!」

 

 豪快に笑いながらテッセンが言う通り残ポケモン数は4:2で、更にテッセンのコイルはほぼ『ひんし』なのでこちらが圧倒的に有利だ。まさに追い詰めたと言ってもいい。

 ……が、油断は全く出来ない。どれだけ追い詰めたとしても、結局最後の一体を倒さなければ勝ちにはならないのだから。

 

 “らいうん"

 

 三度ライボルトが現れ、そして黒雲が頭上に生み出される。

 とりあえず()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という目的は達成出来た。後はどれだけライボルトの動きについていけるか。

 

「さあいくぞい! “10まんボルト"!」

 

「躱して“ドラゴンクロー"!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “10まんボルト"

 

 “ドラゴンクロー"

 

 飛来する電撃をファングが素早い動きで回避し、そのままライボルトに肉薄して爪を振るう。

 ライボルトもなんとか“ドラゴンクロー"を避けようとするが、今の段階では能力上昇込みでファングが『すばやさ』で勝る。

 逃げるライボルトにファングが追い縋り。

 

「オノォ!」

 

「ラァイ!?」

 

 ライボルトを見事に捉え、完璧な一撃を叩き込んだ。

 元々高めの攻撃種族値を更に“りゅうのまい"で増加させた“ドラゴンクロー"は結構なダメージになったはず。このまま畳み掛ける! 

 

 “らいうん"

 

「っ! ファング、退け!」

 

「オノッ!」

 

 一気呵成に攻めようとしたタイミングで黒雲が輝き、“かみなり"がファングに向かって落ちるが、既のところで後ろに飛び退く事でそれを回避する。

 ライボルトとの距離が近かったからあの“かみなり"がどっちに降ってきたものかはわからないけど、とりあえず直撃は免れた。“ひらいしん"は発動しちゃったけど。

 しかしここで一気に仕留め切れなかったのは痛い。これでライボルトの方も準備が進んでしまう。

 

 “たいでんたいしつ"

 

「よし、まずはそのオノンドをどうにかせんとな。ライボルト!」

 

「ラァイ!」

 

 テッセンの呼び掛けに応えるようにライボルトが吠え、そしてその体に『でんき』エネルギーが纏われていく。

 あれだ。あの状態のライボルトに前回俺たちはやられたのだ。

 

 “でんきかっせい"

 

「連続で“でんこうせっか"!」

 

「──ラァァァイ!!」

 

 ライボルトが咆哮し、その姿が掻き消える。

 あの電気を纏った状態は『すばやさ』を格段に上げるようで、そこに“でんこうせっか"の速度が合わされば、最早肉眼では線で追うのがやっとというレベルだ。

 全く動きを捉える事が出来ず、ファングが一方的に攻撃を受けてしまう。それら一発一発のダメージは小さくてもあまりに手数が多い。このままじゃ削り切られる! 

 

「くっ……! “ドラゴンクロー"を振り回せ!」

 

「オ、オノッ!」

 

 “ドラゴンクロー"

 

 その場凌ぎの苦しい指示。これでまぐれでも当たってくれればいいと思ったが。

 

それは悪手じゃろ(“10まんボルト")

 

 “でんきのこころえ"

 

 “10まんボルト"

 

「オォォォッ!?」

 

 やたらめったらに爪を振り回すと見るや、すぐさま距離を取られての“10まんボルト"。『とくこう』が上昇してるのとフィールドの補正も乗って、いくら半減とはいえ結構な勢いで体力が削られていたファングがここでダウン。

 やらかした……! 無理に攻撃を当てようとするより、防御に徹してダメージを抑えつつ時間を稼ぐのが正解だったか……! 

 

「すまんファング……! そして悪い、ペラッフィ!」

 

「ペラッ」

 

 少し迷ってペラッフィを出す。

 出したところで絶対にあのライボルトには勝てないし、確実に『ひんし』にさせられるだろう。要するに時間稼ぎの生贄だ。心は痛むがそれでも今はこれしかない。

 

「“リフレクター"!」

 

「“ボルトチェンジ"!」

 

 “いたずらごころ"

 

 “リフレクター"

 

 “クレスガード"

 

 “でんきのこころえ"

 

 “ボルトチェンジ"

 

「ペラッ……」

 

「フィ……」

 

 両壁とはいかなかったが、なんとか“リフレクター"だけは貼る事に成功する。正直間に合うと思ってなかったから大手柄だ! 

 

「ナイスだペラッフィ! いくぞジュカイン(カイン)!」

 

「ジュカァァァッ!」

 

 死に出しで繰り出すのはエースであるカイン。ライボルトも一度ボールに戻った事であの状態は一度解除されたはず。

 “ボルトチェンジ"によって先に出ていたコイルのフィールド展開はもう阻止出来ないが、まだなんとかなる範囲のはず。

 

そいつを落とせ(“リーフブレード")!」

 

「ジュカッ!」

 

 “エレキフィールド"

 

 “リーフブレード"

 

 草の刃に切り裂かれ『ひんし』寸前だったコイルがようやく落ちる。ありえないくらい仕事をされてしまったが、これでようやく残り一匹まで追い詰めた。

 

「うむ、いい活躍じゃった! ゆけいライボルト!」

 

「カイン、“こうそくいどう"!」

 

「“10まんボルト"じゃ!」

 

 “こうそくいどう"

 

 “でんきのこころえ"

 

 “10まんボルト"

 

 カインが『すばやさ』を上昇させて“10まんボルト"を避けていく。素の『すばやさ』ではこっちが上だし能力も上昇させた。このまま上から叩く! 

 

「“リーフブレード"!」

 

「“でんこうせっか"で回避!」

 

 “リーフブレード"

 

 “でんこうせっか"

 

 カインが一気にライボルトと距離を詰め、草の刃を振るう。しかしそれはギリギリライボルトの体を掠めるに留まり、止めを刺すには至らなかった。

 くっそ、判断早ぇ……! 

 

「もう無理か……! “こうそくいどう"!」

 

「“10まんボルト"じゃ!」

 

 あれで当たらないなら少しでも『すばやさ』差を埋めるしかない。あの状態になられる前に攻撃を避けつつ積んでおく。

 

 “たいでんたいしつ"

 

「そら、準備が整ったぞい!」

 

 “でんきかっせい"

 

「ラァァァァイ!!」

 

 正確な事はわからないけど、多分一定回数『でんき』技を使うのが条件なんだろう。後は“エレキフィールド"も関係してるかもしれないけど、そんな事は最早どうでもいい。結局またあの最強モードに変化してしまった。

 

「“でんこうせっか"!」

 

「“こうそくいどう"!」

 

 再びライボルトの姿がほぼ線と化すと同時、カインが『すばやさ』ランクを最大まで積み切る。これで互角か、なんならカインの方が種族値の分少し上を取れるかもしれない。

 

「こっちも“でんこうせっか"! 隙見て“リーフブレード"に切り替えろ!」

 

「ジュッ!」

 

 俺の目じゃライボルトの姿は追えないので、ここからの攻撃判断はカインに任せる。

 というかテッセンはこれを追えてるんだろうか。だとしたらこの世界のトレーナー化け物すぎるんだけど。

 ともあれ『すばやさ』はほぼ互角らしい。それならあの状態が切れるまで粘れば、その瞬間にカインが確実に先手を取って落とし切れるはずだ。

 

「ふむ……使う予定は無かったんじゃが……ここまでやられて何もしないのものう」

 

 勝利への道筋が見えてきたその時、不意にテッセンがそんな事を言う。

 おい、なんか猛烈に嫌な予感がしてきたんだが。

 

「──ライボルト」

 

「ラァイ!」

 

 テッセンが名を呼ぶと、呼応するようにライボルトの体が激しくスパークし、バチバチと凄まじい音を立てて放電する。

 明らかに何らかの技の予備動作だ。それも超級の大技の。ヤバい、あれは絶対にヤバい! 

 

「カイン、防御態勢! 全力で警戒しろ!」

 

「ジュッ!」

 

 無理に止めようとして直撃を貰う方が愚策だと考え、一度カインを下がらせて防御に全力を注がせる。とにかく直撃さえ避ければいい。

 両腕で体を守るような態勢を取るカインに対し、放電を一層激しくさせるライボルトが一瞬体を深く沈めて。

 

「──奔れ」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “せんげき"

 

 “らいごうせんが"

 

 瞬間、閃光と轟音。

 コート上にはライボルトどころかカインの姿もなく、どこへ行ったのかと考える間もなくすぐ側を何かが横切り背後で衝突音が響いた。

 

「なっ……!?」

 

 慌てて振り向くとそこには仰向けで倒れるカインと、その上に立って咆哮を上げるライボルトの姿。

 あまりにも一瞬の出来事過ぎて何が起こったのかわからない。何らかの攻撃を受けたのはわかるが、それにしたって速すぎる。

 立ち上る焦げたような臭いに地面を見れば、直線状に黒ずんだ跡があった。まるで雷が奔ったかのようだ。あのライボルトは文字通り雷になったとでもいうのか。

 

「“らいごうせんが"──ワシのとっておきじゃ。見えんかったじゃろ?」

 

 ニッとテッセンが笑い、ライボルトが跳んでコート上に戻る。

 確かに全く見えなかった。俺ならまだしも能力を上げたはずのカインすら反応出来ない程の速度と、一撃でカインを倒したあの威力。明らかにバッジ三つ目時点で解禁していい技じゃない。

 

「ラ……イ……」

 

「む、やはり反動がキツいか。少し無理があったかのう」

 

 ライボルトが苦しげな表情で倒れそうになるもなんとか持ち堪える。やはりというかあれだけの大技だ、反動も相応にあるらしい。姿が通常のものに戻ってるし息も荒い。残り体力は本当に僅かだろう。

 だけどこちらの残りは何度も受け出しして削れているフォルテのみ。何よりエースがたった一撃でやられた事で俺のメンタルも相当キツい。勝てるかどうかはかなり怪しい。

 攻撃が苦手なフォルテを出してでも勝ちを狙うべきか。大人しく降参して次に活かすべきなんじゃないか。

 そんな考えが脳裏を過ぎり──それを否定するようにガタガタとフォルテのボールが揺れた。

 それは紛れもなく闘争の意思。フォルテの『勝ちたい』という勝利への渇望。

 

「……そうだよな。ここまで頑張ったんだもんな」

 

 俺の手持ちはまだ諦めてない。ならトレーナーである俺が諦めるわけにはいかない。

 

「頑張れフォルテ! もう一息だ!」

 

「ちるっ!」

 

 これが本当に最後の勝負。体力こそ余裕は無いが気合いは十分。何がなんでも押し切る! 

 

「“チャームボイス"!」

 

「避けるのじゃ!」

 

 “チャームボイス"

 

 魅惑の歌声でライボルトに攻撃するも、当然向こうも簡単には当たってくれない。すぐさま攻撃に反応してその場を飛び退く。

 ただ明らかに『すばやさ』が落ちている。さっきの技の消耗は本当に激しいらしい。だったらまだまだチャンスはある! 

 

「追いつけフォルテ! “とっしん"!」

 

「“でんこうせっか"で避けて反撃じゃ!」

 

 “とっしん"

 

 “でんこうせっか"

 

 フォルテがライボルトに突撃し、それをライボルトが跳んで避けながら隙を突いて反撃を試みる──が、それよりも先にフォルテが動いて追撃を仕掛け、ついに“とっしん"を命中させた。

 でも……見に見えてライボルトのパフォーマンスが落ちてるのもあるけど、フォルテの動きが良くなってる? 

 少なくともフォルテにはいくら『すばやさ』が落ちてるとはいえ、“でんこうせっか"中のライボルトの行動に割り込むような速さは無かったはず。

 

 “らいうん"

 

「っ、避けろフォルテ!」

 

 そうして揉み合っている間に雷雲が輝き“かみなり"が落ちる。

 避けるよう指示したが、俺の声が聞こえていないのかフォルテはライボルトへの追撃を止めず、二匹まとめて“かみなり"に被弾する。

 まずい、これでライボルトの『とくこう』が上がってしまった。それにあの至近距離じゃ避けられない! 

 

「終わりじゃ! “10まんボルト"!」

 

「ラ──アァァァァィ!!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “10まんボルト"

 

「ちる──っ!?」

 

「フォルテ!」

 

 チャンスを見逃さず、強烈な電撃がフォルテを襲う。

 “エレキフィールド"下での『とくこう』一段階上昇“10まんボルト"。いくら半減でも耐えるのは難しいだろう。

 これで俺の負け。電撃に包まれるフォルテがぐらりとその体を揺らして──。

 

「──ぴ……ぴ──っ!!」

 

 負けるものかと言わんばかりに大きく声を張り上げながら羽を広げ、そして眩く力強い光を発した。

 それは受けた電撃をも塗り潰す程の輝きを放って広がっていき、“エレキフィールド"すらフォルテを中心に吸い込まれていく。まるで全ての電気がフォルテの力となっていくように。

 

「フォルテ……!?」

 

「これは……!?」

 

 シルエットが変わっていく。小柄だった体は二倍近く大きくなって首も伸び、チルットの大きな特徴であるふわふわの羽も全身を包むように毛量が増していく。

 これは、そう。どうしてもわからなかったフォルテの──! 

 

「チル────ッ!」

 

 やがて光が収束し、甲高い声を上げながら姿を表したのはチルット──ではなくその進化系。

 立派に成長したハミングポケモンのチルタリスだった。動きが良かったのは進化の予兆だったのか! 

 

「ぬう……ここで進化とは……! ライボルト!」

 

「ラァイ!」

 

 “でんきのこころえ"

 

 “10まんボルト"

 

 突然の出来事にもすぐに対応し、先に動いたのはテッセン。ここら辺の判断は流石に早い。

 電撃が飛来しフォルテを撃つが、進化したおかげか耐久が跳ね上がっているようで、大したダメージも感じさせずに翼を一振りして払い除けた。

 

「くう……!」

 

 テッセンの顔が苦々しげに歪む。得意分野の『でんき』技がああも簡単に弾かれればそうもなるだろう。

 

「フォルテ!」

 

「チルッ!」

 

 フォルテが大きく息を吸い込み、技の予備動作に入る。

 それは進化して新たに覚えた技。より強く、大きく響くその技の名は。

 

「チル──ッ!!」

 

 “ハイパーボイス"

 

「ラ──ラァァァァイッ!?」

 

 美しい声から放たれる破壊の音撃がライボルトを襲う。そしてそのまま吹き飛ばされたライボルトが宙を舞い──。

 

「ラ……イィ……」

 

 ライボルトが倒れる。動く様子は無い。対してフォルテは健在である。

 

「……ワシの負け、じゃな。まさかここまでして負けるとは思わなんだ」

 

 そしてテッセンの敗北宣言。

 という事は……。

 

「……やっ……た……?」

 

「チルーッ!」

 

「わっぷ!? 重ッ!?」

 

 嬉しかったのか飛びついてくるフォルテにそのまま押し潰されてしまう。もふもふで気持ちいいけど重い! あとなんかパチパチする! 進化して電力強まっただろこれ! 

 なんとか引き剥がそうと藻掻くも向こうの方が力が強い……というか、上手く力が出せない体勢というか。愛情表現なのはわかるけども。

 まあ、ともあれ──。

 

「ダイナモバッジゲット、だな」

 

 一時はどうなる事かと思ったけど、どうにか三つ目のバッジも確保。

 ……でもあのふざけた火力の技だけは絶対に許さない。後で問い詰めてやる。




評価や感想、批評等あればよろしくお願いしマース。
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あとツイッター始めてみたので興味があるなら是非。

※矛盾が見つかった為、7/6に『らいうん』を天候から設置技に変更しました。
天候という程空を覆い尽くすのではなく、小さな黒雲がポツンと浮かんでる絵をイメージしてください。

んじゃいつもの。


テッセン
『指令』
『でんきのこころえ』
味方が使う『でんき』タイプの技の威力が1.2倍になる。

『せんげき』(閃撃)
味方の『ライボルト』が“らいごうせんが"を使えるようになる。この指令はバトル中に一度しか使えない。

コイル
『技能』
『はんぱつ』
接触技を受けた時、任意で手持ちに戻る事が出来る。

ロトム(ショットロトム)
でんき/はがね
『裏特性』
『ガトリング』
自分が使う『でんき』技の威力を1/3にして2~5回の連続攻撃にする。追加効果のある技なら当たる度に判定する。

フォルムチェンジ後に習得する技は“ラスターカノン"。

ライボルト
『裏特性』
『たいでんたいしつ』
『でんき』技を使うか受ける度に、もしくは場の状態が『エレキフィールド』の時に一ターン経過する毎に自分に『たいでんカウンター』を一つ乗せる。最大五つ。

『技能』
『らいうん』
自分が場に出た時、場の状態を『らいうん』状態にする。この効果は自分が場から離れた時に消える。

『でんきかっせい』
自分に乗った『たいでんカウンター』が三つ以上ある時それらを全て消費し、その数×ターン数自分を『でんきかっせい』状態にする。自分が『でんきかっせい』状態の時、『たいでん』カウンターは乗らなくなる。

技説明
『らいうん』
ターン終了時に50%の確率で“かみなり"を相手か味方に使用する。

『でんきかっせい』
自分の『すばやさ』と『かいひ』ランクを最大にする。『でんきかっせい』状態が解除された時、自分の『すばやさ』と『かいひ』ランクを6段階下げる。

『らいごうせんが』(雷轟閃牙)
威力140 命中100 優先度+4 物理
自分が『でんきかっせい』状態でないとこの技は失敗する。この技は『すばやさ』でダメージ計算し、与えたダメージの1/3を受ける。この技を使った時に『でんきかっせい』を解除し、『すばやさ』と『かいひ』の能力ランクを最低にする。


チルタリス(特異個体)
ドラゴン/でんき
特性:ノーてんき
『でんき』タイプを持って生まれたチルットが進化した。色違いという点を除いて姿こそ通常種と変わりないが、進化方法が特殊なものに変化している。
自分の放つ『でんき』エネルギーが羽毛に溜まっており、それを利用して攻撃する。

『進化方法』
“エレキフィールド"がある状態でレベルアップ。


はい、チルット遂に進化です。10万受けてた事も関係ありそうに書きましたがゲーム的処理としてはこう。小説内だと足りないエネルギーを相手の技で補充して進化に至ったって感じです。デスバーンみたいな進化方法だと見つけられん。

『こころえ』系の指令は基本的にパッシブ型かつ、タイプ統一の人は大抵持ってる習得難易度が低めのスキルです。統一する利点でもある。毎回書くのクドいけどどうしようか悩み中。

ちなみに“らいごうせんが"に関しては本来の適正ライボルトで使ってないのでスペック落としてます。とりあえず本気ライボルトなら回数制限は無いですね。条件満たせば何回でも使えるしそもそも技能習得。

今回気になる事とか多いかも知れないからそういうの聞きたい人はツイッターとかで聞いてください。気分が良ければ答えます。(理由とか設定ちゃんと考えてたら)
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